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おれ達はみていた
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砦に一番近い街。昼の喧騒がひと段落したころ、一人の冒険者が 最近色々あった冒険者ギルドの扉を開けた。
「よう、久しぶりじゃねぇか」
「お前、向こうのギルドにしばらく腰据えるんじゃなかったのかよ」
ギルドに併設された食堂で真昼間から酒をあおっていた冒険者たちが、顔見知りの冒険者が入って来たのに気づいて声をかけた。
「ああ、それはそうだったんだが‥‥‥‥ちょっと気になってな」
慣れた動作で自分も酒を買い、同じテーブルに加わった。
「どうせまた、女に振られたんだろ?」
「うるせぇ。そんなんじゃねーよ」
いやな所をついてきたと言わんばかりに、誤魔化すように酒を一気に煽った。
盃を戻すとテーブルに乗っていたつまみを勝手に口に運びながら、神妙に口を開いた。
「‥‥‥‥なあ、この街にあったアレ。どうしたんだよ?」
「アレ?」
「アレってなんだよ?」
アレじゃわかんねーよと男二人は文句を垂れる。
「広場にあったじゃねぇか。でっけぇ石にぶっ刺さってたヤツだよ」
男のさすものが例の色々な呼び方をされた『騙し武器』と知り、自分達の手柄でもないのに自慢げに話しだした。
冒険者内では例の観光地は、新参者を食い物にする『騙し武器』という名のぼったくりで有名だったのだ。
「ああ、あれな?無くなってスッキリしたろ?」
「邪魔な岩も武器もなくなって、街人は大歓迎してるぜ」
それがどうかしたのか?と尋ねるが、指につまんだ豆を見ながら男は神妙に口を開いた。
「俺さ、隣街でギルドの依頼をこなしてたんだけどさ」
「「 ふんふん 」」
「いつもと同じように仕事を終わらせて、街へ帰ろうと移動している時にな‥‥‥‥平原にな落ちてたんだ」
「なにが?」
「‥‥‥‥ブライトモンキーの死体だ‥‥‥‥それが平原のあちこちに落ちてたんだよ‥‥‥‥」
ブライトモンキー。灰色に近い白毛で覆われた巨体で性格は荒く、鳴き声は騒音。
その巨体故、一匹でも人間が集団でかからなければ対抗することが出来ない魔獣。
更に厄介なことに奴らは、巨体なくせに群れを成す。
出会ってしまえば、それは人にとって死刑宣告も同等なのだ。
「‥‥‥‥し、死んでたのか‥‥‥‥?」
「ああ。ぱっと見ただけでも四、五十匹ぐらいは点々と落ちていたぜ‥‥‥‥。どれも生きてる様子がなかった」
「マジか‥‥‥‥。その数だとブライトモンキーの中でもかなり上位種の群れだな」
「街の奴等も近くで死体を確認してたが、みんな困惑してたぜ」
「それはそうだろうなぁ」
うんうんと同意しながら、二人は酒を煽る。
「それで取りあえず街に入ったらよ。あの街、領主の別邸があるじゃねぇか。あそこの屋根によ、一際でけぇブライトモンキーの死体が引っかかっててさ。その体にな‥‥‥‥アレに似た武器がぶっ刺さってるのを俺は見たんだ」
あ‥‥‥‥。
あぁ‥‥‥‥。
アレが解放された時、この二人はその場で一部始終を見ていた。故に─────二人の冒険者達は理解した。
「本当なんだよっ!本当に俺見たんだよ!」
二人の反応を違う方向に誤解した男が声を大きくしたが、ポンポンと肩を叩かれ「わかったわかった」と宥められた。
「キキィ!」
そしていつの間にかテーブルの上にいた、小動物型の魔獣につまみの豆を差し出されていた。
「‥‥‥‥なにこの(かわいい)従魔‥‥‥‥お前の?」
「かわいいだろ?俺の従魔だ」
いかつい顔のお前には可愛すぎだろとは、口が裂けても言えなかった。
~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~
ひと手間の「エールボタン」ありがとうございます。
時間を割いてくださった事に感謝感激で、連続ローリングをかまします。
「よう、久しぶりじゃねぇか」
「お前、向こうのギルドにしばらく腰据えるんじゃなかったのかよ」
ギルドに併設された食堂で真昼間から酒をあおっていた冒険者たちが、顔見知りの冒険者が入って来たのに気づいて声をかけた。
「ああ、それはそうだったんだが‥‥‥‥ちょっと気になってな」
慣れた動作で自分も酒を買い、同じテーブルに加わった。
「どうせまた、女に振られたんだろ?」
「うるせぇ。そんなんじゃねーよ」
いやな所をついてきたと言わんばかりに、誤魔化すように酒を一気に煽った。
盃を戻すとテーブルに乗っていたつまみを勝手に口に運びながら、神妙に口を開いた。
「‥‥‥‥なあ、この街にあったアレ。どうしたんだよ?」
「アレ?」
「アレってなんだよ?」
アレじゃわかんねーよと男二人は文句を垂れる。
「広場にあったじゃねぇか。でっけぇ石にぶっ刺さってたヤツだよ」
男のさすものが例の色々な呼び方をされた『騙し武器』と知り、自分達の手柄でもないのに自慢げに話しだした。
冒険者内では例の観光地は、新参者を食い物にする『騙し武器』という名のぼったくりで有名だったのだ。
「ああ、あれな?無くなってスッキリしたろ?」
「邪魔な岩も武器もなくなって、街人は大歓迎してるぜ」
それがどうかしたのか?と尋ねるが、指につまんだ豆を見ながら男は神妙に口を開いた。
「俺さ、隣街でギルドの依頼をこなしてたんだけどさ」
「「 ふんふん 」」
「いつもと同じように仕事を終わらせて、街へ帰ろうと移動している時にな‥‥‥‥平原にな落ちてたんだ」
「なにが?」
「‥‥‥‥ブライトモンキーの死体だ‥‥‥‥それが平原のあちこちに落ちてたんだよ‥‥‥‥」
ブライトモンキー。灰色に近い白毛で覆われた巨体で性格は荒く、鳴き声は騒音。
その巨体故、一匹でも人間が集団でかからなければ対抗することが出来ない魔獣。
更に厄介なことに奴らは、巨体なくせに群れを成す。
出会ってしまえば、それは人にとって死刑宣告も同等なのだ。
「‥‥‥‥し、死んでたのか‥‥‥‥?」
「ああ。ぱっと見ただけでも四、五十匹ぐらいは点々と落ちていたぜ‥‥‥‥。どれも生きてる様子がなかった」
「マジか‥‥‥‥。その数だとブライトモンキーの中でもかなり上位種の群れだな」
「街の奴等も近くで死体を確認してたが、みんな困惑してたぜ」
「それはそうだろうなぁ」
うんうんと同意しながら、二人は酒を煽る。
「それで取りあえず街に入ったらよ。あの街、領主の別邸があるじゃねぇか。あそこの屋根によ、一際でけぇブライトモンキーの死体が引っかかっててさ。その体にな‥‥‥‥アレに似た武器がぶっ刺さってるのを俺は見たんだ」
あ‥‥‥‥。
あぁ‥‥‥‥。
アレが解放された時、この二人はその場で一部始終を見ていた。故に─────二人の冒険者達は理解した。
「本当なんだよっ!本当に俺見たんだよ!」
二人の反応を違う方向に誤解した男が声を大きくしたが、ポンポンと肩を叩かれ「わかったわかった」と宥められた。
「キキィ!」
そしていつの間にかテーブルの上にいた、小動物型の魔獣につまみの豆を差し出されていた。
「‥‥‥‥なにこの(かわいい)従魔‥‥‥‥お前の?」
「かわいいだろ?俺の従魔だ」
いかつい顔のお前には可愛すぎだろとは、口が裂けても言えなかった。
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時間を割いてくださった事に感謝感激で、連続ローリングをかまします。
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