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第8話 一つのハッピーエンド
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――オォ~♪ 花子~♪
――オォ~♪ 花子~♪
――忙し~ィ~♪ 時で~も~♪ どんな~と~き~も~♪
――常~日頃~♪ きみィ~だけを~♪ 想ォ~って~いたけ~ど♪
――会えず~に~ィ♪ 悲し~みィ~♪ 募る~のなら~ば~♪
――好きィ~だから~♪ 今日~ここでェ~♪ 別~れを~告げよう~♪
――嫌で~すゥ~♪ それで~もォ~♪ 愛し~てる~か~ら~♪
――ねぇ~あつし~♪ おね~がいよ~♪ 貴方~と~い~た~い~♪
――待ァ~てるわ~♪ あな~たから~♪ 勇~気ィ~出して~♪
――結婚ダァ~♪
☆
「ま、マジでミュージカル風にプロポーズしやがった……」
日本の片隅の公園で壮大なミュージカルっぽい何かが繰り広げられている。
傍で見ている、俺以外の何も知らないギャラリーは、このミュージカル風プロポーズを何かの舞台の練習かと思ってスタンディングオベーション。
踊りながら歌ってプロポーズをした2人に向けて惜しみない拍手を送り続けている。
「どうかな太陽クン? モテホンの効果は?」
「正直ここまでとは思わなかった。ミュージカルの完成度高けーな。普通にブロードウェイで通用するぞ」
彼女さんはどうだか知らないけど、先生に演劇経験があるなんて聞いたことがない。
また、先生は結構な音痴なのだ。
塚本と一緒にカラオケを奢ってもらったことがあるので知っている。
それなのに見事なバリトンボイスで、踊りながら超ハイレベルに歌いきるとか信じられない。
天使の道具は、本人の才能や資質さえも凌駕するのか。
「これは、さすがに信じないわけにはいかないな。天使とかいうトンデモ存在を」
「何? まだ信じていなかったの? 不思議なものはたくさん見せたでしょ?」
「いや、ワンチャン米軍あたりが開発できそうなテイストだったから。天使のフリした特殊部隊かと」
「その特殊部隊は何をどうしてきみに接触するのさ?」
「まあ、それはそうなんだけどな」
わざわざ米軍が特殊部隊を使って、俺に接触する理由なんてない。
漫画やラノベじゃないんだから、普通の高校生が米軍の作戦に巻き込まれてたまるか。
「太陽、コレ見てくれる?」
「はいよー、どれどれ?」
未だに2人で踊り続けている先生たちを見ている最中、キズナに声をかけられた。
キズナは持っていたタブレットを俺に渡す。
「リアルタイムに運命が更新されているところを見せてあげる。どう?」
「ものすごい勢いで修正されているな。『別れる』とか『さよなら』とかが、『好き』とか『愛してる』に変わっていく」
「2人の幸せが破局の運命を変えたんだ。リアルタイムで幸せ充電されているから、どんどん先の未来まで更新されているよ」
「本当だ。えーと、子どもは4人か。先生喜ぶだろうなあ。子ども大好きな人だから」
「そんな人が修正前は一生独身だったんだよ。修正してあげてよかったね」
「ああ、本当によかった。ん? なになに? 一人目は告白から半年後……この直後に盛り上がってホテルで……」
「おぉーっと! そこから先は読んじゃダメです。プライベートですから! 閲覧禁止!」
キズナが慌て気味に俺からタブレットを引っ手繰った。
そうか、先生……これから今夜キメるのか。
お幸せに。
――HAPPY END――
――運命の確定を確認――
「あ、ちゃんと確定したみたいだね。よかったよかった」
「今のメッセージが出たら、運命が確定したって証拠なのか?」
「そういうこと。これが出ない間はリアルタイムで処理しているから油断は禁物かな?」
「本当に確定なのか? 後々離婚したりは? ほら、結婚する前と後で気持ちが変化するって言うじゃん?」
「運命は流動しているなら普通はそうなる可能性もあるけど、確定させちゃったからそうならないよ」
天使の道具によって決定した運命は覆らない。
因果地平の彼方まで、確定した運命については、全て幸せに彩られる。
自信満々にキズナは言った。
「仕事とか人間関係においては、そりゃあ嫌なこともあるだろうけどさ、夫婦関係についてはもう幸せ一択だよ」
「本当に? 絶対に? 何があっても?」
「もう、しつこいなあ! 絶対そうなるって言って………………あ」
「おい、何だ。今の『あ』は?」
「あはは……え、えーとね」
俺のツッコミにキズナが固まった。
先ほどまでの様子とは違い、しどろもどろ気味である。
「たった今、道具で書き換えた運命は絶対そうなるって言ったけど……」
「けど?」
「超低確率でそうならない可能性もあったり」
「それって確率で言うと?」
「0.01%」
「なんだそんなもんか」
ちょっと心配して損したわ。
『絶対」ではないけど、そんなのほぼ100%じゃん」
実質的な0%だな。
変わりようがない。
「0.01%って、実際に起きたことあるのか?」
「わからない。少なくともボクは聞いたことないけど」
「なら大丈夫だ。誤差の範囲だよ」
「うん、まあ……そうだよね」
なんか安心した。
これで安心して本番に臨めるというものだ。
「さ、実験も無事終わったし、そろそろ行こうぜ」
「……そうだね!」
「ところでキズナはどこで泊まるんだ? 送って行くよ」
「太陽の家に泊めてくれない? 人間界のお金、支給されないんだよ」
おいおい……。
異性の天使送るなら金くらい用意しろよ天界。
対象者と天使の間に、なんかあったらどう責任取るんだ?
天使が堕天使になりかねんぞ。
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
ここまでで起承転結の起の部分が終了です。
次回から太陽の彼女作りを中心に物語が転がります。
――オォ~♪ 花子~♪
――忙し~ィ~♪ 時で~も~♪ どんな~と~き~も~♪
――常~日頃~♪ きみィ~だけを~♪ 想ォ~って~いたけ~ど♪
――会えず~に~ィ♪ 悲し~みィ~♪ 募る~のなら~ば~♪
――好きィ~だから~♪ 今日~ここでェ~♪ 別~れを~告げよう~♪
――嫌で~すゥ~♪ それで~もォ~♪ 愛し~てる~か~ら~♪
――ねぇ~あつし~♪ おね~がいよ~♪ 貴方~と~い~た~い~♪
――待ァ~てるわ~♪ あな~たから~♪ 勇~気ィ~出して~♪
――結婚ダァ~♪
☆
「ま、マジでミュージカル風にプロポーズしやがった……」
日本の片隅の公園で壮大なミュージカルっぽい何かが繰り広げられている。
傍で見ている、俺以外の何も知らないギャラリーは、このミュージカル風プロポーズを何かの舞台の練習かと思ってスタンディングオベーション。
踊りながら歌ってプロポーズをした2人に向けて惜しみない拍手を送り続けている。
「どうかな太陽クン? モテホンの効果は?」
「正直ここまでとは思わなかった。ミュージカルの完成度高けーな。普通にブロードウェイで通用するぞ」
彼女さんはどうだか知らないけど、先生に演劇経験があるなんて聞いたことがない。
また、先生は結構な音痴なのだ。
塚本と一緒にカラオケを奢ってもらったことがあるので知っている。
それなのに見事なバリトンボイスで、踊りながら超ハイレベルに歌いきるとか信じられない。
天使の道具は、本人の才能や資質さえも凌駕するのか。
「これは、さすがに信じないわけにはいかないな。天使とかいうトンデモ存在を」
「何? まだ信じていなかったの? 不思議なものはたくさん見せたでしょ?」
「いや、ワンチャン米軍あたりが開発できそうなテイストだったから。天使のフリした特殊部隊かと」
「その特殊部隊は何をどうしてきみに接触するのさ?」
「まあ、それはそうなんだけどな」
わざわざ米軍が特殊部隊を使って、俺に接触する理由なんてない。
漫画やラノベじゃないんだから、普通の高校生が米軍の作戦に巻き込まれてたまるか。
「太陽、コレ見てくれる?」
「はいよー、どれどれ?」
未だに2人で踊り続けている先生たちを見ている最中、キズナに声をかけられた。
キズナは持っていたタブレットを俺に渡す。
「リアルタイムに運命が更新されているところを見せてあげる。どう?」
「ものすごい勢いで修正されているな。『別れる』とか『さよなら』とかが、『好き』とか『愛してる』に変わっていく」
「2人の幸せが破局の運命を変えたんだ。リアルタイムで幸せ充電されているから、どんどん先の未来まで更新されているよ」
「本当だ。えーと、子どもは4人か。先生喜ぶだろうなあ。子ども大好きな人だから」
「そんな人が修正前は一生独身だったんだよ。修正してあげてよかったね」
「ああ、本当によかった。ん? なになに? 一人目は告白から半年後……この直後に盛り上がってホテルで……」
「おぉーっと! そこから先は読んじゃダメです。プライベートですから! 閲覧禁止!」
キズナが慌て気味に俺からタブレットを引っ手繰った。
そうか、先生……これから今夜キメるのか。
お幸せに。
――HAPPY END――
――運命の確定を確認――
「あ、ちゃんと確定したみたいだね。よかったよかった」
「今のメッセージが出たら、運命が確定したって証拠なのか?」
「そういうこと。これが出ない間はリアルタイムで処理しているから油断は禁物かな?」
「本当に確定なのか? 後々離婚したりは? ほら、結婚する前と後で気持ちが変化するって言うじゃん?」
「運命は流動しているなら普通はそうなる可能性もあるけど、確定させちゃったからそうならないよ」
天使の道具によって決定した運命は覆らない。
因果地平の彼方まで、確定した運命については、全て幸せに彩られる。
自信満々にキズナは言った。
「仕事とか人間関係においては、そりゃあ嫌なこともあるだろうけどさ、夫婦関係についてはもう幸せ一択だよ」
「本当に? 絶対に? 何があっても?」
「もう、しつこいなあ! 絶対そうなるって言って………………あ」
「おい、何だ。今の『あ』は?」
「あはは……え、えーとね」
俺のツッコミにキズナが固まった。
先ほどまでの様子とは違い、しどろもどろ気味である。
「たった今、道具で書き換えた運命は絶対そうなるって言ったけど……」
「けど?」
「超低確率でそうならない可能性もあったり」
「それって確率で言うと?」
「0.01%」
「なんだそんなもんか」
ちょっと心配して損したわ。
『絶対」ではないけど、そんなのほぼ100%じゃん」
実質的な0%だな。
変わりようがない。
「0.01%って、実際に起きたことあるのか?」
「わからない。少なくともボクは聞いたことないけど」
「なら大丈夫だ。誤差の範囲だよ」
「うん、まあ……そうだよね」
なんか安心した。
これで安心して本番に臨めるというものだ。
「さ、実験も無事終わったし、そろそろ行こうぜ」
「……そうだね!」
「ところでキズナはどこで泊まるんだ? 送って行くよ」
「太陽の家に泊めてくれない? 人間界のお金、支給されないんだよ」
おいおい……。
異性の天使送るなら金くらい用意しろよ天界。
対象者と天使の間に、なんかあったらどう責任取るんだ?
天使が堕天使になりかねんぞ。
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《あとがき》
ここまでで起承転結の起の部分が終了です。
次回から太陽の彼女作りを中心に物語が転がります。
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