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46、美味しいものを求めて

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昨日はゲームと酷似したイベントが発生して、ちょっと思考が停止しました。
ハッと我に返り、ここは現実であってゲームではない。だから偶然で、気のせいだったと思っておきます。
そうじゃないとずっと考え込んで、容量の少ない頭をパンクさせそうです。
気分を変えるために朝の身支度を手早く済ませて自室を出ます。

さて、何をしましょうか。

今日は委員会活動も、お友達との約束もありません。課題をするにしても昨日の今日でまた教わりに行くのは気が引けてしまいます。
遊ぶ約束をしている春日井くんは一時帰宅組でまだ帰ってません。
生駒先輩はこの時間は部活動に励んでいるでしょう。

そうだ、不破先輩がいたじゃないですか。
不破先輩を起こしに行くと美味しいものにありつけるという重大な事柄を忘れているなんて!

ジャムパンより美味しいものを求めて、俺は不破先輩のお部屋へと向かいます。

朝早い…と言っても夏休みじゃなければとっくに授業が始まっている時間帯です。
不破先輩を起こしても文句は言われないでしょう。


廊下を歩いて辿り着いた先輩の部屋のドアを何度かノックします。

返事はありません。


「不破先輩?朝ですよー。起きて下さーい」


何度も呼びかけますが、返事はありません。

困りました…。起きてくれないと美味しいものにありつけません。
俺は思いきってドアノブを回してみます。
なんの抵抗もなく、すんなりとドアは開いてしまいました。
不用心です。

もしかしたら部屋にはもういないかも…という考えを投げ捨て、開いてしまったドアを潜ります。


「お邪魔します。……って、やっぱりまだ寝てる」


カーテンが閉められた室内は薄暗くはありましたが、それでも部屋全体を見通せない程ではありません。
俺はカーテンが閉められた窓に近付き、盛大にカーテンを開け放ちます。
眩しい。
冷房が程良く効いた室内で布団に包まり寝ていた不破先輩は、突然明るくなった室内にもぞもぞと身動ぎします。


「不破先輩、朝ですよ!起きて下さい!」


そこに俺の声で起床の追撃です。
美味しいものを食べましょう!とは言いません。まだ。


「……ぁ……?」


俺の追撃に起きた様子の不破先輩。寝起きで掠れた声を上げ、眩しさに目が開いてません。
不破先輩はいつも寝てますが、寝起きというものは見たことが無かったので新鮮です。
どういう訳か、俺が近付くと起きてしまうらしいです。

もしかして今も本当は起きていて、お布団から出たくないのかもしれません。

俺は眩しさで未だに目を開けていない不破先輩へ近付き、その肩をそっと揺すります。


「不破先輩、起きて下さい。一緒に美味しいものを食べましょう?」


おっとつい本音が。
とにかく、俺は不破先輩を起こして美味しいものを食べるのです。

ゆさゆさと不破先輩の身体を揺すりますが、一向に目は開きません。
眉間に皺を寄せて呻いてはいるので寝てはいない様です。もう少しです。


「不破先輩、起きないとも擽っちゃいますよ!」


もぞもぞと潜ろうとする先輩からお布団を剥がしにかかります。
なかなか剥がせず手を離した途端、突然何かに腕を掴まれそのまま引き倒されて何かに包み込まれてしまいました。



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