聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

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い・や・が・ら・せ

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 ワシは高貴な貴族だ!こんな平民の小娘にひるむわけにはいかないっ!
 コイツにはこの高貴な身分のワシに、土を付けた詫びを入れさせなければならないっ! 
 いきり込んで相手を睨みつけるが、ギラリと光る巨大なハンマーを軽々と担ぐ女に、意思とは相反して足が勝手に震え出す。

  そこへ一人の男が間に入って来た。いや、子供か? 体格からして少年といえる年齢であろうが、言いしれぬ雰囲気に領主は一歩下がった。

「サガン領主。あの従魔の身元はこちらも承知しているのですが、それでも貴方の所有と言い張るのですか?」

 凛とした少年の声が耳に届き、領主は我に返った。

「そ、そうじゃ!領主のワシに逆らうというのか!小僧!」

 そう自分にも言い聞かせるが、目の前の少年に何か言いしれぬ雰囲気も感じ取っていた。
 
  なんだ!?何をワシはおされておるんじゃ!相手は子供ではないか!

「よく見ればその制服!お主あの『都落ち部隊』じゃないか!ははは!この土地で職探しでもしとるのかな?ワシがいい所を紹介してやってもよいぞ!」

 相手が少年に代わったとたん、領主の口はどうやら調子を取り戻したようだった。

「『都落ち部隊』‥‥‥‥?何でしょうね、最近一部の方から聞きますけど」

─────すっと少年の視線が、一段と冷ややかになった。

 間にウィル少年に入られた私は「あ、えっと、ウィル君~危ないよ~」と小声で囁きながらワタワタしていた。
 更に一歩踏み出そうとした瞬間、ピコっと『ナビ』ちゃん画面が起動した。

『 「臭い石」に嫌がらせをしましょう 』

─────なんて?

 突然の『ナビ』ちゃんの提案に、頭にクエスチョンマークが飛んだが、『ナビ』ちゃんは以前、無傷で手に入れた『石』をすでに分析、解析済みらしい。
 魔獣を洗脳させる術式も、無効にできるらしい‥‥‥‥さらに。

『 内臓されている術式を魔改造して、人にも解る匂いのレベルにしましょう 』

「ナニソレ、タノシソウ‥‥‥‥」

 それって本当にただの『臭い石』って事だよね。 
 すぐやろう。ちゃちゃっとやっちゃおうっ!
 ヤル気になった私は、『ナビ』ちゃんの提示する『陣』を素早く構築して‥‥‥‥「ちょっと足すか」と更に嫌がらせの上乗せをし、ウィル君の向こうにいる領主の懐にあるであろう『魔石』に飛ばした。
 
「ふふん、姫さんの時と比べれば、ラクラク」

『アレとはレベルが違います』

 現れた時と同じようにピロっと『ナビ』ちゃん画面が消えると、横から「ちょといいか?」とヒソヒソ声で話しかけられた。


「なにか勘違いしているようですが、我々は『第二騎士団』ですよ?どこから聞いたか知りませんが‥‥‥‥大丈夫ですか?」

  そう聞いて、領主は分かり易く顔色を変えた。
  
 第一騎士団が、陛下直属の騎士団であり常に城の警護などにあたっている部隊であれば、その他は国内への変事に馳せ参じる部隊。

 その中でも頭一つ抜きん出ていると言われているのが─────『第二騎士団』
 隊員の中には貴族の子息が多数配属されているときくが、そこに身分の上下は反映されない、能力のある者だけが残れるという、完全実力部隊。

 裏では『第二』こそが、国一番の戦力とまで囁かれている‥‥‥‥。

「それは置いときますが。私も貴族の端くれ、少々気になることがあるのですが‥‥‥‥こちらの領地は確か昨年、作物の不作とやらで税収を下げて国に報告されてますよね」
 
 言いながら少年は、チラリと領主の身なりに冷たい視線を向ける。
 その視線の先にはおおよそ必要もないだろうと思われる、ギラギラと派手に光る指輪や宝石の数々。

 それに気付き、慌てて両手を隠す領主にいつの間にか少年は真正面に近付いており、冷汗を流す領主の耳元でコソリと何事がささやく。

 領主の顔は一層青くなったが、年端もいかない少年に言い負かされるかと、一段と声を張り上げた。

「そんな事がお主にでき─────」

「自分はローエン家の者です」 

 二コリと口だけ笑う少年の笑顔に、領主はわかり易く顔色を白くして逃げ出した。
 雇い主が逃げ出したとわかると、破落戸はわけが分からないがここはマズイとばかり後を追って退散していった。

「あ─────逃げんの?つまんないけど、これぐらいにしとくか」」

 背後から高速で謎の物体が幾つか飛んで行ったが、ウィル少年の目に何かまでは確認できなかった。
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