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しおりを挟む俯いてしまった為、2人の表情は見えない。
何も言われないから呆れて声も出ないのかもしれない……と思い、落ち込みそうになる。
そう思っていたのに…ふと、優しく頭を撫でられた。
反射的に顔を上げると2人とも優しく微笑んでた。
目元を和らげて、愛しいものを見るように。
「シン、謝る必要はないぞ?」
ギルが俺の頭から手を離しつつ笑みを深めて告げる。
でも…と言い募る俺に今度はレイドが頭を撫でてくれる。
「選ぶ必要はない」
断る勇気もないのに、更に選べないなんて最低じゃないか。
選べない俺を切り捨てて違う人を…。
そう考えて胸が苦しくなる。思わず目元が熱くなってしまって、再び顔を俯かせた。
「シンがどうしたいのか…まずはそれを聞きたい」
俺がどうしたいのか…?
選べない事に悩んでいる。それは生前の常識が残っているからだ。今、生きているリーデルハイムはその常識とは違う。
大抵の常識と呼ばれる事は本で学んだ。勿論、この世界の恋愛や結婚等も。
恋愛は勿論、自由だ。どんな形でも、当人達の気持ち次第。
婚姻になればその相手は1人に限られておらず、重婚は犯罪ではないし禁止されている訳でもない。寧ろ推奨する動きさえある。
それはリーデルハイムの人族の割合からなるもので、少ないからこそ数を増やそうという動きに他ならない。
ではギルの言う、俺がどうしたいのかという話になると…。
俺は、選ばなければと思い込んでいた。
生前の常識から、相手は1人でなければならないと思い込んでいた。
結婚云々はともかく、俺は2人を悲しませたくはない。
悲しませるくらいなら俺ではない誰かに幸せにしてもらった方が…と考えて嫌な気持ちが湧いてくる。
他の奴に任せるくらいなら俺が幸せにしてやる。
俺はギルを見つめた。
俺の視線にギルが頷くと、優しく手を握られた。レイドはゆるゆると髪を撫で相変わらず笑みを浮かべている。
「俺が、2人を幸せにしてやる」
2人を交互に見つめて言う。
2人が他の誰かを愛するなど、耐えられないと思ってしまった。
その姿を見たくない、とも。
それならば、俺が2人を手放さなければいいのだ。
2人を選べばいい。
自分勝手な想いだと思う。
断る気持ちもなければ、他の奴と幸せにしている姿も見たくない。
そんな気持ちを込めて言ったのだ。
「実は昨日、レイドからシンに想いを告げたと聞いたんだ。俺がシンを想っている事は既に知れ渡っているし、レイドは真面目な性格だからな。黙っていられなかったらしい」
ギルは苦笑を浮かべて寡黙な部下を見つめる。レイドはその視線から顔を逸らし、俺の髪を乱雑に撫でまわした。
「色々言い合い……いや、話し合った末に、結局はシンの気持ち次第だという事に落ち着いてな。シンの返事を気長に待とうという事でまとまったんだ」
今言い合いって言ったか?
俺の知らないところで何があったのか。
「シンが決めたなら、それでいい」
髪を撫でていたレイドがその手を頬に移動させて緩く撫でる。その目は細められ優しげに笑んでいた。
「いっそ婚約でもしておくか?」
ギルが冗談交じりに笑っている。
レイドも名案!みたいな顔をするんじゃありません!
話が飛躍しすぎだし、何よりまだちょっと納得してない部分もある。
「……ギルもレイドも…本当にそれでいいのか?」
改めて2人を見つめる。婚約云々は別として。
二股してるような気持ちになるが俺は2人が好きで、2人を手放せない。
本当にそれでいいのだろうか?
俺の気持ちを察したのか、2人とも頷いてくれた。安心させるように、優しく微笑んでいる。
ギルは握っていた手に指を絡め、レイドは頬や耳に触れる。
ちょっとくすぐったいです。
その後俺は身体を休めるようにと再びベッドに寝かされ、2人はまた様子を見に来ると部屋を後にした。
考えすぎて疲労した身体を休め、目が覚めた頃には知恵熱もすっかり引いて気持ちも軽くなっていた。
時刻は夕飯時で、食事を持ってきてくれたヒースに事の顛末を話す。
ママンには言っておかないと。後で怒られるのはごめんです。
「あぁ…だから順番だの何だの騒いでたんですね…。呆れた2人ですよ、全く」
よくよく話を聞くと、俺の部屋を後にした2人が団長室前で言い合いをしていたらしい。
内容的には…
先にデートするのはどっちが先だとか。
たまには2人きりで過ごしたいんだ、とか。
結果的にギル、レイドの順番に落ち着いてお互いに握手を交わしていたという。
その直後にヒースが団長室に2人を引きずり込んで鉄拳制裁したのだとか。
色々ツッコミどころ満載だが、取りあえずヒースに頭を下げておこう。
ごめんよ、ママン…。
ヒースと入れ違いに再び2人が部屋に訪れ、その頬に殴られた痕を見て取り改めてヒースに心の中で謝っておく。
2人はヒースに怒られた経緯等を話してくれて、俺にも謝ってくれた。
順番だの何だのは後で話し合いましょう。うん。
そして改めて交際を申し込まれ、俺はそれに頷いて2人の手を取り受け入れた。
何だかんだと丸く収まったのだろうか。
取りあえず、明日3人でヒースに頭を下げに行こうと決定したのは言うまでもない。
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