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現実になる

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「よいしょ~~♪」

「こらしょっと~」

 ドーン ドドーン!!間の抜けた掛け声の後に、腹まで響く地響き。

「ほいっさ─────!!」

 ドドン─────!バキバキバキバキ どどーんどどん

「あ 樹まで倒しちゃった。 ま、いいか。想定の範囲内、範囲内~」

 聞こえてくる声と、体に響く振動の落差に、遠目から監視をしていた集団には心理的な不安がのし掛かる。

「お、おい‥‥‥‥」
「‥‥‥‥あれなんだよ」
「あんなの聞いてねぇよ‥‥‥‥」

正確には聞いていた。しかし、到底想像できる話ではなかったので、頭の中が理解していなかったというのが真実である。

「ひ、び、ビビるんじゃねぇよ。あ?あいつ等はどこ行った?」
「こっちも一人いねぇぞ」

 森の浅い縁で、例のフェンリルを連れた人物を偵察していたが、今目の前で繰り広げられる光景に、声かけもせず離脱をかました者が数人出た。

「ま、まあいいさ。頭数が減りゃあ、その分取り分が増えるからな」
「そ、そりゃそうだが、大丈夫なのか‥‥‥‥」

 圧倒的な力の差というものを見せつけられ、みな岩陰に隠れながれ絶対こっちに気付くんじゃねぇぞと息を殺し潜んでいるが、目の前の男は冷汗で顔がびっしゃびしゃの割りに、何故か自信があるらしい。

を貰ったからな」 
は領主が持ってた‥‥‥‥使えねぇ代物だと聞いたぜ?」

「使い方が悪いんだよ、ここを使うんだよ、ここを」

  男は手に例の『丸石』持ちながら、己の頭を指さした。
   一緒にいた男は、「マジか」と返事はしたが、腹の中では「コイツなんか匂わね?」と本能的に距離をおいた。


 ドーンとおおよそ人一人では投げれないであろう石をぶん投げ続けるリオは、途中からなんだか楽しくなってきていた。「建築型ゲームを、リアルでやってる!」気分になっていたのだ。

「コレをこっちに積んで『20度ズレてます』‥‥‥‥もうちょいこっちか」

 ただし、自由度は低い。

「ここはこれでいいから、シロ君上いこ、上」

 周りをフンフンしていたシロ君に声をかけ、上流予定の場所を目指して『深淵の森』の奥地へ入っていく。

 どこかの童話の設定に出てくるように、点々とパンではなく道すがら置かれている大岩を前に、腕を組んで考える。

「コレって、後どうするんだ‥‥‥‥?」

『細かく刻んで、積みましょうか』

 頭の中に浮かぶは、元世界の計算され、綺麗に石積み整備された河川敷。

「いやいや、あれは技術と計算の塊でしょ?無理じゃん」

『 ‥‥‥‥森の中なんで‥‥‥‥それっぽいので』

 さすがの『ナビ』ちゃんも、そこまでは求めなかった。

「使いにくいけど、コレ使うかぁ~」

 別に壊れてもいいし。と例の無駄にキラキラ光るハンマーを、アイテムボックスから取り出した。

「無駄にいい素材使ってるんだから、ガンガン使ってもいけるよね?」

『魔力乗せても大丈夫です』

「それ、よく分らないから、これで─────ショイっ!!」

 ばっか─────んと派手な音を響かせながら、大岩は粉砕され『ナビ』ちゃんの指示の元、河川敷っぽく積み上げられていく。

「コレちょっと楽しいかも」

 長年憧れ?金集め?にされたハンマーは、誰一人見られることなく『深淵の森』の中で乱雑に扱われていた。
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