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ちめいしょう

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「あ、ワンちゃんっ」

 下がカオスなので二階に逃げて来ると、女の子が駆け寄ってきた。
 あの『深淵の森』であった女の子だ。笑顔でこちらに寄ってくる姿は、自分にとって稀だ─────隣にいたシロ君に向けてだけど‥‥‥‥ぐずん。

「あ、お姉さんっ!お姉さん!」

 妹ちゃんに続いて、お兄ちゃんが小走りにやってきた。
  ─────お兄ちゃんこっちに来てくれた~元気そう。 ‥‥‥‥あれ?女冒険者達は、ガクピル筋肉痛だったけど‥‥‥‥。お兄ちゃんは大丈夫なのか?─────あ、特別扱いで、『付与』増し増ししたわ。

『後は、若さですね』

─────ぐふっ。‥‥‥‥やべぇ‥‥‥‥レッドゾーンまでメンタル削られたわ‥‥‥‥

「妹の目を治してくれて、ありがとうございましたっ!」

─────目?この子目悪かったの?いつ治したっけ?
  お兄ちゃんの言っているのが、よく分らなくて思わずウィル少年を見てしまった。

「僕たちに出会った時は、普通に見えてるようでしたよ」

 ぬぅ、私か?いつやった?無意識の『治癒』の垂れ流しは、後がいろいろ怖いから、気を付けたいんだが‥‥‥‥。

『 森で「治癒」を使った後、この子撫でましたよね? 』

 ─────あ、アレかっ!! 撫でたよっ! いやちょっと待てっ!あれだけで?
 ‥‥‥‥フェンリル母さんの「 雑! 」の一言が今にも聞こえそうだわ‥‥‥‥

「‥‥‥‥ほお」

 ‥‥‥‥きぃぃぃぃと音が鳴りながら扉が開く。

「‥‥‥‥面白そうな話だな、私も参加させてもらおうか‥‥‥‥」

 ─────その顔は止めなよ‥‥‥‥。子供たちがビビってるよ‥‥‥‥。

 大人のおっさんが食い気味の顔で寄ってくるのは、子供に毒なので早々に挨拶は済ませた。
 ─────お礼?お兄ちゃんが頑張って妹を守ったから、神様がちょっとだけ『願い』を聞いてくれたんだよ~。と適当に誤魔化した。とっても素直に喜んでくれたお兄ちゃんの笑顔に、荒んだ大人の心はビシビシ総攻撃を喰らったさ‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥自分にもあんな頃はあったのだろうか‥‥‥‥。やめとけ!考えるんじゃないっ!‥‥‥‥立ち直れなくなるぞ‥‥‥‥。


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