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俺は陛下の覚えもめでたい、騎士団の元団長だ。
─────元というのは、すでに現役を引退し、後進に道を譲ったからである。
陛下からクリスティーナ姫が城から出る際、護衛に加わってほしいと打診された時は、即座に馳せ参じた。子供の頃から成長を見守ってきた、大事な姫様だ。
陛下の頼みでなくとも、護衛隊に加わっただろう。現に姫様は自分が現れた時、喜んでくださった。
現役を引退したとはいえ、現役世代の奴らには、まだまだ引けを取らないと思っていたのだが─────この様だ。
油断していた訳ではないのだが、魔物集団の強襲を受けて、一小隊をほぼ壊滅状態にさせられた。 アル坊達がいなければ俺はいま、ここにはいなかっただろう。
だが、足を喰われた俺は、これ以上姫様を守ることが出来ない。
─────やはり、年には勝てなかったという事か‥‥‥‥。
「それで、どこへ行くんじゃ?」
カタカタと車輪がついた椅子。姫様が考案した『車椅子』というものに乗せられて、俺はアル坊に寝ていた病室から連れ出された。
「すぐ下の中庭です。姫様が外のが安全だろうと‥‥‥‥」
「安全?お主らワシに何させる気なんだ?」
「俺等じゃなくて、姫様達です」
「─────達?」
実はですね‥‥‥‥。と語られた話は、にわかに信じがたいものだった。
『深淵の森』でのシルバーモンキーの討伐など、大いに興味がそそられる。
「まだ話が聞けてないですが、空から柱が降りるの見ました?─────あれも彼女が関係していると、にらんでるんです」
‥‥‥‥あれか。病室の窓からも見えた光る柱。何事かと思う間もなく消えた柱。
「異国の能力者か。そんな者がここに来たと?」
「ウィル坊のお菓子の試食に、釣られて来ました」
「‥‥‥‥それはまた」
─────ぬぅん、と急に大型犬の顔が正面に出てきて、ビクッと硬直する。
─────こ、これは。
「今は大きさを変幻させてますが─────フェンリルです」
二人に緊張感が流れるが、フェンリルはフンフンと何やら匂いを嗅ぎまくり、満足したのが何事もなかったかのように、中庭へと続く方向へ去っていった。
「‥‥‥‥幻の魔獣‥‥‥‥初めて見たぞ。あれも件の人物が連れているのか?」
「本人は、自分は一般人だと言ってますが」
─────ぜってぇ違うだろ。彼女といったな?女か?どんな大女なんだ。
中庭が近付くにつれて、野次馬なのかだんだん人が多くなっていく。そして中庭の方角から、なにやら声が聞こえてくる。
─────だから、こうっ!ここまでですっ!
─────え~~
─────それから、こう!
─────うわ~それムズくない~?
─────そして、ここにぎゅっと集中!
─────え~ぱぁ~とやっちゃダメ~?
─────駄目です。
皆の視線が集中する先には、二人の人物がこちらを背にしてかがみ込み、小枝で地面を何やらゴリゴリと描いている姿だった。
「あれは、何を話しているのだ?」
「‥‥‥‥さあ?二人にしか分からない、専門用語ですよ。─────たぶん」
「どんな大女かと思ったが、普通じゃの。何歳ぐらいなのだ?」
「知りませんが‥‥‥‥本人に聞かないほうがいいですよ」
─────すでに二回落とされた、ラングってヤツいますから。
─────元というのは、すでに現役を引退し、後進に道を譲ったからである。
陛下からクリスティーナ姫が城から出る際、護衛に加わってほしいと打診された時は、即座に馳せ参じた。子供の頃から成長を見守ってきた、大事な姫様だ。
陛下の頼みでなくとも、護衛隊に加わっただろう。現に姫様は自分が現れた時、喜んでくださった。
現役を引退したとはいえ、現役世代の奴らには、まだまだ引けを取らないと思っていたのだが─────この様だ。
油断していた訳ではないのだが、魔物集団の強襲を受けて、一小隊をほぼ壊滅状態にさせられた。 アル坊達がいなければ俺はいま、ここにはいなかっただろう。
だが、足を喰われた俺は、これ以上姫様を守ることが出来ない。
─────やはり、年には勝てなかったという事か‥‥‥‥。
「それで、どこへ行くんじゃ?」
カタカタと車輪がついた椅子。姫様が考案した『車椅子』というものに乗せられて、俺はアル坊に寝ていた病室から連れ出された。
「すぐ下の中庭です。姫様が外のが安全だろうと‥‥‥‥」
「安全?お主らワシに何させる気なんだ?」
「俺等じゃなくて、姫様達です」
「─────達?」
実はですね‥‥‥‥。と語られた話は、にわかに信じがたいものだった。
『深淵の森』でのシルバーモンキーの討伐など、大いに興味がそそられる。
「まだ話が聞けてないですが、空から柱が降りるの見ました?─────あれも彼女が関係していると、にらんでるんです」
‥‥‥‥あれか。病室の窓からも見えた光る柱。何事かと思う間もなく消えた柱。
「異国の能力者か。そんな者がここに来たと?」
「ウィル坊のお菓子の試食に、釣られて来ました」
「‥‥‥‥それはまた」
─────ぬぅん、と急に大型犬の顔が正面に出てきて、ビクッと硬直する。
─────こ、これは。
「今は大きさを変幻させてますが─────フェンリルです」
二人に緊張感が流れるが、フェンリルはフンフンと何やら匂いを嗅ぎまくり、満足したのが何事もなかったかのように、中庭へと続く方向へ去っていった。
「‥‥‥‥幻の魔獣‥‥‥‥初めて見たぞ。あれも件の人物が連れているのか?」
「本人は、自分は一般人だと言ってますが」
─────ぜってぇ違うだろ。彼女といったな?女か?どんな大女なんだ。
中庭が近付くにつれて、野次馬なのかだんだん人が多くなっていく。そして中庭の方角から、なにやら声が聞こえてくる。
─────だから、こうっ!ここまでですっ!
─────え~~
─────それから、こう!
─────うわ~それムズくない~?
─────そして、ここにぎゅっと集中!
─────え~ぱぁ~とやっちゃダメ~?
─────駄目です。
皆の視線が集中する先には、二人の人物がこちらを背にしてかがみ込み、小枝で地面を何やらゴリゴリと描いている姿だった。
「あれは、何を話しているのだ?」
「‥‥‥‥さあ?二人にしか分からない、専門用語ですよ。─────たぶん」
「どんな大女かと思ったが、普通じゃの。何歳ぐらいなのだ?」
「知りませんが‥‥‥‥本人に聞かないほうがいいですよ」
─────すでに二回落とされた、ラングってヤツいますから。
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