6 / 37
第4話 とある天使の存在証明
しおりを挟む
「え? ちょ……八舞さん、俺の腰を見て!」
俺はキズナがしがみついているところを指さしながら、彼女にそう訴える。
しかし、彼女は怪訝な顔をしながら首をかしげただけだった。
「腰が、どうかしたの?」
「どうかしたのって……明らかにどうかしてるじゃないか。具体的に言うとしがみついてるこの女の頭が」
「あーっ! また言った! そんなこと言うヤツはこうしてやる! ていっ!」
「うおっ!?」
俺の腕を取ったキズナは蛇のように絡まりつきポジション変更。
良い感じのふとももで、今度は俺の腕を挟み込み、両腕を使って胸元で極める。
いわゆる飛びつき腕ひしぎ十字固めである。
女の子とはいえ全体重をかけて、曲がらない方向に腕を極められているからめっちゃ痛い。おまけに重い。
俺は彼女を支えきれず、思わずその場で膝をついた。
「痛てててててっ!? おいバカ! いい加減放せ!」
「イヤだよ! 外してほしかったら電波女って言ったことを取り消せ!」
「わかった! わかったから! 俺が悪かったから! 取り消すからさっさと放せよ!」
「ふんっ、次言ったらまたこうだからね。よく覚えておきなよ」
もう二度と会わないだろうし、誰が覚えておくかっての。
俺は膝をパンパンと払うと、八舞さんにこっそりと耳打ちする。
「……ほら、明らかにどうかしてるだろ? コレ。会ったばかりの男に難易度の高い関節技を極めるばかりか、自分のことを天使とか言うんだぜ?」
腕を組んでふんぞり返っているキズナを指さしながら、八舞さんにそう説明する。
たわわに育った胸が腕に乗っかり、男子的に絶景ではあるが、これ以上関わりたいとは思わない。
「服を見てわかると思うけど、明らかにウチの生徒じゃないし、警備員の人を呼んできてもらえないかな? もしくは精神科やってる病院に連絡でもいい。俺がなるべく時間を稼ぐか――」
「あの、茂手くん。さっきから何を言っているの?」
「何って……この変な女についてだけど」
「やれやれ、太陽は物覚えが悪いようだね?」
「電波とは言っていないだろ!」
「同じことだよ! 覚悟しろ!」
じりじりとキズナが近づいてくる。
「ほら、こいつだよこいつ! この変な女に絡まれて困ってるんだよ!」
「どこにいるの? その、変な女って」
「……………………は?」
どこって……目の前にいるじゃないか。
背中を丸めながら、じりじりと距離を詰めてタックルの機会を狙っている、おっぱいの大きな変な銀髪女がそこに――。
「誰も、いないわよね? そこ」
「え……ちょっと待ってくれよ八舞さん。……冗談だろ? 自己主張の激しい(特に一部)変で騒がしい女が目の前にいるだろ?」
この俺の言葉に、彼女は首を横に振った。
「無駄だよ。ボクの姿、きみ以外に見えていないから。特殊なシールド張っているし、天界製のアイテムを触って、脳が覚醒しない限り、普通の人間は天使の姿を見ることができないんだ」
だからさっきのボクとのやり取り、全部一人芝居に見えていたんじゃないかな?――とキズナ。
……そんな、嘘だろ?
そんな俺の心の声をあざ笑うかのようなリアクションが、八舞さんからもたらされる。
「えーと、私には何も見えないんだけど……もしかしてさっきまでのはお芝居なのかな? 演劇部のお友達に頼まれて練習していた、とか?」
そん……な、馬鹿な……。
オレは今自分の目の前で起きていることが信じられなかった。
自分にははっきりと見えているのに、八舞さんには見えていない。
「ああ、だから誰もいない教室で練習していたのね。お芝居って、他人に見られるの恥ずかしいもん。慣れないうちは特に」
「あ、ああ……実はそうなんだよ。急に出てくれって頼まれちゃってさ。どうだった? 俺の演技」
「ものすごく上手だったわ。まるで本当に誰かがそこにいるみたいで。茂手くん絶対演技の才能あるわよ」
「は、はは……そりゃどうも…………」
乾いた笑みしか出てこない。
「助っ人じゃなくて、本気で演劇部に入ったらどう? もしかしたら俳優への道が開けるかも!」
「……考えておくよ」
「ええ、是非そうしてみて。それじゃあ茂手くん、また明日ね」
そう言って彼女はフェードアウト。
夕暮れの校舎に足音が響き、やがて消えた。
「ね、言ったとおりだったでしょ?」
「この科学万能の時代にそんな……そんなファンタジーな存在を認めろっていうのかよ?」
「科学だって万能じゃないでしょ? 人類が今確認している物質って、宇宙規模で見たらわずか4パーセントにすぎないんだよ? この世界のことを1割もわかっていないのに、ファンタジーな存在を否定するのは早すぎると思わない?」
「た、たしかにお前の言っていることは筋が通っているし、彼女がお前の存在を認識できなかったのは事実だけど……こんな異常なことを、そうそう簡単に認めろって言われても……」
「あったま固いなあ。じゃあ詳しく説明してあげるから外行こう」
「お、おう……頼む」
外の風に当たれば、この混乱も多少はスッキリするかもしれない。
「じゃあボクは先に行くから」
突然キズナが窓を開けると、その窓枠によじ登り――そこから飛び降りた。
「馬鹿っ!? お前ここ3階だぞ!?」
俺は身を乗り出し、キズナの無事を確認する。
、
「言ったでしょ? ボク天使だって。翼だってあるから空くらい飛べるってば」
宙に浮いたキズナがそこにいた。
ご丁寧に純白の翼と、天使の輪っかも生やしている。
「さっきまでなかっただろ。心臓に悪いわ……勘弁してくれよ」
「えへへ、電波女って言ったお返しだよっ」
……
…………
………………
午後6時20分――、
どうやら本物の天使っぽいキズナと俺は学校を出て、駅前近くにある公園のベンチに座った。
カップルが集まると有名な公園だ。
「お前が天使だっていうのはわかった。確かに他の人には見えていなかったようだし、その背中の翼と頭のリングもそれっぽい。俺の頭が固かったことは認めよう」
「お、やっと認めてくれた。先輩から聞いていたけど、自分のターゲットに存在をきちんと認識させるのってこんなに大変なんだね」
「そりゃあほとんどの人はリアルに生きているからな。ファンタジーな存在が突然現れて、漫画やラノベみたいに存在を主張したところで、そいつの脳を普通疑う。黄色い救急車の手配を始める」
「そんなリアルに生きている太陽は、何で存在を認識した今でもこっちを見ないのかな? もしや……ボクに惚れちゃった?」
「どんな考え方をしたらそんな結論に至れるのか俺には全く理解できんが、それは違うと言っておこうか」
「じゃあ何でこっちを見ないのさ?」
「他の人には見えてないんだろ? それなのにそっちをガン見して話してたら、俺がアブナイ人に見られちゃうじゃねえか」
そう、俺は横のキズナを見ておらず、自分のスマホを耳に当て、誰かと話しているフリをしている。
こうすれば自然と風景に溶け込めるからだ。
「話しているのに無視されているみたいで感じ悪いなあ。なんなら翼とリングしまってステルス解除してあげようか?」
「止めてくれ。こんな学校の近くで女の子と二人っきりとか、誰かの目に絶対留まる」
高校生なんて身近な人物の恋愛系ゴシップが大好きだからな。
たとえ俺の顔がわからない奴が目撃しても、目撃証言を元に俺と同じような非リア充が自主的に捜査を始め、犯人を見つけ出す。
そうなれば終わりだ。
近い将来勇気がチャージされて八舞さんに告白できたとしても、それを理由に100パー『ごめんなさい』される。
現代を生きる高校生の生態をキズナに説明すると、キズナはどこからともなくタブレット(っぽいもの)を取り出して何かを調べ始めた。
「うーん、データを参照させてもらったけど、もしそうなってもそれを理由に『ごめんなさい』にはならないみたいだよ? 『茂手くんっていい人なんだけど……友達以上には思えないの』だってさ」
「何でそんなことが言い切れるの!? っていうかお前そのタブレットみたいなの今どこから出した?」
「ここからだけど?」
キズナは頭に浮かべているリングを手に取ると、その中に腕を突っ込んだ。
おかしい。リングには穴が開いているはずなのに突っ込んだ手が見えない。
そのままキズナはシュッシュと、リングの穴に自分の手を出したり入れたりを繰り返し、「ここから取り出したんだよ」ということを俺にアピールする。
「天使のリングの穴って、四次元空間への入り口なんだ。しかもこのリングって伸縮自在だからどんなに大きなものでも中に入れられるんだよ。すっごい便利でしょ」
確かに便利だ。
どことなく国民的人気アニメの青い猫型ロボットを彷彿とさせる。
「どこから取り出したのかはわかった。だからもういい。それよりさっきのお前のセリフ! 俺が八舞さんに告ったら『友達以上には思えない』って断られるなんて、どうしてわかるんだよ!?」
「わかるんだよなあ、これがあるから」
そう言ってキズナは、タブレットの画面を俺に見せる。
「何だよこれ? 片方が俺の名前で、もう片方が……八舞さんの名前が出ているけど」
「えっとね、ボクが持っているこれは《Little Oath Viewer typeE》、通称《LOVE》っていう、人界で言うタブレットみたいなモンなんだけど。この中に入っているアプリケーションソフトに《ザ・ネクサス》っていうのがあるのね。あ、《ネクサス》って意味は……」
「《絆》、だろ?」
「うん、そう。ボクの名前と同じ」
説明する手間が省けたのが嬉しいのか、キズナは俺に向かって微笑むとLOVEを操作し、
今言ったネクサスというアプリケーションを起動してみせる。
「このネクサスは世界中の人類のアカシックレコード――運命を閲覧できるアプリケーションなんだ。使い方は至ってシンプル、検索画面で運命を調べたい相手の名前を入力してパネルを押すだけ」
そう言いながら、淡々と俺の名前を打ち込んでいくキズナ。
「さっきボクはこれできみの運命を見たから、あのセリフでフられるって断言できたんだよ」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
運命がわかるって残酷ですよね。
俺はキズナがしがみついているところを指さしながら、彼女にそう訴える。
しかし、彼女は怪訝な顔をしながら首をかしげただけだった。
「腰が、どうかしたの?」
「どうかしたのって……明らかにどうかしてるじゃないか。具体的に言うとしがみついてるこの女の頭が」
「あーっ! また言った! そんなこと言うヤツはこうしてやる! ていっ!」
「うおっ!?」
俺の腕を取ったキズナは蛇のように絡まりつきポジション変更。
良い感じのふとももで、今度は俺の腕を挟み込み、両腕を使って胸元で極める。
いわゆる飛びつき腕ひしぎ十字固めである。
女の子とはいえ全体重をかけて、曲がらない方向に腕を極められているからめっちゃ痛い。おまけに重い。
俺は彼女を支えきれず、思わずその場で膝をついた。
「痛てててててっ!? おいバカ! いい加減放せ!」
「イヤだよ! 外してほしかったら電波女って言ったことを取り消せ!」
「わかった! わかったから! 俺が悪かったから! 取り消すからさっさと放せよ!」
「ふんっ、次言ったらまたこうだからね。よく覚えておきなよ」
もう二度と会わないだろうし、誰が覚えておくかっての。
俺は膝をパンパンと払うと、八舞さんにこっそりと耳打ちする。
「……ほら、明らかにどうかしてるだろ? コレ。会ったばかりの男に難易度の高い関節技を極めるばかりか、自分のことを天使とか言うんだぜ?」
腕を組んでふんぞり返っているキズナを指さしながら、八舞さんにそう説明する。
たわわに育った胸が腕に乗っかり、男子的に絶景ではあるが、これ以上関わりたいとは思わない。
「服を見てわかると思うけど、明らかにウチの生徒じゃないし、警備員の人を呼んできてもらえないかな? もしくは精神科やってる病院に連絡でもいい。俺がなるべく時間を稼ぐか――」
「あの、茂手くん。さっきから何を言っているの?」
「何って……この変な女についてだけど」
「やれやれ、太陽は物覚えが悪いようだね?」
「電波とは言っていないだろ!」
「同じことだよ! 覚悟しろ!」
じりじりとキズナが近づいてくる。
「ほら、こいつだよこいつ! この変な女に絡まれて困ってるんだよ!」
「どこにいるの? その、変な女って」
「……………………は?」
どこって……目の前にいるじゃないか。
背中を丸めながら、じりじりと距離を詰めてタックルの機会を狙っている、おっぱいの大きな変な銀髪女がそこに――。
「誰も、いないわよね? そこ」
「え……ちょっと待ってくれよ八舞さん。……冗談だろ? 自己主張の激しい(特に一部)変で騒がしい女が目の前にいるだろ?」
この俺の言葉に、彼女は首を横に振った。
「無駄だよ。ボクの姿、きみ以外に見えていないから。特殊なシールド張っているし、天界製のアイテムを触って、脳が覚醒しない限り、普通の人間は天使の姿を見ることができないんだ」
だからさっきのボクとのやり取り、全部一人芝居に見えていたんじゃないかな?――とキズナ。
……そんな、嘘だろ?
そんな俺の心の声をあざ笑うかのようなリアクションが、八舞さんからもたらされる。
「えーと、私には何も見えないんだけど……もしかしてさっきまでのはお芝居なのかな? 演劇部のお友達に頼まれて練習していた、とか?」
そん……な、馬鹿な……。
オレは今自分の目の前で起きていることが信じられなかった。
自分にははっきりと見えているのに、八舞さんには見えていない。
「ああ、だから誰もいない教室で練習していたのね。お芝居って、他人に見られるの恥ずかしいもん。慣れないうちは特に」
「あ、ああ……実はそうなんだよ。急に出てくれって頼まれちゃってさ。どうだった? 俺の演技」
「ものすごく上手だったわ。まるで本当に誰かがそこにいるみたいで。茂手くん絶対演技の才能あるわよ」
「は、はは……そりゃどうも…………」
乾いた笑みしか出てこない。
「助っ人じゃなくて、本気で演劇部に入ったらどう? もしかしたら俳優への道が開けるかも!」
「……考えておくよ」
「ええ、是非そうしてみて。それじゃあ茂手くん、また明日ね」
そう言って彼女はフェードアウト。
夕暮れの校舎に足音が響き、やがて消えた。
「ね、言ったとおりだったでしょ?」
「この科学万能の時代にそんな……そんなファンタジーな存在を認めろっていうのかよ?」
「科学だって万能じゃないでしょ? 人類が今確認している物質って、宇宙規模で見たらわずか4パーセントにすぎないんだよ? この世界のことを1割もわかっていないのに、ファンタジーな存在を否定するのは早すぎると思わない?」
「た、たしかにお前の言っていることは筋が通っているし、彼女がお前の存在を認識できなかったのは事実だけど……こんな異常なことを、そうそう簡単に認めろって言われても……」
「あったま固いなあ。じゃあ詳しく説明してあげるから外行こう」
「お、おう……頼む」
外の風に当たれば、この混乱も多少はスッキリするかもしれない。
「じゃあボクは先に行くから」
突然キズナが窓を開けると、その窓枠によじ登り――そこから飛び降りた。
「馬鹿っ!? お前ここ3階だぞ!?」
俺は身を乗り出し、キズナの無事を確認する。
、
「言ったでしょ? ボク天使だって。翼だってあるから空くらい飛べるってば」
宙に浮いたキズナがそこにいた。
ご丁寧に純白の翼と、天使の輪っかも生やしている。
「さっきまでなかっただろ。心臓に悪いわ……勘弁してくれよ」
「えへへ、電波女って言ったお返しだよっ」
……
…………
………………
午後6時20分――、
どうやら本物の天使っぽいキズナと俺は学校を出て、駅前近くにある公園のベンチに座った。
カップルが集まると有名な公園だ。
「お前が天使だっていうのはわかった。確かに他の人には見えていなかったようだし、その背中の翼と頭のリングもそれっぽい。俺の頭が固かったことは認めよう」
「お、やっと認めてくれた。先輩から聞いていたけど、自分のターゲットに存在をきちんと認識させるのってこんなに大変なんだね」
「そりゃあほとんどの人はリアルに生きているからな。ファンタジーな存在が突然現れて、漫画やラノベみたいに存在を主張したところで、そいつの脳を普通疑う。黄色い救急車の手配を始める」
「そんなリアルに生きている太陽は、何で存在を認識した今でもこっちを見ないのかな? もしや……ボクに惚れちゃった?」
「どんな考え方をしたらそんな結論に至れるのか俺には全く理解できんが、それは違うと言っておこうか」
「じゃあ何でこっちを見ないのさ?」
「他の人には見えてないんだろ? それなのにそっちをガン見して話してたら、俺がアブナイ人に見られちゃうじゃねえか」
そう、俺は横のキズナを見ておらず、自分のスマホを耳に当て、誰かと話しているフリをしている。
こうすれば自然と風景に溶け込めるからだ。
「話しているのに無視されているみたいで感じ悪いなあ。なんなら翼とリングしまってステルス解除してあげようか?」
「止めてくれ。こんな学校の近くで女の子と二人っきりとか、誰かの目に絶対留まる」
高校生なんて身近な人物の恋愛系ゴシップが大好きだからな。
たとえ俺の顔がわからない奴が目撃しても、目撃証言を元に俺と同じような非リア充が自主的に捜査を始め、犯人を見つけ出す。
そうなれば終わりだ。
近い将来勇気がチャージされて八舞さんに告白できたとしても、それを理由に100パー『ごめんなさい』される。
現代を生きる高校生の生態をキズナに説明すると、キズナはどこからともなくタブレット(っぽいもの)を取り出して何かを調べ始めた。
「うーん、データを参照させてもらったけど、もしそうなってもそれを理由に『ごめんなさい』にはならないみたいだよ? 『茂手くんっていい人なんだけど……友達以上には思えないの』だってさ」
「何でそんなことが言い切れるの!? っていうかお前そのタブレットみたいなの今どこから出した?」
「ここからだけど?」
キズナは頭に浮かべているリングを手に取ると、その中に腕を突っ込んだ。
おかしい。リングには穴が開いているはずなのに突っ込んだ手が見えない。
そのままキズナはシュッシュと、リングの穴に自分の手を出したり入れたりを繰り返し、「ここから取り出したんだよ」ということを俺にアピールする。
「天使のリングの穴って、四次元空間への入り口なんだ。しかもこのリングって伸縮自在だからどんなに大きなものでも中に入れられるんだよ。すっごい便利でしょ」
確かに便利だ。
どことなく国民的人気アニメの青い猫型ロボットを彷彿とさせる。
「どこから取り出したのかはわかった。だからもういい。それよりさっきのお前のセリフ! 俺が八舞さんに告ったら『友達以上には思えない』って断られるなんて、どうしてわかるんだよ!?」
「わかるんだよなあ、これがあるから」
そう言ってキズナは、タブレットの画面を俺に見せる。
「何だよこれ? 片方が俺の名前で、もう片方が……八舞さんの名前が出ているけど」
「えっとね、ボクが持っているこれは《Little Oath Viewer typeE》、通称《LOVE》っていう、人界で言うタブレットみたいなモンなんだけど。この中に入っているアプリケーションソフトに《ザ・ネクサス》っていうのがあるのね。あ、《ネクサス》って意味は……」
「《絆》、だろ?」
「うん、そう。ボクの名前と同じ」
説明する手間が省けたのが嬉しいのか、キズナは俺に向かって微笑むとLOVEを操作し、
今言ったネクサスというアプリケーションを起動してみせる。
「このネクサスは世界中の人類のアカシックレコード――運命を閲覧できるアプリケーションなんだ。使い方は至ってシンプル、検索画面で運命を調べたい相手の名前を入力してパネルを押すだけ」
そう言いながら、淡々と俺の名前を打ち込んでいくキズナ。
「さっきボクはこれできみの運命を見たから、あのセリフでフられるって断言できたんだよ」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
運命がわかるって残酷ですよね。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる