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17、生徒会長・藤堂真一の心情

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部屋に戻る途中、前方をふらふらと歩く1人の生徒の姿が目に入った。
あの特徴の無い特徴は、隣の部屋の1年生の田中実だろう。

キャーキャーと野太い声で騒がなさそうな彼を隣の部屋に決めたのは、生徒会長の権限で容易かった。

実に静かに生活する彼は俺の安眠を妨害せず、朝や帰りに待ち伏せなどしない無害な存在。


そんな彼が何やら怪しい足取りで歩いている。
と、思ったら倒れ込みそうになったので咄嗟に抱き止めてしまった。

面倒な事にならないといいが……と、彼の様子を面倒臭そうに見つめたが。
どうやら余程眠かったのか、俺の事を布団だと勘違いしているようだ。

この俺を布団と思うなんてな…。
眠気に目も開いてない。
試しに抱き止めた腕に僅かばかり力を込めたら、幸せそうに笑っておやすみ、という始末。

本当に幸せそうに笑うものだから、つられて笑みを浮かべてしまった。
可愛らしく笑って俺にしがみついて眠る姿は安心しきっていて、思わず守ってやりたくなる。

よく見れば睫毛も長いし、綺麗な顔立ちだ。
俺に興味を抱かないのもいい。
何より、こんなに可愛らしく眠る姿は、今まで見たことが無い。

俺は興味を引かれてその寝顔をじっと見つめる。
起きる気配は無く、ここが廊下だという事実も忘れて見入ってしまいそうだ。

だが、ここはあくまで廊下。
このままでは彼が風邪を引いてしまうかもしれない。
何があったのか顔も傷だらけだし、このまま放っておくわけにもいかない。
幸か不幸か、彼の部屋は鍵が掛けられたままだ。
人様のカバンの中を漁る趣味は無いので、そのまま姫抱きで抱き上げ自分の部屋へと連れて行く。

決して疚しい気持ちを持っている訳では無いが、明日の朝、彼が起きたらどんな反応をするのか興味がある。


「ふふ…幸せ…」


可愛らしい寝言を呟き、俺の胸に頬を擦り寄せる様子はとても可愛らしい。

明日の朝がとても楽しみで仕方がない。
まぁ、その前に今夜はこのまま腕に抱いて寝顔をじっくりと堪能するが。

顔がニヤけるのを止められない俺は、自分の部屋へと彼を連れて入っていった。



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