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第1章
第40話 ティムガットの女神
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ティムガット市へ入るため長蛇の列の最後尾で並んで待っていると、横を豪華な馬車が追い抜いていき、先にティムガット市に入る。身分の高い者は追い抜いて入るとか、異世界だな~。庶民は所詮後回しということか。あ、でもこの辺は日本でも一緒か?
そのようなことを考えていると、オレの周囲に数名の女の子が集まって来る。VRMMOモンスターバスターのキャラクターは異世界ラティアリア大陸ではモテるらしい。オレが45年見慣れた平均値ちょい下の顔と違うので、まだ違和感があるのだがな。
「どちらから来られたのですか?」
「肩にとまっている妖精族は可愛いですぅ~」
「宿屋はどこか決まっているところがありますか?」
オレは女の子たちに質問攻めにあっていた。ペチャペチャ女の子たちと談笑しながら待っていると、探査マップ/神愛に5つマーカーが近づいてきた。赤いーー怒り、赤黄色ーー妬みの二種類だった。
「よぉ~、兄ちゃんずいぶんモテるの~。オレたちにもお裾分けしてくれんかの?」
「見せつけてくれちゃって、ぶちのめすぞ! このクソガキが!」
「おいねーちゃん、俺たちとも遊ぼうぜい」
周囲にいる女の子の手を引っ張り、自分たちの方へ連れて行こうとする。
「「「きゃあああああああああ!」」」
「また馬鹿が来たよ! オイラの住んでいた妖精の国の違って、ヒューマンの世界ってこういうの本当に多いよね!」
こういう馬鹿は、やはりどこにでもいるな。絶対この手の奴らは弱いだろうから、見るまでもない。一応リーダーっぽいやつのステータスを見てみよう。ステータスを全部見るのも面倒だから、超簡易版で見るか。
●名前:グース・ダスティ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、ラスメデュラス騎士団見習い
●状態:妬み
●職業:戦士
●レベル:2
「ぷっ!」
こいつらは一応平民ではないな。騎士団に登録はしているようだが、民衆を守るべき騎士が一般の女の子に手を出すとは、とんでもない奴らだな。それにしても……プププププッ、弱いな。パックもウケて吹いているしな。駆け出したばかりの騎士で、意気がっているみたいなやつか。レベル2とか平民と強さは変わらないじゃないかよ。
「おらおら、なにか言えよ。この色男がよう」
『バシィ!』
5人の1人が胸ぐらをつかもうと、手を伸ばしてきた。その手を触るなと払い除けた。
「いて! 何しやがる! お前らやっちまえ!」
「楽しく女の子たちとお喋りをしてたのに邪魔するなんて! オイラ、こいつらがムカついてきたよ。セシルやっちゃう?」
「きゃぁあああああああ! 誰か!」
女の子たちが騒ぎ出してきたから、すぐにこいつらを黙らそう。スピアとか剣とか抜いちゃってうざいやつらめ。マジでいい加減にしろよな。
「お前たちこのようなところで何を騒いでいるのだ!」
後方から声がしたので振り返ると、プレートアーマーを着た騎士が馬上から一喝してきた。女の子の声だから、女性騎士かな? 探査マップ/神愛でどのような女の子か見てみよう。
●名前:カミラ・ジョルジ
●年齢:17歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、ヴェルチェッリ騎士団団長
●身長/体重:168/46
●髪型:緑髪ラフカールロング
●瞳の色:緑色
●スリーサイズ:84/58/85
●カップ/形:G/半球型
●経験:なし
●状態:平常
●ベースレベル:68
●職業:レベル38聖騎士
●HP:2543
●MP:2653
●腕力:1276
●体力:1267
●敏捷:1352
●知力:1336
●魔力:1317
●器用度:1346
●スキル
神聖魔法4、戦棍術5、盾術5
●通り名
ティムガットの女神、モンスターの天敵
●装備
銀のメイス+4、銀のプレートアーマー+4、銀の盾+4、銀のガントレット+4、銀のフルフェイスヘルム+4
カミラの髪型は緑髪ラフカールロングだ。大きなカールが特徴の女性らしい髪型になっている。胸下まである髪はラフなのが魅力的だ。
なんと! アリシア以来の超絶美少女だ。まだこのクラスがいるとは世界は広いな! アリシアがパッチリとした大きな目の可愛い系の超絶美少女だとしたら、カミラは切れ長の目のカッコいい系の超絶美少女だ。胸もデカイ! プレートアーマーを着ているので見えないがGカップだ。
それに彼女が所属しているヴェルチェッリ騎士団って、さっき森でダイアウルフと戦っていた騎士たちだ。VRMMOモンスターバスターをやりはじめてまだ間もない時のような、心躍る戦闘を見せてもらったな。あの頃は狩りを一生懸命やっていたな。懐かしい。
「カミラ様お助けください。検問まで時間がありましたので、こちらの殿方と雑談しながら待っていました。そうしましたら、そこの騎士様が私たちに絡んでくるのです」
女たちの1人がそう言うと、カミラの目がスゥーっと細くなる。そしてヘタレ騎士を睨みつけた。
「お前たちが付けている紋章は……ラスメデュラス騎士団の見習い騎士ではないか。騎士を目指すなら、特に女たちには紳士でいくべきではないのか? それともラスメデュラス騎士団では騎士としてのマナーすら教えていないのか?」
「な、なんだとこのアマが! オレを誰だと思っているんだ! 天下に名を轟かせているラスメデュラス騎士団のダスティ様だぞ! いずれはこの国のナンバーワンになる男だ!」
ベースレベル2で夢を語るとはなかなか面白いやつだ。ダスティは腰にぶら下がっているメイスを抜いた。ベースレベル68のカミラに殴りかかろうとするが、オレが2人の間に割って入る。ダスティは構わずオレの脳天にメイスを撃ち下ろす。それを見たカミラが叫ぶ。
「危ない!」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」」」
『ビィシ!』
オレはデコピンでダスティの、メイスでの打撃を軽く弾く。ダスティの一撃でオレは45のダメージを受けたが、198007の物理防御力で打ち消した。
「な、なんだと! オレの一撃を! 貴様、舐めやがってぇぇぇえ!」
『ビィシ、ビィシ、ビィシ、ビィシ、ビィシ!』
さらに5ターンをかけ追撃して攻撃してくるダスティは、続けざまに5撃オレに対して全力で攻撃してきた。44、51、48、47、42とダスティはダメージを叩きだすが、すべてデコピンで弾く。しかも横向きでダスティを見てもいない。
あまりの異次元な光景にカミラはじめ、全員が硬直している。なにせ、全力でメイスを打ち付けるダスティの打撃をデコピンで弾いたのだ。通常なら指ごと腕が潰れている。
「ん? もう終わりか。まったく喧嘩を売るなら、実力差を見抜けるくらいになってからにしろよ。レベル2騎士様」
「ぷぷぷぷ、セシル! こいつら弱すぎるから、手加減してあげてよ。そうしないと死んじゃうよ」
「はぁはぁはぁはぁ。このやろう! オレを馬鹿にしやがって!」
「もう息があがっているのか? この実力差で来るというなら、本気で相手をすることになるがいいのか? 5人同時でもいいぞ。この雑魚どもが」
「きゃあ! セシル様かっこいい!」
「お、おい。向こうはジョルジ団長もいるんだぞ。今日は引き上げるぞ、お、覚えていろよ」
オレとジョルジを睨み付けて、スゴスゴと去っていく弱者たち。雑魚キャラ定番の言葉まで吐いちゃって、意外に面白いやつらだな。
探査マップ/神愛で見たら他のやつらもレベル2だったよ。パルミラ教皇国にいる騎士の平均レベル9だというのに、このレベルで喧嘩を売るなどマジでうけるんだがな。隊商の護衛クラスだったら、まとめて5人を相手にしても普通に楽勝だよな。
「ジョルジ様、色々とありがとうございます」
「いや、私はなにもしていないが、そのように言ってもらえると助かるな。そこの彼が雑魚を追っ払ってくれ……」
オレの顔を見た瞬間にジョルジ団長が固まった。頬がみるみる紅潮していく。オレの顔に吸い寄せられるようにジーッと真っ直ぐ目を合わせてみつめた。
「ジョルジ様、どうされましたか? オレの顔になにか付いておりますか?」
そう声をかけられ、はっとするカミラ。顔を左右に少し降ると、まだ赤い顔だがキリッと真面目な顔に変わる。
「いや、何でもない。それではお前たち行くぞ」
「「「はっ! ジョルジ様!」」」
カミラは騎士団を引き連れて市内に入っていく。検問で検査をしている騎士に何かを話している。困った顔をする検問の騎士。なんの話をしているのだろう?
雑魚騎士とトラブっている間に検問の列は進み、オレの順番になった。女の子たちと別れて市内に入ると、検問の騎士が手招きをして呼びつけた。
「オレは検問を任されている騎士のビダルだ。ここでは持ち物などのチェックをする決まりになっている。あれ? 何も持ち物がないのか? お前は怪しいな。まずはこの真実の石板に手を当てろ」
しまった。旅をしているのに、何も持っていないのは確かにおかしい。アイテムボックスのスキルは話すと面倒だろうからな。この街で魔法の鞄を買ってカモフラージュすることにしようか。
真実の石板に手を当てると、青色に石が光った。赤色に光ると犯罪歴があるということで牢獄に連れていかれる。その後、罪の度合いによって犯罪奴隷にされたり、ムチ打ち刑になったり、場合によっては処刑されたり、行き先が変わる。
「よし。犯罪歴はないな。さっきもいったが、持ち物はどうしたんだ?」
「セシルはアイテムボックス持ちだからね~。カバンとかいらないんだよね」
うわっ、パックがアイテムボックス持ちということを言っちゃったよ。まあ、言ったからといって、誰かがオレに害を及ぼすことはできないからいいか。先ほどの雑魚騎士のように、返り討ちにすればいいしな。
アイテムボックスからエロースの剣を出す。突然、剣を出したので、検問の騎士が驚いた。
「おわっ! ビックリした! 本当にいきなり出てくるんだな。そうか、アイテムボックスはスキルだから詠唱もないのか。
しかし、激レアスキルだぞ。商人や上級修道士から引っ張りだこになるから、むやみにそのスキルを持っていると言うのは危険だ。場合によっては、誘拐されて奴隷の首輪を無理やり付けられて働かされるなんて話も聞いたことがある。いいか、気をつけるんだぞ」
注意をしてくれるとは、検問の騎士はいいやつだな。だが、誘拐され、奴隷にされ、無理やり働かされるとかきつすぎるな。オレは強いから大丈夫だが、弱いやつは人生が積むだろうな。
「おっと、肝心な話をし忘れていた。ティムガット市に入るのに入市税が銅貨1枚かかり、支払わないと入れない。もし、金がなかったら売りたいものを引き取ることも可能だ」
アイテムボックスから銅貨2枚と情報料を銀貨1枚渡す。
「他にいい情報があったら教えてほしいな。これは前払いのお礼だ」
「いいのか? それでは遠慮なくもらうか。この紙が税金を払った証明書になるから、市を出るまではなくすなよ」
「ありがとう。もう市に入っていいですか?」
「ああ、いいぞ。チップをもらったお礼に情報を追加だ。この市にはじめてきたなら、宿屋はこれから探すのだろう。
だったらおすすめを紹介しよう。このままメイン通りを真っ直ぐ行くと右手に白猫亭がある。料理も美味しいし、ベッドも綺麗で評判がいいぞ。明後日、ティムガット市の代表を決める騎士団戦があるから、宿屋はかなり混雑している。あそこならこの市でも、規模が大きいから大丈夫だ。門番ビダルの紹介と言えば、確実に泊まれるだろう。
あとスラムで誘拐事件が多発しているから絶対に近づかないようにな。それじゃあ気をつけてな」
「そうなのか。色々とありがとう。その白猫亭って宿屋に行ってみるよ」
なぜか苦笑いの騎士にお礼を言って、検問所を出ていく。いい情報を貰ったな。明後日、騎士団戦があるのか。面白そうだから見学していくか。どうせ時間は魔龍を倒すリミットまでたっぷり3年あるから、多少の寄り道も異世界道中での楽しみになることだしな。
城門から市内に入ると行き交う人の多さに驚く。街中が人々であふれている。神都ベネネントにも匹敵するのではないだろうか。さすが隣国ステュディオス王国との貿易が盛んな市だな。
《サポート》
ティムガット市の特徴を教えて?
【パルミラ教皇国ティムガット市。1000年ほど前に聖ティムガットが聖魔大戦のあとに築いた都市である。
パルミラ教皇国アレクシス市とステュディオス王国の中間に位置し、北にはモンスターの宝庫であるバレンシアの森があり、西は隣国ステュディオス国がある。剣闘士レベル112狂戦士クラウス・オルドリッジの治世になってからは争いごとはなくなったが、それ以前は頻繁に国境沿いで戦闘があった。そのため、ティムガット市では防衛のため騎士団を多数結成した。第125騎士団まであり、軍事が充実している。現在はステュディオス国との関係を改善したので貿易が充実している。南には対岸が見えないほどの大きなフーリエ川があり、漁業も栄えている街である。
人工は900万人ほどでパルミラ教皇国内では第3番目に大きな街である。
アレクシス市までは馬車で10日、隣国ステュディオスとの国境まで馬車で9日かかる。
なるほど、隣国と戦ってきたこと、バレンシアの森が接触しているから、軍事力を必要としているのか。それでこんなに活気があるのだな。とりあえず宿屋を取って落ち着きたいな。そのあと街を散策して、明日にはステュディオス王国に向かうとしよう。
人の間を縫うようにして門番のおすすめ宿屋白猫亭を探すが、街が広すぎるのと、宿屋の多さでなかなか見つからない。
この街は広すぎて分かりにくいな。古い街の特徴で、改変されず過去のまま街があると、道が入り組んでいる場合がある。ここもそういった類いで、都市計画ができていないのだ。
探す途中でティムガット市の名物という看板を見つけたので、それを買うついでに道を聞くことにしよう。のぼりにバフィ魚の塩焼きと書いてある。日本でもアユの塩焼きなど似たようなのがあったから興味が湧いた。異世界味比べだな。
「店主、名物のバフィ魚の塩焼きを2本もらえるか?」
「毎度あり! 銅貨1枚だ」
銅貨をアイテムボックスから取り出して店主に渡して食べながら雑談をする。
「ほふほふほふっ、おお! 焼き加減と塩加減のバランスが絶妙にいいな。店主はなかなかやるな。相当旨いぞ、グッドだ」
「確かにオイラもそう思う。微妙にレアっぽいところが逆に素材から出る甘さを引き出しているよ。バフィ魚の塩焼きは気に入ったよ!」
「へへ、ここで魚を焼き続けて20年のベテランだ。腕には自信があるんだ」
店主は商品を誉められたことが、よほど嬉しかったのか満面の笑みを浮かべている。
「ところで店主、オレはティムガット市に着いたばかりなのだが、いつもこんなに人がいるのか?」
「この市は人口も多いし、活気にあふれているからね。なにせ先代、現代と司教様が優秀だからね。いつもこんな感じだが、今日はいつもより若干多いか」
「そうなのか?」
「ああ、この市は北にバレンシアの森、西に隣国がある。いつでも滅びる可能性のある危険な市だ。だから騎士団がとても強いし、権力がある。明後日、国で1番の騎士団を決める騎士団戦があってね。それを見に来た人が多いんだ。優勝すると、多大な権限を与えられる。
今回は、ポートフォリオが率いるラスメデュラス騎士団と、ジョルジ様が率いるヴェルチェッリ騎士団の一騎討ちと言われている。この2つの騎士団が頭1つ抜けている。
ラスメデュラス騎士団は、古くからある由緒正しい騎士団で、ながくこの市を支配してきたのだ。
ヴェルチェッリ騎士団は、ジョルジ様がバレンシアの森で実戦オンリーで育てあげた騎士団でな。若い女性のみの新規精鋭として急激に武功をあげてきたのだよ。
あとここだけの話、ジョルジ様はティムガットの女神と言われるほどの美少女だ。オレ的にはこっちに勝ってくれると嬉しいな」
「いいな。美少女と聞くと男としては萌えてくるよな」
「セシル! さっき助けてもらったじゃない。もう忘れたの?」
「あ! さっきの超絶美少女か! 確かに凄まじい美少女だったな」
「おお! あんたらこの街に来たばかりで、あの女神にあったのか? ついてるね!」
その後、店主に白猫亭の場所を聞くと、店主が指を指した先にある木の看板に白猫亭と書いてある。意外に近かった。なぜか店主は別れるまでニヤニヤしていた、物凄く気になる。
そのようなことを考えていると、オレの周囲に数名の女の子が集まって来る。VRMMOモンスターバスターのキャラクターは異世界ラティアリア大陸ではモテるらしい。オレが45年見慣れた平均値ちょい下の顔と違うので、まだ違和感があるのだがな。
「どちらから来られたのですか?」
「肩にとまっている妖精族は可愛いですぅ~」
「宿屋はどこか決まっているところがありますか?」
オレは女の子たちに質問攻めにあっていた。ペチャペチャ女の子たちと談笑しながら待っていると、探査マップ/神愛に5つマーカーが近づいてきた。赤いーー怒り、赤黄色ーー妬みの二種類だった。
「よぉ~、兄ちゃんずいぶんモテるの~。オレたちにもお裾分けしてくれんかの?」
「見せつけてくれちゃって、ぶちのめすぞ! このクソガキが!」
「おいねーちゃん、俺たちとも遊ぼうぜい」
周囲にいる女の子の手を引っ張り、自分たちの方へ連れて行こうとする。
「「「きゃあああああああああ!」」」
「また馬鹿が来たよ! オイラの住んでいた妖精の国の違って、ヒューマンの世界ってこういうの本当に多いよね!」
こういう馬鹿は、やはりどこにでもいるな。絶対この手の奴らは弱いだろうから、見るまでもない。一応リーダーっぽいやつのステータスを見てみよう。ステータスを全部見るのも面倒だから、超簡易版で見るか。
●名前:グース・ダスティ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、ラスメデュラス騎士団見習い
●状態:妬み
●職業:戦士
●レベル:2
「ぷっ!」
こいつらは一応平民ではないな。騎士団に登録はしているようだが、民衆を守るべき騎士が一般の女の子に手を出すとは、とんでもない奴らだな。それにしても……プププププッ、弱いな。パックもウケて吹いているしな。駆け出したばかりの騎士で、意気がっているみたいなやつか。レベル2とか平民と強さは変わらないじゃないかよ。
「おらおら、なにか言えよ。この色男がよう」
『バシィ!』
5人の1人が胸ぐらをつかもうと、手を伸ばしてきた。その手を触るなと払い除けた。
「いて! 何しやがる! お前らやっちまえ!」
「楽しく女の子たちとお喋りをしてたのに邪魔するなんて! オイラ、こいつらがムカついてきたよ。セシルやっちゃう?」
「きゃぁあああああああ! 誰か!」
女の子たちが騒ぎ出してきたから、すぐにこいつらを黙らそう。スピアとか剣とか抜いちゃってうざいやつらめ。マジでいい加減にしろよな。
「お前たちこのようなところで何を騒いでいるのだ!」
後方から声がしたので振り返ると、プレートアーマーを着た騎士が馬上から一喝してきた。女の子の声だから、女性騎士かな? 探査マップ/神愛でどのような女の子か見てみよう。
●名前:カミラ・ジョルジ
●年齢:17歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、ヴェルチェッリ騎士団団長
●身長/体重:168/46
●髪型:緑髪ラフカールロング
●瞳の色:緑色
●スリーサイズ:84/58/85
●カップ/形:G/半球型
●経験:なし
●状態:平常
●ベースレベル:68
●職業:レベル38聖騎士
●HP:2543
●MP:2653
●腕力:1276
●体力:1267
●敏捷:1352
●知力:1336
●魔力:1317
●器用度:1346
●スキル
神聖魔法4、戦棍術5、盾術5
●通り名
ティムガットの女神、モンスターの天敵
●装備
銀のメイス+4、銀のプレートアーマー+4、銀の盾+4、銀のガントレット+4、銀のフルフェイスヘルム+4
カミラの髪型は緑髪ラフカールロングだ。大きなカールが特徴の女性らしい髪型になっている。胸下まである髪はラフなのが魅力的だ。
なんと! アリシア以来の超絶美少女だ。まだこのクラスがいるとは世界は広いな! アリシアがパッチリとした大きな目の可愛い系の超絶美少女だとしたら、カミラは切れ長の目のカッコいい系の超絶美少女だ。胸もデカイ! プレートアーマーを着ているので見えないがGカップだ。
それに彼女が所属しているヴェルチェッリ騎士団って、さっき森でダイアウルフと戦っていた騎士たちだ。VRMMOモンスターバスターをやりはじめてまだ間もない時のような、心躍る戦闘を見せてもらったな。あの頃は狩りを一生懸命やっていたな。懐かしい。
「カミラ様お助けください。検問まで時間がありましたので、こちらの殿方と雑談しながら待っていました。そうしましたら、そこの騎士様が私たちに絡んでくるのです」
女たちの1人がそう言うと、カミラの目がスゥーっと細くなる。そしてヘタレ騎士を睨みつけた。
「お前たちが付けている紋章は……ラスメデュラス騎士団の見習い騎士ではないか。騎士を目指すなら、特に女たちには紳士でいくべきではないのか? それともラスメデュラス騎士団では騎士としてのマナーすら教えていないのか?」
「な、なんだとこのアマが! オレを誰だと思っているんだ! 天下に名を轟かせているラスメデュラス騎士団のダスティ様だぞ! いずれはこの国のナンバーワンになる男だ!」
ベースレベル2で夢を語るとはなかなか面白いやつだ。ダスティは腰にぶら下がっているメイスを抜いた。ベースレベル68のカミラに殴りかかろうとするが、オレが2人の間に割って入る。ダスティは構わずオレの脳天にメイスを撃ち下ろす。それを見たカミラが叫ぶ。
「危ない!」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」」」
『ビィシ!』
オレはデコピンでダスティの、メイスでの打撃を軽く弾く。ダスティの一撃でオレは45のダメージを受けたが、198007の物理防御力で打ち消した。
「な、なんだと! オレの一撃を! 貴様、舐めやがってぇぇぇえ!」
『ビィシ、ビィシ、ビィシ、ビィシ、ビィシ!』
さらに5ターンをかけ追撃して攻撃してくるダスティは、続けざまに5撃オレに対して全力で攻撃してきた。44、51、48、47、42とダスティはダメージを叩きだすが、すべてデコピンで弾く。しかも横向きでダスティを見てもいない。
あまりの異次元な光景にカミラはじめ、全員が硬直している。なにせ、全力でメイスを打ち付けるダスティの打撃をデコピンで弾いたのだ。通常なら指ごと腕が潰れている。
「ん? もう終わりか。まったく喧嘩を売るなら、実力差を見抜けるくらいになってからにしろよ。レベル2騎士様」
「ぷぷぷぷ、セシル! こいつら弱すぎるから、手加減してあげてよ。そうしないと死んじゃうよ」
「はぁはぁはぁはぁ。このやろう! オレを馬鹿にしやがって!」
「もう息があがっているのか? この実力差で来るというなら、本気で相手をすることになるがいいのか? 5人同時でもいいぞ。この雑魚どもが」
「きゃあ! セシル様かっこいい!」
「お、おい。向こうはジョルジ団長もいるんだぞ。今日は引き上げるぞ、お、覚えていろよ」
オレとジョルジを睨み付けて、スゴスゴと去っていく弱者たち。雑魚キャラ定番の言葉まで吐いちゃって、意外に面白いやつらだな。
探査マップ/神愛で見たら他のやつらもレベル2だったよ。パルミラ教皇国にいる騎士の平均レベル9だというのに、このレベルで喧嘩を売るなどマジでうけるんだがな。隊商の護衛クラスだったら、まとめて5人を相手にしても普通に楽勝だよな。
「ジョルジ様、色々とありがとうございます」
「いや、私はなにもしていないが、そのように言ってもらえると助かるな。そこの彼が雑魚を追っ払ってくれ……」
オレの顔を見た瞬間にジョルジ団長が固まった。頬がみるみる紅潮していく。オレの顔に吸い寄せられるようにジーッと真っ直ぐ目を合わせてみつめた。
「ジョルジ様、どうされましたか? オレの顔になにか付いておりますか?」
そう声をかけられ、はっとするカミラ。顔を左右に少し降ると、まだ赤い顔だがキリッと真面目な顔に変わる。
「いや、何でもない。それではお前たち行くぞ」
「「「はっ! ジョルジ様!」」」
カミラは騎士団を引き連れて市内に入っていく。検問で検査をしている騎士に何かを話している。困った顔をする検問の騎士。なんの話をしているのだろう?
雑魚騎士とトラブっている間に検問の列は進み、オレの順番になった。女の子たちと別れて市内に入ると、検問の騎士が手招きをして呼びつけた。
「オレは検問を任されている騎士のビダルだ。ここでは持ち物などのチェックをする決まりになっている。あれ? 何も持ち物がないのか? お前は怪しいな。まずはこの真実の石板に手を当てろ」
しまった。旅をしているのに、何も持っていないのは確かにおかしい。アイテムボックスのスキルは話すと面倒だろうからな。この街で魔法の鞄を買ってカモフラージュすることにしようか。
真実の石板に手を当てると、青色に石が光った。赤色に光ると犯罪歴があるということで牢獄に連れていかれる。その後、罪の度合いによって犯罪奴隷にされたり、ムチ打ち刑になったり、場合によっては処刑されたり、行き先が変わる。
「よし。犯罪歴はないな。さっきもいったが、持ち物はどうしたんだ?」
「セシルはアイテムボックス持ちだからね~。カバンとかいらないんだよね」
うわっ、パックがアイテムボックス持ちということを言っちゃったよ。まあ、言ったからといって、誰かがオレに害を及ぼすことはできないからいいか。先ほどの雑魚騎士のように、返り討ちにすればいいしな。
アイテムボックスからエロースの剣を出す。突然、剣を出したので、検問の騎士が驚いた。
「おわっ! ビックリした! 本当にいきなり出てくるんだな。そうか、アイテムボックスはスキルだから詠唱もないのか。
しかし、激レアスキルだぞ。商人や上級修道士から引っ張りだこになるから、むやみにそのスキルを持っていると言うのは危険だ。場合によっては、誘拐されて奴隷の首輪を無理やり付けられて働かされるなんて話も聞いたことがある。いいか、気をつけるんだぞ」
注意をしてくれるとは、検問の騎士はいいやつだな。だが、誘拐され、奴隷にされ、無理やり働かされるとかきつすぎるな。オレは強いから大丈夫だが、弱いやつは人生が積むだろうな。
「おっと、肝心な話をし忘れていた。ティムガット市に入るのに入市税が銅貨1枚かかり、支払わないと入れない。もし、金がなかったら売りたいものを引き取ることも可能だ」
アイテムボックスから銅貨2枚と情報料を銀貨1枚渡す。
「他にいい情報があったら教えてほしいな。これは前払いのお礼だ」
「いいのか? それでは遠慮なくもらうか。この紙が税金を払った証明書になるから、市を出るまではなくすなよ」
「ありがとう。もう市に入っていいですか?」
「ああ、いいぞ。チップをもらったお礼に情報を追加だ。この市にはじめてきたなら、宿屋はこれから探すのだろう。
だったらおすすめを紹介しよう。このままメイン通りを真っ直ぐ行くと右手に白猫亭がある。料理も美味しいし、ベッドも綺麗で評判がいいぞ。明後日、ティムガット市の代表を決める騎士団戦があるから、宿屋はかなり混雑している。あそこならこの市でも、規模が大きいから大丈夫だ。門番ビダルの紹介と言えば、確実に泊まれるだろう。
あとスラムで誘拐事件が多発しているから絶対に近づかないようにな。それじゃあ気をつけてな」
「そうなのか。色々とありがとう。その白猫亭って宿屋に行ってみるよ」
なぜか苦笑いの騎士にお礼を言って、検問所を出ていく。いい情報を貰ったな。明後日、騎士団戦があるのか。面白そうだから見学していくか。どうせ時間は魔龍を倒すリミットまでたっぷり3年あるから、多少の寄り道も異世界道中での楽しみになることだしな。
城門から市内に入ると行き交う人の多さに驚く。街中が人々であふれている。神都ベネネントにも匹敵するのではないだろうか。さすが隣国ステュディオス王国との貿易が盛んな市だな。
《サポート》
ティムガット市の特徴を教えて?
【パルミラ教皇国ティムガット市。1000年ほど前に聖ティムガットが聖魔大戦のあとに築いた都市である。
パルミラ教皇国アレクシス市とステュディオス王国の中間に位置し、北にはモンスターの宝庫であるバレンシアの森があり、西は隣国ステュディオス国がある。剣闘士レベル112狂戦士クラウス・オルドリッジの治世になってからは争いごとはなくなったが、それ以前は頻繁に国境沿いで戦闘があった。そのため、ティムガット市では防衛のため騎士団を多数結成した。第125騎士団まであり、軍事が充実している。現在はステュディオス国との関係を改善したので貿易が充実している。南には対岸が見えないほどの大きなフーリエ川があり、漁業も栄えている街である。
人工は900万人ほどでパルミラ教皇国内では第3番目に大きな街である。
アレクシス市までは馬車で10日、隣国ステュディオスとの国境まで馬車で9日かかる。
なるほど、隣国と戦ってきたこと、バレンシアの森が接触しているから、軍事力を必要としているのか。それでこんなに活気があるのだな。とりあえず宿屋を取って落ち着きたいな。そのあと街を散策して、明日にはステュディオス王国に向かうとしよう。
人の間を縫うようにして門番のおすすめ宿屋白猫亭を探すが、街が広すぎるのと、宿屋の多さでなかなか見つからない。
この街は広すぎて分かりにくいな。古い街の特徴で、改変されず過去のまま街があると、道が入り組んでいる場合がある。ここもそういった類いで、都市計画ができていないのだ。
探す途中でティムガット市の名物という看板を見つけたので、それを買うついでに道を聞くことにしよう。のぼりにバフィ魚の塩焼きと書いてある。日本でもアユの塩焼きなど似たようなのがあったから興味が湧いた。異世界味比べだな。
「店主、名物のバフィ魚の塩焼きを2本もらえるか?」
「毎度あり! 銅貨1枚だ」
銅貨をアイテムボックスから取り出して店主に渡して食べながら雑談をする。
「ほふほふほふっ、おお! 焼き加減と塩加減のバランスが絶妙にいいな。店主はなかなかやるな。相当旨いぞ、グッドだ」
「確かにオイラもそう思う。微妙にレアっぽいところが逆に素材から出る甘さを引き出しているよ。バフィ魚の塩焼きは気に入ったよ!」
「へへ、ここで魚を焼き続けて20年のベテランだ。腕には自信があるんだ」
店主は商品を誉められたことが、よほど嬉しかったのか満面の笑みを浮かべている。
「ところで店主、オレはティムガット市に着いたばかりなのだが、いつもこんなに人がいるのか?」
「この市は人口も多いし、活気にあふれているからね。なにせ先代、現代と司教様が優秀だからね。いつもこんな感じだが、今日はいつもより若干多いか」
「そうなのか?」
「ああ、この市は北にバレンシアの森、西に隣国がある。いつでも滅びる可能性のある危険な市だ。だから騎士団がとても強いし、権力がある。明後日、国で1番の騎士団を決める騎士団戦があってね。それを見に来た人が多いんだ。優勝すると、多大な権限を与えられる。
今回は、ポートフォリオが率いるラスメデュラス騎士団と、ジョルジ様が率いるヴェルチェッリ騎士団の一騎討ちと言われている。この2つの騎士団が頭1つ抜けている。
ラスメデュラス騎士団は、古くからある由緒正しい騎士団で、ながくこの市を支配してきたのだ。
ヴェルチェッリ騎士団は、ジョルジ様がバレンシアの森で実戦オンリーで育てあげた騎士団でな。若い女性のみの新規精鋭として急激に武功をあげてきたのだよ。
あとここだけの話、ジョルジ様はティムガットの女神と言われるほどの美少女だ。オレ的にはこっちに勝ってくれると嬉しいな」
「いいな。美少女と聞くと男としては萌えてくるよな」
「セシル! さっき助けてもらったじゃない。もう忘れたの?」
「あ! さっきの超絶美少女か! 確かに凄まじい美少女だったな」
「おお! あんたらこの街に来たばかりで、あの女神にあったのか? ついてるね!」
その後、店主に白猫亭の場所を聞くと、店主が指を指した先にある木の看板に白猫亭と書いてある。意外に近かった。なぜか店主は別れるまでニヤニヤしていた、物凄く気になる。
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