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『世が乱れる時 東の地より 白い獣を従えた 救済者があらわれり』
どこぞの果ての地に古代文字で、この一文がどデカい石碑に刻まれている‥‥‥‥らしい。
この世界に住むものが、誰でも一度は触れる、昔々の出自不明の伝承‥‥‥‥。
一度は読むであろう『勇者の物語』も、何気にこの一文を意識して、物語を構成している部分があるな~なんて思いながら幼少期に絵本で読んだ。
事の真偽は色々説が流れているが、過去の為政者もこの一文を利用して戦を仕掛けた歴史もある。
今となっては本当かどうかも分からない、昔々の言い伝え。そんな事は解っているが、どうしても敏感になってしまうワードがある。
─────『東の国』。
解ってはいるが、気になるのは違いない。何せ、『白い』フェンリルまで揃ってしまっているのでツーストライク。
─────ごめん、リオさん。
この世界では、異世界転生テンプレワードは「あ、そうなんだ~」ではなく「え、うそ。ホントに!?マジで!?」になってしまいます。
「‥‥‥‥リオ様はまさか、神の使徒‥‥‥‥」
─────いやいや、待ちなさい。君達、勝手な推測は止めなさい。私がリオさんに〆られるからっ! リオさんは異世界にチート転生したけれど『一般人』という設定でいくんだから!
私だって「ちょっと、ムリじゃね?」とは思ってはいるが、「何も『お告げ』も『指示』も受けてないから。ほら、『一般人』でしょ?」と本人がのたまうのだからそれでいくしかない。
「サラ、憶測はいけないわ。たまたま偶然が揃っているのであって、東の島出身者にはごくありふれた事で、『魔獣』とも相性がいい民族かもしれないわ」
「‥‥‥‥そ、そうなんで、すか」
「そ、そうよ。ちょっと共通項があるだけで『伝承』にある『使徒』かもなんて言ったら本人にきっと笑われるわよっ!」
押し通─────すっ!サラッとテロっと設定をゴリゴリ押し通─────すっ!
「そ、そうよ。フェンリルを連れている人だって、私達が知らないだけで、他にも結構いるかもよっ!」
─────いないと思います。
その場にいる全員の意見が、そう一致したのだが。
自分達の姫様が、あまりに必死になるので、皆無言で空気を読んだ。
「そうっすよね‥‥‥‥」
「‥‥‥‥だよな」
「‥‥‥‥そうですよね」
一応そう返事をしたが、「そういう事にしておこう」と三人は目線で頷き合った。
『やぁっ~だぁ~!やっぱり「おかめ」のまんまじゃ~ん』
突然、甲高い間延びした声が割って入り、三人はクリスティーナ姫を背後にかばう。
中庭にそびえ立つ木の陰から、フードを深く被った人物が現れた。
『なによ~やっぱ解けてないじゃんか~心配して損したじゃな~い』
甲高い声はフードの人物から発せられているわけではなく、その手に持つ透明な球体から発せられているようだ。
『そ・れ・にっ!もっと悲惨に寝込んでればいいのに、呑気にお茶ですって~ムカつくっ!!
陽があたる場所まで進み出てきた人物は、フード付きの長いローブに身長より長い杖。
その杖の先にある特徴的な石により、相手が誰だか悟る。
「‥‥‥‥え、まさかジーク?」
「マジかよっ!」
『─────ちょっと、お仕置きが必要よねっ~やっちゃってよ!』
球体からの叫びと同時に、炎の塊がこちらに向かってきた。
「─────まずいっ!」
ドォォォ─────ン
中庭に火柱が上がり、辺り一面が崩壊した。
どこぞの果ての地に古代文字で、この一文がどデカい石碑に刻まれている‥‥‥‥らしい。
この世界に住むものが、誰でも一度は触れる、昔々の出自不明の伝承‥‥‥‥。
一度は読むであろう『勇者の物語』も、何気にこの一文を意識して、物語を構成している部分があるな~なんて思いながら幼少期に絵本で読んだ。
事の真偽は色々説が流れているが、過去の為政者もこの一文を利用して戦を仕掛けた歴史もある。
今となっては本当かどうかも分からない、昔々の言い伝え。そんな事は解っているが、どうしても敏感になってしまうワードがある。
─────『東の国』。
解ってはいるが、気になるのは違いない。何せ、『白い』フェンリルまで揃ってしまっているのでツーストライク。
─────ごめん、リオさん。
この世界では、異世界転生テンプレワードは「あ、そうなんだ~」ではなく「え、うそ。ホントに!?マジで!?」になってしまいます。
「‥‥‥‥リオ様はまさか、神の使徒‥‥‥‥」
─────いやいや、待ちなさい。君達、勝手な推測は止めなさい。私がリオさんに〆られるからっ! リオさんは異世界にチート転生したけれど『一般人』という設定でいくんだから!
私だって「ちょっと、ムリじゃね?」とは思ってはいるが、「何も『お告げ』も『指示』も受けてないから。ほら、『一般人』でしょ?」と本人がのたまうのだからそれでいくしかない。
「サラ、憶測はいけないわ。たまたま偶然が揃っているのであって、東の島出身者にはごくありふれた事で、『魔獣』とも相性がいい民族かもしれないわ」
「‥‥‥‥そ、そうなんで、すか」
「そ、そうよ。ちょっと共通項があるだけで『伝承』にある『使徒』かもなんて言ったら本人にきっと笑われるわよっ!」
押し通─────すっ!サラッとテロっと設定をゴリゴリ押し通─────すっ!
「そ、そうよ。フェンリルを連れている人だって、私達が知らないだけで、他にも結構いるかもよっ!」
─────いないと思います。
その場にいる全員の意見が、そう一致したのだが。
自分達の姫様が、あまりに必死になるので、皆無言で空気を読んだ。
「そうっすよね‥‥‥‥」
「‥‥‥‥だよな」
「‥‥‥‥そうですよね」
一応そう返事をしたが、「そういう事にしておこう」と三人は目線で頷き合った。
『やぁっ~だぁ~!やっぱり「おかめ」のまんまじゃ~ん』
突然、甲高い間延びした声が割って入り、三人はクリスティーナ姫を背後にかばう。
中庭にそびえ立つ木の陰から、フードを深く被った人物が現れた。
『なによ~やっぱ解けてないじゃんか~心配して損したじゃな~い』
甲高い声はフードの人物から発せられているわけではなく、その手に持つ透明な球体から発せられているようだ。
『そ・れ・にっ!もっと悲惨に寝込んでればいいのに、呑気にお茶ですって~ムカつくっ!!
陽があたる場所まで進み出てきた人物は、フード付きの長いローブに身長より長い杖。
その杖の先にある特徴的な石により、相手が誰だか悟る。
「‥‥‥‥え、まさかジーク?」
「マジかよっ!」
『─────ちょっと、お仕置きが必要よねっ~やっちゃってよ!』
球体からの叫びと同時に、炎の塊がこちらに向かってきた。
「─────まずいっ!」
ドォォォ─────ン
中庭に火柱が上がり、辺り一面が崩壊した。
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