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11(ギルフォード視点)

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王都への街道を風を切って駆けていく。
私達第三騎士団は、客人を連れて王都へ帰還している最中だ。
森の中の泉でちょっとしたいざこざがあり、事実確認をする為にシンに王都への同行を願い出た。
まぁ私の発案ではないが……でかした、ヒース!
騎乗する際にも一悶着あったが、今は順調に街道を進んでいる。
順調すぎて、今日の景色は何だか違って見えるようだ。理由は明白。私の腕の中に、シンがいるからだろうなっ。どさくさに紛れてシンの匂いを嗅いでいるわけではない。断じて違う。
……あぁ、いい匂いだ…。

ふと、シンの雰囲気が変わる。何事かと様子を窺うと、沈んだ顔をしていた。それでも前を見据え哀愁を漂わせる横顔は美しく、見惚れてしまう。
しかし先ほどの雰囲気は一体…?
もしや……匂いを嗅いでいた事がバレたのでは…?!


暫く駆けて、空の色が変わる頃今日の最終目的地である村に到着した。
私を気遣ってくれるシンには一瞬垣間見えた哀愁は感じず、いつも通りのようだ。
振り向いた時に瞳を凝視出来ず、服から覗く鎖骨に釘付けになった事はヒースには内緒にしておこう。

村に建てられた仮騎士団宿舎の内部を説明しつつ、部屋へ案内する。
何故、仮なのか…。いつの日か、国民が魔物に怯える日が無くなった時、この宿舎は取り壊されるのが決まっているからだ。
1日も早く取り壊せるように、尽力しよう。

シンを部屋に案内してから、向かい側の団長室へ入る。
重い装備を脱ぐべく、留め金を外していると先ほど別れたばかりのシンが部屋を訪ねてきた。
訓練場の使用許可を求めての事だったが、この時間の武器を使っての訓練に苦言を呈する。が、構わず訓練場に向かってしまった。
急いで装備を外してラフな格好に着替えると、隣の部屋にいるヒースに声を掛けてから訓練場へ向かう。

見たこともない武器を構え、縦に、横に、斜めにと空を切る、見たこともない体捌き。その度に汗が滴り落ちる。
しなやかな身体のラインがくっきり分かるほどシャツが汗で濡れていたが、気にする素振りも見せずに手にした武器を振り下ろし切り上げ、動き続ける。
それ程までに集中しているのか…。
シン自身の艶やかさと相まって、その動きはどこか現実離れして見える。

こちらを向き、照れてはにかむ笑みに我に返った。
先に正気に戻ったのはヒースだったようで、浴場に案内するよう促される。ヒースは着替えを準備するようだ。


「相手は子供だ。……分かってるよな?変態絶倫野郎」


すれ違いざまに注意される。
注意するくらいなら最初からお前が案内をすればいいだろう?!
仕事が出来る男・ヒースは、時々[俺]に対して過酷な状況を強いる。ひどい男だ、ヒース…。





さて、浴場に到着した私達。
結論から言おう。


私………いや俺は、シンの誘惑に勝てなかった…。

しっとりと濡れた唇を何度も奪ってしまった。ふっくらと膨らむそれは想像以上に柔らかく、いつまででも触れていたくなる。
咥内を犯してしまうと、腰が跳ねた。どうやら上顎が弱いらしい。
心に刻もう。
案の定、俺は勃起してしまった。耐えられるはずがないので仕方ない。だらしなく勃たせてしまった俺自身をシンの引き締まった腹に擦り付ける。
それだけで達しそうだったのは言うまでもない。
声が漏れないように噛み締めていた唇を舐めて舌を滑り込ませる。なんとも艶めかしい吐息が耳を擽る。
調子に乗ってシンのモノを握って扱くと、直ぐに反応してくれた。嫌がっていないようで安心だ。

そこで予想外の事が!シンが!俺のモノを!
………危うくシンを汚すところだった…。
……いや、まぁ……後々汚してしまうのだが……。

俺の唾液がシンの唇を濡らしいやらしい手つきで俺自身を扱く姿に煽られる。
思わず喉を鳴らしたが気付かれなかったらしい。
扱く動きを速めていくと限界が近いのだろう。離して欲しいとやけに甘ったるい声で懇願されるが、無論却下だ。
一気に限界まで扱き上げる。
腹に感じる熱と間近で嬌声を上げるシンの姿に、俺も精を放つ。シンの腹と胸まで飛んでしまった…。
薄紅色の乳首が俺の出したもので汚れる様子がなんとも艶めかしい。
肩で息をするシンが正気に戻る前にと首筋に唇を寄せ軽く吸う。髪や服では隠れない場所だろうが、構わず所有の証を刻んだ。

俺のものにしたい。
いや、俺のものだ。

さて続きを…と身動きする前にシンが離れてしまった。残念だ…。
これから俺のものにする筈だったのに、と思っていると、正気に戻った様子のシンが俺の名を呼ぶ。
声にまだ甘さが残っているが、恐る恐るといった様に一気に目が覚めた気分だ。


……や、や、やってしまったぁあああっ!!!
何をしてしまったんだ、俺は!いや、ナニだが!
ヒースに殺される!!


慌てて謝罪すると、なんとも寛大な言葉が!


「ま、まぁ気にすんなって!それより、早く洗っちまおうぜ?腹も減ったしなっ?」


シンの気にしていない様子に多少落ち込むが、それでも嫌がられなかったのは幸いだ。むしろ積極的だった気がする。
このままいけば色々許してくれる気がする…。
いや、それは追々で…。
汚れを落とすシンにチラチラと視線を送りつつ、目を盗んで腹に放たれた白濁を舐めてみた。
断じて美味そうと思った訳ではない。強いて言うなら美味そうなのは俺の液体に塗れたシンだ。
そこは声を大にして言いたい。誰も文句は言えないだろう。
口にした精液は、惚れた弱味かなんなのか、ほんのり甘く感じたのだった。


シンが見てない間に疚しい事をしてしまってヒヤヒヤしながら遅めの夕食を2人で済ませる。
そのままそれぞれ部屋に戻るが、扉を開けて固まる。


「…!!ひ、ヒース…さん…」


団長室の中央で、灯りも点けずに無言で立つ、笑顔の男が1人。


「…団長……浴場では、随分…楽しそうでしたね……?」


一歩、近付いてくる。ビクリと身体を震わせて俺は一歩下がる。が、ここは廊下だ。他の団員達はもう休んでいるだろうし、向かい側の部屋にはシンもいるのだ。
更に言うなら、この仮宿舎の壁板は…薄い。
グッと恐怖に耐えつつ部屋に入り、静かに扉を閉めた。
途端に足音も無く近付くヒース。その顔には笑顔が貼り付けられている。
ひ、ひぃ!!


「着替えを置きに行ったら随分楽しそうな声が漏れてましたよ?私は、子供相手に手を出すな、と忠告しましたよね?スティラ国第三騎士団の団長ともあろう人が、その位の忍耐も持ち合わせていないんですか?団長様は言葉が理解できないんですか?下半身で生きてるんですか?それともただのバカですか?なんなら全部混ぜ込んだ変態絶倫野郎ですか?全部ですよね、団長?」


周囲の部屋に配慮してか、声は小さい。が、抑揚のない声音な上、早口で一気に捲し立てるヒースに恐怖を感じる。


「す、すみません…」


素直に謝る。下手に逆らうと後が怖い。長く深い溜息が目の前の相手から零れる。


「一発で勘弁してやるから明日からきちんと自重しろ、この犯罪者」


言われるのと同時に頬に強い衝撃と痛みが。ヒースに殴られたのだ、拳で。
直ぐに冷やしたタオルが投げ渡される。薬草を村で調達した為痛みと傷を治す事は出来るだろうが、それは許されない。ヒースの目が許さないと言っている。故に、腫れない為のタオル。
小さな頃から、俺が何かやらかすと鉄拳制裁してくるこの男は、俺のお目付役兼、友人だ。最近、怖い母親的存在も垣間見える。
世の中の母は怖い。


「じゃ、おやすみ」


それだけ言うとヒースはさっさと自分の部屋へ戻っていった。
後に残されたのはタオルを頬に当てる男が1人。
ベッドに座り反省するが、浴場での行為がチラチラと脳裏を掠める。
反省はしている…が、どうしても忘れられない光景が広がる。
下半身に熱が集まるのを感じ、目をやると、とても元気な様子だった。
そもそも1回で終わらせた事を褒めて欲しい!!
肝心な場所には触ってもいないし!!
心の中でヒースに言い訳をするが、時既に遅し。
シンとの行為を思い出しつつ、その日は2回程致したのだった。


翌朝、シンの首筋に紅い痕を見付けたヒースに反対側の頬を殴られたのは言うまでもない…。

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