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本日の献立
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「おいし─────っっ!!」
莉緒は歓喜の声を上げた。
久しぶりの味が付いた、温かい料理である。
簡単な料理なことはわかっているが、久しぶりにちゃんとした、味が付いた料理に感激していた。
「お口にあったようで、よかったです~」
給仕をしてくれるのは、雑用係だという少年。
むさくるしい男達に交じって、なんというか笑顔の清涼感ハンパない。お姉さんその笑顔につられて、ついいい子いい子したくなる。ん?‥‥‥‥まさか、そういう要員なのか?
「─────本当なんですか?」
焚火を挟んだ反対側。三人の男達が、デカい体を寄せ合いながら、ひそひそ会話を交わしていた。
「「マジ」」
「‥‥‥‥信じられないが、俺等は見た。見てしまった」
「‥‥‥‥ばあちゃんが帰って来たと思ったぐらいだ」
「にわかに信じがたいのですが‥‥‥‥。見た感じ普通の女性ですよね?背中にある武器は、見たことがない形状ですが、かなりの業物に感じます」
莉緒は、刀帯なるものはさすがに持っていなかった為、後から何か手に入れればいいやと軽く考え、取りあえず森の中にあった蔓植物を、パンパン叩きまくり乾燥させ、何となく編み込んだだけの物に刀を縛り付けていた。自分的にはすごく出来栄えに満足していたが‥‥‥‥白陽にはすごく不評であった。
「ちなみに隣で肉食ってるのは証言通り、フェンリルだ」
「‥‥‥‥犬にしか見えませんが」
「本性はかなりデカい。目の前でしれっと変幻しやがった」
自分のことを話しているのを察したのか、白い犬は肉を噛みしめながら────チロリと視線をくれる。
明らかに犬のそれとは違う気配に、三人は息をのむ。
「あら駄目よ、シロ君。接待主には、愛想よくね。まだお肉もらうんでしょ?」
ワンワンワンっ!鳴き声と共に尻尾が激しく揺れる。
「あ、シロ君おかわりですか?少々お待ちを~」
「わふっ」
─────ここは町の食堂か? 二人と一匹以外の心が一つになった。
あいつ、いつの間に名前呼んでるんだ?そしてフェンリルよ、それでいいのか?お前は高位の魔獣じゃないのか?肉をねだる仕草は、‥‥‥‥本当の犬のようだぞ。
フェンリルの尻尾は、今度は高速で揺れていた。
─────先ほどの、川原での光景が嘘のようだ。
皆が皆、青い顔をしながらプルプルし、それでも急所に手を伸ばして何となく確認したいという行為だけは何とかこらえていた。
そんな緊張感が流れる中。得体の知れない気配を放つ人物に向かって、隊の中で一番最年少の少年が、いきなり声をかけるという驚きの行動に出たのだ。
「お姉さ~ん。僕たちと晩御飯、ご一緒しませんかぁ~」
───── 血の気が引いた。
何してくれるのこの子?─────マジでやめて
「‥‥‥‥なに?ご飯、食べさせてくれるの?」
ゆうらりと、こちらを振り向く気配に皆恐れをなすが、雑用係の少年は、至って平気な顔で先を続けた。
「本日のメニューは、たっぷり野菜が入ったじっくり煮込んだスープと、香辛料をしっかり効かせた肉料理。それとパンとなっております~。お連れ様には、肉料理を特別に用意しましょう。いかがですかぁ~?」
雑用係の少年が、つらつらと本日の献立を発表すると、今まで辺りを充満していた得体のしれない気配が、一気に拡散される。
「はいっ!喜んで~!」
大変ご機嫌な笑顔をいただきました。
‥‥‥‥全身血まみれですが。─────こわい。
莉緒は歓喜の声を上げた。
久しぶりの味が付いた、温かい料理である。
簡単な料理なことはわかっているが、久しぶりにちゃんとした、味が付いた料理に感激していた。
「お口にあったようで、よかったです~」
給仕をしてくれるのは、雑用係だという少年。
むさくるしい男達に交じって、なんというか笑顔の清涼感ハンパない。お姉さんその笑顔につられて、ついいい子いい子したくなる。ん?‥‥‥‥まさか、そういう要員なのか?
「─────本当なんですか?」
焚火を挟んだ反対側。三人の男達が、デカい体を寄せ合いながら、ひそひそ会話を交わしていた。
「「マジ」」
「‥‥‥‥信じられないが、俺等は見た。見てしまった」
「‥‥‥‥ばあちゃんが帰って来たと思ったぐらいだ」
「にわかに信じがたいのですが‥‥‥‥。見た感じ普通の女性ですよね?背中にある武器は、見たことがない形状ですが、かなりの業物に感じます」
莉緒は、刀帯なるものはさすがに持っていなかった為、後から何か手に入れればいいやと軽く考え、取りあえず森の中にあった蔓植物を、パンパン叩きまくり乾燥させ、何となく編み込んだだけの物に刀を縛り付けていた。自分的にはすごく出来栄えに満足していたが‥‥‥‥白陽にはすごく不評であった。
「ちなみに隣で肉食ってるのは証言通り、フェンリルだ」
「‥‥‥‥犬にしか見えませんが」
「本性はかなりデカい。目の前でしれっと変幻しやがった」
自分のことを話しているのを察したのか、白い犬は肉を噛みしめながら────チロリと視線をくれる。
明らかに犬のそれとは違う気配に、三人は息をのむ。
「あら駄目よ、シロ君。接待主には、愛想よくね。まだお肉もらうんでしょ?」
ワンワンワンっ!鳴き声と共に尻尾が激しく揺れる。
「あ、シロ君おかわりですか?少々お待ちを~」
「わふっ」
─────ここは町の食堂か? 二人と一匹以外の心が一つになった。
あいつ、いつの間に名前呼んでるんだ?そしてフェンリルよ、それでいいのか?お前は高位の魔獣じゃないのか?肉をねだる仕草は、‥‥‥‥本当の犬のようだぞ。
フェンリルの尻尾は、今度は高速で揺れていた。
─────先ほどの、川原での光景が嘘のようだ。
皆が皆、青い顔をしながらプルプルし、それでも急所に手を伸ばして何となく確認したいという行為だけは何とかこらえていた。
そんな緊張感が流れる中。得体の知れない気配を放つ人物に向かって、隊の中で一番最年少の少年が、いきなり声をかけるという驚きの行動に出たのだ。
「お姉さ~ん。僕たちと晩御飯、ご一緒しませんかぁ~」
───── 血の気が引いた。
何してくれるのこの子?─────マジでやめて
「‥‥‥‥なに?ご飯、食べさせてくれるの?」
ゆうらりと、こちらを振り向く気配に皆恐れをなすが、雑用係の少年は、至って平気な顔で先を続けた。
「本日のメニューは、たっぷり野菜が入ったじっくり煮込んだスープと、香辛料をしっかり効かせた肉料理。それとパンとなっております~。お連れ様には、肉料理を特別に用意しましょう。いかがですかぁ~?」
雑用係の少年が、つらつらと本日の献立を発表すると、今まで辺りを充満していた得体のしれない気配が、一気に拡散される。
「はいっ!喜んで~!」
大変ご機嫌な笑顔をいただきました。
‥‥‥‥全身血まみれですが。─────こわい。
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