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噂は真実‥‥‥‥

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「あのギルド長が『特級』を出したんですか?─────しかも、即日で」

「半日も経ってねえぞ?」

「後見人は‥‥‥‥貴方がなったのですか?」

「うむ、あやつの勢いに飲まれてな‥‥‥‥。ものすごい圧をかけられて、説明も無しに署名させられた‥‥‥‥。久しぶりに肝が冷えたわ‥‥‥‥」

「よくギルト長が、身分証を発行する気になりましたね。それも何故『特級』という話になったんです?『一般』でもよかったのでは?」

「いやそれがな。あやつが嬢ちゃんに、依頼した事の報酬みたいなものじゃな」

「依頼‥‥‥‥?」

 シャラララ‥‥‥‥と自前のトサカを撫でるドルク。その仕草で三人は「‥‥‥‥あ」察し。と深く追及はやめた。

「『特級』と『一般』と何か違うんですか?」

 クリスティーナはお城のお姫様である。下々の生活は前世の知識もありそこそこは知っているが、基本お嬢様であるので、詳細までは知ることはない。

「色々違いはありますが、わかり易いところでは、新しい町などに入る時などの検問が、審査無しで通過できます」

 ほうほうと、クリスティーナはフリートの説明に頷く。─────要は顔パスで他国に行けるパスポートの様なものかと理解する。─────なるほどVIP扱いなわけね。

「私はその必要がないから、知らなかったわ」

 クリスティーナの返事に、フリートも「そうですね」と頷く。

「『特級』の発行は、ギルド長しかできません。それも後見人が必要で、さらに発行には早くても一月位かかります。ギルド長がその人物の人柄を保証するという『一般』とは違うランクになるわけですから。その為、保証した人物が問題などを起こしたら、ギルド長の資質が問われますので、『特級』を出したがらないのですよ」

「なるほど。その人が問題を起こすと、自分にまで責任が問われるから、発行したがらない。したがって、持っている人も必然的に少ないって事ね」

「そうですね。私も持ってる人には、今まで一人しか会った事ありません」

「─────俺はないなぁ~」

「俺もねぇな。後で見せてもらおう」

「その『特級』なんじゃがな。『作成』する際、稀に『出る』と伝わる云われがあるじゃろ‥‥‥‥」

「─────ええっまさか出たのですか!? ただの噂だと思ってました。本当だったんですか!?」

 反応したのはフリートだけで、他の三人は何の話をしているのだと顔を見合わせた。

「作成時に立ち会う機会は、まず無いからな。物珍しさに見学してエライもん見せられたわ‥‥‥‥」

 なんだ?何の事だと、他の三人はフリートに解説を求める。

「『身分証』の作成は、前世紀に作られた『仕組み』で作成されていて、未だに謎の部分があるんです。その一つにその人物に与えられた『神の加護印』が浮かび上がる事があると噂されているんです」

「噂ではなかった‥‥‥‥真実じゃった‥‥‥‥という訳じゃ、お主らも秘密の共有に付き合ってもらうぞ」

─────ふへっ。疲れた笑いから、只事ではない事を察する一同。
 
「‥‥‥‥承知しました‥‥‥‥」


 その時ユリアは、両手いっぱいに荷物を持ちながら、運悪く扉付近を通りかかった。
 ─────次の瞬間。部屋の中から響く大音量の叫び声にびっくりして腰を抜かし、すべてを床にぶちまけるのであった。 
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