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忠告はちゃんと ~王都編~
しおりを挟む学園にも文官クラスがあり、同級生の中には卒業後、宮中の部署に内定している奴がいたが俺らとタイプが違い、いつも猫背で姿勢が悪く、分厚い眼鏡をかけ覇気がないおどおどした連中だった。
文官ってのは、ああいうのの集まり‥‥‥‥
「─────あ、」
「おいっ!ぼーと突っ立ってるんじゃねぇ!」
「お前邪魔だどけやっ!」
彼は華やかな宮中の廊下で、監査官である緋色の制服を着たヤンキー集団にどつかれた。
「は?え、え、えぇ?」
「久々だぜぇ~たまらんな~」と監査官その一は、ペーパーナイフをなめなめ。
「これぞ日頃の恨みって 奴だなぁおい。へへへっへ」と監査官その二は、手に持った算盤をじゃらじゃら鳴らす。
「これだから、実地監査はやめらんねぇよなぁ~」そして監査官その三は、くそ分厚い書類の束を指先二本で高速で捲りまくる。
どつかれた彼は、今や廊下の隅に追いやられ、緋色の制服集団が通過するのを信じられない面持ちで、見ている事しかできなかった。
「先輩~。俺もやっちゃっていいっすか?」
そこへ髪を逆立てた人物が加わった。
制服の前ボタンをいくつか外し、首には金のぶっといネックレスをジャラジャラさせている。
‥‥‥‥あれ?アイツは俺の同級生じゃないのか?
学生時代には首元までビッチビチにボタンをとめ、俺たち騎士科を避けるようにビクビク廊下の隅を歩いていた、分厚い眼鏡の奴はいったいどこへ‥‥‥‥。
「おお!やれやれ!存分にやれよ~遠慮すんなよ」
「お前初めてか!?書類は全部刈り取ってやるからな~楽しいぜぇ~」
「隠し帳簿見つけた奴は、金一封が貰えるって話だぜ~」
「マジっすか!?俺、超楽しみっス!!」
ひゃ~っはっはっはっはっはっは
ヤンキー集団を見送りながら、彼は目を見開いたままピクリとも動けなかった。
身なりと態度は、街に潜むチンピラと変わりはなかったが、会話の内容はいたって真面。
そのギャップに、目をパチパチさせるしかなかった。
「お前、知らなかったんだな」
「新入り連中は皆、勘違いするからな」
「ちなみにあそこの主任には、騎士団長でも頭が上がらないぞ」
大量に追加された情報に、頭の理解が追い付かなかった。─────アイツの分厚い眼鏡はどこ行った‥‥‥‥?
その頃城下では、城の城門に揚げられた『緋色の大旗』に大人たちの悲鳴が上がった。
「赤だ!赤が上がったぞ!」
「ヤバい!早く避難しろ!」
「建物内に早く入れ!」
訳が分からない少年は、大人たちの慌てように首を傾げる。
緋色の旗は初めてだが、城門に旗が上がるのは遠征にいく隊員が、城から列をなして出てくる合図となっている。
女子に人気の隊が出てくるときなんかは、道の両サイドに花道ができ黄色い歓声が上がったりもする。それが
「あんた何してんだ!早く入るんだよ!」
道の真ん中でぼぅとしていた少年は、首根っこを掴まれて強引に引っ張られた。
「な、なんで!?」
「赤旗の時は、大通りにいたら危険なんだよ。近くの建物に避難するんだ。でないと、─────死ぬよ」
そんなバカな。と思った次の瞬間、城の方から出陣の大笛が鳴った。
「オラオラ!どけよどけよどけよ─────!!」
「オラオラオラオラ─────!」
「俺が先だ─────!」
「ひゃっは─────はっはっはっは」
盗賊かと見間違う騎乗の集団が、城門が開くと同時に勢いよく飛び出してきた。
そして大通りを一切の遠慮なしに、駆け抜けていく。
「お国の仕事ってのは、大変だから‥‥‥‥」
「嫌いになっちゃだめだよ‥‥‥‥」
「帰ってくる時は、真面になってるからね‥‥‥‥」
大人の忠告はちゃんと聞こうと、少年は心に刻んだ。
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ひと手間の「エールボタン」ありがとうございます。
時間を割いてくださった事に感謝感激で、連続ローリングをかまします。
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