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第19話 キズナの不安
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キズナのタブレットには、太陽と真奈が身を寄せ合って勉強をしている姿が映し出されていた。
真奈が質問し、それを太陽が的確に答える。
時折変な語呂あわせを用た独特の勉強法を交えて。
真奈がクスリと笑った。
どうやら太陽のセンスは彼女に通用するらしい。
彼女が楽しそうに微笑む様子に連動して、好感度が上昇していくのが確認できる。
これなら安心だ。太陽の運命も安定している。
この調子でいけば、無事バグの修正は完了するはずだ。
唯一気になるのは、2人の運命の状態だが。
お互いの運命が複雑怪奇に絡まり合い、見たこともない形状をしている。
運命的にものすごく丈夫そうに見えるので、フラグが壊れるという事態は発生しなさそうだが……大丈夫なのだろうか?
様子を見守るキズナの頭に、一抹の不安がよぎる。
『そう……その調子だよ太陽。なるべく彼女から頼りにされる喜びは表には出さないように。真剣にいい人を演じるんだ』
太陽に巣食ったバグはレベル4――最強最悪のバグ。
何が起こるかわからない。
故に――少しの油断も許されない。
キズナは別ウィンドウを開き、過去のレベル4案件のデータを洗い出す。
過去、同じような形状に、運命が絡まり合ったケースはないだろうか?
それがあったとして、どういう事態が起こったのか?
「ねえ、茂手くん。ここの式なんだけど……」
「ああ、これは……」
太陽は真奈への的確な対応を続けている。
質問の答えにつまづくこともなく彼女に頭の良さを、面白い人をアピールし、着実に好感度を稼いでいる。
さながらシューティングゲームのスコアのように。
しかし……好感度が上がると同時に、二人の運命もまた深く絡まり合ってゆく。
まるで、大蛇同士のまぐわいのようだ。
キズナにはそれに不安でならない。
、
(何だろう……すっごく嫌な予感がする。すごく……熱くて、冷たい、背中からお腹に特大の熱湯で作られた鋭い氷柱で貫かれたような……。こんな……こんなこと、今まで仕事中に感じたことない。一体、何なの、この嫌な感じは……)
無事にイベント進行する2人見ても気分が晴れない。
初めてのレベル4案件だということで、必要以上に不安になっているのだろうか?
「次、ん……と、ここなんだけど……」
「ああ、これは――って覚えると覚えやすいぜ」
「へぇ……太よ――茂手くんはそうやって覚えているんだ」
真奈の好感度がさらに上がった。
すでに太陽を名前呼びするかしないかまでに至り始めている。
全ては順調……そう、順調なんだ。
急速に距離を詰める二人を見て、自分にそう言い聞かせるキズナ。
しかし、彼女の心中は晴れないままだった。
絡まり合う二人の運命は怪しく蠢きつつ――太陽のラブコメは進んでゆく。
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
キズナ視点の話その2。
裏では何かありそうな気配ビンビンですね。
まだラブコメは続きますがその後は……ヒッヒッヒ。
真奈が質問し、それを太陽が的確に答える。
時折変な語呂あわせを用た独特の勉強法を交えて。
真奈がクスリと笑った。
どうやら太陽のセンスは彼女に通用するらしい。
彼女が楽しそうに微笑む様子に連動して、好感度が上昇していくのが確認できる。
これなら安心だ。太陽の運命も安定している。
この調子でいけば、無事バグの修正は完了するはずだ。
唯一気になるのは、2人の運命の状態だが。
お互いの運命が複雑怪奇に絡まり合い、見たこともない形状をしている。
運命的にものすごく丈夫そうに見えるので、フラグが壊れるという事態は発生しなさそうだが……大丈夫なのだろうか?
様子を見守るキズナの頭に、一抹の不安がよぎる。
『そう……その調子だよ太陽。なるべく彼女から頼りにされる喜びは表には出さないように。真剣にいい人を演じるんだ』
太陽に巣食ったバグはレベル4――最強最悪のバグ。
何が起こるかわからない。
故に――少しの油断も許されない。
キズナは別ウィンドウを開き、過去のレベル4案件のデータを洗い出す。
過去、同じような形状に、運命が絡まり合ったケースはないだろうか?
それがあったとして、どういう事態が起こったのか?
「ねえ、茂手くん。ここの式なんだけど……」
「ああ、これは……」
太陽は真奈への的確な対応を続けている。
質問の答えにつまづくこともなく彼女に頭の良さを、面白い人をアピールし、着実に好感度を稼いでいる。
さながらシューティングゲームのスコアのように。
しかし……好感度が上がると同時に、二人の運命もまた深く絡まり合ってゆく。
まるで、大蛇同士のまぐわいのようだ。
キズナにはそれに不安でならない。
、
(何だろう……すっごく嫌な予感がする。すごく……熱くて、冷たい、背中からお腹に特大の熱湯で作られた鋭い氷柱で貫かれたような……。こんな……こんなこと、今まで仕事中に感じたことない。一体、何なの、この嫌な感じは……)
無事にイベント進行する2人見ても気分が晴れない。
初めてのレベル4案件だということで、必要以上に不安になっているのだろうか?
「次、ん……と、ここなんだけど……」
「ああ、これは――って覚えると覚えやすいぜ」
「へぇ……太よ――茂手くんはそうやって覚えているんだ」
真奈の好感度がさらに上がった。
すでに太陽を名前呼びするかしないかまでに至り始めている。
全ては順調……そう、順調なんだ。
急速に距離を詰める二人を見て、自分にそう言い聞かせるキズナ。
しかし、彼女の心中は晴れないままだった。
絡まり合う二人の運命は怪しく蠢きつつ――太陽のラブコメは進んでゆく。
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《あとがき》
キズナ視点の話その2。
裏では何かありそうな気配ビンビンですね。
まだラブコメは続きますがその後は……ヒッヒッヒ。
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