エロゲーのモブが自我を持ちました

７２、お願い

【お願いしたいことがあるので、放課後お時間を下さい】


俺は５人にそう言って、再び生徒会室に集まってもらうことにしました。
生徒会室にしたのは、昨日も使わせてもらった事と、真一先輩からの申し出です。


昨日と同様に、俺が到着した時には皆さんお揃いで室内からは話し声が微かに聞こえます。
ノックをして到着を知らせ、室内へと足を踏み入れます。


｢集まって貰ってありがとうございます｣


扉を閉めて開口一番に礼を述べ頭を下げます。それから５人の顔を１人１人見つめ一歩だけ前に進み出ます。
和馬くんと真一先輩、雅先輩は接近禁止令を守ってくれているらしく、壁や窓に近い位置で俺を見つめています。
理人先生と翔先輩はそんな３人と俺の間にいて、俺が話し出すのを待ってくれています。


｢…あの……｣


今からお願いすることは、俺の我が儘で結果的に皆さんを傷付ける事になるかもしれない事です。

そう思うとなかなか口が思うように動いてくれなくて、あの、その、と無意味な音を紡ぎ出しています。

でも、このままじゃいけないと思ったんです。
自信が持てないからと、勝手に自分自身にストップをかけて、皆さんが寄せてくれる好意に甘えているのはとても失礼な事だと思ったんです。
俺を好きだからこそ、３人はキスをしてきたんです。
俺を大切に想ってるからこそ、２人は３人から遠ざけてくれたんです。

食堂で、遠くに座りながらこちらの様子を気にしている和馬くんと真一先輩を見たとき。
何も言わずに俺から１番離れた席に座った雅先輩を見たとき。
俺から雅先輩を遠ざけようと行動していた理人先生と翔先輩を見たとき。

きちんと向き合わなければと思ったんです。


深く、長く、息を吐き出してもう一度皆さんの顔を見ます。
しっかりと１人１人を見つめてから、俺は口を開きます。


｢明日から１週間ずつ、俺に皆さんの時間を下さい｣


そう。
自分の気持ちを確認するため、皆さんに答えを出すため、我が儘に付き合って欲しいとお願いするのです。