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肉戦争

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「はいよっ!たんと食べな」

 どどんっと目の前に並べられた、数々の肉料理の山。
 ヤバい、さっきまでポテトとスイーツを頂いたのに、まだまだ胃袋の要求が留まることを知りません。

「そっちのワンちゃんには、コレな」

 シロ君の前にデデンと置かれたのは、誰もが夢見るマンガ肉。

「─────ワワウ!ワウワウ」

 ホカホカのお肉を前に、シロ君の尻尾が止まりません。
  高速に尻尾が振られる中、勢いよくかぶりつくシロ君。興奮しているのか、ワウワウと言いながら食べている。

「シロ君、おいしい?」

「ワウワウ」

 シロ君興奮のあまり、犬と化しております。

「気に入ったみたいね。あんたには、後コレだよ」

 どどんっと更に置かれたのは、じゅわじゅわと湯気を上げながら、いい匂いを振りまいている肉の塊。

「うちのダンナ特製の、希少部位のステーキさっ」

「おおうっ!「─────ワワウっ!」ちょ、ちょっとシロ君。自分のがあるでしょっ!」

 自分のがあるのにも関わらず、私の分を横取りしようとするシロ君。 
 奪われてなるものかと応戦する私。ぬぬぬぬと競り合う私達を、マールさんは笑う。

「それが美味いってわかるんだな」

 うんうんと満足げに頷くマールさん。よく見ればさっき会った時より、何だが肌つやがいい。髪もキューティクルましましのサラサラになっている。
  
─────うん、さっきの『治癒』の余波だな。

 結構勢いよく振りまいたのからな。あの建物の近くにいた人は、もれなく何らかの変化があったのだろう。中庭いっぱいに花咲いちゃったし

─────めっちゃ機嫌良さそうだし、ま、いっか。

「そう言えば、お姫さんは、ここに来ないのですか?」

 ここは建物の外に作られた宴会場で、私とシロ君は何やら特別席とやらに座らされている。広場の中心には木が組まれ、なつかしのキャンプファイヤーを思い出す。
 火の周りでやたら髪の長い男たちが、泣き笑いながら踊っているのは、あえて触れない。

「─────まあ、酒が入った宴会だからね。おいたする奴はさすがにいないだろうけど、酔って脱ぐヤツとかいるだろ?じゃあ、ごゆっくり~」

─────私はいいのか? まあ、別にいいけど。

「よお、姉ちゃん。こんなとこにいたのか」

 ごとん、目の前に何か液体が入った、ビールジョッキのような物が置かれた。

「ワインだ。いける口だろ?」

─────わ~お。この世界で初のアルコールだよ! いけます、いけます。

 喜び勇んで口にすれば、ちゃんと赤ワインだった。ん~肉料理には合う~。

─────で、あんた誰?

 目の前には、モヒカン頭の筋肉ムキムキおっさんが、そうだろうそうだろうと頷きながら、当然のように座っていた。
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