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異世界人です

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 ちょっと聞きまして!?奥様~
 変声期前の少年っぽい声で 「母上」ですって~~かわい~い~
 
「ああ、この通り無事だよ。息子よ」

 親子が無事を確め合っているのね~いいわ~麗しい光景だわ~。息子ちゃんお母さんよりだいぶ小さいけど、人間サイズの自分からすれば、両手を広げてもきっと腕が届かない大きさよねっ確めたいわ~モフりたいわ~

「‥‥‥‥よかったです。しかし姿が変わられましたが‥‥‥‥」

「そこなおなごの仕業でな、傷が治ったばかりか、ちょっとばかり進化したようじゃ」

「‥‥‥‥進化。あの、さっきから気になってたんですが、この妙な動きをしている人間は‥‥‥‥人間なのでしょうか?」

 え~息子ちゃ~ん「人間なの?」はなに~?妙な動きって何かな~?君をモフりたくってちょっとニヨニヨしてるだけなんだけど~やだ~耳「ヒコーキ」にしないで~怖くないよ~ほら~怖くないよ~~

「息子よ。これが『異世界人』じゃ」

 そうです。私が『異世界人』です。って事でモフっていいですか?

 ────モフれませんでした。

 何故なら息子ちゃんに、更に引かれたからです。

『自分の顔見てみますか?ヤバいですよ』と『ナビ』画面が出た。

─────な‥んだ‥と
 
 母親フェンリルさんに、場所を変えようかのって言われちゃいました。‥‥‥‥ぐすん。
  
  立ち上がった母親フェンリルさんは、さすがの貫禄ですごく綺麗だった。さっきまでうすらぼんやり光っていたがそれも収まって、額の花のような紋様も消えた。今や月の明かりだけである。
 そんな月明かりに、窪みの崩落現場から何かが反射している。

「あ、そういえば歯が‥‥‥‥生えてるのね」

 言いかけた自分に、ニヤッと歯を全部見せてくれた。とっても鋭そうな歯がそれはまぁキレーに並んでいた。欠損部分も治っちゃったのか~。

「とはいえ、あのままでは他の奴らに使われる。面白くない」

  ということで、息子ちゃんが取りに行きました。

 移動した先は、火事現場。もとい、さっき火を焚いていた、かまどのある川原。

「‥‥‥‥お主の仕業か」

 周りの惨状を見ながら、ジト目で見られましたが、何のことかな~とスルーして火の消えたかまどに枯れ枝などを入れた。
 
 ‥‥‥‥え~と、火。 あ、お母さんフェンリルが軽く息を吹きかけて点けてくれた。

「お主、この世界に来てどれぐらいたつ?」

 火の回りに横たわりながら、お母さんフェンリルが訊ねてきた。
 自分は反対側の石に腰かけ、月の出る夜空を見上げながら

「────半日、かな」

 ここへ来たときは、陽が真上にあったし、今は暗い。時間としてはそれぐらいしかたってないだろう。半日、半日か~いろいろありすぎじゃん。ハイライトの消えた目に重めのため息が出た。 
 
 お母さんフェンリルは、さすがにびっくりしたのか、お目目がまん丸になった。「‥‥‥‥それは、また」って呟いてる。ちなみに息子ちゃんは川原で、お母さんフェンリルの牙を洗っているが、お耳はこっちに向いているから話は聞いているようだ。

 こちらへ来いと許可が出ましたので、お腹辺りのモフモフに全身包まれつつ、ここまでの顛末を、お母さんフェンリルに説明しているうちに、火の暖かさと極上のモフモフ加減でいつの間にか寝落ちした。

─────至福。
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