聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

文字の大きさ
上 下
35 / 238

本日の献立

しおりを挟む
「おいし─────っっ!!」

 莉緒は歓喜の声を上げた。
 久しぶりの味が付いた、温かい料理である。
 簡単な料理なことはわかっているが、久しぶりにちゃんとした、味が付いた料理に感激していた。
 
「お口にあったようで、よかったです~」

 給仕をしてくれるのは、雑用係だという少年。
 むさくるしい男達に交じって、なんというか笑顔の清涼感ハンパない。お姉さんその笑顔につられて、ついいい子いい子したくなる。ん?‥‥‥‥まさか、そういう要員なのか?


「─────本当なんですか?」
 
 焚火を挟んだ反対側。三人の男達が、デカい体を寄せ合いながら、ひそひそ会話を交わしていた。

「「マジ」」

「‥‥‥‥信じられないが、俺等は見た。見てしまった」

「‥‥‥‥ばあちゃんが帰って来たと思ったぐらいだ」

「にわかに信じがたいのですが‥‥‥‥。見た感じ普通の女性ですよね?背中にある武器は、見たことがない形状ですが、かなりの業物に感じます」

  莉緒は、刀帯なるものはさすがに持っていなかった為、後から何か手に入れればいいやと軽く考え、取りあえず森の中にあった蔓植物を、パンパン叩きまくり乾燥させ、何となく編み込んだだけの物に刀を縛り付けていた。自分的にはすごく出来栄えに満足していたが‥‥‥‥白陽にはすごく不評であった。

「ちなみに隣で肉食ってるのは証言通り、フェンリルだ」

「‥‥‥‥犬にしか見えませんが」

「本性はかなりデカい。目の前でしれっと変幻しやがった」

 自分のことを話しているのを察したのか、白い犬は肉を噛みしめながら────チロリと視線をくれる。
 明らかに犬のそれとは違う気配に、三人は息をのむ。

「あら駄目よ、シロ君。接待主には、愛想よくね。まだお肉もらうんでしょ?」

 ワンワンワンっ!鳴き声と共に尻尾が激しく揺れる。

「あ、シロ君おかわりですか?少々お待ちを~」

「わふっ」

 ─────ここは町の食堂か? 二人と一匹以外の心が一つになった。
 あいつ、いつの間に名前呼んでるんだ?そしてフェンリルよ、それでいいのか?お前は高位の魔獣じゃないのか?肉をねだる仕草は、‥‥‥‥本当の犬のようだぞ。
 フェンリルの尻尾は、今度は高速で揺れていた。


─────先ほどの、川原での光景が嘘のようだ。
 
 皆が皆、青い顔をしながらプルプルし、それでも急所に手を伸ばして何となく確認したいという行為だけは何とかこらえていた。

  そんな緊張感が流れる中。得体の知れない気配を放つ人物に向かって、隊の中で一番最年少の少年が、いきなり声をかけるという驚きの行動に出たのだ。

「お姉さ~ん。僕たちと晩御飯、ご一緒しませんかぁ~」

───── 血の気が引いた。
  
  何してくれるのこの子?─────マジでやめて

 「‥‥‥‥なに?ご飯、食べさせてくれるの?」

 ゆうらりと、こちらを振り向く気配に皆恐れをなすが、雑用係の少年は、至って平気な顔で先を続けた。

「本日のメニューは、たっぷり野菜が入ったじっくり煮込んだスープと、香辛料をしっかり効かせた肉料理。それとパンとなっております~。お連れ様には、肉料理を特別に用意しましょう。いかがですかぁ~?」

 雑用係の少年が、つらつらと本日の献立を発表すると、今まで辺りを充満していた得体のしれない気配が、一気に拡散される。

「はいっ!喜んで~!」

 大変ご機嫌な笑顔をいただきました。

 ‥‥‥‥全身血まみれですが。─────こわい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...