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第2章 貴族編
第59話 カリバーン
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目の前に巨人がいる。
全身すべてを機械の鎧で覆っている、身長3メートルぐらいの、ゲームでしか見たことがない機械の巨人が。
数は3体。
ピートのゾンビやミズハの火事で、混乱中の基地内を収拾するため、事態の鎮圧に当たっているようだ。
――魂雷撃の試用を許可する! 正常な者は下がれ!
――司令、今使うと最前線で押しとどめている味方にも当たりますが?
――構わん。出力を抑えれば死にはせん。やれ。
「何か、しているように見えません?」
「猛烈に嫌な予感がする……ゾンビの群れから離れるぞ」
俺たちが群れから外れた瞬間、機械巨人の胸部が開いた。
バチバチという音を発しながら、光がそこに収束して行く。
「撃て!」
――バババババババババババ!
――ドオオオオオオォォォォンッ!
司令が号令を出した瞬間、レーザーのような雷撃が発射された。
雷撃は群れを直撃し、最前線で支える味方もろとも、生けるゾンビたちの動きを完全に止めた。
「よかった……事前に気づいて」
「ああ、本当にな。しかしなんつー威力だよ」
まるで、胸から雷そのものが発射されたように見えた。
あんなめちゃくちゃな兵器、地球にも存在していないぞ。
この世界の文明はどうなっているんだ?
「あんなもんまともに相手してられるか。このまま隠れて逃げ切るぞ」
「了解です。僕もあんなの殴りたくない」
透化七変化で空気に擬態しこっそり逃げる――はずだった。
「熱源反応! 司令、何かいます!」
「熱源反応を確認。人型……例の奴らだ! 攻撃開始!」
「了解! 攻撃を開始します!」
――ダダダダダダダダ!
――ブォン! ドッゴオオオォォォッ!
「な、何で僕たちの位置がわかるんですか!?」
「まさか……サーモグラフィーまで搭載してんのかよ!?」
「何ですそれ!?」
「周囲の熱を感知する装置だ! 見た目じゃなくて温度で見てるから、超正確に俺たちの位置がわかる!」
ミミックから奪ったこの能力、見た目だけしか誤魔化せない。
触られたら一発でバレるし、気配や音、体温なんかでも当然バレる。
感触や生命反応まで擬態することはできない。
「そ、そんなの反則でしょ!? なんとかしてくださいよカイトさん!」
「無茶言うな! 俺だってあんなファンタジー世界の概念無視した科学の産物、どうやって相手したらいいかわかんねーよ!」
――ドゴッ! ボゴォッ!
――ダダダダダダダダダダッ!
手に持った巨大槍での近接攻撃、手甲に装備した連発式魔力砲による遠距離攻撃が止まらない。
とうとう俺の擬態が解除された。
「追い詰めたぞ、ネズミども! さんざんやらかしてくれた貴様らに私からのプレゼントだ! 受け取るがいい……魂雷撃!」
――バババババババババババ!
――ドオオオオオオォォォォンッ!
「はーっはっは! ネズミはネズミらしく駆除されるがいい! ふははははははは! ……は?」
高笑いをして勝ち誇るイケメン司令官だったが、俺達の無事を確認してその笑いがやんだ。
危ないところだった……。
とっさに狙鞭蠍尾撃を繰り出して雷撃を受け止め、速攻で手を放して地面に逃がさなければ死んでいたかもしれない。
「貴様……どうやって助かった?」
「強いて言うなら科学かな? 小学生の理科知識」
「わけのわからないことを……ミズハはどうした?」
「向こうで安眠中だよ。永眠はしていないから安心しろ」
「安心? 帝国貴族たるこの私が、どうしてあんな下賤な者――しかも暗殺者などという卑しき存在の身を案じねばならんのだ?」
「どうしてって……仲間なんじゃないですか?」
「仲間? 私にとって仲間とは同じ組織の同士たちだけだ。大儀もなく、金銭でのみ動くあのような者はただの道具にすぎん」
使えるおもちゃが壊れただけだ。
司令官ははっきり言い捨てた。
典型的な『上に立つ者』だな。
ぶっ飛ばしても罪悪感は生まれなさそうだ。
「だがまあ、高い金を払って手に入れた道具だ。それを壊した報いを受けてもらおう」
巨大槍の切っ先を俺たちに向ける。
「古代ノイン王国の遺跡より発掘した知識で作り上げたこの機械鎧――カリバーンの性能実験に付き合ってもらう」
「……嫌だと言ったら?」
「言わせんさ。ネクタル……貴様らのお目当てのもの、その在りかを教えてやろう」
そう言って司令官は親指で自分の胸を叩く。
「ここだ。ここにある。ネクタルはな、カリバーンの動力なのだよ」
「は!?」
樹族秘伝のシロップ、その大元の原材料が燃料だって!?
甘いデザートづくりに使うんじゃないのか!?
「最も、あちらの2機に搭載しているのはネクタルではなくシロップだがな」
「お前ら……貴重な食い物をそんなくだらないものに……」
「カイトさん、どっちかっていうと食べ物じゃなくて薬です。霊薬ですよ、ネクタル」
シロップは食い物だろうが!
ホットケーキにかけて食うだろうが!
食い物以外の何物でもないだろうが!
「欲しいのだろう? 我々を倒せば奪えるぞ?」
巨大槍を構えて司令官は続ける。
「最も、そんな可能性は万に一つもないのだがな!」
槍を振りかぶりつつ、一気に距離を詰めてきた。
足裏にブーストでもあるのか、青白い光が見える。
残り2機もそれに合わせて、俺たちを左右から囲んだ。
完全に逃げ道を塞がれている。
「食らうがいいネズミども!」
頭上の槍を振り下ろす。
――ドッゴオオォォォッ!
地面が爆ぜて土煙が舞う。
土と一緒に舞い上がった、辺りに零れた水が顔に当たる。
生暖かい……?
「この……危ないじゃないですか!」
ピートが裏に回り込んで一撃を放つ。
「死酔拳一式、ゾンビの型――死咬!」
生身であればゾンビ化をを誘発する一撃だ。
攻撃は見事に背中に命中。
しかし――
「ふふ、今何かしたか?」
「効いてない!?」
「はははは! 馬鹿め! このカリバーンは鎧だぞ!? 打撃攻撃なぞ効くものかよ!」
「だったら魔法攻撃はどうだ?」
俺は頭に向けてファイアーボールを放った。
そして見事命中した――が、司令官は無傷のようだった。
「当然だが、対魔法術式も編み込んである。魔法なんぞ効くものか」
「じゃあそれを消せば魔法は効くようになるわけですね。スーちゃん!」
「ピィ!」
「何!? 誰だ!?」
司令官たちは完全に油断していた。
目の前の俺たちしか敵はいない。
いたところで無敵の機械鎧を着こんだ自分たちの相手になどならない。
そう思い込んでいた。
俺が擬態を解除したからといって、サーモグラフィーを解除しなければ気づけたのにな。
足元の水が水じゃなくて、スライムの一部だったってことに。
「う、うわーっ!?」
「司令! 助け――」
「どうした!? むっ!?」
完全な足元からの奇襲が決まり、司令官たちはスーちゃんの全身に飲み込まれた。
酸の抱擁――何でも溶かす、スライムの粘液で全身を包む大技だ。
「カイトさん、ピートさん、大丈夫ですか?」
「ああ、何とか」
「クレアさーん! 僕、死んじゃうかと思いましたよ! 安心したいので抱きしめていいですか?」
「ダメです……ってかお酒臭っ!? ピートさん、また飲んだんですか!?」
「……えへへ♪」
「えへへじゃないですよ、全くもう!」
お酒を辞めないピートにクレアが説教する。
今回は俺が飲ませたからあんま怒らないであげて欲しい。
「念のため保険をかけておいて良かったよ。サンキュー、クレア」
「全く、聞いた時は驚きましたよ。ギルドのスライムゼリー、スーちゃんに全部食べさせて追ってきてくれって言うから」
マトファミアを立つ前に、俺が彼女にお願いしたのはそういう内容だった。
もしもっ潜入が失敗して囚われてしまった場合、スーちゃんを巨大化させて牢屋ごと溶かして脱出するつもりだった。
スライムは透明だし、イブセブンは森林が多いので、スライムが大きくても見つかりにくい。
だから、いざという時の不意打ち役としても期待してお願いしておいたというわけだ。
そして、それが見事に成った。
「う、があああぁぁぁぁぁっ! こんなもの! 光の聖槍!」
――ボシュウウウゥゥゥッ!?
「嘘っ!? スーちゃんの酸の抱擁から抜け出した!?」
「ピィーッ!?」
巨大槍が光を放ち、スーちゃんの身体は一瞬で蒸発した。
もしもコア部分があそこにあったら、スーちゃんはこの世から消滅していただろう。
「女……ネズミのくせにやるではないか。このカリバーンの装甲をここまでボロボロにしてくれるとは…………絶対に許さんぞネズミどもオオオォォォッ!」
「許さないのはこっちも同じだクソ野郎。こんな物騒なもん動かすためだけに、樹族の人たちを苦しめやがって。ネクタルやシロップだって、本来の使い方されずに泣いてるぜ」
せっかくの甘い物なのに、それを使って作るものが、ケーキじゃなくて兵器だとか許しがたい。
料理人として言おう。
こいつは万死に値する!
食い物で遊ぶどころか、食い物を兵器にするとか絶対に許しちゃいけない。
「ネクタルよこして土下座しろ。そうすれば命だけは助けてやる」
「ネズミなぞに頭を下げるものか! みくびるな!」
俺に謝れって言ってんじゃねえ!
ネクタルに謝れって言ってんだよ!
食い物なのに、こんな使われ方してかかわいそうに……
「多少ダメージは負ったが、たかが3人と1匹程度でこのカリバーンをどうにかできると思っているのか?」
「ふーん、3人と1匹ね」
「なら、5人と1匹ではどうじゃ?」
――ザシッ!
――ドゴォンッ!
会話に集中している隙に、再び不意打ちが炸裂した。
こっそり背後から忍び寄っていたミーナによる一撃で背中部分が、
空に浮いていたアミカによる攻撃で兜が完全に破壊された。
司令官の本体が露になる。
「お前ら! 樹族の人たちは?」
「移送済み! だから来たの!」
「さすがに魔力切れ寸前じゃから派手な魔法は使えんがの」
でも、あいつを倒すくらいなら問題ない。
ミーナとアミカは自信満々にそう言った。
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
すいません、投稿遅れました。
次回ラストバトルです。
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。
作者のやる気に繋がりますので。
応援よろしくお願いします!
全身すべてを機械の鎧で覆っている、身長3メートルぐらいの、ゲームでしか見たことがない機械の巨人が。
数は3体。
ピートのゾンビやミズハの火事で、混乱中の基地内を収拾するため、事態の鎮圧に当たっているようだ。
――魂雷撃の試用を許可する! 正常な者は下がれ!
――司令、今使うと最前線で押しとどめている味方にも当たりますが?
――構わん。出力を抑えれば死にはせん。やれ。
「何か、しているように見えません?」
「猛烈に嫌な予感がする……ゾンビの群れから離れるぞ」
俺たちが群れから外れた瞬間、機械巨人の胸部が開いた。
バチバチという音を発しながら、光がそこに収束して行く。
「撃て!」
――バババババババババババ!
――ドオオオオオオォォォォンッ!
司令が号令を出した瞬間、レーザーのような雷撃が発射された。
雷撃は群れを直撃し、最前線で支える味方もろとも、生けるゾンビたちの動きを完全に止めた。
「よかった……事前に気づいて」
「ああ、本当にな。しかしなんつー威力だよ」
まるで、胸から雷そのものが発射されたように見えた。
あんなめちゃくちゃな兵器、地球にも存在していないぞ。
この世界の文明はどうなっているんだ?
「あんなもんまともに相手してられるか。このまま隠れて逃げ切るぞ」
「了解です。僕もあんなの殴りたくない」
透化七変化で空気に擬態しこっそり逃げる――はずだった。
「熱源反応! 司令、何かいます!」
「熱源反応を確認。人型……例の奴らだ! 攻撃開始!」
「了解! 攻撃を開始します!」
――ダダダダダダダダ!
――ブォン! ドッゴオオオォォォッ!
「な、何で僕たちの位置がわかるんですか!?」
「まさか……サーモグラフィーまで搭載してんのかよ!?」
「何ですそれ!?」
「周囲の熱を感知する装置だ! 見た目じゃなくて温度で見てるから、超正確に俺たちの位置がわかる!」
ミミックから奪ったこの能力、見た目だけしか誤魔化せない。
触られたら一発でバレるし、気配や音、体温なんかでも当然バレる。
感触や生命反応まで擬態することはできない。
「そ、そんなの反則でしょ!? なんとかしてくださいよカイトさん!」
「無茶言うな! 俺だってあんなファンタジー世界の概念無視した科学の産物、どうやって相手したらいいかわかんねーよ!」
――ドゴッ! ボゴォッ!
――ダダダダダダダダダダッ!
手に持った巨大槍での近接攻撃、手甲に装備した連発式魔力砲による遠距離攻撃が止まらない。
とうとう俺の擬態が解除された。
「追い詰めたぞ、ネズミども! さんざんやらかしてくれた貴様らに私からのプレゼントだ! 受け取るがいい……魂雷撃!」
――バババババババババババ!
――ドオオオオオオォォォォンッ!
「はーっはっは! ネズミはネズミらしく駆除されるがいい! ふははははははは! ……は?」
高笑いをして勝ち誇るイケメン司令官だったが、俺達の無事を確認してその笑いがやんだ。
危ないところだった……。
とっさに狙鞭蠍尾撃を繰り出して雷撃を受け止め、速攻で手を放して地面に逃がさなければ死んでいたかもしれない。
「貴様……どうやって助かった?」
「強いて言うなら科学かな? 小学生の理科知識」
「わけのわからないことを……ミズハはどうした?」
「向こうで安眠中だよ。永眠はしていないから安心しろ」
「安心? 帝国貴族たるこの私が、どうしてあんな下賤な者――しかも暗殺者などという卑しき存在の身を案じねばならんのだ?」
「どうしてって……仲間なんじゃないですか?」
「仲間? 私にとって仲間とは同じ組織の同士たちだけだ。大儀もなく、金銭でのみ動くあのような者はただの道具にすぎん」
使えるおもちゃが壊れただけだ。
司令官ははっきり言い捨てた。
典型的な『上に立つ者』だな。
ぶっ飛ばしても罪悪感は生まれなさそうだ。
「だがまあ、高い金を払って手に入れた道具だ。それを壊した報いを受けてもらおう」
巨大槍の切っ先を俺たちに向ける。
「古代ノイン王国の遺跡より発掘した知識で作り上げたこの機械鎧――カリバーンの性能実験に付き合ってもらう」
「……嫌だと言ったら?」
「言わせんさ。ネクタル……貴様らのお目当てのもの、その在りかを教えてやろう」
そう言って司令官は親指で自分の胸を叩く。
「ここだ。ここにある。ネクタルはな、カリバーンの動力なのだよ」
「は!?」
樹族秘伝のシロップ、その大元の原材料が燃料だって!?
甘いデザートづくりに使うんじゃないのか!?
「最も、あちらの2機に搭載しているのはネクタルではなくシロップだがな」
「お前ら……貴重な食い物をそんなくだらないものに……」
「カイトさん、どっちかっていうと食べ物じゃなくて薬です。霊薬ですよ、ネクタル」
シロップは食い物だろうが!
ホットケーキにかけて食うだろうが!
食い物以外の何物でもないだろうが!
「欲しいのだろう? 我々を倒せば奪えるぞ?」
巨大槍を構えて司令官は続ける。
「最も、そんな可能性は万に一つもないのだがな!」
槍を振りかぶりつつ、一気に距離を詰めてきた。
足裏にブーストでもあるのか、青白い光が見える。
残り2機もそれに合わせて、俺たちを左右から囲んだ。
完全に逃げ道を塞がれている。
「食らうがいいネズミども!」
頭上の槍を振り下ろす。
――ドッゴオオォォォッ!
地面が爆ぜて土煙が舞う。
土と一緒に舞い上がった、辺りに零れた水が顔に当たる。
生暖かい……?
「この……危ないじゃないですか!」
ピートが裏に回り込んで一撃を放つ。
「死酔拳一式、ゾンビの型――死咬!」
生身であればゾンビ化をを誘発する一撃だ。
攻撃は見事に背中に命中。
しかし――
「ふふ、今何かしたか?」
「効いてない!?」
「はははは! 馬鹿め! このカリバーンは鎧だぞ!? 打撃攻撃なぞ効くものかよ!」
「だったら魔法攻撃はどうだ?」
俺は頭に向けてファイアーボールを放った。
そして見事命中した――が、司令官は無傷のようだった。
「当然だが、対魔法術式も編み込んである。魔法なんぞ効くものか」
「じゃあそれを消せば魔法は効くようになるわけですね。スーちゃん!」
「ピィ!」
「何!? 誰だ!?」
司令官たちは完全に油断していた。
目の前の俺たちしか敵はいない。
いたところで無敵の機械鎧を着こんだ自分たちの相手になどならない。
そう思い込んでいた。
俺が擬態を解除したからといって、サーモグラフィーを解除しなければ気づけたのにな。
足元の水が水じゃなくて、スライムの一部だったってことに。
「う、うわーっ!?」
「司令! 助け――」
「どうした!? むっ!?」
完全な足元からの奇襲が決まり、司令官たちはスーちゃんの全身に飲み込まれた。
酸の抱擁――何でも溶かす、スライムの粘液で全身を包む大技だ。
「カイトさん、ピートさん、大丈夫ですか?」
「ああ、何とか」
「クレアさーん! 僕、死んじゃうかと思いましたよ! 安心したいので抱きしめていいですか?」
「ダメです……ってかお酒臭っ!? ピートさん、また飲んだんですか!?」
「……えへへ♪」
「えへへじゃないですよ、全くもう!」
お酒を辞めないピートにクレアが説教する。
今回は俺が飲ませたからあんま怒らないであげて欲しい。
「念のため保険をかけておいて良かったよ。サンキュー、クレア」
「全く、聞いた時は驚きましたよ。ギルドのスライムゼリー、スーちゃんに全部食べさせて追ってきてくれって言うから」
マトファミアを立つ前に、俺が彼女にお願いしたのはそういう内容だった。
もしもっ潜入が失敗して囚われてしまった場合、スーちゃんを巨大化させて牢屋ごと溶かして脱出するつもりだった。
スライムは透明だし、イブセブンは森林が多いので、スライムが大きくても見つかりにくい。
だから、いざという時の不意打ち役としても期待してお願いしておいたというわけだ。
そして、それが見事に成った。
「う、があああぁぁぁぁぁっ! こんなもの! 光の聖槍!」
――ボシュウウウゥゥゥッ!?
「嘘っ!? スーちゃんの酸の抱擁から抜け出した!?」
「ピィーッ!?」
巨大槍が光を放ち、スーちゃんの身体は一瞬で蒸発した。
もしもコア部分があそこにあったら、スーちゃんはこの世から消滅していただろう。
「女……ネズミのくせにやるではないか。このカリバーンの装甲をここまでボロボロにしてくれるとは…………絶対に許さんぞネズミどもオオオォォォッ!」
「許さないのはこっちも同じだクソ野郎。こんな物騒なもん動かすためだけに、樹族の人たちを苦しめやがって。ネクタルやシロップだって、本来の使い方されずに泣いてるぜ」
せっかくの甘い物なのに、それを使って作るものが、ケーキじゃなくて兵器だとか許しがたい。
料理人として言おう。
こいつは万死に値する!
食い物で遊ぶどころか、食い物を兵器にするとか絶対に許しちゃいけない。
「ネクタルよこして土下座しろ。そうすれば命だけは助けてやる」
「ネズミなぞに頭を下げるものか! みくびるな!」
俺に謝れって言ってんじゃねえ!
ネクタルに謝れって言ってんだよ!
食い物なのに、こんな使われ方してかかわいそうに……
「多少ダメージは負ったが、たかが3人と1匹程度でこのカリバーンをどうにかできると思っているのか?」
「ふーん、3人と1匹ね」
「なら、5人と1匹ではどうじゃ?」
――ザシッ!
――ドゴォンッ!
会話に集中している隙に、再び不意打ちが炸裂した。
こっそり背後から忍び寄っていたミーナによる一撃で背中部分が、
空に浮いていたアミカによる攻撃で兜が完全に破壊された。
司令官の本体が露になる。
「お前ら! 樹族の人たちは?」
「移送済み! だから来たの!」
「さすがに魔力切れ寸前じゃから派手な魔法は使えんがの」
でも、あいつを倒すくらいなら問題ない。
ミーナとアミカは自信満々にそう言った。
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
すいません、投稿遅れました。
次回ラストバトルです。
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。
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