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なでなでするの

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「では、隊長。我らは戻ります」

「ああ、後は頼んだぞ」

 ゴロゴロと幌馬車の車輪が動き出し、来た道を戻っていく一団を見送った。
 捜索願が出ていた人達は、一旦砦に保護する事となり、隊の半分を護衛として付かせた。
 冒険者達も保護された女冒険者達について戻っていった。
 荷台には救助された女性陣が累々と寝かされ、唯一元気な幼女が、笑顔でこちらに向かって手を振っていた。いい年をした大人が情けない姿を晒していたが、あの女の子は「いい子いい子」とラングの頭をなでていたのだ。

「俺、あの子嫁にする」

「‥‥‥‥斬るぞ」

「川の向うで、師匠の鉄槌喰らってください‥‥‥‥」

 今度ラングのじいさんに会ったら、一言いっておこう‥‥‥‥お宅のお孫さん、ヤバいです。

 他の隊員がドン引きする中、雑用係の少年の声が割って入った。

「隊長~こっちも準備できました~」

 よし、行くか。と帰っていく一団に背を向けた。

  光の柱の出現は、それこそ皆の度肝を抜いた。

 見たこともない存在感。陽の光を浴びて更に輝く光の柱は、自然と畏敬の念を抱き、それぞれが自然と祈りを捧げた。「ばあちゃんをもっと上に連れて行って」とつぶやくラングは放置しておいた。
 光る柱は、なにやら下からキラキラと輝くものを纏って、上に消えた。
  自分の見たものが信じられないと周りの人間がざわつくが

「‥‥‥‥ゼッタイ、アイツだろ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥アタノシ、限界コエマシタ」

 壊れたようにカクカクする女冒険者。

「すごかったね~おにいちゃん。ぜったいあの人だよ~」

 満面笑顔の少女。少年は、それ処じゃなかったらしく「おまえまさか、目が見えるのか!?俺が見えるか!?」と少女にすがりついている。

「うん、みえるよ~おにいちゃん」

 少女の一言で少年は大号泣。おんおんと泣き崩れ「だいじょうぶ?おにいちゃん」と撫でられていた。
 
 あらためて女性たちに話を聞くと、冒険者達は盗賊に戦闘を仕掛け、相手は大人数ではなかったが魔獣をけしかけられて、返り討ちにあった事。自分達以外に生存者はいない事。次の日に移動するとかで、捕らえられて集められている所に、大きな犬を連れた人物が潜入してきた事。
  見たことも聞いたこともない付与魔術で自分達を逃がした事。

  ─────そこまでは淡々と語ったが、それからが真骨頂とばかりに、彼女たちの話がヒートアップしていく。

「騎士の兄ちゃん分かる!?自分の意志じゃなのに、勝手にぶっ飛んでいくんだよっ!」
「木とか岩とか関係ないんだよっ!バッカンバッカン破壊しても止まらない」
「水の上を走るとか、二度とないわよね」
「レッドウルフの群れに突入したのは、地獄だった‥‥‥‥」
「問答無用で轢いても止まらない。生首が目の前に飛んでくるとか‥‥‥‥」

「何よっ!一番最悪はブラッドグリズリーでしょ!腹の中通過するとかっ!もうもうあの感触が‥‥‥‥うぅ」

─────なかなかカオスな状態になった。先頭の二人に、いろんなモノが付いてたのはそういう訳か。
 
 森の外に出た瞬間、いつくかの付与は剥がれたらしいが、暴走だけは剥がれなかったらしい。
 そのままの状態で、我々の隊に遭遇したと。─────止まってよかった。轢き殺されるところだったらしい。

 話の中にに登場する、犬をつれた人物。それがカオスの元だろう。

「その人物は、森の中で一人でいたんですか?」

「ひとりじゃないわよ~。おっきくてね可愛いワンちゃんと一緒だったわよ」
「真っ白で可愛かったよね~私、我慢できなくて、ちょっと撫でさせてもらっちゃった」

 二人ほど犬の話しか出てこなかったが、『深淵の森』で普通の犬はありえない。
  考え込んでいると、女冒険者の二人が声をひそめる。

「ダンナ方。冒険者として言わしてもらうが。あの人たちは、犬って言ってるが─────ありゃフェンリルだとアタシは思う」
「私もそう思う。フェンリル連れであの森の中にいたんだ」

  女冒険者達の話から総合すると、出会った人物は変わった服装で、フェンリルを連れて、見たことのない魔術を使う。
   捕まっていた自分達を逃がしてくれた事から、悪人ではないだろうが。

 ─────普通じゃない。

 その人物が、あの少女の目を見えるようにしたと思われた。

  兄と呼ばれた少年にも話を聞いたが、少女は生まれつき、視力が弱かったらしい。
 少女本人に聞けば「なでなでしてもらったらね、ぱあぁ~てしてね!げんきになったの」と答えてくれた。‥‥‥‥だから、ラングの頭撫でてたのか。

 件の人物は、冒険者達が言うように普通じゃないだろうが、話は出来そうだと踏んだ。


「─────へっへっ─────ぶわっくしょいっ!」

「おいっ!逃げられたじゃないかっ!」

「ゴメン、シロ君。誰かにウワサされてるらしい」

「なんだソレ」

 呆れながらも律儀な白陽は、前足で魚を莉緒の方へ飛ばした。

─────ウェーイ 夕飯ゲット~!


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