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64、誰かですか?……いや、俺ですね
しおりを挟む学年交流会も無事?…無事に終了し、後片付けも終えた放課後。
ちなみに、午前中は学年交流会でしたが午後からは通常通りの授業でしたよ。
今日は何の予定もなく、疲れ果てていた俺はクラスメイトの仲の良い友人数人と寮への道を歩いていました。
和馬くんは桐生先生や藤堂先輩、生駒先輩と不破先輩に何故か呼び出されていました。
連れ出された和馬くんは、何やら誇らしげな顔をしてましたが。
いつもは桐生先生以外の誰かしらと放課後は寮へ帰っていましたが、今日は久々にモブ仲間と思い込んでいた仲良しさん達との帰宅です。
色々と情報をくれていた佐藤くんは、少し前まで俺と同じように顔がぼやけていた印象ですが、今ははっきりとその輪郭も見えモブ顔だ等と言っては失礼に当たる程です。
イケメン方と比べては失礼ですが普通顔です。それでも佐藤くんは人好きのする笑顔を絶やさない明るさもあって、俺とも仲良くしてくれます。
同じくモブ仲間と思い込んでいた鈴木くんは、分け隔て無く誰にでも優しく接してくれる人です。
同じくモブ仲間と思い込んでいた加藤くんは、存在感が薄いと言われがちですが、ふわふわとした雰囲気で場を和やかにしてくれる癒やし系です。
皆さん、モブというにはあまりにも個性があり、モブ仲間と思っていた自分が恥ずかしいです。
そんな彼等と仲良く話ながら寮へ辿り着いた俺は、早速その3人と夕食を摂ります。
お腹ペコペコです。
俺の食べっぷり?に驚かれましたが、談笑し和やかに食事を終えることが出来ました。
そして現在。俺は自分のお部屋で制服から普段着に着替え終えたところなのですが。
学年交流会中の会話を思い出して、俺は全身鏡で自分の容姿を確認しました。
端的に言いましょう。
鏡には、普段通りの俺が写し出されていました。
至って平凡な、ちょっとひょろい見た目の俺です。
こんにちは。
俺はキョロキョロと辺りを見渡して他に誰もいない事を確認し、もう一度鏡を覗き込みます。
やっぱり、普段通りの俺がいます。
俺は、屋上での言葉を思い出します。
色っぽいだの、可愛いだの言われました。
……………何処が?
もう一度言いましょう。
何処が?
いや、もしかしたら動いてる時は可愛くて色っぽいのかもしれません。
ちょっと動いてみましょう。
右手を上げたら鏡の中の俺は左手を上げました。
右足を上げたら鏡の中の俺は左足を上げました。
右に首を傾げたら鏡の中の俺は左に首を傾げました。
全くもって普通でした。
自我が芽生えてから、何度となく自分の容姿は鏡で見ていましたし、なんなら顔に傷を負った時は毎日消毒の為に顔をガン見してました。
つい、今朝も身だしなみチェックで全身くまなく見てました。
確かに、自我が芽生えるまでの自分の顔はぼやけて思い出せないです。
睫毛は確かにバシバシと長いですし、肌も白いです。病的な白さでは……ないと思いたいですが。
髪は猫っ毛なので柔らかくてサラサラですが、可愛い要素に追加されるべき項目とは思えません。
やはり、皆さんは惚れた欲目というもので俺を見てくれているでしょう。
自分が好きなものだからこそ、良く見えてしまうのです。
例えば好きなキャラクターが物凄く可愛いのに、他の人はそう思ってくれないどころか、自分が好きじゃないキャラクターを可愛いと言ったり。
人それぞれの好みです。
欲目です。
俺は鏡から離れてベッドに寝転びます。
自然と深い溜息を零してしまいました。
実はちょっとだけ期待もしていたんですよね。
突然自我が芽生えたり、ゲームによく似た世界だったりのこの不思議な現象の1つに、自分の見た目も変えられてないかな、と。
結果はまぁ、違っていましたが。
それでも、もし変わっていたならば。
あの人達の傍にいても、皆さんに恥ずかしい思いをさせなくて済むかもしれない。
綺麗でも可愛くても格好良くても、今より多少見た目がマシになったら、皆さんから寄せられる好意に真剣に向き合う事が出来るのに、と。
学園生活を楽しく過ごすために当たり障り無い程度に過ごしてましたが、これ程までに皆さんと過ごす日々が心地良いものだったとは思わなかったです。
皆さんから寄せられる無条件の好意に、このまま胡座をかいているのもどうなのか。
真剣に向き合いたい気持ちはありますが、どうしても自信が持てないのです。
自信が持てたら、きちんと向き合います。
だからどうか、もう少しだけお待ち下さい。
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