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ミリもない。
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「あれはいったい、何だ‥‥‥‥?」
「何か壊してる‥‥‥のか?作ってるのか?」
「‥‥‥‥さっぱり、わからん」
ゲーム感覚の土木建築を、現実でやっているなんて、懇切丁寧に説明してもまず理解されないだろう。
遠目から破落戸達がのぞき見しているその先では、くそデカい石を一撃で粉砕し積み上げている様子に首を傾げた。
「どうでもいいが、森の奥地に入りすぎだ。浅瀬付近まで戻るぞ」
「そうだな、こんな所で魔獣に囲まれたらシャレにならん」
不可解な行動をしている人物に気取られないように、破落戸共はその場を後にした。
だがその気付かれていないと思っていた行動は、フェンリルである白陽には知られていた。
ただ、こちらをチラチラ伺うだけで何も事を起こす様子がなかった為、捨てておいたのだ。一つだけ文句を言うなら「──臭い」の一言だけだった。
そんな目こぼしをしてもらっているとはつゆ知らず、破落戸達は『深淵の森』入口近くまで戻っていた。
「それでお前、あんな奴相手にどうすんだよ?」
「そうだぜ。おまけに従魔連れじゃねぇか。アレ普通じゃねぇぞ」
「コレを使うって言っただろ」
男は懐から領主からもらった『丸石』を取り出した。
とたん、持っている本人以外の顔がしかむ。
前々から怪しんでいたが、「コイツ、匂うよな」だ。
ただそれを当人には言わず、周りで交わす視線で確認し合っていた。
─────コイツくせぇよな? 本人気付いてねぇ? もしかして鼻が悪いんじゃ?
そんな無言の会話をしながら皆、示し合わせたように二三歩男から離れた。
「それをどうすんだよ」
こうすんだよ。と言いながら男は『丸石』を矢に括り付けた。
「えーと。後はなんだ?『呪文』がいるんだっけか?」
汚い紙に書かれた『呪文』とやらを唱えだすと、一段と辺りに刺激臭が漂いだした。
「─────うっ!」
「くっせぇっ!」
「なんだよこれ!」
「なんでもいいから、さっさとやれよ!」
「お前ら何言ってんだよ。そんでもってコレを─────」
遠距離用の弓で、例の人物がいるであろう方角の空に放った。
「─────へへへ。『深淵の森』の中は魔獣がうじゃうじゃいるからな。数で押しゃあどんだけ強ぇ奴でもイケるだろ」
─────なぁ?と仲間を振り返ったが、すぐ後ろにいた男達は違う方向を見ながら、じりじりと後退していた。
「お前らどうしたよ?」
仲間が無言で指さす方向を確認するや、男も瞬時に顔色が悪くなった。
「‥‥‥‥ブ、ブライトモンキーだと‥‥‥‥うそだろ、こいつ等はもっと奥地‥‥‥‥」
『深淵の森』の深層部に生息していると言われている『ブライトモンキー』。
毛並みは白に近い灰色。集団で行動し、その姿は巨大。─────そして何より狂暴。
‥‥‥‥ギャアアアァァァァァ─────‥‥‥‥‥‥‥‥
遠くから、なにか悲鳴のような声がかすかに聞こえた。
「─────ん?何? シロ君何か聞こえた?」
「実力も無いのに、森に入りすぎたんだろ」
「そっか~。見極めるって大変だもんね~」
目下、土木建築に夢中な人物に、ミリも興味は引く事なかった。
「何か壊してる‥‥‥のか?作ってるのか?」
「‥‥‥‥さっぱり、わからん」
ゲーム感覚の土木建築を、現実でやっているなんて、懇切丁寧に説明してもまず理解されないだろう。
遠目から破落戸達がのぞき見しているその先では、くそデカい石を一撃で粉砕し積み上げている様子に首を傾げた。
「どうでもいいが、森の奥地に入りすぎだ。浅瀬付近まで戻るぞ」
「そうだな、こんな所で魔獣に囲まれたらシャレにならん」
不可解な行動をしている人物に気取られないように、破落戸共はその場を後にした。
だがその気付かれていないと思っていた行動は、フェンリルである白陽には知られていた。
ただ、こちらをチラチラ伺うだけで何も事を起こす様子がなかった為、捨てておいたのだ。一つだけ文句を言うなら「──臭い」の一言だけだった。
そんな目こぼしをしてもらっているとはつゆ知らず、破落戸達は『深淵の森』入口近くまで戻っていた。
「それでお前、あんな奴相手にどうすんだよ?」
「そうだぜ。おまけに従魔連れじゃねぇか。アレ普通じゃねぇぞ」
「コレを使うって言っただろ」
男は懐から領主からもらった『丸石』を取り出した。
とたん、持っている本人以外の顔がしかむ。
前々から怪しんでいたが、「コイツ、匂うよな」だ。
ただそれを当人には言わず、周りで交わす視線で確認し合っていた。
─────コイツくせぇよな? 本人気付いてねぇ? もしかして鼻が悪いんじゃ?
そんな無言の会話をしながら皆、示し合わせたように二三歩男から離れた。
「それをどうすんだよ」
こうすんだよ。と言いながら男は『丸石』を矢に括り付けた。
「えーと。後はなんだ?『呪文』がいるんだっけか?」
汚い紙に書かれた『呪文』とやらを唱えだすと、一段と辺りに刺激臭が漂いだした。
「─────うっ!」
「くっせぇっ!」
「なんだよこれ!」
「なんでもいいから、さっさとやれよ!」
「お前ら何言ってんだよ。そんでもってコレを─────」
遠距離用の弓で、例の人物がいるであろう方角の空に放った。
「─────へへへ。『深淵の森』の中は魔獣がうじゃうじゃいるからな。数で押しゃあどんだけ強ぇ奴でもイケるだろ」
─────なぁ?と仲間を振り返ったが、すぐ後ろにいた男達は違う方向を見ながら、じりじりと後退していた。
「お前らどうしたよ?」
仲間が無言で指さす方向を確認するや、男も瞬時に顔色が悪くなった。
「‥‥‥‥ブ、ブライトモンキーだと‥‥‥‥うそだろ、こいつ等はもっと奥地‥‥‥‥」
『深淵の森』の深層部に生息していると言われている『ブライトモンキー』。
毛並みは白に近い灰色。集団で行動し、その姿は巨大。─────そして何より狂暴。
‥‥‥‥ギャアアアァァァァァ─────‥‥‥‥‥‥‥‥
遠くから、なにか悲鳴のような声がかすかに聞こえた。
「─────ん?何? シロ君何か聞こえた?」
「実力も無いのに、森に入りすぎたんだろ」
「そっか~。見極めるって大変だもんね~」
目下、土木建築に夢中な人物に、ミリも興味は引く事なかった。
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