聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

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世紀末の人

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「あ、リオさんここにいたんですか~。ドルク様が探してましたよ~」

 ドアから、ウィル少年が顔を覗かせた。

 ─────ドルク?ああ、あのおっさんの事か。
 そういえば、ギルドとやらに付き添ってくれる話だった。

「リオさん、どこかに出掛けるのですか?」

「ちょっとギルドとやらに野暮用があってね。おっさんが案内してくれるらしいから。サクッと終わらせてくるわ」

「‥‥‥‥おっさん。師匠の事ですよね。あ、リオさん刀持ってませんでした?その衣装、ちゃんと下げるようになってます」

 自分としては、アイテムボックスに入れたままでも良かったが、姫様が許してくれなかった。 
 よく見れば、左側の腰のあたりに、それ用の革紐と金具がついていた。刀を手編みの紐から外し、革紐に取り付けると黒服と相まって、ちょうどいい感じになった。

「これで、いいよね。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」

 これ以上姫様にいろいろチェックされる前に、とんずらしよう、そうしよう。

「─────あ、そうだ。姫様、コレ食べておきなよ」

 『桃ちゃん』を取り出して、サラさんに渡しておく。元気の元だから丁度いいだろう。

「甘い匂いがします~」

「こ、コレは‥‥‥‥ひょっ、ひょっとして‥‥‥‥」

「桃ちゃん。なんか色々謂れがあるらしいけど、基本元気になれる果物だよ?あ、『仙桃』って名前だったかな」

「仙‥‥‥‥」

 両手で桃ちゃんを持ったまま、サラさんはぴくりとも動かなくなった。「君達もたべてみな~」と更に上に乗せた。

「リオさん、僕もギルドの付き添いです~」

「あ、ほんと~?助かるな~」

「その服装は姫様のコレクションですか~」

「そうなんだけど、‥‥‥‥どっかおかしいかな?」

「いいえ~?僕はカッコいいと思いますよ~」

「え~ホント~」

 ─────やだな~てれるな~。
 
 遠ざかる二人。
 
「おはようございます!」

「本日は自分達が姫様の護衛‥‥‥‥サラさんはどうしたんですか?」

 ユリアに揺さぶられてもビクともしないサラは、仙桃を器用に持ったまま意識を飛ばしていた。


「よう、嬢ちゃん。随分勇ましい格好だな。どっかに乗り込むのか?」

「‥‥‥‥しないよ」

 外で馬と共に待っていたドルクは、ザ・冒険者と言わんばかりの恰好だった。
 年齢に似合わないムキムキ筋肉とヘアスタイルが相まって、自分からしたらそっちの方がよっぽどやらかす人種に見える。

 ─────世紀末の人だ。

「馬で行くって事は、遠いの?」

「─────ほれ。あそこの街のなかじゃ」

 指差す方向には、昨日は暗くて確認できなかった街並みが小さく見える。

「あんなとこに街あったんだ‥‥‥‥遠くない?」

「お主、あの『深淵の森』を抜けた来たんじゃろ?これぐらい大した距離じゃなかろう」

 ─────それはそうなんだけど。 

「リオさんは、馬乗れます~?」

「馬は乗れないけど、私には頼りになるシロ君がいるからっ!」

 そのシロ君を見れば、沢山の馬達にスンスンされ、遠い目をしている。
  大型犬サイズじゃ貫禄がなかったか‥‥‥‥。

「─────あ、そうだ。ちょっとここら辺借りてもいい?」

 出入り口付近でもなく、通行の邪魔にならなさそうな地面を指す。

「それは構わんが‥‥‥‥何をするんじゃ?」

「帰りが楽になるように、マーキングしておくの」

 言うと同時に─────ブワッと砂埃が舞う。

 埃が晴れると、そこには『印』が施されていた。

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