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旅立ちの日

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「まだかなり雑だか、最初の頃よりましじゃろう」

 ブートキャンプから数日後、お母さんフェンリルから及第点をいただきました。

「後は、実践と経験値じゃな」

 お母さんフェンリルからは、能力の基礎的な使い方を習いました。体に魔力を流して纏わすってヤツね。
 ちなみに、全ての能力は把握できませんでした。というか、あきられた。
 
 なんの能力があるのかと尋ねられた時、例のどデカい派手々ピカピカ目に優しくない、『ステータス』画面をフェンリル親子の前に出したら、お母さんフェンリルは「まぶしいのぅ」と目をつむられ、息子ちゃんは半眼になっていた。

「能力の開花は、自分で頑張るんじゃ」

─────の一言で終わった。 

  そして、本日フェンリル親子とお別れの時が来た。
 いや、自分としてはこのままここにいてもいいのだが、一つだけ問題があった。

 ─────食である。

 日本人である自分としては、そこは大問題だった。
 息子ちゃんが肉とか捕ってきてくれるが、味の問題にぶち当たった。
 
 ─────塩、ほしい。と
 
 今まで採ってきた『松茸』と見せると「それ旨いか?」って息子ちゃんに微妙な顔をされた。「若造にはまだ解らんのよ」ってお母さんフェンリルの一言。
 ちなみに『イチゴ』は親子共々ジトーとした目でみられた。「お前‥‥アレを採ったのか」と─────採りましたよ?ぷちっとね。三つ子ちゃんには大人気だよ?え、三つ子ちゃん採りに行きたい?‥‥やめようか。

「異世界人は食に拘るからな。とりあえず、人族が住む方へ行ってみた方がよいじゃろう」

  そして、旅立つ日が来たのである。

「リオ、お前に餞別をやろう」

 そう言って取り出したのは、あの時の牙。
 持ってみろというので、片手ではとても無理なので両手で持ってみる。

「─────お主の望む武器を想像しろ」

 そう言いながら、額にいつかの花の紋様が浮かび上がる。
 
 ─────ちょっとまって!?武器!?武器?そんなの今まで考えた事なかったんだけど!えっとえっとえっと

 ─────フェンリルの牙が変幻し形が変わる。
  
「やはり、それを出すか」

「‥‥‥‥うわぁ、綺麗‥‥‥‥」

 それは陽にかざすと、細かくチラチラと輝いて、何とも美しい白い刀だった。

  ─────やっぱり日本人はこれだよね。

 それに付随するように、鞘も出てきた。
 外装にフェンリルっぽい動物のシルエットが描かれている。可愛くて気に入った。

「牙ってこういう使い方できるんだ」

「使われると、面白くないとゆうたであろう」

 ─────お主は別じゃぞ。一言付け加えられて、んふふふんと二ヨってしまった。

「それから息子よ。お前はリオに付いて行け」

「「ええっ!」」

 思わぬお母さんフェンリルの発言に、両者の声がハモった。いや、自分としては心強いんだけど。

「お前も十分力をつけた。ここからは外の世界を見てこい。そして更に強くなれっ」

 おお、お母さんフェンリルカッコいいッ!

「─────ですが、母上」

 急な事にとまどう息子ちゃんの元に、三つ子ちゃんがコロコロと集まる。

「にいたま、りおといくの~すごい~」

「にいたま、つよくなっちゃう~」

「さすがにいたま、かっくいい~」

 三つ子ちゃんのキラキラ眼差しに、キリリと座り直すお兄ちゃん。

「ま、まあな。リオ一人では何をするか解ったもんじゃないからな。俺がしっかり監視しないとなっ!」

「さすが、ぼくたちのにいたま~」

 ふんすふんすと鼻を鳴らして、ドヤ顔を決める息子ちゃん。いいのかそれで

「にいたま、たんじゅん~」

「まあまあ、そこがにいたまのいいとこなんだから~」

 コソコソと小声で話す三つ子ちゃん。───いや!可愛い顔して、黒いわっなんて事!‥‥‥‥好き。

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