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53、貸切………じゃなかった
しおりを挟む今日も今日とて暑い日です。
冷暖房完備の寮ではありますが、ずっと部屋に閉じ籠もって過ごしている訳ではないのでこの暑さには参ってしまいます。
そこで俺は思い付きました。
よし、プール入ろう!と。
思い立ったが吉日。
早速支度をして屋内プールへ向かいます。
お金持ち学園らしいので、勿論プールも完備です。しかも屋内プール。
夏休みに入ってからは自由に使用可能でしたが、事前に教職員に使用する旨を話しておかなければなりません。
プールを使用する生徒がいた場合、監視員として教職員の誰かが付き添わなくてはならないとのこと。
俺は早速桐生先生にプールを使用する旨を伝えました。
今から職員室に向かって手の空いている先生に話を通すよりも連絡先を知っている桐生先生に話をした方が早いと思ったからですが。
決して職員室に行くのが億劫だったからではありません。
…………決して。
連絡を終えてスタスタ歩いてますが、何だかおかしい。
俺が歩いている道は寮からプールへ直接向かえる外の道ですが、さっきからすれ違う生徒さんしかいない。歩く俺の前後には同じ方向へ向かう人影がありません。
つまり、プールから帰ってくる人はいるけれど、プールへ向かう人はいないという事。
朝早い時間帯でもないし、涼しい訳でもない。
言うなればこれから入る人がわんさか増えてもおかしくない時間帯と気温なのです。
緊急の点検等でも無さそうですし、不思議に思いながらも俺はプールに向かいました。
予想通りというか、当たり前というか。
更衣室には誰もいませんでした。
シーンと静まり返る室内で、俺の着替える音だけが響きます。これだけ静かだと少々不気味ですが、貸切だと思えば大丈夫。
監視員の先生もいますし、全くの一人きりではありません。
さくっと着替え終えプールへ続く扉を開けるとだだっ広いプールにはまだ監視員の先生の姿は無く、俺は仕方なくプールサイドに常備されている椅子に座って先生の到着を待ちます。
それにしても貸切のプールって不気味です。それに寂しい。
早く誰か来ないかな、と更衣室に繋がる扉に視線を向けるとガチャリと扉が開いて桐生先生が入ってきました。
どうやら監視員の先生は桐生先生だったようです。
人が来たことに安堵していると、桐生先生の後ろから見覚えのある人達が入ってくるのも見えました。
藤堂先輩、不破先輩、生駒先輩、春日井くんです。
5人共、俺を確認したからか足早に近付いてきました。
プールサイドでは走っちゃ行けませんよ。
なんて注意はしないですが。
貸切だと思ってましたが、ちょっと寂しく思っていたので俺は近付いてくる5人に笑顔を向けて歓迎したのでした。
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