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43、夏休みスタート

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森宮くんが俺と同じ事情だと分かった日から、お互いに良くお話しするようになりました。
何だかんだで、やはり彼は主人公気質のようでとても魅力的です。
たまに春日井くんも混じって3人で仲良く過ごしたりと森宮くんが帰省するまでのたった2日間でしたが楽しく過ごせました。


夏休みに入ってすぐ、森宮くんは帰っていきました。それを朝からお見送りした俺は、さてどうしよう、と頭を捻ります。
出された課題をするか、不破先輩を起こしに行くか。

寮に残ったとは言え、毎日予定があるわけではないので暇と言えば暇です。
かと言って何もしないでお部屋でダラダラと過ごすのも勿体ない気がして、俺は森宮くんを見送った後寮には戻らず学園へと続く門へ足を向けました。

門を抜けて昇降口への道を進み、そのまま校舎内へと足を踏み入れていきます。
夏休みだからと言って、部活動や委員会活動等があるため、基本的に学園はいつでも出入り自由です。

上履きに履き替えてそのまま暫く廊下を歩くと、重厚な作りの扉の前に着きます。
観音開きの扉を開けて中に入ると、そこは図書室です。

高校の図書室とは思えない程の蔵書数と、種類。
何か目的があった訳ではありませんが、たまには読書するのも良いかな、と思って足を運びました。

貸出カウンターには当番の委員が座っていて、こちらからは見えない手元で何やら作業をしています。

俺は邪魔にならないようにとそっと歩き、本棚の一つ一つをゆっくり見ていきます。
目に付いたタイトルの本を片っ端から引き抜いてパラパラと捲っては戻していきます。

そうしてゆっくりと移動しながら何冊か手に取って、それをカウンターへと持っていきます。
選んだのは小説や料理本やら歴史書、雑誌や漫画など、バラバラです。
カウンターで貸出の手続きを行い、両手で本を抱えながらヨタヨタと寮への道を戻って行きました。


寮へ続く門を潜っていると、春日井くんが寮の出入口から飛び出して来るのが見えました。
手を振りながら近付いてきた彼は、俺の前で止まりイケメンスマイルを浮かべています。


「寮から田中くんが見えたから思わず走って来ちゃったよ。本、半分持つよ」


そう言って俺の返事も待たずに抱えていた本の半分程を奪われてしまいました。


「ありがとうございます。結構重くて……助かります」


そう、調子に乗って本を借りすぎました。
だって返却期限が無いんですもの。
借りた本の数冊は分厚いものもあり、借りた事をちょっと後悔し始めていたところです。


「凄い数借りたね。しかもジャンルバラバラ」


何気に、重い本を持ってくれている春日井くんを見上げてお礼を述べると彼は俺が借りた本の背表紙や、冊数を見て驚いたように声を上げます。


「手当たり次第に借りたんです。何かに興味を引かれるかと思って」


苦笑を浮かべて言うと、春日井くんはおかしそうに笑います。


「じゃあ夏休みはずっと読書っていう予定じゃないんだ?約束してたのに忘れられたかと思ったよ」


「いえ、そう言う訳じゃ…」


「分かってるよ、大丈夫。この中の本で何か面白いのあったら教えてね?」


春日井くんの言葉に俺は大いに頷きます。俺が面白いと感じた本が気に入るかは分かりませんが、オススメの本を見付けよう、と思ったのでした。



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