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第2章

第9話 初依頼&初体験

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朝起きると、ティナがオレを抱き枕にして寝ている。女の子って男を抱き枕にして寝るのが好きだよな。
ティナはオレを気持ち良くして虜にするって言うだけあり、丁寧な仕事をしていた。時間をかけて全身をすみずみまで舐めてくれたのだった。姉御肌のティナだから、シャロンタイプの野獣系かと思ったが、意外だったが丁寧親切系だった。挿入も騎乗位からの女の子側からゆっくりと動かしてしてきたのも良かったな。一気にパンパンしたくなるが、それを許さない歯がゆい焦らしプレイをしてきたのだ。
ま、結局、オレの我慢が限界を越えたので後ろから、激しくパンパンして15回も神液を吸収させたのだがな。ぐふふふ♪

そっと抱きついているティナを剥がし、日光を浴びようと宿屋の外に出ると、ホリーが準備体操をしている。

「あ、店長……おはよう……ございます。昨日は色々と……ありがとうございました」

「おはよう、ホリー。今日から冒険者として初依頼を受けるから気合いが入っているな。どうだ、モンスターと戦う心の準備は出来ているか?」

「はい……家を飛び出した時から……心の準備はできています……私を娼館に売ろうとした父から……そっと逃してくれたお母さんを……安心させてあげなくちゃいけないんです」

昨日の肉屋で、父親に売られそうになったと聞いていたが、母親がホリーを逃してくれていたのか。そうだよな、母なら娘が体を売る事を喜ぶはずがないものな。オレの母もどうしているのだろうか? 片道切符の異世界に来たから、二度と会うことが出来ない。まっ、兄がいるから大丈夫だと思うことにしよう。

「店長……少し剣の訓練に……付き合ってもらえますか?」

「ああ、いいよ。それが終わったらパックとティナを起こして朝ごはんを食べて、冒険者ギルドに依頼を受けに行こう」

「はい……お願いします」

その後、ホリーの剣の練習に付き合い部屋に戻ると、2人とも起きていて雑談をしていた。4人で1階の食堂に降りて、一緒に朝ご飯を食べる。ちなみにここもロンドのおごりだから、目一杯食べてやった。

「ティナ、今日は忙しいのか?」

「ええ、最近は四大将軍になるかもしれない有望株として、オーディン傭兵団の武力を囲いたい貴族が多いのよ。どの勢力に付くかで傭兵団の命運にも関わってくるから、色々な貴族たちとルーファスは会合をしているの。うちの傭兵団は一般人から這い上がった者ばかりで礼節を知らないから、私が貴族の礼節について勉強をして、ルーファスの秘書のようなことをやっているわけなの」

「なるほど! 戦闘から秘書までとは忙しいよね! ティナって仕事ができる女っぽい雰囲気だから、似合っているよね!」

「だけどねパック、私は剣を振っているほうが性分に合うのよ。ルーファスには早く秘書を雇ってって言っているのに、仲間以外は信じられないって拒否されてるの」

仲間を大事にしているルーファスっぽい話で好感を持てるよな。それが理由なのか、仲間の女の子にも一切手を出していないとも言っていた。ルーファスと肉体関係を持ちたい女の子は多いのだが、そういう浮わついた話は1度も出たことがないのだそうだ。多分ルーファスが目的の女の子はティナが鉄拳を駆使して追い出しているのだ。彼はやっぱりゲイボーイなのか? 疑惑は深まるばかりだな。
朝食後にティナと別れ、冒険者ギルドに向かった。

冒険者ギルドに入ると、早速、依頼板の前に立ってどのような依頼があるか物色する。ランクGの依頼となると、討伐系の花形はコボルト退治くらいで、何でも屋の雑用的なものも多々ある。引っ越しの手伝い、迷宮に潜っている冒険者のポーター、薬草の採取、貴族の金持ちの屋敷の警備員……か。どれもパットとしないな。

「最初の依頼だが、ホリーはどの依頼がいい? 依頼はやめてレベル上げのため迷宮に潜るというのもいいか」

「えと……店長とパックがいますし、私は早く強くなりたいの……これはどうですか?」

ホリーが選んだ依頼書を見ると、錬金術師からの依頼で、コボルトの牙を10本というもので、依頼達成料は銀貨6枚だった。人見知りな彼女にしては思いきった依頼を選んだな。家を飛び出したことといい、こうみえて意外に度胸があるのかもな。ルーファスたちとの戦いの時も腰が抜けたりしていなかったしな。

「討伐クエストだけど、大丈夫なの? ま、オイラとセシルがついているから問題ないよね」

「了解。オレもホリーが早く転職できるくらいにはなってほしいと思っているから、良いだろう。それとオレたちのパーティー名をどうしようか?」

「私が……決めてもいいですか? 私は迷宮で夢があるの。この迷宮の地下深くにあると言われている……伝説の武器の1つ、ミョルニルっていう武器を見つけることなの。ですから……粉砕のミョルニルというのはいかがでしょうか?」

「その武器が迷宮の中にあるのか、面白そうだな。その武器をホリーが見つけることを第1目標にするか。オレはすでに専用の伝説級武器ーーアーティファクトを2つ持っているから、神器ミョルニルを発見したらホリーが使っていいからな」

「え? 本当に……私がいただいちゃって……良いのですか?」

「セシルはすでに地上最強のヒューマンだから、そもそも武器は必要がないんだよ! もらっておきなよ!」

「はい……それではお言葉に……甘えさせていただきます……嬉しい」

依頼受け付けカウンターに依頼書とパーティー登録書を持っていく。受付嬢は昨日と同じでリタだった。

「昨日の試験はお疲れ様でした。今日から冒険者として本格的に活動されるのですね! 本日はどのようなご用でしょうか?」

「ああ、今日はパーティー登録と、この依頼をパーティーで受けたいのだが」

「パーティー登録と依頼ですね。承知いたしました」

ギルドの受付嬢は2枚の紙を見て、机から本を取り出し見はじめる。しばらくパラパラとめくっていたが、検索が終わったようで、パタンと本を閉じる。

「おめでとうございます。同じパーティー名はなかったので、この名前で承認できました。最初はランクGパーティーからはじまります。ある程度実績を積まれると、上のランクにあがるための試験を受けていただくことになります。
その他で基本的なことはソロと変わりませんが、依頼の報酬金額は依頼書に書いてある料金以上は出ないので気をつけてください。こちらの依頼書はコボルトの牙を10本で銀貨6枚となっていますから、銀貨6枚をパーティーで分けることになります。
コボルトのランクはGですが、集団になると侮れない存在になりますから、十分気をつけてください。でも、昨日セシル様の武を見たので言えますが、上の階層では問題ないでしょうね」

「丁寧な説明をありがとう」

オレは依頼書を受け取り、2人の待っているところに向かう。ホリーとパックはオーディン傭兵団のガディと立ち話をしている。

「よう、セシル。今から依頼で地下迷宮に入るんだってな」

「ああガディか、オレたちは迷宮でコボルト退治だよ。牙を10本だ」

「ああ! お前がコボルト退治だあ~、地下5階にいる巨人族退治の間違いじゃないのか……そうか、お嬢ちゃんのためか」

「そうだ、こうみえてオレたちはランクG初心者冒険者だからな」

「がっはっはっは! そりゃ何のジョークだよ。帰ったらパックとお嬢ちゃんと3人で昨日の飲み屋に来いよ。俺らオーディン傭兵団はあそこが溜まり場なんだ。じゃあな」

そう言うとガディはオレの肩をポンッと叩いて冒険者ギルドの奥に入っていった。背中に分厚いツーハンデッドソードを担いでいる。あの武器がメインの武器だったようで、昨日の弓矢は本気ではなかったのか。

「それじゃあ、地下迷宮に行こう。ただ、ミョルニルを将来使うのだったら、ホリーの使う武器ってウォーハンマーの方が良いのではないか?」

「ウォーハンマーを買う……お金がまだないから」

「任せておけ。社会保障の充実は店長の役目の1つだからな」

《クリエイトシリコン/創造、ウォーハンマー×硬化7&ホリー専用》

空中に強烈な光が現れ、ウォーハンマーの形になると、徐々に光がおさまっていく。

「え? 今のは……」

「今のはセシル専門の特殊な魔法だよ。武器とか食器など色々と作れるんだよね」

「店長……ありがとう……ございます」

驚くホリーにウォーハンマーを渡すと、パァッという顔をしてとても喜んでくれた。冒険者ギルドを出て、近くの広場に来ると、ブンブンとウォーハンマーの感触をホリーは確かめている。馴染むのは少し時間がかかりそうだ。

「どうだ? いきなり実戦でいけそうか?」

「はい……何とか大丈夫そうです」

その後、地下迷宮の入口に歩いて行くと、周辺に露店が数多く出ていた。地下迷宮に入る前に足りない物などを購入しようと、冒険者たちの人だかりが出来ている。

「迷宮内では必須の保存食はいかが?」

「力持ちのポーターは必要ありませんか! 1日たったの銅貨3枚だよ」

「たったの銀貨5枚で命をつなぐ! 体力回復ポーションはいかが?」

迷宮入り口前は、商売人で大盛況といった感じだな。それにしても回復ポーション1つで銀貨5枚とは、なかなか高額だ。何かあったときの保険に買っておくといったところだな。オレには《フルリカバリー/フル回復魔法》があるからポーション系はいらないがな。

「そこのお姉さん、今日から迷宮に潜るのでしょう? 命を失わないためにも、情報を買わないかい?」

松葉杖をついた片足の若い男が、ホリーに情報を売ろうと話しかけてくる。片膝が膝から下がちぎれているのは、モンスターに食いちぎられたのだろうか?

「この娘がはじめて潜るとなぜ分かった?」

「あっしは迷宮に潜る人の顔はすべて覚えているんですよ。だから、このお姉さんとセシルさんは、はじめて見る顔だからね。あっしは情報屋のグルキュフといいます」

片足の若い男は自分の記憶力に自信があるのか、ニヤリと笑い答える。切れ者のような、いかにも仕事ができるって雰囲気の男だ。

「なんだと? オレがセシルだとなぜ知っている?」

「旦那はすでに情報屋の間では、超有名人ですよ。飛ぶ鳥を落とす勢いのオーディン傭兵団を手玉にとった超絶美男子で、妖精族の連れがいるといったらねぇ~」

うげ、なるべくひっそりと迷宮探索を楽しもうとしていたのに、知らない間に情報屋の間で有名になっていたとは! 情報屋は侮れないな。オーディン傭兵団に関わったのは痛恨のミスだった。

「そうか、情報屋に聞きたいのだが、迷宮について知っていることを教えてくれ。基本的なこととか、ヤバい話とかな」

「毎度~。じゃあ銀貨1枚と3枚、5枚の情報とありますが、どれがいいでしょうか?」

「じゃあ銀貨5枚の情報をもらおう」

アイテムボックスから銀貨5枚を出して情報屋グルキュフに渡す。

「おお! 気前のいいことで。それじゃあ、詳細情報を。フェロニアの地下迷宮は地下10階からなる、だだっ広く薄暗い、通路と玄室の迷宮となってます。広さは直径で100キロメートルほどだと言われています。通路の広さは階ごとに違うのだけど、1階で高さ15メートル、幅30メートルと割とあるので、柄の長い武器も平地と同じく使えます」

「なるほど! ホリーの持つ両手用ウォーハンマーも安心して使えるね!」

パックはオレの肩から、ホリーのウォーハンマーの上に飛んで行き、長さを見て確認した。

「へえ~、使えやす。フェロニア地下大迷宮は、宝箱の多く出る迷宮としても有名です。宝箱の出る確率は30%程だと言われています。この迷宮は宝箱解除ができる盗賊必須の迷宮となっておりやす。宝箱は玄室からしか発生しやせん。
ダンジョンマスターの意向なのか、玄室内でモンスターを倒したあと、鉄扉を閉じると小1時間ほどでモンスターは補充されます。補充されるモンスターの数はランダムのようで、1匹から10匹のどれかになります」

「30%って、そんなに宝箱が出るのか。宝箱ってどんな物がドロップするんだ?」

「へぇ~、基本的にお金です。当然、下の階の方が出る金額は大きいです。昔、若き日のオルドリッジ王が地下7階を1人で探索した際、金貨がドロップしたようです。
レアは6%の確率でドロップするので、出たら超ラッキーですが、パーティー間でトラブルも発生しやすいです。レベル2神聖魔法の《レコグナイズ/識別》が使える者がパーティーにいると、その場でドロップしたアイテムが何かが判明します。魔法が使えない場合は武器屋に行き、識別してもらうしか方法がありやせん。いきなり装備する方法もなくはないですが、普通に呪いのアイテムも出るので、かなり危険かと」

「ドロップする物の中に呪いのアイテムもあるのか」

「ちょっと……怖いです」

「呪われてしまったら、神殿で解呪してもらえば大丈夫ですが、結構高いです」

グルキュフは手でお金のマークを作り、苦笑いをした。VRMMOモンスターバスターでも同じ仕様だから、それについては問題ない。

「レアって何が出るか楽しみだね!」

「そうっすね! レアは6%で出ると言いましたが、0.06%ほどの確率で超レアが出ます。今までで最高額のついたレア武器が、ヘルメスの剣という武器が一度だけドロップしました。攻撃回数が1発増えるという奇跡の剣でやす。オークションで白金貨1000枚という異常な値段がつき、ウォルドーフ公爵が落札しました」

白金貨1000枚となると……うげ! 日本円で10億円か! どこの世界にも金持ちはいるが、公爵ーー王族なら買えるか。

「地下迷宮のシステムはどうなっているのだ?」

「へえ、玄室内には6人までしか入れないので気をつけてください。この迷宮は最大人数6人組専用の迷宮です。無理に玄室内に入ろうとして強制転移させられ、迷宮の石壁の中に運悪く飛んでしまった冒険者がいましたが、2度と生きて出ることはできませんでした」

「それは……怖い……です」

「オレたちは2人と眷族の妖精が1人で人数が足りないのだが大丈夫なのか?」

「もちろん大丈夫です。6人以下でしたら問題ありません。あとこれが大事なんですけど、戦闘で負けそうになり、ヤバかったら逃げてください。通路で遭遇するモンスターも玄室で遭遇するモンスターもテリトリーが決まっているので、ある程度逃げると追ってきません」

「セシルがいるから危険はないけど、万一という事があるからね! チェック、チェック」

「最後に階層ごとに現れるモンスターのランクです。
●地下1階
ランクGモンスター
●地下2階
ランクFモンスター
●地下3階
ランクEモンスター
●地下4階
ランクDモンスター
●地下5階
ランクCモンスター
●地下6階
ランクBモンスター
●地下7階
ランクAモンスター
●地下8階
ランクSモンスター
●地下9階
ランクSSモンスター
●地下10階
ランクSSSモンスター
です」

「地下8階以下は踏み入れた者がいないのに、なんで分かるんだ?」

「へぇ、迷宮入口の鉄扉に注意書きがありやすから。銀貨5枚だから、お得な追加情報が3つあります。
①つ目、モンスターを倒した後、玄室から出て鉄扉を閉めなければ、モンスターは補充されません。だからモンスターを倒したあと、そのままテントを張って休憩したり寝たりすることができます。もしお金に余裕があれば、あそこにあるトラキア商会でテントの購入を強くおすすめします。
②つ目、初日なので行かれないかもしれませんが、昨日、地下2階で、なぜか脅威度ランクCのミノタウロスが目撃されました。一応お耳に入れておきます。
③つ目、ラティアリア大陸最北にある魔龍に滅ぼされた国、エディルネ国からフェロニア市に難民が相当な数が来たのだけど、その中の一部が迷宮賊となって、迷宮で冒険者を襲う事件が増えている。
情報は以上です。はぁはぁはぁ」

グルキュフは一気に情報を流して疲れたのか、肩で息をしている。アイテムボックスからもう1枚銀貨を出してグルキュフに渡す。

「思ったより価値のある情報だった。他にも面白そうな情報が入ったら持ってくるがいい。ただし、フェイク情報が多いと2度と買わないから気をつけろ」

「うへへ、旦那。情報ならあっしにお任せを! 今後もごひいきに」

グルキュフは自信ありげに胸を張って答えた。予想していなかったが、腕利きの情報屋を得ることができた。これから裏情報とか色々と期待できそうだな。娼館とかHな情報とかもな、ぐふふ♪

「店長……私、体力回復ポーションを……買ってきたいのですけど……」

「回復ポーション? あ、それなら入らないよ。セシルは元賢者で《フルリカバリー/フル回復魔法》も使えるからね」

「あ、そうなんですね……店長って本当に……凄いんですね」

グルキュフから買ったオススメ情報の中にあった、トラキア商会で6人用のテントを早速買い、迷宮入り口に向かう。入り口は建物の中にあり、その建物の周囲には20台の固定型大型バリスタが、建物の中に弩砲台を向けて配備されている。外向きではなく内向きに配備されている理由は、地下迷宮からモンスターが飛び出した時に戦うための備えなのだ。以前にそのような被害が実際に発生したので、それ以降ステュディオス王国軍が常駐している。

建物の前では地下迷宮に入る手続きをするための行列ができていた。モンスターに殺されて2度と日を見ることができないなど、ここでは日常茶飯事で起こるため、誰が迷宮に入ったのかを国が管理している。
行列に並んでいると知った顔が近くに寄って来た。

「よっ、セシル。昨日はティナと楽しめたか?」

「ようニコル。ティナは抜群によかったぞ。一物を挿れてる最中に尻を叩くと、陰部がキュッと絞まって最高だったぜ。ただ赤髪の鬼姫と通り名が付くほど戦場で恐れられているという女性だから、豪快な獣のような夜伽をするかのように見えて、実は丁寧で繊細な女の子してる夜伽で驚いたぞ」

「ははは! あいつの夜伽ってそんな感じなのか。豪快に騎乗位からバツンバツン腰を振って責めてくるのじゃないんだな、はじめて知ったぞ! は~はっはっはっはっ!」

ティナとの夜伽の話を聞き、ニコルは大笑いをしている。ティナは戦場で敵には容赦しない赤髪の鬼姫と呼ばれている猛者だ。ヴァルビリス帝国軍との戦争では、彼女の赤髪を見ただけで震える兵士もいるほど恐れられている。そんな豪腕な彼女だが、夜伽は女の子っぽいと知ってバカうけだ。

「ニコルも地下迷宮に潜るの? オイラたちはホリーのレベル上げが目的で潜るんだよ!」

「ああ、俺もこいつらのレベル上げが目的だよ。つい先日、新規入団した女の子が2人いてな。ほらっ、照れていないで挨拶をしろよ」

女の子が2人、ニコルの前に出てくる。2人ともスピアを担いでおり、防具もお揃いのレザーアーマーだ。

「ミルアと言います。昨日、私も戦いの場にいましたけど、ロンド隊と戦っているセシルさんは素敵でした。強いだけでなくお優しいのですね、うふふふ」

「アナスタシアです。セシルさんって本当に強いんですね。私たち姉妹は冒険者になったばかりですが、早く強くなって家族の家計を支えなきゃいけないのです。ぜひ今度お手合わせお願いします」

「うひひ、セシルモテるね~。女の子たちの憧れの目を見てよ!」

「ああ、お手合わせならいつでも受け付けているぞ。早速今夜にでも夜伽の相手をしにオレのベッドに来るか? 気を失うほど気持ち良くしてやるぞ」

オレの言葉に頬を赤く染め、ミルアとアナスタシアはうつむき加減に視線をそらした。処女にはハードな言動過ぎたらしい。初々しい限りだな、ぐふふふ♪ ふと横を見ると、なぜかホリーも赤くなっている。

「おいおい、16歳で成人になったばかりの2人をからかうなよ。ほら、お前たちの順番が来たぞ」

「おっと、悪い冗談だったな。じゃあな、ニコル」

「ああ、またな」

ニコルたちと別れて受付に向かう。パックがオレの頭の上に座った。

「うひひ、こう見えてセシルも16歳なのにね!」

「あ……そういえば、そうだったな」

「えっ……私と……同い年!?」

オレたちは冒険者カードを受付の男に渡すと、それを管理者の男性は穴が開くほどジーっと見て、問題がないことを確認すると建物の中に通される。建物の中は薄暗く細長い窓もない通路となっており、地下へと続くゆるやかな坂道になっている。坂道を歩いて下って行くと汗と血が混じった悪臭が鼻をつく。怪我をして血を流した冒険者が通るからだろう。狭い通路の突き当たりには古びて錆びた鉄扉があった。

『ギィィィイイイイイイイ』

鉄扉を押すと不気味な音をたてて開いた。たてつけくらいは、油をさして管理してほしいものだが、不気味な音が地下ダンジョン型のVRRPGぽくって逆にいいな。エロース神様の過剰な加護のおかげで安心安全といっても、この雰囲気を直に肌で感じると緊張をする。

鉄扉の前はかなり広い部屋になっていて、2、30人ほどがいて、待ち合わせでもしているのだろう。《探査マップ/神愛》を確認すると、この迷宮の凄さが分かった。とにかく広い迷宮で、《探査マップ/神愛》の縮尺を20キロメートルまで拡大しないと全貌が見えなかった。直径で120キロメートルというところだ。東京から富士山くらいまで行ける。これが地下10階まであるとなると、総面積は想像もつかないな。

迷宮には今も、入口から20キロメートル辺りの遠くまで足を伸ばしているパーティーなど、数千のマーカーがマップ上をウロウロしている。ホリーを育てるのには、1番過疎化している北に向かうとしよう。なぜ北にはあまり冒険者がいないのだろう?

「冒険者が比較的少ないのは北側だから、そちらに行くぞ」

「承知~」

「あの……よろしくです……深呼吸、深呼吸……すぅ~はぁ~、すぅ~はぁ~」

ホリーははじめての戦闘をやるということでかなり緊張し、何度も何度も深呼吸をしている。ホリーは美少女ではないが、こんな仕草をするところは結構可愛いな。ムラムラして呼吸するお口をオレの口でふさぎたくなりそう♪

通路内はグルキュフの情報通り、高さが15メートル、幅が30メートルあった。壁自体が発光しているので、30メートル先までははっきり見えるが、その先となると若干薄暗く見えにくい。

「迷宮の中は少しカビ臭いね!」

「日が当たらないからカビが増殖するのだろうな」

地下迷宮が誕生してから一度も光が入った事がないのと、湿度が高いのでカビが繁殖しているようだ。鼻を押さえないと辛い程、臭気が気になるわけではないから全く問題はない。ん?

『ギィン! ギィン! ギィン! ギィン!』

遠くから金属がぶつかる音がする。冒険者が戦闘をしているのだろうか? 通路を右に左に曲がってズンズン進んでいくと、ゴブリン5匹と通路で交戦中のパーティーと遭遇する。まだ50メートルほど離れているので、気づかれてはいないようだ。地下迷宮での初戦闘だったので、なんとなく見学をしていた。オレは聖寵の加護が強すぎて戦闘にならないから、一般の冒険者の戦い方に興味があったのだ。

「お前らなに後ろから見ているんだ! とっとと行かないと敵と見なすぞ!」

オレたちの存在に気がついた冒険者パーティーの1人が叫ぶと、手でしっしとハエでも追い払うような仕草をしてきた。

「ちょっと見てただけなのに、敵なんて頭に来るね!」

「情報屋の忠告で、最近よく迷宮賊が出ると言ってただろう。冒険者たちは、迷宮賊に後ろから殺られないよう相当気をつけているんだよ。戦闘中に後ろから、弓矢を射られるとかわしようがないからな」

「う~ん、言われてみたら確かにそうだね」

オレたちはさらに北への暗くジメっとした通路を歩いていく。たまに息をすることも辛い異臭のある場所もあった。これは……血の臭いだ。見ると通路の中央に血がばらまかれるように石畳が真っ赤に染まっていた。ここでつい先程、冒険者が戦い、敗れて大量に血を流したのだろうか? モンスターの血ということもあるかもしれないな。

《探査マップ/神愛》で周囲を確認すると、近くで戦っている冒険者はほとんどいない所にまで来たので、ここでホリーを育てるとしよう。

「それじゃあ、玄室に入るぞ。ホリー、心の準備はいいか? 戦術の確認だ。経験値を多くホリーが取る必要があるから、オレはサポートにまわる。ホリーが1人で戦うんだぞ、いいな」

「は、はい……行けます……すぅ~はぁ~、すぅ~はぁ~」

『ギィィィイイイイイイイ』

玄室の鉄扉を開けて中に入ると、ゴブリンが1匹、玄室内の中央で立っている。まだこちらに気がついた様子はない。

●魔物名:ゴブリン
●状態:平常
●脅威度:G
●ベースレベル:2
●HP:42
●MP:59
●腕力:19
●体力:23
●敏捷:20
●知力:31
●魔力:28
●器用度:27
●スキル
棒術1
●装備
木の棒

「グギャアアアアア!」

玄室でボーッと立っていたゴブリンだが、鉄扉を閉めた音でオレたちに気がつくと叫び声をあげ、木の棒を振り上げ襲いかかってきた。

~~~戦闘開始

◎ゴブリン×1(1)

イニシアティブはオレが取ったので、魔法の詠唱をはじめる。

《グレートエンハンスメント/超身体強化》

ホリーの体が魔法によって力を得て光を放つ。次点は支援魔法による超強化のおかげで、レベル1戦士ホリーでも取れたようだ。彼女はウォーハンマーを中段に構えると、走ってゴブリンに迫り、ゴブリンの頭部に向け一気にウォーハンマーを縦に振り下ろした。

『ドカッ!』

「ブギャッ!」

ホリーはタイミングよくゴブリン頭部をとらえると、364のダメージをゴブリンに与える。ゴブリンの頭部はグシャグシャに潰れ、血を噴水のように吹き出し倒れた。

~~~戦闘終了

オレたちはホリーに近寄った。初モンスター退治おめでとうと褒めてあげたかったからだ。だがぼ~っと立ち尽くし、ホリーの様子が明らかにおかしくなっていた。

「ホリー、ゴブリン初討伐おめで……ん?」

「どうしたのホリー?」

『カランッ』

ホリーは全身をガタガタと震わせ、両手をクロスさせてうずくまっている。武器を石畳みに落として膝から崩れ落ちた。

「武器を落として、本当にホリーどうしたんだ?」

「私、怖くて怖くて……体の震えが止まらないの……強く抱き締め……て」

「分かった。だけどオレたちがついているから、絶対に怪我をしたり、死ぬことはあり得ないから安心してくれ」

希望通りに優しく抱き締めると、ホリーの小さな体がフルフルと小刻みに震えていて、子猫みたいで可愛い。ホリーはオレの首に両手を回してくる。2人の顔が吐息が当たるほど近くなっていた。

「店長は……何十という傭兵に囲まれても……まったく動じない強い心を持っています……その心を私に貰えると……強くなれる気がします」

『カチャッ、カチャッ』

ホリーはそう言うと首から手を離し、自身の装備しているレザーアーマーを脱ぎ、麗しい真っ白な、まだ誰も触れたことのない柔肌をさらす。肌の白さが、周囲の薄暗い玄室内で際立って美しく見えた。

「お、おいホリー。裸になってどうしたんだ? オレに抱いてほしいのか? お礼ならお店で一生懸命に働いてくれればいいから、処女を差し出さなくてもいいぞ」

「私が店長に……抱いて欲しいんです」

下着をすべて脱ぎさり、若い16歳の裸体をさらす。そして両手で胸を隠しながら、オレに近づいてくる。ホリーは当然、処女なので、はじめての伽という緊張感がヒシヒシと伝わってくる。目の前まで来ると、若い娘特有の柑橘系のような心をとろけさせる香りがしてくる。

「ん……む……うん……っっろ……」

濃厚なキスを交わし、舌を舐め、吸いあって絡める。



ーー30分後ーー

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」

「ふぇぇぇぇぇええええええええ!」

「セシル! な、何が起きたんだ! これってどういうこと?」

あまりの異常な光景にパックは、眼球が飛び出そうなくらい驚いた。

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