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第1章

第48話 遺恨

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カミラの白く細い首をめがけて、グレーターデーモンの黒い暴力である毒爪の一撃が与えられる、まさにその刹那。

『ピシッ、ピシッ、ズガァァァーン!』

カミラの頭上にある空間にヒビが入り、そのヒビ割れから1本の光の矢が飛び出した。光の矢は凄まじいスピードでグレーターデーモンの左肩を貫いた。光の矢は空間を抜ける際に威力がだいぶ落ちたようで、グレーターデーモンを傷つける程度になった。

「グゥオオオオオオオオオオオオオオ!」

『パリィィィィィン!』

オレは空間にできたヒビから、カミラたちがいる空間に入るため、強引にヒビを両手でメリメリッと左右に引き裂いた。40万オーバーの腕力によりヒビは広がり、人一人が入ることができるくらいの幅にまでなった。そこに体ごと入り、仲間たちがいる空間へと侵入した。

「お、お前は!」

「何故ココニイル? マサカ異空間ヲ突破シタトイウノカ! 信ジラレン」

「セシルゥ~!!」

パックがオレに向かって飛んでくると、泣きながら抱きついてきた。よほど怖い思いをしたのだろう。可哀想にな。敵のポートフォリオとグレーターデーモンは予想外の敵の出現に状況がまだ飲み込めず、固まっている。カミラは血だらけで片膝をついて動けなくなっていた。

「カミラが! みんなが! うわぁ~ん!」

「遅れてすまなかったな。この異空間に来ることに少し手間取ってしまった。何が起きたかは、すべてウインドウから観ていたから分かっている」

「そうだったんだね! でもこうして来てくれたからいいよ! それよりもカミラを助けてあげて!」

「そうだったな、すぐに治療しよう」

オレは数種の魔法の詠唱をはじめた。

《フルリカバリー/フル回復魔法》
《デパス/精神安定》
《アースウォール/土壁×10》

まだ固まっているグレーターデーモンたちとの間に次々と分厚い土壁を発生させ、巨大な要塞を作った。これでしばらくは突破されることなく、時間が稼げることだろう。

カミラの体が強い光に包まれて、徐々に光が収まっていった。体は《フルリカバリー/フル回復魔法》により完全に回復し、切られてなくなっていた右腕と潰されていた右目が元に戻り、胸に刻まれた傷も癒え、すべての傷がなくなる。カミラの心も《デパス/精神安定》で癒やされたはずだ。彼女と目が合うと、大きく目を見開いて、か細い声で話しかけてくる。

「……セ……シル……様? セシル様なの? セシル様! セシル様! セシル様! セシル様ああああああああああああああ!!」

カミラがものすごい勢いで、オレの胸に飛び込んできた。そして泣き叫びながら、何かを言っているがはっきりと聞き取ることは出来なかった。ずいぶん追い詰められていたのだな。オレの女をここまで悲しませるとは、あいつらは絶対に許せんな。

「1人でよく頑張ったな」

彼女を強く抱きしめて、頭をしばらくなでなでしていると、《デパス/精神安定》の魔法の効果で、すぐに落ち着いてきたようだ。さすが異世界の魔法は即効性があるといったところか。日本でもこの魔法が使えたら、多くの人が救われるに違いない。

『ドガンッ、ガァーン、ガガーン』

驚き固まっていたグレーターデーモンたちも、正気に戻りオレが作った土の要塞を攻撃しているが、まだ突破できないでいる。向こう側から魔法を使って壁を破壊しようとしている轟音が聞こえてきた。

「カミラ、ヴェルチェッリ騎士団の仲間を助けなくちゃならないから、魔法を使うぞ」

カミラをそっと離して、ヴェルチェッリ騎士団の仲間の遺体に近づいた。そして魔法の詠唱の準備に入った。

《リザレクション/上位蘇生魔法×8》

神々しい光が天からカーテンのように下りてくると、ヴェルチェッリ騎士団のメンバーを包んだ。そして、光が弾ける。天から幻想的な女神の声が響いてくる。

【ささやきー祈りー詠唱ー念じろ!】

【8人は元気になりました】

さすが強運揃いのヴェルチェッリ騎士団のメンバーだった。1人も灰になることなく、生還した。

「「「ごほっごほっ」」」

「え? 私たち死んだはずじゃ?」

「生きてる? どうなっているの?」

「体の状態も完全に回復しているわ。やられて失なった腕もついてるわ」

「良かった~。みんな間に合ったみたいだね!」

《リザレクション/上位蘇生魔法》はレベル5神聖魔法の《リバイバル/と下位蘇生魔法》と違い、蘇生したときにHPとMP、それに部位欠損も完全回復するから、回復魔法をかける必要がない。死んだはずの仲間が起き上がると、カミラは目を大きく開いて驚きオレを見る。

「ま、まさか今の魔法は《リザレクション/上位蘇生魔法》……ですか? その魔法が存在することを知られながらも、使用できる者が歴史上誰一人いないという、伝説となっている魔法の1つ」

「そうだ、そんなことより仲間のところに行くがいい、ほら」

そう言うとカミラの背中をトンと押した。カミラは弾けるような笑顔で仲間のところに走っていく。カッコいい系超絶美少女の美しさがさらに際立っていて、カミラに惚れそうだ。いや、もうすでに愛しくて愛しくて仕方なくなっている。カミラは後宮ハーレムに絶対来てもらおう。

「「「団長!」」」

ヴェルチェッリ騎士団の仲間たちは、手を取り合ったり、ハグをしたりと、お互いの無事を喜びあっている。この娘たちは自分の命より、仲間の命を大事にするという、仲間思いで強い心を持っているのだな。

「それじゃあ、そろそろ悪いやつらには退場してもらおうか。パックはカミラの肩にでもとまっていてくれ」

「あいよ~。オイラ、マジでムカついたから、あいつら思いっきりぶちのめしちゃってね!」

「ふっ、任せておけ。オレの女にしたことへの贖罪は、己たちの命であがなわせるからな」

《ホーリーシールド/聖なる盾×11》
《アースウォール/土壁、解呪》

『フォン』

土壁の要塞が消えると、敵は怒りと憎しみで濁った目つきで、オレを睨みつけてきた。どのように生きてきたら、このような荒んだ目になるのか理解できないな。グレーターデーモンは悪魔系モンスターだから、生まれつきなのだろうか?

「異空間カラ脱出トハ! 貴様ハ誰ダ、タダ者デハナイナ。マ、マサカ、エロース神ナノカ」

「そうだよ! その男は神都ベネベントで降臨した神の化身セシルだよ。そしてオイラは相棒のパックさ!」

「「「ええええええええええええええ!」」」

仲間が驚きすぎてアゴがはずれそうなほど口を開いている。パック、まだオレが神の化身って仲間にバレていなかったのに勝手に言うなよ。まあ、こいつらはぶっ殺すし、仲間たちには口止めすればいいか。

「エロース神ダト。ナラバ千年ノ恨ミ、今コソ晴ラシテヤルゾォォォォォォォォォォォ!」

~~~戦闘開始

◎グレーターデーモン×5(5)
◎ポートフォリオ×1(1)

イニシアティブはオレが取ったが、待機を選択。次点のグレーターデーモン5体が攻撃体制にはいる。魔力が高まり、膨大な黒い魔力が5体のグレーターデーモンに集まる。

《ブリザード/氷の嵐》
《ブリザード/氷の嵐》
《ブリザード/氷の嵐》
《ブリザード/氷の嵐》
《ブリザード/氷の嵐》

5体のグレーターデーモンは、暗黒魔法レベル5《ブリザード/氷の嵐》を唱えてきた。尖った氷のつぶてが大量にオレに襲いかかってきた。

『ドガァァァァァアアアン!』

「「「セシル様!」」」

《ブリザード/氷の嵐》5発の凄まじい威力で周囲に煙がたち、音が圧倒的な魔法の破壊力を表している。オレは2928のダメージを5発食らったが、197394の高い魔法防御力で打ち消した。当然、ピンピンして傷ひとつ付いていない。オレを何とかしたかったら、魔力と知力とレベルを足して197394を超える魔法ダメージを出さないと、薄皮1枚傷つけられない。何せ龍の40倍は硬い皮膚だからな。

魔法の無効化と打ち消しは違う能力だ。グレーターデーモンがスキルで持つ90%の無効化は、魔法の効果自体を90%の確率で無効化にするという凶悪なものだ。オレの打ち消しとは単に防御力が高く、ダメージを与えられるところまでいっていないということだ。打ち消しを分かりやすく言うと、スポンジの棒ではどんなに叩いてもダメージはないと同じだ。パタパタやられて苛つくことはある。

「……何かしたのか?」

「ナ、何ダト! 5発ノブリザードデダメージガナイダト!」

「え? セシル様あれを食らって無傷なの? 強すぎるわ」

「さすが神の化身セシル様ね!」

「当然でしょう! だって私の旦那様だもの」

「うひひっ、すっかりカミラがセシルに惚れちゃっているよ!」

ようやく力の差に気がついたって遅すぎる。まずはこいつらを絶対に逃がさないようにするか。

~~~2ターン

◎グレーターデーモン×5(5)
◎ポートフォリオ×1(0)

ポートフォリオは恐怖で動けないでいる。
2ターン目もイニシアティブはオレが取った。戦神魔法をまずは封じよう。VRMMOモンスターバスターで、オレは正統派の無双超人だったから、魔族の使う戦神魔法を使ったことがない。確かレベル4に転移魔法があったはずだ。

《サイレント/消音×6体×300》

「「「……!?」」」

よし、敵全員がレジストに失敗して沈黙した。90%の無効化だから、1人につき300回《サイレント/消音》をかけたのだ。グレーターデーモンといえど必ずどこかでレジストに失敗する。これで転移魔法を使い、この場から逃げることができなくなった。ざまあみやがれ!

備えあれば憂いなし。雑魚のポートフォリオの呪文も封じておく。さっき光の矢で射ったグレーターデーモンだけ残して他のグレーターデーモンは殺っちゃおう。カミラが復讐したいだろうしな。

5体のグレーターデーモンは毒爪で襲いかかってきた。5体で合計50発の攻撃で44発かわし、6発がクリティカルヒットとなった。クリティカルヒット1発で1494のダメージをうけたが、198007の物理防御力で打ち消した。

~~~3ターン

◎グレーターデーモン5(0)
◎ポートフォリオ×1(0)

ポートフォリオとグレーターデーモンは恐れて動けなくなっている。自分の避ける事が出来ない死を間近に感じ、恐慌状態に陥っていた。膝がカタカタ震え、立つこともままならない。

《ウインドカッター/風の刃×5》

『ズバババババッ!』

「「「グガッ!」」」

ポートフォリオとパトリック殺しの1体を残して、風の刃で4体の首を切り落とす。ついでにカミラが勝てるように、まだ生き残っている父親殺しのグレーターデーモンの片腕と足にも軽く切り傷をつけておいた。さっき光の弓で傷つけた分を合わせると、敵の能力が約半分くらいまで能力が下がっている。これならカミラ1人でも余裕でいけるな。やはり大切な父親を殺した敵だけは、自分で復讐を遂げたいだろう。

●隠蔽:なし
●魔物名:グレーターデーモン
●状態:恐怖
●脅威度:A 
●レベル:60
●HP:2940→1470
●MP:2944→1472
●腕力:1408→704
●体力:1532→766
●敏捷:1444→722
●知力:1484→742
●魔力:1460→730
●器用度:1540→770
●スキル
暗黒魔法4、毒、麻痺、魔法無効化90%、戦神魔法4

VRMMOモンスターバスターでは、体力を削られていたら能力が低下する。HPが10%減っていると、能力値が10%下がる。MPが減っていたの場合も同様だ。今回のグレーターデーモンのように半分くらいまでHPが減っていると、やはり能力値は半分になる。

そのようなシステムになっているので、モンスターバスターではいかにHPとMPを消費せずに敵を倒すかがポイントになるのだ。無双超人の異名を持つセシルは、異名がついた辺りから、敵の攻撃をうけたことはほとんどないのだ。唯一、オレにダメージを与えられたのは爆撃機の通り名を持ち、VRMMOモンスターバスターのナンバー2として名をあげていたヴァルビリスだけであった。まっ、ダメージを与えられたというだけで、いつもフルボッコにして楽勝だったがな、ふっ。

「さあ、お前の父親を殺害したグレーターデーモンとポートフォリオを残しておいた。復讐を果たして、父の無念を晴らすがいい。オレはここですべてを見ているからな」

「旦那様、私に復讐の機会をくださるとは心より感謝します。私をずっと見ていてください。必ずご期待に答えてみせます」

「頑張れカミラ! オイラたちが絶賛応援しているからね!」

パックの言葉には微笑みで返し、完全に体力を回復させたカミラはゆっくりとメイスを右手に持った。武器を構えてグレーターデーモンと対峙をする。

~~~4ターン

◎グレーターデーモン×1(0)
◎ポートフォリオ×1(0)

グレーターデーモンとポートフォリオはまだ、恐怖で動けずにいる。
イニシアティブはオレだったが、待機を選択。戦線に復帰したカミラが次点となった。右手で持ったメイスを中段に構えると、グレーターデーモンに向かい走って急接近する。

「やあああああああああああああああ!」

『ガガズガァァァーンガガガガガガガッ!』

「グゥゥォォォォォオオオオオオ!」

カミラは上から下に叩きつける戦棍術の連係技で、脳天にメイスを撃ち込むことに成功した。彼女の放つ10発のうち2発は494、494と順調に敵にダメージを与えた。3発目がクリティカルヒットとなり、1482のダメージを与え、合計で5928のダメージを食らったグレーターデーモンは顔面の骨を砕かれ絶命した。すでにグレーターデーモンはカミラの持つ銀のメイスを弾き返す力は残されていなかった。棒立ちであった。

『ズッズーン!』

ヴェルチェッリ騎士団を苦しめた脅威度ランクAグレーターデーモンは力尽きて前のめりに倒れる。

~~~戦闘終了

「やった! カミラカッコいい! オイラ惚れそうだよ!」

「「「団長!」」」

ヴェルチェッリ騎士団の仲間が集まってくる。復讐に成功したカミラを讃えている。みんな笑顔で抱き合い生きのびることが出来たことを喜びあった。
そしてオレのところにカミラが来る。何年もバレンシアの森で命をかけて探し求めてきた父の仇を倒し、やりきったという清々しい綺麗な目をしている。次第に若々しく艶っぽい輝く目に変わると、ぎゅっとオレを抱きしめてきた。

「セシル様、みんなの命を救っていただきありがとうございます。お父様の遺恨もはらさせていただきました。お礼に私の心も体もセシル様に差し上げます」

上目使いでそう言うと、さらに強く抱きしめ、頬を胸に埋めてくる。17歳の女の子の柑橘系の香りが漂ってきて堪らなく、ムラムラとしてきた。彼女の半球型Gカップを押しつけられ、ぷにゅぷにゅ柔らかい感触が気持ち良い。あとでやる夜伽の時に心ゆくまでポインポインと、このGカップで遊んでやろう、ぐふふふふ♪

「オイラは今回、セシルの強さというものの、ありがたみが身に染みて分かったよ! やっぱりセシルの眷族で良かった!」

「2人とも誉めすぎるなよ、照れるだろ。でもカミラはもうオレのものだぞ。他の男に体を触らせてはいけないぞ」

「はい、旦那様。私は旦那様のものになることができて嬉しいです」

「「「団長、ご結婚おめでとうございます!」」」

カミラがオレを抱きしめる力が増した。すべての思いが遂げられて、晴れ晴れとした表情の超絶美少女がそこにいた。会った時から彼女が抱えていた心の闇は全て払われたようだった。

「さてと、あいつはどうするかな」

11人の目が一斉に腰砕けとなり、立つこともできない男に向いた。先程までの強気なメンタリティは完全に消滅している。

「おのれエロース! 千年前の恨み、晴らさでおくべきか!」

「だから、千年の恨みって何だよ? オレはまだ降臨して間もないのだぞ!」

「ふ、ふざけるな! 我が敬愛する神の受けた恨みは生涯忘れんぞ!」

こいつは何をワケわからないことを言っているんだ。頭がおかしいのか? まあ、狂っていることは確かだがな。《探査マップ/神愛》でステータスを見てみる。

●名前:ビル・ポートフォリオ
●年齢:35歳
●種族:ヒューマン
●所属:秘密結社、剣と骸骨
●身長/体重:168/78
●経験:多数
●状態:恨み
●ベースレベル:40
●職業:レベル10闇騎士
●HP:1534
●MP:1528
●腕力:781
●体力:752
●敏捷:778
●知力:768
●魔力:760
●器用度:777
●スキル
ブライデンの加護、神聖魔法2、戦神魔法2
●通り名
ティムガットの豚野郎
●装備
アダマンタイトのメイス+2

うわっ、また出たよ。秘密結社の剣と骸骨。以前にアリシアを卑怯な手で誘拐し、殺害をしようとしていた組織だよな。ティムガット市でも暗躍していたのだな。パルミラ教皇国随一の聖騎士団を危なく乗っ取られるところであった。今回も計画を潰せたようで良かった。

「意味不明なやつだな。千年前に何があったんだ? お前たちは知っているか?」

「いえ、知りません。このラティアリア大陸の国々は、千年前に各国の始祖となっている六英雄がエロース神様から御神託を受けられ、作られたと神官学校で習いました。千年前のラティアリア大陸は強いモンスターが大陸中にいて、とてもヒューマンの武力では生き延びることは出来なかったということです。その歴史以前など考えたこともありません。セシル様はエロース神の化身であらせられます。その辺りはご存知ないのでしょうか?」

「……オレは神の化身で間違いないのだが、その辺りの記憶がないのだ。降臨すると力と記憶の一部が失われてしまう」

「そうなのですか?」

「そうらしいよ! セシルがパルミラ教皇庁サン・ルステラ大聖堂の聖域に降臨した時、体が麻痺をして動けなかったんだって!」

上手いぞパック! 神なのに知らないとかありえないだろうからな。どうやって誤魔化そうかと焦ってしまった。
千年前、このラティアリア大陸に何があったというのだろう。ポートフォリオの話は嘘だろうが、嘘を言っているようには見えない。
そして、六英雄という単語は異世界に来て初めて聞いた。世界を切り開いた六英雄とは、どのような奴らなのか気になる。

「六英雄がこの世界にある国を立ち上げたのか?」

「はい、教科書にも乗っている有名人ですから、国で知らない者はいません。聖アレクシス、聖アンカスタード、聖ヴァルビリス、聖エディルネ、聖パルミラ、聖イシュタルの6人です。聖パルミラが私たちの国の開祖です」

「なるほど! オイラ妖精国ニーベルングにいたから知らなかったけど、今、ラティアリア大陸にある国の土台はその六英雄が作ったんだね!」

「はい、聖アレクシスと聖アンカスタード、聖パルミラは、3人で現在のパルミラ教皇国の礎を築きました。
聖エディルネはエディルネ王国を建国し、六英雄のリーダーである聖ヴァルビリスは巨大なヴァルビリス帝国を築きました。
最後に聖イシュタルはイシュタル王国を築きましたが、子孫が悪政を敷き、現ステュディオス王国を建国したクラウス・オルドリッジにより、数年前に滅亡してしまいました」

なるほど、千年前に起きた事件とは、六英雄が建国をしたということか。なぜそれが恨みになるのだ?

「違うぞ! 六英雄はラティアリア大陸を我が神から奪ったのだ! 
《サイレント/消音》を解いたのがエロースの運の尽きだ。我が命をかけた最後の魔法を喰らえ!」

《デディゲート/悪魔召喚》

「ぐわぁ!」

そう言うと懐からスクロールを取り出し、呪文を詠唱した。スクロールはパワーを使い切ると燃えてなくなってしまう。詠唱が完成すると、ポートフォリオは血反吐を吐き、その場に崩れ落ち死んだ。遺体を中心に黒い妖気を放つ六芒星の魔法陣が発生し、上方に向け瘴気を放出している。

「ま、まずいぞ。一度魔法陣から全員離れろ!」

「「「はっ! セシル様!」」」

一斉に仲間たちは魔法陣から離れた。そのタイミングで六芒星の中心に黒い影ができ黒い霧が弾けると、それが実体を持ちモンスターが顕現した。そのモンスターは顔は美形だが、黒い羽を持ち、体中に目、舌、口のある恐ろしい姿をしていた。上級悪魔のグレーターデーモンでさえ、可愛く見えるほどの妖気を発していた。《探査マップ/神愛》でそのモンスターのステータスを確認した。

●名前:アズライール
●種族:死の天使
●所属:剣と骸骨
●脅威度:SS
●身長/体重:188/78
●髪型:金髪クールウェーブロングヘア
●瞳の色:青色
●性格:E
●状態:平常
●ベースレベル:850
●HP:58709
●MP:58673
●腕力:29331
●体力:29378
●敏捷:29338
●知力:29335
●魔力:29349
●器用度:29380
●スキル
戦神魔法7、鎌術7、咆哮4
●ユニークスキル
ブライデンの寵愛、不死
●通り名
死の天使
●装備
神鎌アダマス

おお! レベルが850だと! 脅威度SSの龍並みの強さを持つ死の天使か。ポートフォリオは最後に命をかけて、秘密結社、剣と骸骨の秘密兵器なのか?

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

アズライールの咆哮が周囲に響き、仲間たちは恐慌状態に陥った。至近距離での咆哮に固まり動けなくなっている。

「パック、仲間と後ろに下がっていろ!」

「承知~。頑張ってねセシル!」

《デパス/精神安定×10》
《ホーリーシールド/聖なる盾×10》

魔法で正気を取り戻したヴェルチェッリ騎士団はパックと後方に下がった。オレはアズライールと対峙し睨み合う。

「我ハ神ブライデンノ下僕デアリ、魔龍ヲ助クル者ナリ。神ノ化身セシルヨ、我ガ神鎌ノ錆トナレ」

「そうはいかない。オレは魔龍を倒すために地上に降臨したのだ。帰って魔龍に伝えるが良い。お前を消滅させてやると。幹部のお前の言う事なら信じるんではないか?」

「出来ルモノナラ、シテミルガ良イ! 行クゾ! オオオオオオオオオ!」

~~~戦闘開始

◎アズライール×1(1)

イニシアティブはオレが取ったが短剣をアイテムボックスから出し、待機を選択。次点である死の天使アズライールが神鎌アダマンを振り上げ、急接近をしてきた。暗黒の鎌を斜めに斬りつけてくる。

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!」

『ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン、ギィン!』

「!? ナンダト!」

アズライールは1回の攻撃で、神鎌アダマンを10発斬りつけてきたが、全てを短剣で弾くことに成功した。アズライールは狼狽を顔に漂わせた。自分が龍並みの力を持っているので、短剣で弾かれるとは思っていなかったのだ。

「やった! やっぱりセシルの方が戦闘力が断然上だね!」

~~~2ターン

◎アズライール×1(1)

2ターン目もイニシアティブはオレが取った。アズライールは防御に徹している。自分との力の差にすぐに気がついた。通常なら賢明な判断だが、オレに対してだけは意味がない。

どんな攻撃を仕掛けるか少し迷ったが、異空間ならどんな魔法を使っても問題ないので、あれを唱えてみることにした。ラティアリア大陸でもラヴィアンローズでも、何かあったら困るから絶対に使えなかったあの呪文。凶悪な量の魔力がオレの周囲に集まった。両手を組みアズライールに指先を向けると、指先で強大なエネルギーが溜まり、光の玉が大きくなっていった。

《フォトンレーザー/光子増幅魔法》

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!! ヴューン!! ズガッ!』

「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」

直径10メートル程のレーザービームが放たれると、アズライールに直撃し、1188427のダメージを与えられ断末魔の叫びを残し消滅した。

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』

レーザービームはどこまで届いたか分からないほど遠くまで照射され、立つことが困難なほどの地響きが続いていた。バネが跳ねるような、ある意味面白い音からは考えられないような威力であった。仲間たちも威力の高さに口をポカンと開け、ボケっとしている。なにしろ龍並みの力を持つアズライールがチリ1つ残さずに消滅したのだ。驚くのも無理はない。

~~~戦闘終了

『パンッ!』

「「「はっ! セシル様、勝利お喜びいたします!」」」

手鼓を打つと我に返り、咄嗟とはいえお祝いの言葉を言ってきたのは、さすが高レベルの聖騎士たちだ。

「セシルの強さだったら、龍と同じくらいの強さなら楽勝だよね! 今回だけはやりすぎとは思わなかったよ!」

「ああ、そう言ってくれると助かる……ん?」

『ギィ~、ギィ~、ギィ~、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』

突如として、空間がきしむ音、そして地鳴りが聞こえてきた。その後すぐに地面が大きく揺れてくる。これは地震だろうか? いや、違うな。この空間に連れてこられたときに、グレーターデーモン5体が戦神魔法で異空間に転移する呪文を唱えていた。

だがカミラが最後のグレーターデーモンを倒し、オレがアズライールを倒したので、次元を維持できなくなりもとの会場に戻るのだ。

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』

「「「きゃあああああああああああああ!」」」

女の子達の悲鳴が聞こえるが、もとの会場に戻るだけだから大丈夫だ。次元の歪みがさらに屈折してきて、オレたちを上昇する黒い魔力が包み込んでくる。

『ブンッ』

異空間から転移すると、目の前にはもとのアンフィテアトルムがあり、群衆がどよめいていた。

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矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

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