エロゲーのモブが自我を持ちました

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26、攻略対象者はやっぱりいい人

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職員室から寮へ一目散に帰ります。
今日の寮の夕食は唐揚げ定食です。
唐揚げ定食はとても人気なのです。
早く帰らなければなくなってしまいます。

昨日とは打って変わって誰にも邪魔されることなく寮へ帰れました。
食堂へも難なく到着できて、残り少ない唐揚げ定食を頼みます。

お肉がジューシーなのに衣はカリカリサクサクで、ご飯と相性抜群です。
付け合わせのサラダもきちんといただきます。
1日の中で1番の至福の時。
ご飯がとっっっても美味しい。幸せ。

大盛りご飯をペロリと平らげ、自室へ戻ろうと食堂を出た所で声をかけられました。


「田中くん」


誰だろうと振り返ると、そこにはユニフォーム姿の生駒先輩の姿が。
午前中の休み時間とは打って変わって、取り巻きのファンの方々の姿はありません。


「どうかしましたか?」


俺は生駒先輩を不思議そうに見つめます。
何故、呼び止められたんでしょうか。


「昨日は本当にごめんね?これ、必要ないかもしれないけど良かったら使って?良く効くんだ」


そう言って紙袋を手渡されます。半ば強引に手渡されはしましたが、いただけるのなら有難くいただきましょう。


「わざわざありがとうございます。本当にもう、気にしなくて大丈夫ですよ」


ぺこりと頭を下げます。お礼はきちんとしなくては。でも、いつまでもズルズルと引きずられるのも気が引けます。


「うん。薬も渡せたし、田中くんが許してくれたからね。あ、そうだ。田中くんの下の名前、聞きそびれたんだよね。教えてもらってもいい?」


「実です。田中実といいます」


「ミノルくんね、ありがとう。もしその薬気に入ったならまたあげるから。遠慮なく言ってね」


じゃあ、と手を上げそのまま食堂へと消えていく生駒先輩。
わざわざ薬を渡すために待っていたのでしょうか。
ガサガサと紙袋を開けて薬を取り出します。
擦り傷や打ち身に効く軟膏でした。
サッカー部の生駒先輩の事です。ご自分も愛用なさっていらのでしょう。
俺は有難くその薬を頂戴する事にします。

今日1日、何故かゲームの攻略対象者たちに会いましたが、皆さんとてもいい人でした。
たかだかモブキャラに対しての気遣いといったら。
流石、攻略対象として設定してあるだけありますね。

俺はうんうんと頷き1人納得しつつ自室へ向かいます。
そう言えば、生徒会長さんのお部屋に寄らなければならないんでした。
生徒手帳を受け取らなければ。

自分の部屋の前を通り過ぎ、生徒会長さんの部屋の前へ。そのまま扉を3回程ノックして反応を待ちます。
が、まだ戻っていないようで反応はありません。
念の為、二、三度同じようにノックをして様子を見ますが結果は同じです。
諦めて自分の部屋へと戻り、生徒会長さんが戻ったタイミングでもう一度訪れようと本日の宿題に取りかかったのでした。



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