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第1章

第43話 馬上のいたずら

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朝になり、日が部屋にカーテンのようにさしこんできてそれが顔に当たり、ポカポカしてとても気持ちいい。陽気がいい日は気分がいいな。久しぶりに夜伽もなく、深く深く睡眠が取れた。

「う~ん、よく寝たな。パック起きて朝ごはんを食べに行こうぜ」

『ペチペチ』

「ん! ん~、もう朝か。今日は早めにティムガット市を出るんだったね。了解~、すぐ朝ごはんを食べに行こうよ」

『カチャッ』

「「「どわっ!!」」」

準備を終え、朝ごはんを食べに行こうと部屋のドアを開けた。するとドアを開けた目の前にカミラが立っていた。

「何だカミラか~、驚かすなよ」

「オイラもビックリしたよ。カミラそういうのは心臓によくないからやめてよ」

「驚かせてしまい失礼しました。えと……朝ごはんの準備が整いました。どうぞいらっしゃってください」

食堂に降りていくと、すでに食堂は客でいっぱいだ。ここから神都ベネベントに行くにしても、隣国に行くにしても、10日近くはかかる。距離をかせぎたい隊商は朝早く街を出るのは当然だ。日が沈むとモンスターは動きが活発化し、街道で遭遇しやすくなる。多くのモンスターは夜行性だ。

カミラが朝食を持ってくると、テーブルに2つのお盆をのせる。1個はパックに、1個はオレのものだ。

「うふふ、それでは宿のサービスをはじめさせていただきます」

嬉しそうにカミラはそう宣言するとオレの隣に座った。スプーンですくって、手を添えながら口元に食べ物を持ってくる。

「それでは、セシル様、あ~んとしてください」

「え? それは断ったはずじゃ……あ、昨日ミンディに受けるって言ったんだったな」

「はい、セシル様が白猫亭のサービスを受けてくださると、そのように叔母から聞きました」

カッコいい系超絶美少女に食べさせてもらうなど、普通なら嬉しい。だが闇を抱えた女の子だから、どう動くか予想出来ないのが微妙に怖いな。急にナイフをもちだしてきて刺されたりとかしないよな。

カミラがオレに食事を食べさせるのを見て、周囲にいる冒険者風の男や隊商の者たちから殺すぞっという勢いで睨まれている。また別の者からは羨ましそうな妬みの視線が刺さる。これではまた馬鹿に絡まれそうだ。食事が終わると、カミラは間髪いれずデートに誘ってきた。

「セシル様、お食事のあと、市内をご案内したいと思います。どこかご希望はありますか?」

「そうだな、どこか面白そうなところはあるのか?」

「そうですわね。明日、年に一度の騎士団戦がありますわ。私もヴェルチェッリ騎士団団長として出るのです。その訓練を見るというのはいかがでしょうか?
その後、最近女の子の間でよく話題になっている、カフェのデリチオーゾで紅茶を飲むというのは楽しいですわ」

なんだと! 異世界にもカフェがあったのか? ティムガット市にあるのなら神都ベネベントにもあったのか? あるのならアリシアとのデートに行けばよかった。ただ、国内最高の料理人がいると思われるパルミラ教皇庁サン・ルステラ大聖堂の料理でさえフルーツを切って並べて砂糖を振りかけただけだったから、あまり期待はできない。

「セシル! カフェとか面白そうだから行ってみようよ。オイラ訓練も興味あるよ!」

「そうだな~。パックの希望だし、騎士団の訓練、カフェで順で行くか。デザートがどういうのがあるか食べてみるのもいいな」

3人は立ち上がると、馬小屋に向かう。カミラの白馬に乗って、市の北西にある訓練施設に行く。
オレは馬に乗ったことがないので、カミラの後ろに乗り、彼女の背中に張り付いた。前から熱を感じたので、よく見るとカミラの耳が少しだけ赤くなっている。密着状態になり、抱き締められて恥ずかしいらしい。なんと可愛いやつだ。こういう時は女の子の羞恥心をあおってやるのが男の醍醐味というものだ。ちょっとイタズラ心が出る。ぐふふふふ♪

通常、2人での乗馬で後部に乗る人は、馬の側腹部に垂らした足をロックし、前に乗る人の下腹部辺りに両手でガッチリ手を組む。だがそこをあえてカミラの半球型Gカップの双丘を、服の上から手のひらでロックをした。
全身がビクッとなるカミラ。どんどん熱量が増えて、触れているボディの前側が熱いくらいになる。耳もうっすら赤い状態から、真っ赤な状態に変わっている。

「セ、セシル様。そこを押さえられると馬の操作が……あん」

「あ、そうかすまない。馬車には乗ったことがあるが、馬に乗るのははじめてでな」

そうオレは言うとカミラの服の外から、服の中のさらに下着の内側に手を滑り込ませる。中指と薬指で彼女の大切な乳首をつまみながら、手のひら全体でGカップを味わう。

「ああ! 下着の中に手を……ああ……そ、そこはもっと違います。うっく……服から手を出してくだ……はぁはぁはぁ」

「うひひ、セシルもいたずらが好きだね~♪ カミラもすっかり喜んじゃっているよ!」

「ん? どうしたんだカミラ? 早く訓練施設に行こう。もみもみもみもみ」

と言いつつGカップをもみもみする。今日の朝にはティムガット市を出るという、こちらの用事を無視して自分の都合を押し付けた罰だ。もうちょっとだけ揉むか。彼女の双丘をもみもみもみもみもみ♪ 乳首をクリクリクリクリ♪

「ああ、いい……気持ちいい! こ、これ以上されると私の……子宮のうずきをセシル様に止めていただかないと……ああ!」

カミラはパニック状態だ。雰囲気がそろそろヤバイから止めてあげよう。服の中から両手をサッと抜いて、下腹部の辺りで両手を組んでロックする。

「ははは、悪い悪い、押さえる場所を間違えた」

「はぁはぁはぁはぁ……訓練施設に出発し……ます」

さすが高レベルの聖騎士だ。すぐに精神の落ち着きを取り戻し、ささっと馬小屋を出る。小一時間で訓練施設に着いた。
《探査マップ/神愛》で全体を見ると、ティムガット市が神都ベネベント防衛の拠点だということが分かる。城壁の内部に10万人規模の騎士が駐屯できる施設があった。これほどの広い空間があるとは驚きだ。

「このティムガット市の施設がここまで大きいのは、なぜなんだ?」

「はい、それは隣国との戦争がはじまったとき、軍の合流場所になっているからです」

訓練施設への移動中にカミラに情勢などの質問をした。その話によると、隣国との小競り合いがステュディオス王国の前の王朝、旧イシュタル王国の時まで頻繁だったらしい。10万人以上の騎士が出兵前に、この広場に集まる。ここから順々に遠征に行くということだ。または20年ほど前に起きた第5次マリウス戦争では、この城塞都市内に立てこもり籠城戦を仕掛けてパルミラ教皇国軍が勝利したようだ。

現在、大陸中央に位置するヴァルビリス帝国で皇帝が死去し、新皇帝が即位をした。新皇帝はそれまでの平和路線を捨て、領土を広げようと各国に宣戦布告をして騒がしくなってきている。噂では新皇帝は大陸統一という夢を持っているのだそうだ。

そのためステュディオス王国とパルミラ教皇国は二国間で不可侵条約を結んだ。大都市としてはティムガット市の隣に位置するステュディオス王国フェロニア市が、今、帝国のターゲットになっている。地下迷宮が生み出す資源を狙っているのだ。毎年、何度も侵攻してくるので、パルミラ教皇国では援軍を常に出撃させている。

パルミラ教皇国もフェロニア市が陥落すると、ヴァルビリス帝国と国境を接することとなる。そうなると当然、戦争好きの皇帝がパルミラ教皇国にも戦火を広げることは確実だ。

そのような政治的状況なので、この訓練場はいつでも訓練に励む騎士で活気づいているのだ。今も数千から数万の騎士たちが武術の稽古をしている。広いので個人戦から集団戦まですべての訓練ができる。遠くの方では、スピアを持った騎馬隊同士の戦いをやっているのが見える。みんな朝早くからご苦労なことだ。

「そういえば気になっていたのだが、ヴェルチェッリ騎士団は、なぜ女騎士しかいないのだ?」

「それはこの国の闇となっている神聖娼婦が関係しています」

どの騎士団も男女関係なく入り乱れている。カミラが団長をしているヴェルチェッリ騎士団は女性だけがいる理由は神聖娼婦制度が関係しているようだ。

基本的に上級修道士から神聖娼婦として指名されると拒否権がない。指名をした男の一物が二度と勃たないお年寄りだろうと、豚みたいな気持ち悪い男でも、夜伽をしないといけないルールだ。

だが格の高い騎士団に所属していると、その指名を断れるようだ。だが騎士団の団長は男性であり、神聖娼婦をむしろ活用している人が多かったので、誰も反対する人がいなかった。カミラの父であるパトリック・ジョルジが珍しく神聖娼婦を止めさせていたのだが、そんな彼も非業の死を遂げてしまった。

ティムガット市の騎士団で、過去に女性が団長で格の高いところがなかったため、結局女性は上級修道士に抱かれて泣き寝入りをするしかなかった。
そのような中、神聖娼婦を止めさせていたパトリック・ジョルジの娘であるカミラ・ジョルジがヴェルチェッリ騎士団を立ち上げて、権力を握るまであと一歩のところに来ているので、ティムガット市の女性騎士の夢と希望になっているのだそうだ。

だから、カミラ自身も女性騎士としては、何が何でもヴェルチェッリ騎士団で優勝し、女性騎士の自由を得たいと考えているようだ。昔の日本でもあった女性の駆け込み寺みたいなものか。

「このパルミラ教皇国の女性はずいぶん苦労してきていたのだな。神都ベネベントに降臨した神の化身セシル様は、神聖娼婦制度の廃止を決断したようだから、もうすぐそういった悲劇はかなり減ることになるぞ」

「そうだよカミラ! セシルをオイラはよく知っているんだけど、女性に優しい良い神様だよ。なにせ性愛と恋心の神だからね!」

「お2人は神の化身セシル様とお会いしたことがあるのですか? あ……そういえば名前も同じですね。え? まさか……」

やべ、パックはたまに危険な言葉を言ってしまう。どうやって話を誤魔化すか? カミラは冗談が通じるタイプではないからな。
そうだ! さっきみたいに彼女の双丘をモミモミして誤魔化そう。オレも気持ち良いし、カミラも気持ち良い。winwinの関係になれるだろう。ぐふふふ♪

そ~っと、カミラの双丘に手を近づけ、両方の脇の下から双丘に向け手を伸ばした。

「ヴェルチェッリの女どもは出ていけ! ここは俺たちの練習場だ!」

「な!? 出ていけですって! この場所はいつも私たちが武術の訓練をしている場所よ!」

カミラの双丘に手が行く前に、ヴェルチェッリ騎士団が訓練している場所に到着していた。だが彼女たちはもめて怒鳴りあっていた。

「お前たちどうしたんだ? 騒がしいぞ」

「あ、団長! ええっ! その殿方は!? あのお堅い団長が殿方を! しかも超絶美少年じゃないで……はっ、失礼いたしました。それよりラスメデュラス騎士団の連中が嫌がらせをしてくるのです。私たちが明日の騎士団戦に出れないなら、この場所を明け渡せって言うんです」

「その通りだろ! お前たちは出場権がない。だからこの場所をオレたちに提供しろ!」

「セシル! あの男! ティムガット市の城門で絡んできたやつだよ! ぷぷぷぷっ」

あ、あの男か。確かレベル2戦士だったよな。取り巻きの仲間もレベル2の最弱騎士。ていうか、一般平民と武力の差がないよな。

●名前:グース・ダスティ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、ラスメデュラス騎士団見習い
●状態:怒り
●職業:戦士
●レベル:2

「うげ! またあのやさ男と妖精。なんでこんな所に」

「おいおい、雑魚ども5人が何してんだよ。レベル2、戦、士、さ、ん」

オレに舐められた5人は、怒り心頭で頭から湯気が出そうなほど顔が真っ赤になった。そのうち茶でも沸きそうだ。

「あ、兄貴、あいつらは! どうしましょう?」

「今、お前が絡んでいる女騎士が誰だか分かっているのか? レベル26聖騎士だ。レベル2戦士に分かりやすく解説してやろう。パック」

パックが後ろから出てきて、ビッとダスティたちを人差し指で指した。

「いいかい、そこのペトラはベースレベルが56なのにレベル26聖騎士なんだ。つまり生まれながら加護が付いているってこと。つまり神に愛されている天才なんだよ! その天才が僧侶でレベル30まで上げてから転職し、経験値がものすごく必要でレベルが上がりにくい上級職でレベルを26まで上げたんだよ!」

「そうだ。ちなみにペトラは1回の攻撃で、Max10発も攻撃できて、1発で素手でも220以上のダメージが出る。お前は1回の攻撃でMax1発しか攻撃できなくて、1発で20程のダメージしか与えられない。お前は本当にペトラに文句を対等に言えると思っているのか?」

「ううっ、私のことをそこまで分かってくれるなんて……嬉しいわ。私とこの後、カフェでも行きま……はっ!」

ペトラは親の仇を見るような鋭い視線をカミラに浴びせられ息を呑んだ。

「お前ら雑魚どもがここにいる聖騎士の軍団に出て行けと、本気で言っているのか? ああ! どうなんだ!」

「うっく、そうだ! ここから出ていけ!」

わはは! 自分たちの事を雑魚だと認めちゃったよ。まあ、確かに雑魚なのだがな。それでも出て行けと引かないということは、自分が所属する騎士団への信頼なのか?

「この場所は私たちが、以前から訓練しているのよ! なんでどかなきゃならないのよ! あなたたちがいつもしている場所でやればいいでしょう。第一、騎士団戦への出場権はまだ失っていないわよ」

明日の騎士団戦で勝つと、1年間、すべての騎士団のトップとして君臨できるようだ。国家の最重要拠点のトップだけに、武器や軍隊の食料などをおさめる商人を決める権利など、さまざまな既得権益が発生する。既得権益というのは厄介なもので、一度手にするとそこからさらに別の既得権益が発生する。平等な社会というものは、ある者が努力をした結果、実力に合う利益を得ることが出来る事が平等な社会だ。だが既得権益の影響でそのバランスが崩れる。

ティムガット市のナンバーワン騎士団になると、軍事ではパルミラ教皇国の実質的な第一の騎士団となり、その影響力は多大なものになる。司教に反対意見を言い、政策を覆せるほどの権力になるのだ。突如、敵国から攻め込まれたときに、独断で対応できなければ取り返しがつかなくなるため、それほどの権力を得ることができる。

「いや、今回の騎士団戦は男女混合でやることになった。女しか所属していないヴェルチェッリ騎士団に参加資格はないのだよ、ぐっぐっぐ」

「「「ポートフォリオ団長!」」」

こいつがラスメデュラス騎士団の団長か。小太りな中年男性で下品な薄笑いを浮かべている。見るからに性格の悪そうな嫌な感じだ。反吐が出そうだ。

「なんだと! その案件はまだ確定したわけではないだろう。司教のヴェロニカ様が、そのような理不尽を許される訳がない」

「先程の会議で正式に決まったのだよ、ぐっぐっぐ。理解したらここから出ていけ」

「くっ、ペトラ。他の騎士団に行って男性騎士を探してきて。最悪、強さは求めなくてもいい。急げ!」

「は! 団長承知しました」

カミラは即断した。ペトラが数人で手分けして協力してくれる騎士を探しにいこうとする。

「おやおや、今さら男性騎士が見つかると思っているのか? お前たちに協力をしたら、この国にいられなくしてやると、すべての騎士団に通達してあるのだよ。ぐっぐっぐ」

「な、なんだと! 貴様はそれでも騎士なのか。汚い真似をして恥とは思わないのか」

「勝負は何も戦って決めるだけとは限らないのだよ。戦う前に勝負は決まっているのだ、ぐっぐっぐ」

ポートフォリオの汚いやり口を聞いていて胸くそ悪くなってくるな。こいつはマジでムカツク野郎だ。こんなやつのいいなりにするのは、このパルミラ教皇国にとって良くないことだし、ちょっと邪魔をしてやるか。するとパックがまた空気を読まない一撃を加える。

「セシル! オイラ分かっちゃったよ! 高レベル聖騎士のカミラに勝てないから、ラスメデュラス騎士団はズルをしたんだよ!」

えっへんと胸を張るパック。でもその通りだな。そこにいるラスメデュラス騎士団メンバーの簡易ステータスを見たが、平均レベルが20前後の聖騎士だった。1番レベルが高い聖騎士でもレベル26だ。レベル38聖騎士であるカミラがその気になれば、1人でラスメデュラス騎士団を蹂躙することが可能だ。
VRMMOドラゴンバスターのシステムは、100人の雑魚より、1人の強者の方が強いシステムとなっている。5レベルほどならば、装備でなんとかなるが、10レベルも離れていると命中率や攻撃力に差がだいぶ出てくるのだ。

「パック、その通りだ。だがポートフォリオは計算違いをしているようだ。ヴェルチェッリ騎士団のメンバーにはオレがいるのだよ。カミラ、今、ヴェルチェッリ騎士団入団の申請をするぞ。疑うなら、ほら、身分証もあるぜ」

以前にクレタにもらった身分証をポートフォリオに見せると、みるみる目じりを吊り上げて怒りだし、オレを睨み付ける。おいおい、そんなに怒ると血圧が上がって、血管が切れるぞ。

「な、なんだと! チビ妖精が! お前たち何をしている。このチビと男が2度と舐めた口をきけないようにしてやれ」

「「「はい、団長!」」」

ラスメデュラス騎士団は武器を構え、オレの周囲を囲んだ。カミラも援護に加わろうとしたが、手で必要がないと止める。

「お前ら雑魚どもとやりあってもつまらないが、かかってきなさい」

クイクイッと手で横向きに挑発すると、その言葉を聞いてますます怒りに燃えるポートフォリオ。今にも襲いかかろうとした瞬間、こちらに全力で走ってくる人が《探査マップ/神愛》に映る。

「お前たち待ちなさい! ポートフォリオ団長もお止めください。神民が注目しておりますぞ」

ラスメデュラス騎士団の関係の騎士かな? それにしてはまともなことを言う。《探査マップ/神愛》でステータスを見てみよう。

●名前:エミリオ・ルッツ
●年齢:35歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国、ティムガット市、ラスメデュラス騎士団副団長
●身長/体重:185/75
●経験:あり
●状態:罪悪感
●ベースレベル:62
●職業:レベル32聖騎士
●HP:2390
●MP:2322
●腕力:1200
●体力:1190
●敏捷:1188
●知力:1190
●魔力:1132
●器用度:1140
●スキル
神聖魔法4、盾術5、戦棍術5、生活魔法
●装備
ミスリル製のメイス+5、ミスリル製のヘルム+5、ミスリル製のプレートアーマー+5、ミスリル製のガントレット+5、ミスリル製のブーツ+5、ミスリル製のマント+5

なかなか強いな。馬鹿な団長の尻拭いをしている有能な副団長といったところか。この男ならある程度、カミラと張り合えそうだが、団長に嫌われているから外されているのか。

「エミリオおじ様……」

ん? カミラは知り合いか? そうか、お父さんはラスメデュラスの前団長だって、叔母であるミンディが言ってたな。ルッツはパトリック派の残党か。

「ルッツか。団長であるワシに逆らうつもりか? お前が来てむしろ好都合だ! お前もこの生意気なガキどもを屠るのを手伝え!」

「決着は明日の騎士団戦でつければいいでしょう? 今やりあっても無駄に怪我人が出るだけです。それに周りをよくご覧ください。多くの騎士たち、神民が集まってきて注目の的となっております」

ルッツの言葉に周囲を見渡すポートフォリオ。気がついていなかったみたいだが、もともとここは訓練施設で数万の騎士たちがトレーニングをしていたのだ。見物客は千人を越えている。戦闘狂が多いのか、早くガチの戦いがはじまらないかと、みんなワクワクしながら見ている。なにせ集まっている騎士のマーカーが薄緑薄青1色で、ほとんどが好奇心だからな。

「なにか興が覚めたな。まあいい、ジョルジよ。明日の大会で決着をつけてやるぞ。覚悟をしておくがいい、ペッ」

「ヴェルチェッリ団長として宣言する。明日の騎士団戦でラスメデュラス騎士団を叩きのめすと!」

「生意気な小娘め! 父親に似て嫌なやつだ。行くぞ、お前ら」

ルッツを残してラスメデュラス騎士団は去っていく。たいして強くもないくせに、ここまで強気に出れるのはなぜだろう。ルッツがカミラの方に近づいてきた。

「カミラ、悪かったな。うちの団長が嫌がらせをしたみたいだな」

「いいえ、エミリオおじ様の責任ではないし、気にしてないから安心してね」

「そう言ってもらえると助かる。明日はラスメデュラス騎士団をボコボコにやっちゃってくれ。ヴェルチェッリ騎士団が優勝した方がいい。誰にでも優しく、尊敬されていたジョルジ団長のときとは違い、脅し、恐喝、神聖娼婦制度の過度の活用と、あまりに最悪な騎士団になり下がってしまった。
それにお前の騎士団が優勝すると、劣悪な神聖娼婦の被害者がなくなるから是非とも優勝してくれ」

「はい! エミリオおじ様、優勝してこの国で第1の騎士団になります。見守っていてください」

「ああ、頑張れよ。期待しているぞ」

ルッツはそう言い去っていった。いいやつだったな。団長には彼がなればいいのにな。いいやつに限って報われないという典型だな。カミラがオレに先程まで向けていた女の子の愛らしい視線から、真剣な視線に変わり話しかけてきた。

「セシル様、騎士団登録の話は本当にいいのですか? 私たちはとても助かりますが、お命を狙われるなど、かなりの危険がともないます」

「ああ、それなら大丈夫だ。今、オレはレベル18の盗賊だが、カミラたちが強いから守ってくれるんだろう?」

副団長のサキが即答で答えてくる。

「セシルさん、もちろん私たちがあなたを守るのでご安心ください! うちの団長はティムガット市では、トップのレベル38聖騎士で、2位はここにいるレベル35聖騎士のマユラです。3位は先程までいたラスメデュラス騎士団のルッツ様のレベル32聖騎士です」

「でもセシル様がレベル18というのは、転職されたからでは? そうでないとレベル一桁とはいえ、メイスの打撃を指で弾くなど、できるわけがありません」

ああ、城門でのチンピラ騎士とやりあったことか。そういえばカミラは見ていたよな。

「もちろん、そんなところだな。じゃあ明日の朝にオレが泊まっている宿屋に迎えに来てくれ。準備して待っているからな。それじゃあカミラ、カフェのデリチオーゾに行くぞ」

「はい、承知いたしました。私はセシル様を接待してくるから、お前たちは残って訓練をしていなさい」

「「「はっ! 団長」」」


    
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