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食事は楽しくね

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 「みんな楽しそうね。‥‥‥‥卵の消費がちょっと激しいかしら‥‥‥‥」

「どうでしょうか。犬魔獣達までが食べてしまうと‥‥‥‥」

 隊員たちに釣られて犬魔獣達にも興奮が伝わり、人間の背をジャンプ台代わりにして『パンケーキ』を横取りする事態が発生していた。

「まあ、私の分は確保されてるから問題ないんですけどね」

「─────姫様。昨夜からちょっと食べすぎなのでは‥‥‥‥」

 あ~んと『パンケーキ』を口に入れると同時に、サラから注意が入る。
 クリスティーナは昨夜の食事の量を思い出し、そうかも‥‥‥‥と躊躇が入る。

「う‥‥‥‥え‥‥‥‥で、でも昨夜は特別だったし!『パンケーキ』は別腹だから!」

「どれも一緒です」

「‥‥‥‥はい」

「姫さんは若いし、新陳代謝がいいから大丈夫じゃない?」

ちゃっかり自分の分を確保したリオが、シレっと向かい側に着席していた。

「甘やかさないでください。リオ様」

 まあ、それもそうか。
 そう言いながら自分用に確保した『パンケーキ』にありついた。─────うん、我ながら旨いではないか。次のトッピングは何にしようと思案していると

「リオ様?味見って言いながら、散々最初に食べてませんでした?」

─────ぐっ。サラさんからの冷静な指摘に、お腹周りが気になりだす。

「ん゛ん゛っ‥‥‥‥」

 後から運動してカロリーを消費しよう‥‥‥‥。

 視線の先には空中に舞う『パンケーキ』を人と取り合う犬魔獣の姿。
 絵面的には人と戯れる無邪気な犬にしか見えない。

「それにしてもあれが魔獣。食い意地の入った犬にしか見えない‥‥‥‥」

「まあ、犬ですね」

 ─────サラさん、容赦ないな。

「能力が上がれば、姿が変わったりしますけどね」

「そうなの?」

「シロ君だって、姿が大きく変化するじゃないですか」

「大きい姿の方が本来の姿なんだけど‥‥‥‥そうよ!うちの弟は硬派で特別だと思ってたのに─────あんなナンパをする様な子だったなんて!お姉ちゃん悲しいっ!」

 「ハーレムがいいのか!?ハーレムが!?」と泣き叫ぶリオの背後では『焼き』をマスターしたという料理長が「おれぇりぁぁぁぁぁ─────」と叫びながら『パンケーキ』を男たちの群れに飛ばす。

 まさか料理長、『パンケーキ』は『飛ばすもの』と理解してるんじゃ‥‥‥‥。

「それであそこは何で、この世の終わりみたいな顔で座ってるの?」

 指差す先にはヘンタイ野郎とその従者だ。異様な盛り上がりを見せている食堂中で、その一角だけが別世界の様にどんより雲が降りている。
 彼らは食事は終わっているようで、食後の飲み物を前に無言で向かい合っている。

「楽しい食事中に、湿っぽいのはごめんなんだけど」

 ぷんすこしながら食べていると、姫さんが焦ったように小声で教えてくれる。

「いやあの、さっきですね。ジーク様に預かり物を返したのですけど‥‥‥‥」

─────預かり物って何?と言えば、「貴方が壊した杖に付いていた宝玉です」と言われたのだが、正直記憶になかった。というか割とマジでどうでもよかったので「ふ~ん」と生返事を返してしまった。
 そう思っているのがバレたのか、じと~んとした目で見られ、慌ててどうでもよかった記憶を隅っこから引きずり出す。

「あ、あの壊した杖に付いてた石ね。─────それがどうかした?」

「‥‥‥‥まあ、なんというか‥‥‥‥みて見ればわかりますよ」

─────見る?そう言われ、二人の背後からそろ~りと覗いてみた。
 そこには布の上に置かれた丸石が、まるで意思を持っているかのように左右にゴロンゴロンと転がり、止まったかと思えば今度は文句を付けるかのように、べかべかと点滅を繰り返していた。

─────え、なにこれ。キモ。
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