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第2章
第6話 冒険者ギルド
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騒動もおさまったので検問が再開した。そしてオレたちの検問の順番がきて、北門の門番が手招きしている小屋に入る。
「オレは北門の門番バネッド・ライマンだ。まずはお礼を言わせてくれ。お前がいなかったら、兵士たちに相当な被害が出ていただろう。死者も出ていたに違いない。これは少ないが謝礼金の銀貨が10枚だ。取っておいてくれ」
「セシルにとって、あれくらいたいしたことじゃないよね!」
「ま、そうだが、そう言うなら頂いておこう」
ライマンは机の上に置いてあった袋を渡してくる。断っても悪いし、誠意を示してきてくれたのだから受け取っておく。
「それでは検問をはじめるぞ。まずは真実の石板に手を当ててくれ。まさか犯罪歴はないよな」
「もちろん犯罪歴はないぞ」
「オイラもないよ!」
真実の石板とは特殊な魔法効果により、真実を見抜くという石板だ。嘘をつくと赤く光り、本当のことを言うと青く光るという優れものだ。真実の石板に手を当てると、石板は青く光った。次にパックも手を当てるがやはり青く光る。
「うむ、よろしい。お前たちはセシルとパックか。パルミラ教皇国に降臨した神の化身と同じ名前とは縁起いいな、ははは」
「神の化身?」
「そうか、ティムガット市からフェロニア市まで来るのに10日ほどかかり、情報が入らないから知らないのも無理はない。パルミラ教皇国で神の化身がこの1000年ではじめて降臨したのだ。そして聖女アリシア・クレスウェルを自分の女にしたらしい。あの超絶美少女で有名な娘をな。色々とHなことをしているのだろうな、超うらやましいぜ」
ライマンはまだ見たことがない美少女に空を見上げて思いを馳せる。その超絶美少女の心も体もすでにオレのものだけどな。ぐふふふ♪ パックもすべて知っているから、微妙な顔をしている。
「おっと、仕事中だったな。あとは入市税が銅貨3枚だと言いたいところだが、防衛の手伝いをしてくれたものからはお金は取れないので免除だ」
『フォン』
オレは分かったと、先程の銀貨の入った袋をアイテムボックスに入れる。袋は一瞬にしてオレの手元から音をたてて消える。
「こりゃ驚いたな! お前はアイテムボックスのスキル持ちか。どうりで持ち物を持っていないから、パルミラ教皇国から来たのに変だと思っていたんだよ」
「そうだ。アイテムボックスのスキルを持っているが、何かまずい事でもあるのか?」
ライマンは、はぁ~っとため息をつき、説明をはじめる。
「いいか、アイテムボックス持ちは、この巨大なフェロニア市でも10人もいない。その全員が軍所属か大商人、大傭兵団に雇われている。貴重な激レアスキルだから、スラムにある闇の組織に狙われるのだよ。お前がフェロニア市に住むのなら、有力な組織の庇護を受けないと、すぐに誘拐され、絶対服従の魔法がかけられた首輪をつけられ奴隷にされてしまう。いいか、奴隷にされるのが嫌なら今言った3つの組織を早めに訪ねるのだぞ」
「ずいぶん優しいな。忠告は受け取っておく、ありがとう」
「ここも門番は親切でいい人だね! オイラこういう人が護衛している街なら安心して暮らせそう」
検問所を出ると、フェロニアの街並みが表れる。今までで立ち寄った街で1番賑わっているのではないだろうか。歩く人々のエネルギーを強く感じる。繁栄している都市っていうのは、やはり住んでいる住人にも勢いがあるのだな。剣闘士王オルドリッジが良い政治をしている証拠だな。
「それじゃあ、とりあえず冒険者ギルドに行って、冒険者登録をすませてから宿屋を探そう。それで明日からはラヴィアンローズを開業するための土地探しをしよう」
「承知~」
冒険者ギルドを《探査マップ/神愛》で探すと、街の中央に位置する場所にあった。そして冒険者ギルドに隣接する施設が目的の1つである地下迷宮となっている。
街のど真ん中に迷宮の入り口があるとは驚きだ。この街はおそらく迷宮がまず発生し、そこを中心に円形に街が発展していったのだ。
街の雰囲気を楽しみながら2時間ほど歩いていくと、冒険者ギルド入口に到着した。ギルドは5階建ての洋館仕立てになっている。ギルドを見た感想を一言で言うと、デカイ! 東京ドーム数個分はあるようだ。オレは《探査マップ/神愛》があるので、上空から見ることが出来るので、実際の施設の大きさが分かるのだ。
「なんだありゃ?」
「え? 何あれ! 冒険者ギルドの前が隕石が落ちたみたいに破壊されている!?」
冒険者ギルド前の道路をはさんだ正面にある何かが破壊しつくされて残骸となり、煙を薄っすらとあげている。もともとあった建物が、家なのか倉庫なのか、施設であるか見分けがつかない程である。
「モンスターでも市内に侵入して暴れでもしたのかな?」
「そんな感じだろうな。さぁ、冒険者ギルドの中に入って冒険者登録をすまそう」
「承知~」
『キィ~』
取手を押して鉄製の扉を開け、冒険者ギルドの中に入る。建物の中は奥が受付で、手前に飲食ができるテーブルが数多くあり、今も冒険者が騒いでいて賑わっている。協力をしてクエストを受けた時の待ち合わせ場所に、酒でも飲みながら待っていられそうだな。それにしても冒険者の数がすごい! 数百人ではなく数千人はいるのではないだろうか。日本で開催されている何かのフェス会場のようだ。
建物内の奥を見ると、受付が30ヶ所あった。さすがにラティアリア大陸で1番大きな冒険者ギルドだ。依頼を受けようと紙を持っている冒険者で行列ができている。
左の壁を見ると、依頼書が何十と張ってあり、同じパーティーの仲間と、どの依頼者がよいか話し合いながら検討している声が多数聞こえる。
「ずいぶん賑わっているね! これからはじまる冒険が楽しみでオイラドキドキしてきたよ」
「そうだな、オレとパックの冒険者デビューだ。パックは眷属だから、登録はいらないだろうがな」
まずは登録をするため受付まで歩いていくと、飲んでいる冒険者たちが一斉にオレの方を向く。
「ビックリした。いきなり大勢がオイラたちの方を向くからさ! よそ者は受け付けねーぜ! みたいなものかな」
オレも一瞬ビクッと驚いたが、そのまま無視して歩き出す。客席ではオレたちを見てなぜかザワザワしている。何を話しているか気になったので耳をすまして聞いてみた。
「なんてカッコいい美少年なの」
「ルーファス様と互角の美少年ね」
「体の線が細くて素敵ね」
早くも女性たちの噂話がはじまり、ジロジロ全身くまなく見られている。フェロニア市でもモンスターバスターの顔は人気らしいな。
「いけすかねぇガキだな」
「糞ガキが、ぶち殺すぞ!」
「…………………………………………殺す」
しかし、別の目で見るものも当然いる。親の仇を見るような目で睨んでくる男が数人いる。男の嫉妬はみっともないぜ。
冒険者ギルドの受付カウンターには、登録&ランクGカウンターがあり、ランクFからランクA専用カウンターまである。1つ1つのカウンターに若い女の子の受付嬢がおり、登録カウンターの前に立つと、受付嬢はにこっと笑顔を見せた。冒険者ギルドの受付嬢は美女ぞろいなのは、ギルドマスターの趣味なのか、それとも荒くれ者が多い冒険者とのトラブルを避けるために、美女をそろえているのだろうか。
「冒険者ギルドにようこそ。私はこのカウンター担当のリタと申します。ご利用ははじめてですよね」
「ああ、はじめてだ。冒険者登録をしたいのだが……」
受付嬢リタとの話の途中で、オレたちを憎々しい目つきでガン見していたやつらの1人が立ち上がる。
「おいおい、お前みたいに体が細いガキに冒険者がつとまるわけないだろ! うちに帰ってママのおっぱいでも吸ってろや。なぁ、ギャハハハハハハ!」
「だよな! うひゃひゃひゃ!」
オレのことをよく思っていなかった、同じテーブルの仲間と一斉に笑い出す。チラッと馬鹿の顔を見て、イチャモンをつけた顔を覚える。
「ブルドさん! せっかく冒険者になろうと来てくれた人の邪魔をしないでください!」
受付の女の子はオレを庇ってくれた。初心者には優しいのがちょっと嬉しいな。受付嬢だけあって、可愛いし、あとで抱いてやってもいいな。結局、初日に暴れるのも微妙だし、オレは馬鹿にスルー機能を発揮する。
「ああいう馬鹿はどこでもいるんだね! 見てよセシル、あの汚い鎧をさ! だらしない性格がにじみでているよね!」
女性冒険者がササッと身なりを整え、姿勢を正した。なぜかギルドの受付嬢リタも髪を正してギルドから支給された制服を整えた。パックの言葉が刺さったらしい。だがそんな辛口パックに怒りが沸点を越えてしまった者がいる。ブルドとその仲間たちだ。オレたちを殺すぞ! という勢いで睨みつけると近づいてきた。
「こ、この鎧はなぁ! ランクDの俺の大切な相棒なんだよ! それを馬鹿にされちゃ引く事が出来なくなるぞ! おい、お前外に出ろや!」
「ブルドさん、この方はこれから冒険者になる新人なんですよ! それをランクDのあなたが戦うって言うんですか? 新人いびりは止めてください!」
「リタうるせぇ! じゃっ、止めてやるから俺と朝までデートすれば許してやらんでもないぞ? どうする?」
「えっ?……それとこれとは」
「じゃあこいつを許してやらねぇ~。おいお前、表に出ろ!」
「くくっ、朝までは無理ですが、ランチくらいなら」
「いや、朝までだ。それは一歩も引けねぇ~」
オレのためにこんな馬鹿とランチまで一緒に食べてくれるとか、リタは優しい女の子なのだな。このままほっておいたら、彼女の貞操が危ない。
「ねぇ~、セシルこいつら殺っちゃえば? どうせ雑魚なんだし」
「なっ! なんだと! もう許さんぞ!」
ブルドは片手用片刃アックスを腰にある革製の鞘から抜き、激しい怒声をあげて襲いかかってきた。
「ブルドさん止めて!」
~~~戦闘開始
◎レベル22戦士ブルド×(1)
イニシアティブはオレが取るが待機を選択。2番手のブルドが斬りかかってきた。兜割りのようにジャンプをして上から頭に叩きつけようとした。
『ガガガガッ!』
『ビシィシシシッ!』
ブルドは242のダメージをオレに与えたが、198007の物理防御力で打ち消した。
「何! 俺のアックスを指で弾きやがっただと!」
レベル22戦士ブルドは熟年の冒険者だ。この国の冒険者の平均レベルが8か9だから、中々の強さとなっている。だが神クラスの強さを持つオレからしたら、元々ブルドの攻撃を避けなくても問題ない。
~~~戦闘終了
愕然として両膝を床につけて、落ち込んでいるブルドの前でパックが止めを刺した。
「ほらね! 身だしなみが汚いと、性格も、顔も悪いでしょ! オイラが言ったとおりだね!」
ブルドはデコピンで自慢のアックスを弾かれたことがよほどショックだったのか、魂を失ったようにふらりふらりと冒険者ギルドを出ていった。ここまで恥をかくと、しばらくは顔を出せないだろう。
「助けていただきありがとうございます。セシル様ってお強いのですね。荒くれ者のランクDブルド様を軽くあしらうなんて……うふふふ」
「いや、オレのためにくだらない男と夜伽などあなたにしてほしくなかったからな。人に迷惑をかける者はこらしめる必要がある」
「あんな人でも丁寧に扱っていたリタは良い女だね!」
●名前:リタ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市冒険者ギルド
●身長/体重:162/52
●髪型:赤髪清楚なストレートボブ
●瞳の色:青色
●スリーサイズ:83/57/84
●カップ/形:D/さら型
●経験:なし
●状態:好意
●職業:平民
●レベル:1
受付嬢リタの髪型は、清楚なストレートボブだった。前髪は一直線でそろえていて、サイドはアゴの辺りまでの長さがある。男性は清楚系の女性が好きだから、男性ウケの髪型となっている。胸も意外にDカップもあり、着やせするタイプだな。瞳は若干下がり気味の優しい雰囲気となっている。
「あら、お若いのに大人の対応なんですね。それではあらためて冒険者登録のご説明をさせていただきます。えっと、あなたのお名前は……」
受付譲リタは、こういうトラブルは日常茶飯事のようで、すぐに平常心となって自身の仕事に戻った。
「ああ、セシルだ。こっちは相棒で妖精族のパックという。一応眷属ということになる。説明を頼む」
「妖精族のパックだよ! よろしくね、リタ!」
「まずはこちらの申込の羊皮紙に必要事項をご記入ください」
リタは机の引出しから羽ペンの刺さったインク坪を出してくる。そういえば、ラティアリア大陸に来て文字を見ることははじめてだが、読み書きは出来るのだろうか? 疑問があったが、受け取った羊皮紙を見ると日本語ではないが、アラビア語のような文字で書いてあった。不思議と文字を見ると、脳内に意味が浮かんできて読めるし、書くこともできる。勝手に脳内で文字が変換される仕組みのようだ。
「文字の読み書きが難しいようでしたら、銅貨1枚で代理を手配できますが、大丈夫でしょうか?」
「ああ、どうやら大丈夫のようだ」
上から名前、職業、レベル、出身地、スキルなどが書いてある。リタに聞いてみると、エキストラスキルなどがあり、特殊能力があると、金額的に割りのいい個別依頼を受けることができるそうだ。エキストラスキルが使えるスキルだったらの話だと念押しされたので、使えないってどんなものがあったか聞いてみた。すると森だらけのフェロニア市で、水泳のエキストラスキル持ちの冒険者がいたそうだ。
上から書類を埋めていたが、職業で手が止まった。なぜなら前にマンティコアとコカトリス、ウォーグを100匹ほど倒し、グレーターデーモン5体にアズライールも倒した。今、レベルいくつなのだろう? 忍者に転職出来るのだろうか。ステータスで今どうなっているのかを見てみる。
●隠蔽:オフ
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:神の化身
●状態:平常
●ベースレベル:305
●職業:レベル157盗賊
●HP:1778110
●MP:1770498
●腕力:888293
●体力:889817
●敏捷:886819
●知力:888214
●魔力:882284
●器用度:882931
●スキル
神聖魔法7、暗黒魔法7、忍術3、アイテムボックス、生活魔法
●エキストラスキル
エロース神の聖寵
●称号
エロース神の化身
お、すでに忍者に転職できるレベルになっていたようだ。80万オーバーと数値もだいぶ増えている。せっかくなので今、転職しちゃおう。
《ジョブチェンジ/転職、忍者》
忍者に転職完了! これでオッケーだな。書類もすべて記入したので、リタに羊皮紙を渡す。
オレが書いた羊皮紙を見ていたリタだったが、目を丸くしている。
「セシル様は上級職の忍者なのですか?」
「ああ、レベル1忍者だけど何か問題でもあるのか?」
実はたった今、忍者になりましたなどとは言えない。ラティアリア大陸では、転職するときは多額の金銭を支払い、神殿に行き転職するものであって、誰でもいつでもというわけには通常いかないのだ。
「いえ、問題はないのですが、上級職から冒険者をはじめられる方は、私が担当させていただいたのは、初めてでしたのです。
それでは、登録料が銅貨3枚となります」
ポケットから出す不利をして、アイテムボックスから銅貨3枚を出し、リタに渡す。
「はい、銅貨3枚いただきました。それでは説明にうつらせていただきます。
冒険者はランクSからランクGまであります。セシル様は冒険者登録をしたばかりですので、ランクGからのスタートとなります。
右側の壁に依頼書が張ってありますので、その中でランクGと書いてある場所から依頼書を持ってきていただき依頼の受付をし、依頼を達成しましたら依頼書と達成した証拠を持ってきてくださいね。
依頼書にはランクG+とランクG-というものがあります。+が付いているものは、ランクFよりの少し難しい依頼となり、-が付いているものは、その反対となります」
一息に説明したので、リタは喉が乾いたようで、コップの水をコクりと一口飲む。リタの唇はピンク色で下唇が厚く、艶があるので色っぽい。あのエロい唇で一物をペロペロなめられたら気持ちいいだろうな、ぐふふふ♪ パックも同じようなことを考えているようだ。鼻の下が微妙に伸びている。
「次は期限内に依頼を達成できなかった場合の話です。違約金が銀貨5枚かかりますのでお気をつけください。違約金を払えないときは奴隷になり、奴隷オークションに出されます」
銀貨5枚を払えないだけで奴隷になるとか、冒険者ギルドは厳しいな。こっちの世界では支払いを待ってくれるとかはないのか。それだけ依頼遂行に関しては、死ぬ気でやらないと駄目だということだ。格上の依頼を試し受けし、失敗する者が過去にたくさんいたのだろう。空気の読めない痛い人間がいると、世の中のルールが変わるのは異世界といえど万国共通だろう。さっきのブルドという馬鹿もそうだが、冒険者って適当なやつが多そうだしな。
「次にこちらの羊皮紙をご覧ください」
リタは机の引出しから、1枚の羊皮紙を出し、渡してくる。
【モンスターランク表:1頭のモンスターに対して対応表】
○SSSランク
倒すことは不可能
○SSランク
倒すことは不可能
○Sランク
ベースレベル60以上のパーティー推奨
ソロで倒すのは不可能
○Aランク
ベースレベル50以上の6人パーティー推奨
ソロはベースレベル60以上の冒険者推奨
○Bランク
ベースレベル40以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル50以上の冒険者推奨
○Cランク
ベースレベル30以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル40以上の冒険者推奨
○Dランク
ベースレベル20以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル30以上の冒険者推奨
○Eランク
ベースレベル10以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル20以上の冒険者推奨
○Fランク
ベースレベル5以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル10以上の冒険者推奨
○Gランク
ベースレベル3以上のパーティー推奨
ソロは討伐クエストは禁止
【冒険者ランク】
S=人類トップクラスの冒険者。プレートはアダマンタイト
A=国トップクラスの冒険者。プレートはミスリル
B=地域トップクラスの冒険者。プレートはプラチナ
C=熟練の冒険者。プレートはゴールド
D=中堅の冒険者。プレートはシルバー
E=一人前の冒険者。プレートはカッパー
F=新人の冒険者。プレートはブロンズ
G=見習いの冒険者。プレートはアイロン
「モンスターランク表は、モンスターと戦うときの目安となります。あくまでも目安ですのでお気をつけくださいね。
下の冒険者ランク表は、首から下げているプレートで、その人のランクが一目で分かるので、トラブル防止などの参考にしてください。ランクG冒険者のセシル様は、最初はアイロンプレートになります」
なるほど、プレートでその者の強さの見当がつくということか。間違ってランクの高い冒険者にケンカを売って、痛い目に合わないためのな。
「それと冒険者にとって、最重要なパーティーの話です。
パーティーを組むと、バーティー名を冒険者ギルドに登録する必要があります。パーティーランクはその登録したメンバーでのみあげることが可能です。死亡者などの欠員が出た場合は、パーティーランクと同じランクのプレートを持つ人でしたら、パーティーに加入することができます。新メンバーがランク以下ですと、パーティーランクが1つ下がります。
ここまでで何か質問がありますか?」
一気に色々情報が入ったから、質問とか言われてもな。ランクにあった依頼を失敗しないでやっていれば、問題ないという事が分かればそれでいい。オレも真面目な日本人だから、ルール違反はなるべくしたくない。
「オイラが質問あるよ。ランクS冒険者やランクA冒険者ってフェロニア市にはどのくらいいるのかな?」
「はい、ランクS冒険者は5人います。
三大将軍の傭兵団、団長3人と、最近フェロニアで台頭してきた新進気鋭の傭兵団の団長2人がランクS冒険者となっております」
「三大将軍ってなんのことだ?」
「良い質問ですね!
フェロニア市は傭兵団が何百とあるのですが、その中でも一目おかれ、ステュディオス王国の軍隊にまで影響力のある傭兵団が3つあります。
1つ目は、レベル35賢者、女帝クララ・ビュレル率いるアフロディーテ傭兵団。団長のビュレル様は容姿も美しく、フレイル使いの達人です。配下の団員は3万人以上いると言われ、聖騎士が多数所属しています。彼女の傭兵団のトレードマークは女神アフロディーテの書かれたブラサードを着けています。
2つ目は、レベル43サムライのルディ・アルベール率いるレッドウィング傭兵団です。団員の規模は100名程と少ないのですが、所属している団員のレベルが1番低くてベースレベル25ということです。国の平均レベル8前後ですので、帝国との戦争での戦果が百名とは思えないほどのすさまじい戦果をあげているそうです。彼らのトレードマークは赤いガントレットを団長のアルベール様が装備しているので、赤い両翼の絵が書かれたブラサードを着けています。
3つ目は、レベル48サムライのダビド・エバンズ率いるスタードラゴン傭兵団です。この傭兵団は長い間、ステュディオス王国に君臨する団員数5万人を越える大傭兵団となっております。エバンズ様はハルバードの使い手としても有名です。彼らのトレードマークはスタードラゴンの絵が書かれたブラサードを着けています。
ブラサードとは腕を守るための腕章のことです」
傭兵団で何万人もいるとか凄いな。そんなに所属している団員がいるとは、傭兵というより軍隊のようなものか。そういえば、門番がアイテムボックスのスキル持ちは傭兵団に所属しろって言ってたっけな。
「この3つの傭兵団が、しばらく三大将軍と呼ばれていたのですが、もう2つの傭兵団のどちらかが4つ目の大将軍になるのではないかと注目されています
その1つが、レベル35狂戦士バハカン・ライダー率いるポイズンファング傭兵団です。この傭兵団長はもともとスタードラゴン傭兵団の副団長をしておりましたが、あまりにも品格がなく、邪悪な行いが多かったので、エバンズに忌み嫌われ追放されました。団員数は1万人ほどいると言われています。彼らのトレードマークは牙から毒が垂れる絵が書かれたブラサードを着けています。
最後の期待の傭兵団がレベル35サムライのルーファス率いるオーディン傭兵団です! まだ団員は千名程ですが、一般の市民を中心に結成された珍しい傭兵団です。団長のルーファス様は金髪ロングヘアの超絶美男子で有名ですので、女の子の憧れの的となっております! そして超レアな神槍グングニルの持ち主です。彼らのトレードマークはグングニルの絵が書かれたブラサードを着けています! はぁはぁはぁ」
リタも美男子ルーファスのファンなのだな。最後の紹介のところだけ力が相当こもっていたよ。言い終わった後、息切れしているしな。
「オイラもう1つ質問があるんだけど、冒険者と傭兵ってどう違うの?」
「良い質問ですね。両方とも違いはありません。冒険者は迷宮やバレンシアの森などでの依頼を中心にお金を稼いだり、傭兵となり戦争に参加してお金を稼いだりしています。そして考え方が合う冒険者たちが集まり、自分たちの身を守るため傭兵団を作りました。メリットとして傭兵団に入った方が争い事には巻き込まれにくくなります。それこそ三大勢力所属の冒険者に手を出したら、落とし前をつけに攻撃をしてくるでしょうから、とてもこのフェロニア市にはいられなくなります。特にエバンズ様のスタードラゴン傭兵団は、全員が家族という考えが強いです」
なるほどね。だが仲間というものは多いと足枷になる場合がある。オレは龍を一撃で倒せるほどの戦闘力があるから、そちらでは仲間に頼ることはない。唯一頼らなくては女の子が孕みまくって大変な事になるから、夜伽の達人、変態妖精パックは必要である。それに傭兵団に入ると規律やらルールやらで面倒くさそうだ。誰かに誘われても入団は絶対に拒否しよう。
「それでは最後に冒険者にとって、もっとも重要な武力の検査があります。ちょうど今日はもう8人、冒険者デビューの方がいらっしゃるので、9人で受けられることになります。それでは私についてきてください」
そういうと、リタは立ち上がって左手のドアから冒険者ギルドの裏手に向かい歩いていく。それにオレとパックもついていった。
「オレは北門の門番バネッド・ライマンだ。まずはお礼を言わせてくれ。お前がいなかったら、兵士たちに相当な被害が出ていただろう。死者も出ていたに違いない。これは少ないが謝礼金の銀貨が10枚だ。取っておいてくれ」
「セシルにとって、あれくらいたいしたことじゃないよね!」
「ま、そうだが、そう言うなら頂いておこう」
ライマンは机の上に置いてあった袋を渡してくる。断っても悪いし、誠意を示してきてくれたのだから受け取っておく。
「それでは検問をはじめるぞ。まずは真実の石板に手を当ててくれ。まさか犯罪歴はないよな」
「もちろん犯罪歴はないぞ」
「オイラもないよ!」
真実の石板とは特殊な魔法効果により、真実を見抜くという石板だ。嘘をつくと赤く光り、本当のことを言うと青く光るという優れものだ。真実の石板に手を当てると、石板は青く光った。次にパックも手を当てるがやはり青く光る。
「うむ、よろしい。お前たちはセシルとパックか。パルミラ教皇国に降臨した神の化身と同じ名前とは縁起いいな、ははは」
「神の化身?」
「そうか、ティムガット市からフェロニア市まで来るのに10日ほどかかり、情報が入らないから知らないのも無理はない。パルミラ教皇国で神の化身がこの1000年ではじめて降臨したのだ。そして聖女アリシア・クレスウェルを自分の女にしたらしい。あの超絶美少女で有名な娘をな。色々とHなことをしているのだろうな、超うらやましいぜ」
ライマンはまだ見たことがない美少女に空を見上げて思いを馳せる。その超絶美少女の心も体もすでにオレのものだけどな。ぐふふふ♪ パックもすべて知っているから、微妙な顔をしている。
「おっと、仕事中だったな。あとは入市税が銅貨3枚だと言いたいところだが、防衛の手伝いをしてくれたものからはお金は取れないので免除だ」
『フォン』
オレは分かったと、先程の銀貨の入った袋をアイテムボックスに入れる。袋は一瞬にしてオレの手元から音をたてて消える。
「こりゃ驚いたな! お前はアイテムボックスのスキル持ちか。どうりで持ち物を持っていないから、パルミラ教皇国から来たのに変だと思っていたんだよ」
「そうだ。アイテムボックスのスキルを持っているが、何かまずい事でもあるのか?」
ライマンは、はぁ~っとため息をつき、説明をはじめる。
「いいか、アイテムボックス持ちは、この巨大なフェロニア市でも10人もいない。その全員が軍所属か大商人、大傭兵団に雇われている。貴重な激レアスキルだから、スラムにある闇の組織に狙われるのだよ。お前がフェロニア市に住むのなら、有力な組織の庇護を受けないと、すぐに誘拐され、絶対服従の魔法がかけられた首輪をつけられ奴隷にされてしまう。いいか、奴隷にされるのが嫌なら今言った3つの組織を早めに訪ねるのだぞ」
「ずいぶん優しいな。忠告は受け取っておく、ありがとう」
「ここも門番は親切でいい人だね! オイラこういう人が護衛している街なら安心して暮らせそう」
検問所を出ると、フェロニアの街並みが表れる。今までで立ち寄った街で1番賑わっているのではないだろうか。歩く人々のエネルギーを強く感じる。繁栄している都市っていうのは、やはり住んでいる住人にも勢いがあるのだな。剣闘士王オルドリッジが良い政治をしている証拠だな。
「それじゃあ、とりあえず冒険者ギルドに行って、冒険者登録をすませてから宿屋を探そう。それで明日からはラヴィアンローズを開業するための土地探しをしよう」
「承知~」
冒険者ギルドを《探査マップ/神愛》で探すと、街の中央に位置する場所にあった。そして冒険者ギルドに隣接する施設が目的の1つである地下迷宮となっている。
街のど真ん中に迷宮の入り口があるとは驚きだ。この街はおそらく迷宮がまず発生し、そこを中心に円形に街が発展していったのだ。
街の雰囲気を楽しみながら2時間ほど歩いていくと、冒険者ギルド入口に到着した。ギルドは5階建ての洋館仕立てになっている。ギルドを見た感想を一言で言うと、デカイ! 東京ドーム数個分はあるようだ。オレは《探査マップ/神愛》があるので、上空から見ることが出来るので、実際の施設の大きさが分かるのだ。
「なんだありゃ?」
「え? 何あれ! 冒険者ギルドの前が隕石が落ちたみたいに破壊されている!?」
冒険者ギルド前の道路をはさんだ正面にある何かが破壊しつくされて残骸となり、煙を薄っすらとあげている。もともとあった建物が、家なのか倉庫なのか、施設であるか見分けがつかない程である。
「モンスターでも市内に侵入して暴れでもしたのかな?」
「そんな感じだろうな。さぁ、冒険者ギルドの中に入って冒険者登録をすまそう」
「承知~」
『キィ~』
取手を押して鉄製の扉を開け、冒険者ギルドの中に入る。建物の中は奥が受付で、手前に飲食ができるテーブルが数多くあり、今も冒険者が騒いでいて賑わっている。協力をしてクエストを受けた時の待ち合わせ場所に、酒でも飲みながら待っていられそうだな。それにしても冒険者の数がすごい! 数百人ではなく数千人はいるのではないだろうか。日本で開催されている何かのフェス会場のようだ。
建物内の奥を見ると、受付が30ヶ所あった。さすがにラティアリア大陸で1番大きな冒険者ギルドだ。依頼を受けようと紙を持っている冒険者で行列ができている。
左の壁を見ると、依頼書が何十と張ってあり、同じパーティーの仲間と、どの依頼者がよいか話し合いながら検討している声が多数聞こえる。
「ずいぶん賑わっているね! これからはじまる冒険が楽しみでオイラドキドキしてきたよ」
「そうだな、オレとパックの冒険者デビューだ。パックは眷属だから、登録はいらないだろうがな」
まずは登録をするため受付まで歩いていくと、飲んでいる冒険者たちが一斉にオレの方を向く。
「ビックリした。いきなり大勢がオイラたちの方を向くからさ! よそ者は受け付けねーぜ! みたいなものかな」
オレも一瞬ビクッと驚いたが、そのまま無視して歩き出す。客席ではオレたちを見てなぜかザワザワしている。何を話しているか気になったので耳をすまして聞いてみた。
「なんてカッコいい美少年なの」
「ルーファス様と互角の美少年ね」
「体の線が細くて素敵ね」
早くも女性たちの噂話がはじまり、ジロジロ全身くまなく見られている。フェロニア市でもモンスターバスターの顔は人気らしいな。
「いけすかねぇガキだな」
「糞ガキが、ぶち殺すぞ!」
「…………………………………………殺す」
しかし、別の目で見るものも当然いる。親の仇を見るような目で睨んでくる男が数人いる。男の嫉妬はみっともないぜ。
冒険者ギルドの受付カウンターには、登録&ランクGカウンターがあり、ランクFからランクA専用カウンターまである。1つ1つのカウンターに若い女の子の受付嬢がおり、登録カウンターの前に立つと、受付嬢はにこっと笑顔を見せた。冒険者ギルドの受付嬢は美女ぞろいなのは、ギルドマスターの趣味なのか、それとも荒くれ者が多い冒険者とのトラブルを避けるために、美女をそろえているのだろうか。
「冒険者ギルドにようこそ。私はこのカウンター担当のリタと申します。ご利用ははじめてですよね」
「ああ、はじめてだ。冒険者登録をしたいのだが……」
受付嬢リタとの話の途中で、オレたちを憎々しい目つきでガン見していたやつらの1人が立ち上がる。
「おいおい、お前みたいに体が細いガキに冒険者がつとまるわけないだろ! うちに帰ってママのおっぱいでも吸ってろや。なぁ、ギャハハハハハハ!」
「だよな! うひゃひゃひゃ!」
オレのことをよく思っていなかった、同じテーブルの仲間と一斉に笑い出す。チラッと馬鹿の顔を見て、イチャモンをつけた顔を覚える。
「ブルドさん! せっかく冒険者になろうと来てくれた人の邪魔をしないでください!」
受付の女の子はオレを庇ってくれた。初心者には優しいのがちょっと嬉しいな。受付嬢だけあって、可愛いし、あとで抱いてやってもいいな。結局、初日に暴れるのも微妙だし、オレは馬鹿にスルー機能を発揮する。
「ああいう馬鹿はどこでもいるんだね! 見てよセシル、あの汚い鎧をさ! だらしない性格がにじみでているよね!」
女性冒険者がササッと身なりを整え、姿勢を正した。なぜかギルドの受付嬢リタも髪を正してギルドから支給された制服を整えた。パックの言葉が刺さったらしい。だがそんな辛口パックに怒りが沸点を越えてしまった者がいる。ブルドとその仲間たちだ。オレたちを殺すぞ! という勢いで睨みつけると近づいてきた。
「こ、この鎧はなぁ! ランクDの俺の大切な相棒なんだよ! それを馬鹿にされちゃ引く事が出来なくなるぞ! おい、お前外に出ろや!」
「ブルドさん、この方はこれから冒険者になる新人なんですよ! それをランクDのあなたが戦うって言うんですか? 新人いびりは止めてください!」
「リタうるせぇ! じゃっ、止めてやるから俺と朝までデートすれば許してやらんでもないぞ? どうする?」
「えっ?……それとこれとは」
「じゃあこいつを許してやらねぇ~。おいお前、表に出ろ!」
「くくっ、朝までは無理ですが、ランチくらいなら」
「いや、朝までだ。それは一歩も引けねぇ~」
オレのためにこんな馬鹿とランチまで一緒に食べてくれるとか、リタは優しい女の子なのだな。このままほっておいたら、彼女の貞操が危ない。
「ねぇ~、セシルこいつら殺っちゃえば? どうせ雑魚なんだし」
「なっ! なんだと! もう許さんぞ!」
ブルドは片手用片刃アックスを腰にある革製の鞘から抜き、激しい怒声をあげて襲いかかってきた。
「ブルドさん止めて!」
~~~戦闘開始
◎レベル22戦士ブルド×(1)
イニシアティブはオレが取るが待機を選択。2番手のブルドが斬りかかってきた。兜割りのようにジャンプをして上から頭に叩きつけようとした。
『ガガガガッ!』
『ビシィシシシッ!』
ブルドは242のダメージをオレに与えたが、198007の物理防御力で打ち消した。
「何! 俺のアックスを指で弾きやがっただと!」
レベル22戦士ブルドは熟年の冒険者だ。この国の冒険者の平均レベルが8か9だから、中々の強さとなっている。だが神クラスの強さを持つオレからしたら、元々ブルドの攻撃を避けなくても問題ない。
~~~戦闘終了
愕然として両膝を床につけて、落ち込んでいるブルドの前でパックが止めを刺した。
「ほらね! 身だしなみが汚いと、性格も、顔も悪いでしょ! オイラが言ったとおりだね!」
ブルドはデコピンで自慢のアックスを弾かれたことがよほどショックだったのか、魂を失ったようにふらりふらりと冒険者ギルドを出ていった。ここまで恥をかくと、しばらくは顔を出せないだろう。
「助けていただきありがとうございます。セシル様ってお強いのですね。荒くれ者のランクDブルド様を軽くあしらうなんて……うふふふ」
「いや、オレのためにくだらない男と夜伽などあなたにしてほしくなかったからな。人に迷惑をかける者はこらしめる必要がある」
「あんな人でも丁寧に扱っていたリタは良い女だね!」
●名前:リタ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市冒険者ギルド
●身長/体重:162/52
●髪型:赤髪清楚なストレートボブ
●瞳の色:青色
●スリーサイズ:83/57/84
●カップ/形:D/さら型
●経験:なし
●状態:好意
●職業:平民
●レベル:1
受付嬢リタの髪型は、清楚なストレートボブだった。前髪は一直線でそろえていて、サイドはアゴの辺りまでの長さがある。男性は清楚系の女性が好きだから、男性ウケの髪型となっている。胸も意外にDカップもあり、着やせするタイプだな。瞳は若干下がり気味の優しい雰囲気となっている。
「あら、お若いのに大人の対応なんですね。それではあらためて冒険者登録のご説明をさせていただきます。えっと、あなたのお名前は……」
受付譲リタは、こういうトラブルは日常茶飯事のようで、すぐに平常心となって自身の仕事に戻った。
「ああ、セシルだ。こっちは相棒で妖精族のパックという。一応眷属ということになる。説明を頼む」
「妖精族のパックだよ! よろしくね、リタ!」
「まずはこちらの申込の羊皮紙に必要事項をご記入ください」
リタは机の引出しから羽ペンの刺さったインク坪を出してくる。そういえば、ラティアリア大陸に来て文字を見ることははじめてだが、読み書きは出来るのだろうか? 疑問があったが、受け取った羊皮紙を見ると日本語ではないが、アラビア語のような文字で書いてあった。不思議と文字を見ると、脳内に意味が浮かんできて読めるし、書くこともできる。勝手に脳内で文字が変換される仕組みのようだ。
「文字の読み書きが難しいようでしたら、銅貨1枚で代理を手配できますが、大丈夫でしょうか?」
「ああ、どうやら大丈夫のようだ」
上から名前、職業、レベル、出身地、スキルなどが書いてある。リタに聞いてみると、エキストラスキルなどがあり、特殊能力があると、金額的に割りのいい個別依頼を受けることができるそうだ。エキストラスキルが使えるスキルだったらの話だと念押しされたので、使えないってどんなものがあったか聞いてみた。すると森だらけのフェロニア市で、水泳のエキストラスキル持ちの冒険者がいたそうだ。
上から書類を埋めていたが、職業で手が止まった。なぜなら前にマンティコアとコカトリス、ウォーグを100匹ほど倒し、グレーターデーモン5体にアズライールも倒した。今、レベルいくつなのだろう? 忍者に転職出来るのだろうか。ステータスで今どうなっているのかを見てみる。
●隠蔽:オフ
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:神の化身
●状態:平常
●ベースレベル:305
●職業:レベル157盗賊
●HP:1778110
●MP:1770498
●腕力:888293
●体力:889817
●敏捷:886819
●知力:888214
●魔力:882284
●器用度:882931
●スキル
神聖魔法7、暗黒魔法7、忍術3、アイテムボックス、生活魔法
●エキストラスキル
エロース神の聖寵
●称号
エロース神の化身
お、すでに忍者に転職できるレベルになっていたようだ。80万オーバーと数値もだいぶ増えている。せっかくなので今、転職しちゃおう。
《ジョブチェンジ/転職、忍者》
忍者に転職完了! これでオッケーだな。書類もすべて記入したので、リタに羊皮紙を渡す。
オレが書いた羊皮紙を見ていたリタだったが、目を丸くしている。
「セシル様は上級職の忍者なのですか?」
「ああ、レベル1忍者だけど何か問題でもあるのか?」
実はたった今、忍者になりましたなどとは言えない。ラティアリア大陸では、転職するときは多額の金銭を支払い、神殿に行き転職するものであって、誰でもいつでもというわけには通常いかないのだ。
「いえ、問題はないのですが、上級職から冒険者をはじめられる方は、私が担当させていただいたのは、初めてでしたのです。
それでは、登録料が銅貨3枚となります」
ポケットから出す不利をして、アイテムボックスから銅貨3枚を出し、リタに渡す。
「はい、銅貨3枚いただきました。それでは説明にうつらせていただきます。
冒険者はランクSからランクGまであります。セシル様は冒険者登録をしたばかりですので、ランクGからのスタートとなります。
右側の壁に依頼書が張ってありますので、その中でランクGと書いてある場所から依頼書を持ってきていただき依頼の受付をし、依頼を達成しましたら依頼書と達成した証拠を持ってきてくださいね。
依頼書にはランクG+とランクG-というものがあります。+が付いているものは、ランクFよりの少し難しい依頼となり、-が付いているものは、その反対となります」
一息に説明したので、リタは喉が乾いたようで、コップの水をコクりと一口飲む。リタの唇はピンク色で下唇が厚く、艶があるので色っぽい。あのエロい唇で一物をペロペロなめられたら気持ちいいだろうな、ぐふふふ♪ パックも同じようなことを考えているようだ。鼻の下が微妙に伸びている。
「次は期限内に依頼を達成できなかった場合の話です。違約金が銀貨5枚かかりますのでお気をつけください。違約金を払えないときは奴隷になり、奴隷オークションに出されます」
銀貨5枚を払えないだけで奴隷になるとか、冒険者ギルドは厳しいな。こっちの世界では支払いを待ってくれるとかはないのか。それだけ依頼遂行に関しては、死ぬ気でやらないと駄目だということだ。格上の依頼を試し受けし、失敗する者が過去にたくさんいたのだろう。空気の読めない痛い人間がいると、世の中のルールが変わるのは異世界といえど万国共通だろう。さっきのブルドという馬鹿もそうだが、冒険者って適当なやつが多そうだしな。
「次にこちらの羊皮紙をご覧ください」
リタは机の引出しから、1枚の羊皮紙を出し、渡してくる。
【モンスターランク表:1頭のモンスターに対して対応表】
○SSSランク
倒すことは不可能
○SSランク
倒すことは不可能
○Sランク
ベースレベル60以上のパーティー推奨
ソロで倒すのは不可能
○Aランク
ベースレベル50以上の6人パーティー推奨
ソロはベースレベル60以上の冒険者推奨
○Bランク
ベースレベル40以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル50以上の冒険者推奨
○Cランク
ベースレベル30以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル40以上の冒険者推奨
○Dランク
ベースレベル20以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル30以上の冒険者推奨
○Eランク
ベースレベル10以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル20以上の冒険者推奨
○Fランク
ベースレベル5以上のパーティー推奨
ソロはベースレベル10以上の冒険者推奨
○Gランク
ベースレベル3以上のパーティー推奨
ソロは討伐クエストは禁止
【冒険者ランク】
S=人類トップクラスの冒険者。プレートはアダマンタイト
A=国トップクラスの冒険者。プレートはミスリル
B=地域トップクラスの冒険者。プレートはプラチナ
C=熟練の冒険者。プレートはゴールド
D=中堅の冒険者。プレートはシルバー
E=一人前の冒険者。プレートはカッパー
F=新人の冒険者。プレートはブロンズ
G=見習いの冒険者。プレートはアイロン
「モンスターランク表は、モンスターと戦うときの目安となります。あくまでも目安ですのでお気をつけくださいね。
下の冒険者ランク表は、首から下げているプレートで、その人のランクが一目で分かるので、トラブル防止などの参考にしてください。ランクG冒険者のセシル様は、最初はアイロンプレートになります」
なるほど、プレートでその者の強さの見当がつくということか。間違ってランクの高い冒険者にケンカを売って、痛い目に合わないためのな。
「それと冒険者にとって、最重要なパーティーの話です。
パーティーを組むと、バーティー名を冒険者ギルドに登録する必要があります。パーティーランクはその登録したメンバーでのみあげることが可能です。死亡者などの欠員が出た場合は、パーティーランクと同じランクのプレートを持つ人でしたら、パーティーに加入することができます。新メンバーがランク以下ですと、パーティーランクが1つ下がります。
ここまでで何か質問がありますか?」
一気に色々情報が入ったから、質問とか言われてもな。ランクにあった依頼を失敗しないでやっていれば、問題ないという事が分かればそれでいい。オレも真面目な日本人だから、ルール違反はなるべくしたくない。
「オイラが質問あるよ。ランクS冒険者やランクA冒険者ってフェロニア市にはどのくらいいるのかな?」
「はい、ランクS冒険者は5人います。
三大将軍の傭兵団、団長3人と、最近フェロニアで台頭してきた新進気鋭の傭兵団の団長2人がランクS冒険者となっております」
「三大将軍ってなんのことだ?」
「良い質問ですね!
フェロニア市は傭兵団が何百とあるのですが、その中でも一目おかれ、ステュディオス王国の軍隊にまで影響力のある傭兵団が3つあります。
1つ目は、レベル35賢者、女帝クララ・ビュレル率いるアフロディーテ傭兵団。団長のビュレル様は容姿も美しく、フレイル使いの達人です。配下の団員は3万人以上いると言われ、聖騎士が多数所属しています。彼女の傭兵団のトレードマークは女神アフロディーテの書かれたブラサードを着けています。
2つ目は、レベル43サムライのルディ・アルベール率いるレッドウィング傭兵団です。団員の規模は100名程と少ないのですが、所属している団員のレベルが1番低くてベースレベル25ということです。国の平均レベル8前後ですので、帝国との戦争での戦果が百名とは思えないほどのすさまじい戦果をあげているそうです。彼らのトレードマークは赤いガントレットを団長のアルベール様が装備しているので、赤い両翼の絵が書かれたブラサードを着けています。
3つ目は、レベル48サムライのダビド・エバンズ率いるスタードラゴン傭兵団です。この傭兵団は長い間、ステュディオス王国に君臨する団員数5万人を越える大傭兵団となっております。エバンズ様はハルバードの使い手としても有名です。彼らのトレードマークはスタードラゴンの絵が書かれたブラサードを着けています。
ブラサードとは腕を守るための腕章のことです」
傭兵団で何万人もいるとか凄いな。そんなに所属している団員がいるとは、傭兵というより軍隊のようなものか。そういえば、門番がアイテムボックスのスキル持ちは傭兵団に所属しろって言ってたっけな。
「この3つの傭兵団が、しばらく三大将軍と呼ばれていたのですが、もう2つの傭兵団のどちらかが4つ目の大将軍になるのではないかと注目されています
その1つが、レベル35狂戦士バハカン・ライダー率いるポイズンファング傭兵団です。この傭兵団長はもともとスタードラゴン傭兵団の副団長をしておりましたが、あまりにも品格がなく、邪悪な行いが多かったので、エバンズに忌み嫌われ追放されました。団員数は1万人ほどいると言われています。彼らのトレードマークは牙から毒が垂れる絵が書かれたブラサードを着けています。
最後の期待の傭兵団がレベル35サムライのルーファス率いるオーディン傭兵団です! まだ団員は千名程ですが、一般の市民を中心に結成された珍しい傭兵団です。団長のルーファス様は金髪ロングヘアの超絶美男子で有名ですので、女の子の憧れの的となっております! そして超レアな神槍グングニルの持ち主です。彼らのトレードマークはグングニルの絵が書かれたブラサードを着けています! はぁはぁはぁ」
リタも美男子ルーファスのファンなのだな。最後の紹介のところだけ力が相当こもっていたよ。言い終わった後、息切れしているしな。
「オイラもう1つ質問があるんだけど、冒険者と傭兵ってどう違うの?」
「良い質問ですね。両方とも違いはありません。冒険者は迷宮やバレンシアの森などでの依頼を中心にお金を稼いだり、傭兵となり戦争に参加してお金を稼いだりしています。そして考え方が合う冒険者たちが集まり、自分たちの身を守るため傭兵団を作りました。メリットとして傭兵団に入った方が争い事には巻き込まれにくくなります。それこそ三大勢力所属の冒険者に手を出したら、落とし前をつけに攻撃をしてくるでしょうから、とてもこのフェロニア市にはいられなくなります。特にエバンズ様のスタードラゴン傭兵団は、全員が家族という考えが強いです」
なるほどね。だが仲間というものは多いと足枷になる場合がある。オレは龍を一撃で倒せるほどの戦闘力があるから、そちらでは仲間に頼ることはない。唯一頼らなくては女の子が孕みまくって大変な事になるから、夜伽の達人、変態妖精パックは必要である。それに傭兵団に入ると規律やらルールやらで面倒くさそうだ。誰かに誘われても入団は絶対に拒否しよう。
「それでは最後に冒険者にとって、もっとも重要な武力の検査があります。ちょうど今日はもう8人、冒険者デビューの方がいらっしゃるので、9人で受けられることになります。それでは私についてきてください」
そういうと、リタは立ち上がって左手のドアから冒険者ギルドの裏手に向かい歩いていく。それにオレとパックもついていった。
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