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24、ランチタイムはお静かに③
しおりを挟む「お話、あるんですよね?」
呑気にランチタイムを楽しんでいる場合ではありませんでした。
そう思って目の前に座る生徒会長さんに話を振ります。
「田中くん、今朝余程慌ててたんだね。部屋に生徒手帳を忘れていったんだよ。人の私物だから無闇に持ち歩くのも気が引けたんで、部屋に保管してある。夕食を食べ終わったら取りにきてもらえるかい?」
「生徒手帳、忘れてたんですね。お手数おかけします。分かりました、夕食後にお部屋に向かいますね」
部屋に寝かせてくれた事といい、忘れ物を保管してくれている事といい、生徒会長さんいい人過ぎやしませんか。
その内騙されちゃいますよ。
俺は改めて頭を下げます。寝かせてくれたお礼もきちんと言わなければ、と口を開きかけると生徒会長さんは更に話を続けました。
「もう一つ話があってね。田中くん、生徒会に所属する気はない?」
何を言われたのか理解が出来ませんでした。開きかけていた口を別の意味でポカンと開けてしまいました。
おっと、閉じなければ。
「…えぇと……それは何故ですか?」
この学園の生徒会は、人気投票で決まります。
生徒会長さんは3年生から。副会長さんは2年生からという枠はありますが、書記さん、会計さんはどの学年からでも人気の高い人が選ばれる仕組みです。
現在、生徒会のメンバーに欠員はいません。
ゲームが始まる夏頃に書記さんが辞めて欠員が出て、そこにゲームの主人公である天使くんが生徒会長さんにお誘いされてメンバーに加わるのです。
欠員のいない現在の生徒会にお誘いされる理由もなく、更に言うなら人気の欠片もない俺が入ったら当然他の生徒さんから反発や反感があるでしょう。
俺が不思議に思って見つめていると、生徒会長さんは更に言葉を続けました。
「現生徒会のメンバーに欠員はいないけどね、たった4人で運営するには流石に人員不足なんだよ。この学園は行事も多いし、その度に各学年から委員が選ばれるけどそれだけじゃ上手く回らない。生徒会も常に委員達の傍で指示を出せる訳じゃないしね。夏頃には外部組織を発足させるつもりで、今はそのメンバーを勧誘してる。各学年から2名ずつだ。その内の1人になってくれないかな、と思ってね」
成る程。所謂橋渡し役が必要なんですね。ようは雑用係。
どんな内容かは分かりませんが、納得はしました。
でも何故俺が選ばれるのでしょう?
「何故俺なんですか?」
「部屋が近いから、っていうのが理由かな。何かあった場合、その外部組織にすぐに指示が出せるからね」
確かに、生徒会長さんとはお隣さんです。そして、生徒会長さんのお隣さんは俺しかいません。
成る程、納得です。
生徒会長さんにはお世話になりましたし、雑用係くらい引き受けても構いません。
でも、ゲームにそんな設定あったかなぁ……。
俺が考え込んでいると、今まで大人しく……と言っても何故か俺を見つめながらお昼ご飯を食べていた春日井くんが生徒会長さんに質問を投げかけます。
「その外部組織、俺も入っちゃダメですか?」
「君は…春日井和馬くん、だよね?何故か聞いてもいいかい?」
春日井くんが何故立候補したのか気になったので、俺は彼を見つめます。
すると春日井くんは一度俺に視線を送り、いつものイケメンスマイルを披露してから生徒会長さんへと視線を戻しました。
なんですかね、今のイケメンスマイルのご披露は。
「………やりたいと思ったから」
間がありましたよ、間が。
何か考えがあっての事なんでしょうか。
とにかく、成績優秀な春日井くんが一緒なら安心して引き受けられそうです。
生徒会長さんが他にどんな生徒さんに声をかけてるか分かりませんが、恩返しの一環としてお手伝いするのも有りですね。
「生徒会長さん、そのお話俺もお受けします。春日井くんが一緒なら上手くお役に立てそうですから」
了承のお返事をさせてもらいます。
生徒会長さんから頂いたお話なので、否やはないでしょう。
さ、続きのジャムパンをお腹の虫に献上しましょうか。
生徒会長さんと春日井くんが無言で見つめ合ってますが気にしません。
ジャムパン美味しい。
次は不破先輩に頂いたクリームパンを食べましょう。
応援ありがとうございます!
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