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俺達じゃないよ
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「 あ、室長」
「お疲れさまっす」
「室長すいません。邪魔が入りまして、まだ中を捜索できてない状況です」
「いえいえ、問題ないですよ。あなた達に怪我をさせるわけにもいかないので」
割って入った集団の中にいる上司を見つけ、シュタっと姿勢を正す。
「本邸はやはり、ガセばかりでした」
「早くここを漁りたいのですが‥‥‥‥」
視線の先には、崩壊しつつある屋敷にめり込んでいるブライトモンキー。
猪突猛進と言われている監査部隊も、現場崩壊中の屋敷に踏み込む事は流石にためらう。
アレの存在がなければとっく先に進んでいたのに‥‥‥‥。と唇をかみしめる部下達。
「安心してください。何とかできる人を連れてきましたから」
「「 ─────おおっ! 」」
「だから、フリート様とラング様がおいでなのですのね」
「いや俺等は、ただの付き添いだから」
「私達でも、あれをどうにかするのは無理ですよ」
「ええっ!じゃあ‥‥‥‥」
「何だ!きさまらあぁ!このワシを無視するなぁ─────!」
スルーされていた領主は、見事なまでのスルーっぷりに我慢が出来ず、とうとう割って入って来た。
とたん、冷たい視線が領主に集中する。
「おや、注目してほしかったのですか?」
「へえ、そりゃめずらしい人種だな」
「逃走という選択をしなかっただけでも褒めてあげましょうよ」
「こういう手合いは、ちょいちょいいますよ」
「このワシを無視するなぁ! 」
「人を指差すなんて、貴族としてどうなんでしょう」
「近々、その身分でなくなるのでは?当人はどうにか出来ると思ってそうですけど。無駄ですねぇ」
「違いねぇ」
屋敷を取り囲まれながらも、今までやりたい放題してきた領主にとって、貴族としての人生が終わることなど微塵も思っていなかった。
それも、自分より年若い連中に言われている事に我慢がならなかった。
「‥‥‥‥な、なにを言っている貴様ら!ワシを誰だと‥‥‥‥あ、お、お前はこの間の小僧!」
自分を見下してくる若造連中の中に、領主は見覚えのある顔を見つけた。
広場でこのワシをコケにしてくれた小僧─────。
「自分だけではご不満そうでしたので、応援を呼んでみました。いかがですか?」
にこぉと、他意などミリも微塵もありませんよと微笑む少年の背後から、破壊音と共に巨大な影が差してきた。
「う、うわ。何だアレ!」
「おい、ブライトモンキーが!」
ガラガラガラと屋敷の残骸が崩れ落ちる音共に、巨大なブライトモンキーの死体が後ろ足を上にするという不自然な格好で動き出す。
「ひぃっ─────!」
「にっ逃げろ!」
あまりの光景に、破落戸共はいち早く逃げ出した。
「な、なんだコレは!」
ブライトモンキーの体が左右に揺れるたび、ドシーンドシーンと重い音が周辺に響き渡る。
「ねぇ~これどこに置く─────?」
あり得ない光景を前に、実にのんびりとした女の声がブライトモンキーの方から聞こえてきた。
「こっちにお願いしま~す。後の処理は街の方々がするそうですので~」
少年は領主の存在などマルっと無視で、ブライトモンキーの誘導に回る。
「かしこまり~」と何とも呑気な言葉と共に、巨大な魔獣の死体は屋敷から離れ、人々が待ち受ける広場に移動していく。
「な、な、な、なんじゃアレは‥‥‥‥」
あまりの光景に唖然としていた領主は、目の前にいた人数が減っている事に気づいた。
「ひゃっひゃっひゃっ─────!」
「あれさえなきゃ、こっちのもんっさ!」
「何この金庫ダイヤル!ちょれ─────!」
─────壊れた屋敷の中、寄ってたかって金庫を開ける様は、とても真っ当な役人の姿には見えなかったと、リオは後に語った。
~~ ~~~ ~~~
ひと手間の「エールボタン」ありがとうございます。
時間を割いてくださった事に感謝感激で、連続前転ローリングをかまします。
「お疲れさまっす」
「室長すいません。邪魔が入りまして、まだ中を捜索できてない状況です」
「いえいえ、問題ないですよ。あなた達に怪我をさせるわけにもいかないので」
割って入った集団の中にいる上司を見つけ、シュタっと姿勢を正す。
「本邸はやはり、ガセばかりでした」
「早くここを漁りたいのですが‥‥‥‥」
視線の先には、崩壊しつつある屋敷にめり込んでいるブライトモンキー。
猪突猛進と言われている監査部隊も、現場崩壊中の屋敷に踏み込む事は流石にためらう。
アレの存在がなければとっく先に進んでいたのに‥‥‥‥。と唇をかみしめる部下達。
「安心してください。何とかできる人を連れてきましたから」
「「 ─────おおっ! 」」
「だから、フリート様とラング様がおいでなのですのね」
「いや俺等は、ただの付き添いだから」
「私達でも、あれをどうにかするのは無理ですよ」
「ええっ!じゃあ‥‥‥‥」
「何だ!きさまらあぁ!このワシを無視するなぁ─────!」
スルーされていた領主は、見事なまでのスルーっぷりに我慢が出来ず、とうとう割って入って来た。
とたん、冷たい視線が領主に集中する。
「おや、注目してほしかったのですか?」
「へえ、そりゃめずらしい人種だな」
「逃走という選択をしなかっただけでも褒めてあげましょうよ」
「こういう手合いは、ちょいちょいいますよ」
「このワシを無視するなぁ! 」
「人を指差すなんて、貴族としてどうなんでしょう」
「近々、その身分でなくなるのでは?当人はどうにか出来ると思ってそうですけど。無駄ですねぇ」
「違いねぇ」
屋敷を取り囲まれながらも、今までやりたい放題してきた領主にとって、貴族としての人生が終わることなど微塵も思っていなかった。
それも、自分より年若い連中に言われている事に我慢がならなかった。
「‥‥‥‥な、なにを言っている貴様ら!ワシを誰だと‥‥‥‥あ、お、お前はこの間の小僧!」
自分を見下してくる若造連中の中に、領主は見覚えのある顔を見つけた。
広場でこのワシをコケにしてくれた小僧─────。
「自分だけではご不満そうでしたので、応援を呼んでみました。いかがですか?」
にこぉと、他意などミリも微塵もありませんよと微笑む少年の背後から、破壊音と共に巨大な影が差してきた。
「う、うわ。何だアレ!」
「おい、ブライトモンキーが!」
ガラガラガラと屋敷の残骸が崩れ落ちる音共に、巨大なブライトモンキーの死体が後ろ足を上にするという不自然な格好で動き出す。
「ひぃっ─────!」
「にっ逃げろ!」
あまりの光景に、破落戸共はいち早く逃げ出した。
「な、なんだコレは!」
ブライトモンキーの体が左右に揺れるたび、ドシーンドシーンと重い音が周辺に響き渡る。
「ねぇ~これどこに置く─────?」
あり得ない光景を前に、実にのんびりとした女の声がブライトモンキーの方から聞こえてきた。
「こっちにお願いしま~す。後の処理は街の方々がするそうですので~」
少年は領主の存在などマルっと無視で、ブライトモンキーの誘導に回る。
「かしこまり~」と何とも呑気な言葉と共に、巨大な魔獣の死体は屋敷から離れ、人々が待ち受ける広場に移動していく。
「な、な、な、なんじゃアレは‥‥‥‥」
あまりの光景に唖然としていた領主は、目の前にいた人数が減っている事に気づいた。
「ひゃっひゃっひゃっ─────!」
「あれさえなきゃ、こっちのもんっさ!」
「何この金庫ダイヤル!ちょれ─────!」
─────壊れた屋敷の中、寄ってたかって金庫を開ける様は、とても真っ当な役人の姿には見えなかったと、リオは後に語った。
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