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第2章
第21話 大将軍任命式典
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戦後、ザルツブルクに入り施設を確認していった。やはりライダーは犯罪に手を染め、地下には誘拐した女獣耳族や子供、剣闘士用の奴隷や麻薬など大量に発見した。そのため、すぐにステュディオス王国軍に通報したのでステュディオス王国では指名手配されて追われる身となった。まだ、フェロニア市内に潜伏しているだろうから、いずれ捕まることだろう。
ポイズンファング傭兵団の財産も全てオーディン傭兵団のものとなり、ルーファスは国内で4番目の実質的な武力と権力を持つ大傭兵団のトップとなった。
アナスタシアの言う通り、ルーファスはライダーとともに違法な悪事に手を染めていた傭兵の入団を拒否して衛兵に引き渡した。結局、オーディン傭兵団は総勢11000人という、ステュディオス王国で3番目に団員数の多い大傭兵団となった。
この結果をフェレール元帥から受け、四大将軍アルベールの推薦状も考慮され、ステュディオス王国元老院は急遽ルーファスを四番目の大将軍として認めることとなる。
ただ今はオルドリッジ王が自らヴァルビリス帝国軍と戦うために戦場に出ている。そのため正式な任命書はオルドリッジ王が主戦場となっているアルアバレル平原から戻ってきてからになった。
そして、大規模な市街戦をした混乱を早急に鎮めるため、2日後に四大将軍就任パレードを市内にて行うことになる。
ーーー2日後
「「「きゃあああああああああ! フェロニアの貴公子ルーファス様ぁ~!」」」
「「「赤髪の鬼姫! ティナお姉様~!」」」
「「「ガディの兄貴ぃ~!」」」
「「「寡黙のダグラス様ぁ~!」」」
「「「オーディンの心臓、ニコル様ぁ~!」」」
「「「空気のロンド様ぁ~!」」」
さすがに1番人気である主力メンバーへの声援が大きなものとなっている。寡黙のダグラスやオーディンの心臓ニコルという通り名は分かるが……空気のロンドってなんだ!? キラキラと光輝くようなオーラを放つ隊長たちが際立っているオーディン傭兵団の中でも、ロンドが空気のような存在だからか? 確かに他のメンツは個性の濃い者が多いからな、ぷぷぷっ。ちょっと面白かったから後でイジってやろう。
ルーファス大将軍のパレードには貴族から大商人、元王族までが駆けつけ、ルーファスとコネクションを作ろうと躍起になっている。ちなみに王族というのは、旧イシュタル王国の王族のことを指す。オルドリッジ王は前王朝イシュタル王国で革命を起こして王朝を倒した際、悪事に手を染めていない王族や上級貴族たちの罪は問わなかった。麻薬や奴隷、奴隷剣闘士等の非道な事を働いていた者は新国法にのっとって裁いた結果、処刑になったものは多くいたようだ。長い間、ピラミッド式になっている特権階級の頂点で君臨していた王族の腐敗は酷く、13家あった王族のうち、12家は取り潰しにあったのだ。
パレードが終わるとパーティー会場に移動し、祝賀会がはじまった。俺たち3人にもルーファスから特別招待客として招待状が届いていた。招待状の差出人の名前はフェルディナンド伯爵の名で来ていた。
姓を持つ事が許されるのは貴族だけだ。平民は名しか持っていない。平民から異例といえる昇進を果たしたオーディン傭兵団の隊長クラスは姓を持つことが許された。名前が変わったので、今まで聞いていた詳細情報も一緒にまとめてみた。
(ルーファス・フェルディナンド伯爵)
フェロニア市、東に拠点を持つ中規模の商人の3人兄弟の長男である。幼少時、身分最下層の奴隷剣闘士から這い上がり、遂には革命を起こして国王にまでなったオルドリッジ王に強い憧れをいだき、家を出て冒険者となる。ガディとティナは幼馴染で2人を冒険者に誘い、冒険者パーティーを作った。冒険者としてあっという間に頭角を現し、その後オーディン傭兵団を結成。最大のライバルであったポイズンファング傭兵団との戦いに勝利し、四大将軍となった。目標だった上級貴族になったので、さらなる上を目指している。心中にある秘めた野望は大きい。
(ガディ・ヴィルヘルム男爵)
通常の物よりも刀身が数センチ分厚く、長い巨大なツーハンデッドソードの使い手である。真っ直ぐで駆け引きのできない性格であるため、ルーファスとニコルの立てた作戦を台無しにすることがよくあるが、類まれな鍛え上げられた武力で切り抜ける事ができている。酒が大好きで遠征が終わると部下や友達を引き連れて飲みに行きおごっている。甘いものは苦手である。
ガディの親は両親ともにBランク冒険者で強者として有名であった。ルーファスの親が経営している商店の専属の護衛をしていた。数年前に大迷宮から出てきた脅威度ランクSファイアードレイクの足止めをし、オルドリッジ王が来るまでの時間を稼ぐことに成功した。が、2人ともに壮絶な死闘の最中、絶命した。2人が命のすべてをかけて与えたダメージがあったこともあり、オルドリッジはファイアードレイクを倒すことができた。
(ティナ・アーデルハイト男爵)
花屋の1人娘である。ルーファスの親が経営している商店に花を納める仕事をしている。そのため、ルーファスとガディとは幼馴染でよく遊んでいた。2人が成人した時に誘われて冒険者となった。敵100人に囲まれても折れない強い心を持ち、躊躇なく敵を殲滅する苛烈な戦いをする一方で、家事はプロフェッショナル級の腕を持つ女の子である。最近の悩みは、初めて本気で好きになったセシルをどうすれば自分のものにできるかであり、頻繁にルーファスと相談している。ガディも妹分の悩みを解決しようと相談に乗ろうとしてくるが、ティナは無惨にもその申し出を断っている。
(ニコル・グュスターブ男爵)
小規模な商人の3兄弟の長男で、自分は家の家業を継ぐものだと、つまらない日々を送っていた。そんな時、自分と似たような境遇を持つルーファスが冒険者として活躍している事を様々なところで聞き、次第に強い憧れを持つようになった。そしてついにその気持ちを抑えきれなくなり、家を捨てルーファスの冒険者パーティーに入れて欲しいと打診したところ受けいれられた。今ではルーファスの目標を叶える事が自分の目標になっている。元商人ということもあり、交渉ごとや根回しが非常に上手くできる。傭兵団の金庫番でもある。そういう意味では代えのきかないオーディン傭兵団の要となっている。
(ダグラス・ディルフベール男爵)
親も兄弟もすでに亡くなり天涯孤独な生活をしており、フェロニア市外にあるニダ村の屠畜場で働いていた。ある日、ニダ村の近くでゴブリンのスタンピートが起こり、100体を超えるゴブリンがニダ村を襲った。ルーファスらオーディン傭兵団が冒険者ギルドから依頼を受けてニダ村に急行した。そこでルーファスたちが見た光景は、屠殺で使用するハンマー2本を軽々と小枝のように振り回し、ゴブリンたちを潰してまわる体中ゴブリンの返り血で真っ赤なダグラスであった。1人でろくな武器も持たずゴブリンを滅ぼしてしまう。その強さを見たルーファスがダグラスをオーディン傭兵団に誘ったのであった。実は子供が好きで、子供にすぐになつかれる。
(ジェイコブ・ロンド男爵)
元々上級貴族の9男であったロンドは、実家である男爵家から成人になると追い出された。家を出た上級貴族の息子は下級貴族である騎士爵にまで爵位が下がってしまう。その後、フェロニア市の東で小さな傭兵団の団長をやっていたが、市民に人気のあるルーファスを妬んで傭兵団戦を挑み、完敗して全てを失った。その後、ルーファスの人柄や将来性を高く評価し、オーディン傭兵団への入団を決める。ロンドの夢であった上級貴族に返り咲いて自分を追い出した兄弟たちを見返したいという野望をルーファスに託している。
ーーー祝賀パーティー会場
祝賀パーティーがはじまると、来訪者は次々と主役であるルーファスと大幹部たちに挨拶に行く。平民である俺が貴族を押しのけて真っ先にお祝いに行くと、色々と不興を買うかもしれないのでルーファスたちが落ち着くのを待っていた。
ようやく一段落ついたので話しかけてみる。
「ルーファス……いや、失礼しました。フェルディナンド大将軍閣下かな? フェルディナンド元帥閣下とお呼びすればよいのだろうか? 元帥への就任おめでとうございます」
「セシルたちはそう堅苦しくなく、いつも通りでいい。私たちは友人じゃないか、なぁガディ」
「そうだぜ! 俺らはマブダチだろ。地位が上がって上級貴族になっても友情は変わらないぜ」
「ありがと! オイラは嬉しいよ。みんな豪華な貴族の衣装が似合ってるよ!」
パックの褒め言葉を聞いて、椅子からティナが立ち上がった。ガディの正装姿は野獣が背広を着ているようなツッコミどころ満載だったからだ。
「あら? 馬子にも衣装ってよく言うわよね。ガディが立派な礼服を着てるのはじめて見るけど、本当に似合っているわ。意外よね、ねぇニコル」
「ああ、そうだな。礼服もいいが、やはり俺はガディの鎧姿が一番安心するな。いつも傷だらけの鎧で俺たちのでっかい壁になってくれていたからな、ガディはな」
「おいおいニコル! そんなに褒めんなよ。照れんだろ!」
こうやってじゃれ合うのも、いつもよりもテンションが高い。目標だった貴族になることができて、みんなは喜びを顔にみなぎらせている。
「はははっ、ルーファスがステュディオス王国軍元帥で上級貴族の伯爵。ガディ、ティナ、ニコル、ダグラス、ロンドが大将で上級貴族の男爵。その他の幹部30人が騎士爵扱いの下級貴族か。みんな大出世おめでとう!」
「大出世……おめでとう……ございます……」
「「「ありがとう!」」」
「あら、ダグラスとロンドの声が聞こえなかったわよ。こういう時くらい礼儀として返しなさい」
「…………………………………………………どうも」
「「「なっ!」」」
な、なんだと! ダグラスの声は初めて聞いたぞ! あいつ、口がきけたのか!? 一切喋らないから口がきけないのかと思っていたぞ。この場にいる全員が口を大きく開け驚いている。まさかダグラスが本当にお礼を言うとは思っていなかったらしい。
「うるせ~、お前なんかに祝ってもらいたくねぇ~。失せろ!」
「ロンドがデレ過ぎてるから通訳すると、ありがとう感謝してるって、言ってるわ」
「ティナ! てめぇ~、勝手に通訳するんじゃねぇ~! そ、そんなこと一言も言ってねぇ~だろ!」
ツンデレすぎだろロンドよ。俺への招待状を出し忘れないように、気をつけていたのはお前だとニコルから聞いて知っているぞ。まあ、友達の出世は嬉しいよな。フェロニア市でも気のいいやつらに出会えて幸せだよな。
「おっと、忘れるところだった。これは俺たちからのお祝いな」
『ドーン!』
アイテムボックスから1個5メートル、3段重ねの巨大なケーキをテーブルの上にだした。通常はウェディング用だが、このようなお祝いの席にも豪華絢爛で合っている。
「これがパックが前に言っていたケーキというものか? ずいぶん豪華な物だな。まさに王侯貴族でも食するような物で驚いたぞ」
「そうそう、豪華でエレガントなデザートはみんなが大出世したお祝いには相応しいと思うよ!」
「今日は立食パーティーだから、少し小さめに切るから、みんな食べてくれ」
アイテムボックスから皿とフォークを大量に出し、まずは元帥となったルーファスに差し出す。
「むぐむぐ……な、なんだ! これは本当に食べ物なのか! 信じられん、神界のデザートだ! みんなも食べてみてくれ!」
「むぐむぐ……え、ええ! なにこれ美味しすぎるわ! 信じられない!」
「………………………………………………ウマッ」
ダグラスも喜んでいるようで良かった。それに釣られて元王族から貴族、商人と食べては称賛し、大忙しとなった。特に俺を見つめる女子の眼差しが熱いこと、胃袋をガッチリ掴んでしまったようだな。どこでお店を開いているとか散々質問された。
「ぐぬぬ、ちょっと、甘すぎるな」
ただ、ガディだけは甘いものが苦手らしく、ひとくち口に入れてその後は手をつけなかった。悔しいから甘くないデザートでリベンジするぞ。
そうだ! やつが好きな酒がたっぷり入った甘くないサバランでも作ってやるか。
「マジで美味いな。そうそう、セシルに言い忘れていた。式典が終わった後で用があるから、控室で待っていてくれ」
「ん? ニコルは俺に何か用があるのか? 分かった、ケーキを配り終わったら控室で待っている」
「前に会わせたことがあるが、ウォルドーフ卿の事でちょっとな。時間を取らせちゃって悪いな」
「ウォルドーフ卿の件って何だろね? ああ、奥さんが病気だったという話か」
「カーバンクルの……額についてる宝石が……治療に必要ということでした」
ーーー数時間後
式典終了後、ウォルドーフ卿の件で話があるから待っててくれということなので控室で待っている。ルーファスと大将以上の幹部、執事ブルディが俺を呼びに来た。そのまま馬車でウォルドーフ卿のお屋敷に直行した。ウォルドーフ卿の大きな馬車は12人は乗ることができる。
屋敷に入ると執事ブルディの後ろをついていき、執務室に通された。大将軍任命式典の後、すぐに呼ばれるとは大将軍といえどスポンサーとなっている公爵には勝てないか。
『ガチャッ』
「やあ、ルーファス君。先程は素晴らしい式典だったそうだね。ついに目標だった、四大将軍と晴れてなることができて私も嬉しいよ。私は参加できなくて本当にすまなかった」
「全てはウォルドーフ卿のお力添えがなければなし得なかったことでございます。私たちの方こそ、卿に心より感謝しております」
頭を下げるオーディン傭兵団の幹部たち、俺たちは関係ないが一応頭を下げておいた。
「それで、早速要件なのだが、妻の容体が悪化してな。急遽迷宮に潜ってカーバンクルの額の宝石を取ってきて欲しい。修道士が言うには、次の発作がきたら妻の体力が持たないらしいのだ。ルーファス君頼む! 妻を救ってくれ!」
「ええ、もちろんすぐに地下迷宮に向かいま……」
『バンッ!』
ドアを強引に開け、女の子が飛び込んでくる。ウォルドーフ卿の娘ミリネラだ。
「お父様! お母様が、お母様がぁ~!」
「ミリネラどうしたのだ! ま、まさかもう次の発作が起きたのか?」
「うううっ」
『バァ~ン!』
ミリネラは泣くばかりで声にならない。ウォルドーフ卿は応接間から飛び出し、妻の寝所に走っていく。ルーファスと俺たちもウォルドーフ卿の後ろについて走る。
寝所に入ると、エロース神殿の修道女が首を左右に振っている。ロウのように真っ白な顔色の奥方は危篤状態ですでに意識がなく、ベッドの上で死を待つのみとなっていた。
「ブリトニー逝かないでくれ! 逝ってはいけない! 頼むから目を覚ましてくれ! ブリトニー!」
ウォルドーフ卿の必死の思いにも妻ブリトニーは答えることも出来ない。こげ茶色の顔色と真っ白な唇が、彼女の命の灯火が尽きかけていることを予感させた。
「お母様! お母様! 死んじゃやだ! ミリネラを置いていかないで!」
ミリネラはブリトニーの手を握りしめ、母親を失いたくないという悲痛の叫びを聞き、俺は胸が張り裂けそうになる。
「セシルゥ~、なんとかしてあげてよ。ミリネラが可哀想だよ!」
「店長……助けてあげて……お願い」
母を思うミリネラに同情したパックとホリーは目に涙を浮かべながら懇願してくる。ギュッとホリーの小さな手が俺の腕を掴んだ。
俺の目標はあくまでも魔龍討伐だ。その討伐に失敗すると世界が滅亡するだろう。だから基本的に権力者には関わらないように、目立たないようにしたいのだ。権力者という存在は究極の我儘な存在だからだ。今回もルーファスが四大将軍になった記念すべき日なのにも関わらず、最大の支援者という公爵の立場を利用し、今すぐ迷宮に行きカーバンクルを仕留めてこいなどという無茶ぶりをしてきた。
通常なら無視だが、愛するホリーと大切な相棒パックがそこまで助けたいと言うならば、条件次第では救ってやってもいい。
「ちょっといいか? 俺はウォルドーフ卿の奥方を治すことができる。ただし、俺が提示する条件を聞いてもらえれば治してやろう」
「なっ!? それはあなたには無理です。私はエロース神殿の使いで来た神聖魔法の使い手ボニーと言います。国内最高峰《ハイリカバリー/上位回復魔法》まで使用できます。ですがこの症状を治すには《フルリカバリー/フル回復魔法》が最低でも必要です」
「えっ!? ボニー様、奥方はその魔法を唱えることができれば治るのですか!」
「「「ああああああああああああっ!」」」
オーディン傭兵団のみんなが、《フルリカバリー/フル回復魔法》で治すことができると聞き、一斉に俺を見る。
「ウォルドーフ卿! セシルは《フルリカバリー/フル回復魔法》の使い手です! セシルなら助けられるかもしれません」
「なっ!? そんな馬鹿なことが! 現在世界で《フルリカバリー/フル回復魔法》を使うことはできるのは、遠くパルミラ教皇国聖女アリシア・クレスウェルだけです。嘘をつくのをやめなさい」
「ボニー殿、オーディン傭兵団のみなさんは嘘をつくような者たちではないのだ。セシル殿、その条件とは何ですかな?」
「あなたは本当にお母様を治せるの? 治しなさい! お願いよ! 今すぐお母様を治してよぉ~!」
この状況でもさすが大物貴族ウォルドーフ卿は冷静だが、ミリネラは子供だから話の途中で割り込んできた。公爵家ご令嬢という仮面を脱ぎ捨て、本性が剥き出しになっている。
「ああ、治す報酬は、俺が治したことを誰にも言わないこと。この場の全員に箝口令を敷くこと。出来るか?」
「!? それはどういうことですかな?」
「俺には世界の行く末を左右するような大事な目的がある。そのためにはあまり目立つことは出来ないのだ。特に俺の持つ強大な力を権力者に知られるわけにはいかないのだ。それが守られるようなら、奥方を治して差し上げよう」
「……そうか、お前は重要な任務があるのだな。その理由のためにセシルはオーディン傭兵団にも入らなかったのか」
「……そうだ」
「そのようなことなら問題ないだろう。この場にいるヒューマンに、私を裏切るような者はいない。そうですな」
ウォルドーフ卿は迷うことなく決断する。そして、この場にいる者に睨みをきかせ、無言で威圧をする。先程までの友好的な雰囲気とは違い、強大な権力を持つ公爵としての迫力がある。
「「「はっ! この命にかけて、ウォルドーフ卿のおっしゃることをお守りいたします」」」
全員がそう宣言した。俺は命をかけて守るという言葉を聞き、ブリトニーの側によると手を彼女の額にかざした。
《フルリカバリー/フル回復魔法》
『フォン、フォン、フォン』
俺が呪文を唱えると、神々しい光が周囲に集まり、ブリトニーの全身が強烈に光ると徐々に光がおさまっていく。
「……………………………………………………」
「あれ、治っていないな? 意識が戻らないぞ」
魔法の詠唱は成功したのに、ブリトニーの意識が戻らない。なぜだ? 《探査マップ/神愛》でステータスを確認しよう。
●名前:ブリトニー・ウォルドーフ
●年齢:29歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市、ウォルドーフ公爵第一婦人
●身長/体重:160/38
●髪型:金髪ウェーブロング
●瞳の色:青色
●スリーサイズ:84/54/88
●カップ/形:H/さら型
●経験:あり
●状態:昏睡、呪詛によりHPが毎日5%減り、回復魔法の効果無効
●ベースレベル:32
●職業:レベル2聖騎士
ブリトニーの病気が治った雰囲気がないので《探査マップ/神愛》で確認するとバッドステータスの原因は呪詛であった。この国って呪詛が多いのか? オルドリッジ王も呪詛で苦しみ血反吐を吐いていた。奥方に起きている体調不良の原因が呪詛だと分かればすぐに解決だ。
「どうやら単純な病気というわけではないようだ」
「セシルの魔法でも無理なのか?」
「いや、原因が分かったからなんとかなりそうだ。もう1つの魔法を唱えるからみんな離れていろ」
《リムーブ・カース/解呪》
『フォン、フォン、フォン』
魔法により呪いが解けると、ブリトニーの体から黒い霧のようなものが出てきて人型のような形を形成しだした。
「な、何か出てくるぞ! みな戦闘態勢に入れ! 討伐は任せたぞ!」
「「「はっ!」」」
「ウォルドーフ卿とミリネラ壌はこちらへ」
「うむ」
咄嗟に全員が武器を構え、戦闘態勢に入った。さすがAランク傭兵団、反応が早い。ルーファスはベッドで寝ているブリトニーを抱きかかえ、すぐに部屋から飛び出した。
黒い霧は徐々に人型に収束し、次第にその正体が明らかになってくる。
「あ、あれは!? 脅威度ランクCレッサーデーモンだ!」
「なかなか面白そうなのが出たな! ここは俺に任せてくれ」
「仕方のない脳筋男ね。ガディに任せたわ」
「うははははっ! 思わぬところで盛り上がってきたぜ! 少しは持ちこたえてくれよ!」
ガディに戦う相手が決まったところで、レッサーデーモンは完全に具現化して襲いかかってきた。
●魔物名:レッサーデーモン
●状態:殺意
●脅威度:C
●HP:1861
●MP:1927
●腕力:935
●体力:926
●敏捷:942
●知力:972
●魔力:955
●器用度:988
●スキル
呪文無効化2、毒爪3、暗黒魔法2、仲間を呼ぶ
●詳細情報
山羊頭と4本の腕を持つ、赤紫色の筋肉ダルマである。悪魔族では最下級であるがHPが高く、強さの割には得られる経験値も少ないので冒険者には忌み嫌われている。
暗黒魔法レベル2程度の魔法、呪文無効化能力、仲間を呼ぶなどの能力があり、グレーターデーモンほどではないにしろ経験の浅い冒険者にとっては脅威である。ゴールドプレートを持つ熟練の6人パーティーでレッサーデーモン1体と戦うのが通常である。
~~~戦闘開始
◎レッサーデーモン×1(1)
イニシアティブはガディが取った。ガディは狭い部屋の中での戦闘なので、自慢のツーバンデットソードは抜かず、腰にさしていたショートソードを抜いた。
「オーラ! オラオラオラオラオラオラァッ!」
『ドガガガガガガガガガガッ!』
「ウギャアアアアアアアアアアアッ!」
ガディは1回の攻撃で10発をレッサーデーモンに命中させ、合計で2920のダメージを与えた。レッサーデーモンは体中をショートソードで斬り刻まれ、両手両足や首も切断されて絶命した。完全にオーバーキルであった。
~~~戦闘終了
「うひゃ~! オイラはレッサーデーモンはタフだと聞いていたけど、ガディにかかったら1ターンで瞬殺だったね!」
「まあな! 全く張り合いのねぇ~悪魔だよ。わざと1回くらいはやつの攻撃を受けてやっても良かったな」
「こらこら、そんな暇はないでしょう。ここはウォルドーフ卿のお屋敷なのよ。私たちもルーファスを追いましょう」
「ほ~い」
ルーファスら4人は別室の客までブリトニーを寝かせて退避していた。まだ目覚めてはいないが、彼女の顔色が青ざめていたものから血色の良いピンク色に変わる。ステータスからも呪詛のバッドステータスが消失していた。レッサーデーモンを倒して呪いが解放されたということは、やはり誰かが悪魔と契約を結んでブリトニーを呪っていたのだな。ということは呪っていた呪術師は今頃呪い返しで死んでいることだろう。
「う……う~ん、あなた」
「ブリトニー! 意識が戻ったのか? 大丈夫か?」
「お母様~! うぁあああああああああああ! ¥€℃°£¢√πµπ±∆µ√π∆」
目覚めて腰を起こしたブリトニーの膝に、ミリネラは抱きつき顔を埋めた。泣きながら何かを言っているが言葉にならない。
「あらあらあら、この娘はまだお子さまなのだから。よしよし。あなた、もう大丈夫みたい。昨日から意識が全くなかったのだけれど、今は意識がハッキリして心も安定しているわ」
「そうか……そうか良かった。そこにいるセシル殿がお前を救ってくれたのだ。セシル殿には心から感謝する。君が困ったことがあったら、私に言いなさい。我が家名とこの命をかけて君のために動くことを誓うぞ」
「セシル様、助けてくださりありがとうございます。心から感謝いたします。ああっ、この恩をどうすれば返すことができるのでしょう」
ブリトニーは丁寧に頭を下げて、俺にお礼を言ってくる。公爵の奥方なのに、一般人に偉ぶることもないとは良い人間だな。
「そんな丁寧に俺にお礼をされると照れるな。なぁ、ガディ」
「バカ野郎! こんな厳粛な場で俺に話を振るんじゃねぇ~!」
「ははは、違いないな。俺はこんな感じの人間なんで頭なんか下げないでも大丈夫だ。約束さえ守ってもらえればいい」
「セシルもガディも適当なヒューマンで困るよね! オイラはもうちょっと、2人はちゃんとした方がいいと思うよ! ましてやガディは男爵で貴族になったんだしさ! 貴族の話し方とかあるじゃない」
「パックの言う通りだと私も思うわよ。本当に恥ずかしいったらないわよ。ポルトヴェネレに帰ったら、特訓よ。覚えるまでは絶対寝かさないから覚悟しなさいよ」
「うはぁ~。相変わらずティナは俺にはキツイな」
「自業自得よ」
「違ぇ~ね~な」
「「「はははははははははははははははっ!」」」
部屋中、笑い声で一杯になった。ルーファスもウォルドーフ夫妻もミリネラもみんな大爆笑だった。雰囲気が良くなったところでお暇することになった。奥方が呪詛だったことをウォルドーフ卿に話すか話さないかの選択はルーファスに任せる。
帰り際、執事ブルディが俺に治療のお礼に白金貨の入った袋を渡してきた。すでにお金は白金貨を相当な数を持っているが、お礼を辞退するのは失礼だし貰っておいた。袋を開けると白金貨が100枚も入っていた。日本円で1億円をポンと出すとは、金持ちってどこの世界にもいるのだな。
日本にいた時は、貯金は研究開発につぎ込んでしまっていたのでほとんどなかった。この異世界ラティアリア大陸ではブルジョア層にいれることは嬉しいことだ。地球でやり残した研究を好きなだけできるしな。
ポイズンファング傭兵団の財産も全てオーディン傭兵団のものとなり、ルーファスは国内で4番目の実質的な武力と権力を持つ大傭兵団のトップとなった。
アナスタシアの言う通り、ルーファスはライダーとともに違法な悪事に手を染めていた傭兵の入団を拒否して衛兵に引き渡した。結局、オーディン傭兵団は総勢11000人という、ステュディオス王国で3番目に団員数の多い大傭兵団となった。
この結果をフェレール元帥から受け、四大将軍アルベールの推薦状も考慮され、ステュディオス王国元老院は急遽ルーファスを四番目の大将軍として認めることとなる。
ただ今はオルドリッジ王が自らヴァルビリス帝国軍と戦うために戦場に出ている。そのため正式な任命書はオルドリッジ王が主戦場となっているアルアバレル平原から戻ってきてからになった。
そして、大規模な市街戦をした混乱を早急に鎮めるため、2日後に四大将軍就任パレードを市内にて行うことになる。
ーーー2日後
「「「きゃあああああああああ! フェロニアの貴公子ルーファス様ぁ~!」」」
「「「赤髪の鬼姫! ティナお姉様~!」」」
「「「ガディの兄貴ぃ~!」」」
「「「寡黙のダグラス様ぁ~!」」」
「「「オーディンの心臓、ニコル様ぁ~!」」」
「「「空気のロンド様ぁ~!」」」
さすがに1番人気である主力メンバーへの声援が大きなものとなっている。寡黙のダグラスやオーディンの心臓ニコルという通り名は分かるが……空気のロンドってなんだ!? キラキラと光輝くようなオーラを放つ隊長たちが際立っているオーディン傭兵団の中でも、ロンドが空気のような存在だからか? 確かに他のメンツは個性の濃い者が多いからな、ぷぷぷっ。ちょっと面白かったから後でイジってやろう。
ルーファス大将軍のパレードには貴族から大商人、元王族までが駆けつけ、ルーファスとコネクションを作ろうと躍起になっている。ちなみに王族というのは、旧イシュタル王国の王族のことを指す。オルドリッジ王は前王朝イシュタル王国で革命を起こして王朝を倒した際、悪事に手を染めていない王族や上級貴族たちの罪は問わなかった。麻薬や奴隷、奴隷剣闘士等の非道な事を働いていた者は新国法にのっとって裁いた結果、処刑になったものは多くいたようだ。長い間、ピラミッド式になっている特権階級の頂点で君臨していた王族の腐敗は酷く、13家あった王族のうち、12家は取り潰しにあったのだ。
パレードが終わるとパーティー会場に移動し、祝賀会がはじまった。俺たち3人にもルーファスから特別招待客として招待状が届いていた。招待状の差出人の名前はフェルディナンド伯爵の名で来ていた。
姓を持つ事が許されるのは貴族だけだ。平民は名しか持っていない。平民から異例といえる昇進を果たしたオーディン傭兵団の隊長クラスは姓を持つことが許された。名前が変わったので、今まで聞いていた詳細情報も一緒にまとめてみた。
(ルーファス・フェルディナンド伯爵)
フェロニア市、東に拠点を持つ中規模の商人の3人兄弟の長男である。幼少時、身分最下層の奴隷剣闘士から這い上がり、遂には革命を起こして国王にまでなったオルドリッジ王に強い憧れをいだき、家を出て冒険者となる。ガディとティナは幼馴染で2人を冒険者に誘い、冒険者パーティーを作った。冒険者としてあっという間に頭角を現し、その後オーディン傭兵団を結成。最大のライバルであったポイズンファング傭兵団との戦いに勝利し、四大将軍となった。目標だった上級貴族になったので、さらなる上を目指している。心中にある秘めた野望は大きい。
(ガディ・ヴィルヘルム男爵)
通常の物よりも刀身が数センチ分厚く、長い巨大なツーハンデッドソードの使い手である。真っ直ぐで駆け引きのできない性格であるため、ルーファスとニコルの立てた作戦を台無しにすることがよくあるが、類まれな鍛え上げられた武力で切り抜ける事ができている。酒が大好きで遠征が終わると部下や友達を引き連れて飲みに行きおごっている。甘いものは苦手である。
ガディの親は両親ともにBランク冒険者で強者として有名であった。ルーファスの親が経営している商店の専属の護衛をしていた。数年前に大迷宮から出てきた脅威度ランクSファイアードレイクの足止めをし、オルドリッジ王が来るまでの時間を稼ぐことに成功した。が、2人ともに壮絶な死闘の最中、絶命した。2人が命のすべてをかけて与えたダメージがあったこともあり、オルドリッジはファイアードレイクを倒すことができた。
(ティナ・アーデルハイト男爵)
花屋の1人娘である。ルーファスの親が経営している商店に花を納める仕事をしている。そのため、ルーファスとガディとは幼馴染でよく遊んでいた。2人が成人した時に誘われて冒険者となった。敵100人に囲まれても折れない強い心を持ち、躊躇なく敵を殲滅する苛烈な戦いをする一方で、家事はプロフェッショナル級の腕を持つ女の子である。最近の悩みは、初めて本気で好きになったセシルをどうすれば自分のものにできるかであり、頻繁にルーファスと相談している。ガディも妹分の悩みを解決しようと相談に乗ろうとしてくるが、ティナは無惨にもその申し出を断っている。
(ニコル・グュスターブ男爵)
小規模な商人の3兄弟の長男で、自分は家の家業を継ぐものだと、つまらない日々を送っていた。そんな時、自分と似たような境遇を持つルーファスが冒険者として活躍している事を様々なところで聞き、次第に強い憧れを持つようになった。そしてついにその気持ちを抑えきれなくなり、家を捨てルーファスの冒険者パーティーに入れて欲しいと打診したところ受けいれられた。今ではルーファスの目標を叶える事が自分の目標になっている。元商人ということもあり、交渉ごとや根回しが非常に上手くできる。傭兵団の金庫番でもある。そういう意味では代えのきかないオーディン傭兵団の要となっている。
(ダグラス・ディルフベール男爵)
親も兄弟もすでに亡くなり天涯孤独な生活をしており、フェロニア市外にあるニダ村の屠畜場で働いていた。ある日、ニダ村の近くでゴブリンのスタンピートが起こり、100体を超えるゴブリンがニダ村を襲った。ルーファスらオーディン傭兵団が冒険者ギルドから依頼を受けてニダ村に急行した。そこでルーファスたちが見た光景は、屠殺で使用するハンマー2本を軽々と小枝のように振り回し、ゴブリンたちを潰してまわる体中ゴブリンの返り血で真っ赤なダグラスであった。1人でろくな武器も持たずゴブリンを滅ぼしてしまう。その強さを見たルーファスがダグラスをオーディン傭兵団に誘ったのであった。実は子供が好きで、子供にすぐになつかれる。
(ジェイコブ・ロンド男爵)
元々上級貴族の9男であったロンドは、実家である男爵家から成人になると追い出された。家を出た上級貴族の息子は下級貴族である騎士爵にまで爵位が下がってしまう。その後、フェロニア市の東で小さな傭兵団の団長をやっていたが、市民に人気のあるルーファスを妬んで傭兵団戦を挑み、完敗して全てを失った。その後、ルーファスの人柄や将来性を高く評価し、オーディン傭兵団への入団を決める。ロンドの夢であった上級貴族に返り咲いて自分を追い出した兄弟たちを見返したいという野望をルーファスに託している。
ーーー祝賀パーティー会場
祝賀パーティーがはじまると、来訪者は次々と主役であるルーファスと大幹部たちに挨拶に行く。平民である俺が貴族を押しのけて真っ先にお祝いに行くと、色々と不興を買うかもしれないのでルーファスたちが落ち着くのを待っていた。
ようやく一段落ついたので話しかけてみる。
「ルーファス……いや、失礼しました。フェルディナンド大将軍閣下かな? フェルディナンド元帥閣下とお呼びすればよいのだろうか? 元帥への就任おめでとうございます」
「セシルたちはそう堅苦しくなく、いつも通りでいい。私たちは友人じゃないか、なぁガディ」
「そうだぜ! 俺らはマブダチだろ。地位が上がって上級貴族になっても友情は変わらないぜ」
「ありがと! オイラは嬉しいよ。みんな豪華な貴族の衣装が似合ってるよ!」
パックの褒め言葉を聞いて、椅子からティナが立ち上がった。ガディの正装姿は野獣が背広を着ているようなツッコミどころ満載だったからだ。
「あら? 馬子にも衣装ってよく言うわよね。ガディが立派な礼服を着てるのはじめて見るけど、本当に似合っているわ。意外よね、ねぇニコル」
「ああ、そうだな。礼服もいいが、やはり俺はガディの鎧姿が一番安心するな。いつも傷だらけの鎧で俺たちのでっかい壁になってくれていたからな、ガディはな」
「おいおいニコル! そんなに褒めんなよ。照れんだろ!」
こうやってじゃれ合うのも、いつもよりもテンションが高い。目標だった貴族になることができて、みんなは喜びを顔にみなぎらせている。
「はははっ、ルーファスがステュディオス王国軍元帥で上級貴族の伯爵。ガディ、ティナ、ニコル、ダグラス、ロンドが大将で上級貴族の男爵。その他の幹部30人が騎士爵扱いの下級貴族か。みんな大出世おめでとう!」
「大出世……おめでとう……ございます……」
「「「ありがとう!」」」
「あら、ダグラスとロンドの声が聞こえなかったわよ。こういう時くらい礼儀として返しなさい」
「…………………………………………………どうも」
「「「なっ!」」」
な、なんだと! ダグラスの声は初めて聞いたぞ! あいつ、口がきけたのか!? 一切喋らないから口がきけないのかと思っていたぞ。この場にいる全員が口を大きく開け驚いている。まさかダグラスが本当にお礼を言うとは思っていなかったらしい。
「うるせ~、お前なんかに祝ってもらいたくねぇ~。失せろ!」
「ロンドがデレ過ぎてるから通訳すると、ありがとう感謝してるって、言ってるわ」
「ティナ! てめぇ~、勝手に通訳するんじゃねぇ~! そ、そんなこと一言も言ってねぇ~だろ!」
ツンデレすぎだろロンドよ。俺への招待状を出し忘れないように、気をつけていたのはお前だとニコルから聞いて知っているぞ。まあ、友達の出世は嬉しいよな。フェロニア市でも気のいいやつらに出会えて幸せだよな。
「おっと、忘れるところだった。これは俺たちからのお祝いな」
『ドーン!』
アイテムボックスから1個5メートル、3段重ねの巨大なケーキをテーブルの上にだした。通常はウェディング用だが、このようなお祝いの席にも豪華絢爛で合っている。
「これがパックが前に言っていたケーキというものか? ずいぶん豪華な物だな。まさに王侯貴族でも食するような物で驚いたぞ」
「そうそう、豪華でエレガントなデザートはみんなが大出世したお祝いには相応しいと思うよ!」
「今日は立食パーティーだから、少し小さめに切るから、みんな食べてくれ」
アイテムボックスから皿とフォークを大量に出し、まずは元帥となったルーファスに差し出す。
「むぐむぐ……な、なんだ! これは本当に食べ物なのか! 信じられん、神界のデザートだ! みんなも食べてみてくれ!」
「むぐむぐ……え、ええ! なにこれ美味しすぎるわ! 信じられない!」
「………………………………………………ウマッ」
ダグラスも喜んでいるようで良かった。それに釣られて元王族から貴族、商人と食べては称賛し、大忙しとなった。特に俺を見つめる女子の眼差しが熱いこと、胃袋をガッチリ掴んでしまったようだな。どこでお店を開いているとか散々質問された。
「ぐぬぬ、ちょっと、甘すぎるな」
ただ、ガディだけは甘いものが苦手らしく、ひとくち口に入れてその後は手をつけなかった。悔しいから甘くないデザートでリベンジするぞ。
そうだ! やつが好きな酒がたっぷり入った甘くないサバランでも作ってやるか。
「マジで美味いな。そうそう、セシルに言い忘れていた。式典が終わった後で用があるから、控室で待っていてくれ」
「ん? ニコルは俺に何か用があるのか? 分かった、ケーキを配り終わったら控室で待っている」
「前に会わせたことがあるが、ウォルドーフ卿の事でちょっとな。時間を取らせちゃって悪いな」
「ウォルドーフ卿の件って何だろね? ああ、奥さんが病気だったという話か」
「カーバンクルの……額についてる宝石が……治療に必要ということでした」
ーーー数時間後
式典終了後、ウォルドーフ卿の件で話があるから待っててくれということなので控室で待っている。ルーファスと大将以上の幹部、執事ブルディが俺を呼びに来た。そのまま馬車でウォルドーフ卿のお屋敷に直行した。ウォルドーフ卿の大きな馬車は12人は乗ることができる。
屋敷に入ると執事ブルディの後ろをついていき、執務室に通された。大将軍任命式典の後、すぐに呼ばれるとは大将軍といえどスポンサーとなっている公爵には勝てないか。
『ガチャッ』
「やあ、ルーファス君。先程は素晴らしい式典だったそうだね。ついに目標だった、四大将軍と晴れてなることができて私も嬉しいよ。私は参加できなくて本当にすまなかった」
「全てはウォルドーフ卿のお力添えがなければなし得なかったことでございます。私たちの方こそ、卿に心より感謝しております」
頭を下げるオーディン傭兵団の幹部たち、俺たちは関係ないが一応頭を下げておいた。
「それで、早速要件なのだが、妻の容体が悪化してな。急遽迷宮に潜ってカーバンクルの額の宝石を取ってきて欲しい。修道士が言うには、次の発作がきたら妻の体力が持たないらしいのだ。ルーファス君頼む! 妻を救ってくれ!」
「ええ、もちろんすぐに地下迷宮に向かいま……」
『バンッ!』
ドアを強引に開け、女の子が飛び込んでくる。ウォルドーフ卿の娘ミリネラだ。
「お父様! お母様が、お母様がぁ~!」
「ミリネラどうしたのだ! ま、まさかもう次の発作が起きたのか?」
「うううっ」
『バァ~ン!』
ミリネラは泣くばかりで声にならない。ウォルドーフ卿は応接間から飛び出し、妻の寝所に走っていく。ルーファスと俺たちもウォルドーフ卿の後ろについて走る。
寝所に入ると、エロース神殿の修道女が首を左右に振っている。ロウのように真っ白な顔色の奥方は危篤状態ですでに意識がなく、ベッドの上で死を待つのみとなっていた。
「ブリトニー逝かないでくれ! 逝ってはいけない! 頼むから目を覚ましてくれ! ブリトニー!」
ウォルドーフ卿の必死の思いにも妻ブリトニーは答えることも出来ない。こげ茶色の顔色と真っ白な唇が、彼女の命の灯火が尽きかけていることを予感させた。
「お母様! お母様! 死んじゃやだ! ミリネラを置いていかないで!」
ミリネラはブリトニーの手を握りしめ、母親を失いたくないという悲痛の叫びを聞き、俺は胸が張り裂けそうになる。
「セシルゥ~、なんとかしてあげてよ。ミリネラが可哀想だよ!」
「店長……助けてあげて……お願い」
母を思うミリネラに同情したパックとホリーは目に涙を浮かべながら懇願してくる。ギュッとホリーの小さな手が俺の腕を掴んだ。
俺の目標はあくまでも魔龍討伐だ。その討伐に失敗すると世界が滅亡するだろう。だから基本的に権力者には関わらないように、目立たないようにしたいのだ。権力者という存在は究極の我儘な存在だからだ。今回もルーファスが四大将軍になった記念すべき日なのにも関わらず、最大の支援者という公爵の立場を利用し、今すぐ迷宮に行きカーバンクルを仕留めてこいなどという無茶ぶりをしてきた。
通常なら無視だが、愛するホリーと大切な相棒パックがそこまで助けたいと言うならば、条件次第では救ってやってもいい。
「ちょっといいか? 俺はウォルドーフ卿の奥方を治すことができる。ただし、俺が提示する条件を聞いてもらえれば治してやろう」
「なっ!? それはあなたには無理です。私はエロース神殿の使いで来た神聖魔法の使い手ボニーと言います。国内最高峰《ハイリカバリー/上位回復魔法》まで使用できます。ですがこの症状を治すには《フルリカバリー/フル回復魔法》が最低でも必要です」
「えっ!? ボニー様、奥方はその魔法を唱えることができれば治るのですか!」
「「「ああああああああああああっ!」」」
オーディン傭兵団のみんなが、《フルリカバリー/フル回復魔法》で治すことができると聞き、一斉に俺を見る。
「ウォルドーフ卿! セシルは《フルリカバリー/フル回復魔法》の使い手です! セシルなら助けられるかもしれません」
「なっ!? そんな馬鹿なことが! 現在世界で《フルリカバリー/フル回復魔法》を使うことはできるのは、遠くパルミラ教皇国聖女アリシア・クレスウェルだけです。嘘をつくのをやめなさい」
「ボニー殿、オーディン傭兵団のみなさんは嘘をつくような者たちではないのだ。セシル殿、その条件とは何ですかな?」
「あなたは本当にお母様を治せるの? 治しなさい! お願いよ! 今すぐお母様を治してよぉ~!」
この状況でもさすが大物貴族ウォルドーフ卿は冷静だが、ミリネラは子供だから話の途中で割り込んできた。公爵家ご令嬢という仮面を脱ぎ捨て、本性が剥き出しになっている。
「ああ、治す報酬は、俺が治したことを誰にも言わないこと。この場の全員に箝口令を敷くこと。出来るか?」
「!? それはどういうことですかな?」
「俺には世界の行く末を左右するような大事な目的がある。そのためにはあまり目立つことは出来ないのだ。特に俺の持つ強大な力を権力者に知られるわけにはいかないのだ。それが守られるようなら、奥方を治して差し上げよう」
「……そうか、お前は重要な任務があるのだな。その理由のためにセシルはオーディン傭兵団にも入らなかったのか」
「……そうだ」
「そのようなことなら問題ないだろう。この場にいるヒューマンに、私を裏切るような者はいない。そうですな」
ウォルドーフ卿は迷うことなく決断する。そして、この場にいる者に睨みをきかせ、無言で威圧をする。先程までの友好的な雰囲気とは違い、強大な権力を持つ公爵としての迫力がある。
「「「はっ! この命にかけて、ウォルドーフ卿のおっしゃることをお守りいたします」」」
全員がそう宣言した。俺は命をかけて守るという言葉を聞き、ブリトニーの側によると手を彼女の額にかざした。
《フルリカバリー/フル回復魔法》
『フォン、フォン、フォン』
俺が呪文を唱えると、神々しい光が周囲に集まり、ブリトニーの全身が強烈に光ると徐々に光がおさまっていく。
「……………………………………………………」
「あれ、治っていないな? 意識が戻らないぞ」
魔法の詠唱は成功したのに、ブリトニーの意識が戻らない。なぜだ? 《探査マップ/神愛》でステータスを確認しよう。
●名前:ブリトニー・ウォルドーフ
●年齢:29歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市、ウォルドーフ公爵第一婦人
●身長/体重:160/38
●髪型:金髪ウェーブロング
●瞳の色:青色
●スリーサイズ:84/54/88
●カップ/形:H/さら型
●経験:あり
●状態:昏睡、呪詛によりHPが毎日5%減り、回復魔法の効果無効
●ベースレベル:32
●職業:レベル2聖騎士
ブリトニーの病気が治った雰囲気がないので《探査マップ/神愛》で確認するとバッドステータスの原因は呪詛であった。この国って呪詛が多いのか? オルドリッジ王も呪詛で苦しみ血反吐を吐いていた。奥方に起きている体調不良の原因が呪詛だと分かればすぐに解決だ。
「どうやら単純な病気というわけではないようだ」
「セシルの魔法でも無理なのか?」
「いや、原因が分かったからなんとかなりそうだ。もう1つの魔法を唱えるからみんな離れていろ」
《リムーブ・カース/解呪》
『フォン、フォン、フォン』
魔法により呪いが解けると、ブリトニーの体から黒い霧のようなものが出てきて人型のような形を形成しだした。
「な、何か出てくるぞ! みな戦闘態勢に入れ! 討伐は任せたぞ!」
「「「はっ!」」」
「ウォルドーフ卿とミリネラ壌はこちらへ」
「うむ」
咄嗟に全員が武器を構え、戦闘態勢に入った。さすがAランク傭兵団、反応が早い。ルーファスはベッドで寝ているブリトニーを抱きかかえ、すぐに部屋から飛び出した。
黒い霧は徐々に人型に収束し、次第にその正体が明らかになってくる。
「あ、あれは!? 脅威度ランクCレッサーデーモンだ!」
「なかなか面白そうなのが出たな! ここは俺に任せてくれ」
「仕方のない脳筋男ね。ガディに任せたわ」
「うははははっ! 思わぬところで盛り上がってきたぜ! 少しは持ちこたえてくれよ!」
ガディに戦う相手が決まったところで、レッサーデーモンは完全に具現化して襲いかかってきた。
●魔物名:レッサーデーモン
●状態:殺意
●脅威度:C
●HP:1861
●MP:1927
●腕力:935
●体力:926
●敏捷:942
●知力:972
●魔力:955
●器用度:988
●スキル
呪文無効化2、毒爪3、暗黒魔法2、仲間を呼ぶ
●詳細情報
山羊頭と4本の腕を持つ、赤紫色の筋肉ダルマである。悪魔族では最下級であるがHPが高く、強さの割には得られる経験値も少ないので冒険者には忌み嫌われている。
暗黒魔法レベル2程度の魔法、呪文無効化能力、仲間を呼ぶなどの能力があり、グレーターデーモンほどではないにしろ経験の浅い冒険者にとっては脅威である。ゴールドプレートを持つ熟練の6人パーティーでレッサーデーモン1体と戦うのが通常である。
~~~戦闘開始
◎レッサーデーモン×1(1)
イニシアティブはガディが取った。ガディは狭い部屋の中での戦闘なので、自慢のツーバンデットソードは抜かず、腰にさしていたショートソードを抜いた。
「オーラ! オラオラオラオラオラオラァッ!」
『ドガガガガガガガガガガッ!』
「ウギャアアアアアアアアアアアッ!」
ガディは1回の攻撃で10発をレッサーデーモンに命中させ、合計で2920のダメージを与えた。レッサーデーモンは体中をショートソードで斬り刻まれ、両手両足や首も切断されて絶命した。完全にオーバーキルであった。
~~~戦闘終了
「うひゃ~! オイラはレッサーデーモンはタフだと聞いていたけど、ガディにかかったら1ターンで瞬殺だったね!」
「まあな! 全く張り合いのねぇ~悪魔だよ。わざと1回くらいはやつの攻撃を受けてやっても良かったな」
「こらこら、そんな暇はないでしょう。ここはウォルドーフ卿のお屋敷なのよ。私たちもルーファスを追いましょう」
「ほ~い」
ルーファスら4人は別室の客までブリトニーを寝かせて退避していた。まだ目覚めてはいないが、彼女の顔色が青ざめていたものから血色の良いピンク色に変わる。ステータスからも呪詛のバッドステータスが消失していた。レッサーデーモンを倒して呪いが解放されたということは、やはり誰かが悪魔と契約を結んでブリトニーを呪っていたのだな。ということは呪っていた呪術師は今頃呪い返しで死んでいることだろう。
「う……う~ん、あなた」
「ブリトニー! 意識が戻ったのか? 大丈夫か?」
「お母様~! うぁあああああああああああ! ¥€℃°£¢√πµπ±∆µ√π∆」
目覚めて腰を起こしたブリトニーの膝に、ミリネラは抱きつき顔を埋めた。泣きながら何かを言っているが言葉にならない。
「あらあらあら、この娘はまだお子さまなのだから。よしよし。あなた、もう大丈夫みたい。昨日から意識が全くなかったのだけれど、今は意識がハッキリして心も安定しているわ」
「そうか……そうか良かった。そこにいるセシル殿がお前を救ってくれたのだ。セシル殿には心から感謝する。君が困ったことがあったら、私に言いなさい。我が家名とこの命をかけて君のために動くことを誓うぞ」
「セシル様、助けてくださりありがとうございます。心から感謝いたします。ああっ、この恩をどうすれば返すことができるのでしょう」
ブリトニーは丁寧に頭を下げて、俺にお礼を言ってくる。公爵の奥方なのに、一般人に偉ぶることもないとは良い人間だな。
「そんな丁寧に俺にお礼をされると照れるな。なぁ、ガディ」
「バカ野郎! こんな厳粛な場で俺に話を振るんじゃねぇ~!」
「ははは、違いないな。俺はこんな感じの人間なんで頭なんか下げないでも大丈夫だ。約束さえ守ってもらえればいい」
「セシルもガディも適当なヒューマンで困るよね! オイラはもうちょっと、2人はちゃんとした方がいいと思うよ! ましてやガディは男爵で貴族になったんだしさ! 貴族の話し方とかあるじゃない」
「パックの言う通りだと私も思うわよ。本当に恥ずかしいったらないわよ。ポルトヴェネレに帰ったら、特訓よ。覚えるまでは絶対寝かさないから覚悟しなさいよ」
「うはぁ~。相変わらずティナは俺にはキツイな」
「自業自得よ」
「違ぇ~ね~な」
「「「はははははははははははははははっ!」」」
部屋中、笑い声で一杯になった。ルーファスもウォルドーフ夫妻もミリネラもみんな大爆笑だった。雰囲気が良くなったところでお暇することになった。奥方が呪詛だったことをウォルドーフ卿に話すか話さないかの選択はルーファスに任せる。
帰り際、執事ブルディが俺に治療のお礼に白金貨の入った袋を渡してきた。すでにお金は白金貨を相当な数を持っているが、お礼を辞退するのは失礼だし貰っておいた。袋を開けると白金貨が100枚も入っていた。日本円で1億円をポンと出すとは、金持ちってどこの世界にもいるのだな。
日本にいた時は、貯金は研究開発につぎ込んでしまっていたのでほとんどなかった。この異世界ラティアリア大陸ではブルジョア層にいれることは嬉しいことだ。地球でやり残した研究を好きなだけできるしな。
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