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第1章

第35話 純愛

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就任イベント終了後、アンカスタード市中がお祝いムードで飲めや歌えやで盛り上がっているさなか、聖域のラヴィアンローズの自室で、オレはアリシアとパックの3人で会っていた。

「セシル様、獣耳族の子供たちのこと、お父様のこと、ありがとうございました。これですべての胸のつかえが取れましたわ。安心して聖女の座をルシィルに譲り、魔龍討伐のために全力で挑めますわ」

すべての胸の使えの取れたアリシアは、力強い言葉で魔龍討伐を協力する決意を伝えてきた。

「大切なアリシアのためだったら、魔龍など関係なく助けただろうから気にせずともいい」

「そうだよ~。セシルは会って数日だけど、とてもいいやつだと分かったからね。困っている人を見ると助けたくなる損な性分だしね!」

それはお前もだよと言いたいな。パックは小さい体だが、実は正義感あふれる熱い妖精だからな。それにエロい妖精族っていうところも評価ポイントだ。パックの言葉にクスッと笑うアリシア。

「そうですわよね。人が良くて優しいセシル様だから、わたくしも好きになったのですわ。
……愛しています。セシル様」

アリシアが愛情のたっぷりこもった眼差しでオレを見つめ目をつむった。オレはアリシアのピンク色の唇に口づけをする。

「む……うん……ふむ……んん」

長い口づけが終わり、はぁ~っと熱い吐息をすると、16歳の清らかな色気がにじみでてきている。

「来て」

アリシアはベッドで横になり、両手を広げ、オレを迎え入れようとした。その一言で、オレの我慢に我慢を重ねた最後の理性が吹っ飛んだ。それに呼応したかのようなタイミングでパックの体に魔力が高まってくるのが見えた。

《インファティリティ/避妊》

「パック、今回はインファティリティ/避妊だけでいい。あとは自然に愛していくからな」

「承知~」

そしてオレとアリシアは、お互いに愛の言葉を囁きあいながら、何度も何度も口づけを交わしていた。2人の心と心がつながるような不思議な感覚に陥った。純愛も素晴らしいな。

「この世に生まれてきてくれてありがとう。オレはアリシアを愛してる」

その言葉を聞き、アリシアは目を輝かせ、うっとりとするほどの幸福感に体全身が満たされた。

「ああ! 嬉しい……あなたはわたくしのすべてですわ」

アリシアの目からは感動のあまり一滴の涙がツーッと頬を伝った。オレは服を一枚一枚脱がしていくと、まだ誰にも見られたことのない真っ白な美しい肌があらわれる。あまりに均整のとれた芸術的な肢体に身震いする。

そして薄い桜色の乳首を唇に含む。

「あ……ああ……そこは……セシル様、セシル様! セシル様!!」



ーーー2時間後

ラヴィアンローズ自室のベッドで寝ている。横で寝ているアリシアはオレを抱き枕にしてスースーと吐息をもらしている。
シーツにはアリシアが先程まで処女であった証である破瓜の血がついている。それを見てとても嬉しい気持ちでいっぱいになる。ついに可愛い系超絶美少女アリシアと夜伽をしてしまったのだと実感する。

体を起こすと、アリシアも目が覚めたようだ。相当恥ずかしいのだろうな。目を合わせずに頬を赤く染め、下を向いている。オレが破瓜の血をわざと見ると、それに気がついたアリシアは耳まで真っ赤になってサッと血を隠す。か、可愛いな。もう少し修道女たちといようか迷う。

「アリシアの大切な処女をオレに捧げてもらってありがとう」

「……うふふ、セシル様にわたくしの初めてを捧げられて幸せですわ」

アリシアの唇に軽くキスをし、ハグをする。

「2人とも幸せそうでオイラも嬉しいよ! セシル、アリシアこれからもよろしくね!」

「もちろんだ。パックがいなくては困るだろ! なあアリシア」

「そうですわ。パックは大事な大事な……そう、戦友のような存在ですわ」

「オイラ感動して涙が出てきたよ!」

『コンコンッ』

ドアをノックする音がする。いいムードだったのだが、驚いてビクッとなる。

「セシル様、そろそろ隊商が集合するお時間になります」

「分かった。すぐに行く。アリシア、この続きはフェロニア市でしよう」

「……はい、セシル様。楽しみにしておりますわ」

離れたくない! 彼女から出るオーラはそんな雰囲気だが、魔龍を倒し、目的を果たしたらいくらでも夜伽をする時間があるからな。その時はアリシアが孕むまで中出しをしてやろう。

昼が過ぎるといよいよ出発の時間だ。エミリアにオレとパックが着る一般人の服を数着用意してもらい、そのうちの1枚を着ている。どこから見ても一般人にしかみえない。
見送りは最少人数でと頼んであったので、アリシアとクレタ、エミリアにパルマ。そしてソフィアとベルベットだけがいる。

「せっかくお兄様が出来ましたのに、もういなくなってしまうなんて寂しいです」

「はは、オレには大事な使命があるのだ。ベルのことはアリシアに任せてあるから、心配していない。魔龍を倒したら、兄妹でゆっくり温泉でもいこう」

「はい! お兄様、約束ですね」

オレとベルで指切りをする。ちっちゃくて可愛い手だな。

「セシル様、迷宮都市フェロニアでお待ちください。引き継ぎが終わり次第、そちらに向かいますわ」

「分かった。みんなもフェロニア市に来るときは、十分に気をつけるんだぞ。そして魔龍討伐のために力を貸してくれな」

「うふふ、セシル様のお力になることは、わたくしたちにとって最大の喜びですわ」

「うむ、それは何よりだ。ん? パルマは薬指に指輪をしてたか?」

パルマの頬が赤く染まる。するとアリシアが嬉しそうに笑う。

「本当は朝にお話しする予定でしたが、機会を失ってしまったのです。お父様とパルマ、いえ、お義母様は結婚することになったのですわ。うふふ」

はあ! そんなことになってたの知らなかった。いつの間に。そういえば戦場の同士には命をかけたことで一体感が生まれると聞いたことがある。そこから恋愛感情が芽生えたのか。

「うんうん、それはおめでたいな。これからはパルマをお義母様とお呼びすることになるな。これからもよろしくお願いします。お義母様」

「セ、セシル様からかわないでください~。こちらこそよろしくお願いいたします」

パルマは赤い顔で照れながら微笑む。

「私もベルお姉ちゃんとセシル兄ちゃん、アリシアお姉さんとお父さん。一気に4人も家族が増えて嬉しい!」

「それは違うぞ、ソフィア。クレタとエミリアもオレの嫁だ。家族は6人増えたのだ。良かったな」

ソフィアを持ち上げて抱きしめる。彼女は照れていたが、喜びで目を輝かせている。

「セシル様、家族が増えるのは喜ばしい事ですが、あまり増えてしまうと聖域に入りきらなくなりますわ」

『ギクッ』

「そうです。セシル様、あまりハメを外しすぎない事をオススメいたします」

「アリシア様とクレタの言うとおりです。バック、私たちがそばにいないので、よくセシル様を管理してくださいね。……いいわね」

3人の修道女がパックに笑顔を向けながら、威圧を加えた。クレタとエミリアもアリシアの、微笑み威圧のスキルを習得したようだ。

「え? あ……も、もちろんセシルのシモの管理はオイラに任せておいてよ! オイラに任せておけばバッチリさ!」

「「「……………………本当ね」」」

「オイラを信頼してよ!」

「分かりました。パックにお任せいたします」

「……あ……はは、出発前の注意は感謝する。じゃあ、もう行くな。3人とも迷宮都市フェロニアで待っているぞ」

「オイラ寂しいよ。また会おうね!」

「「「はい、セシル様、パック、お気をつけて」」」



ーーー馬車専用駐車場

「それにしてもセシル! アリシアは1回の中出しだけで良かったの? 後悔してない?」

「ああ、初めての伽だし、女としての幸せが一杯になるように頑張ったよ」

「そうなんだ。あとが1番大変なのはアリシアだしね!」

「アリシアには50メートル級の古龍を相手にしてもらうだろう。通常の龍でステータスの数値が3万ほどだ。古龍となるとステータスが数倍から、下手すると10倍以上あるかもしれない。となると、アリシアとフェロニア市で合流したら、中出し地獄が待っていることになる」

「ひぇ~、アリシアは壊れなきゃいいね!」

「1日中、神液吸収なんてことになるかもしれない。どのくらい上げればいいか、目安を知りたいから、一度、実際の古龍が、どのくらいのステータスか見に行くか」

「そうだね!」

パックと話しながら歩いていると、オレたちは商人専用の門に到着した。マクファーソンに自身の御用達商人に口利きをしてもらい、護衛をすることになった。まずは冒険者の第一歩として、護衛の仕事をしながらアレクシス市を目指して行くことになったからだ。
もちろん神の化身ではなく、有望な修道士セシルが武者修行のために迷宮都市フェロニアに行くという設定にしている。
教皇猊下御用達の大商人だけあって、規模が大きい。馬車が6台の大きな隊商で守備用の戦士だけで30人はいる。まずは隊長にあいさつをする。

「バミドール商会守備隊長メコンガだ。セシルだな、よろしく頼む。マクファーソン様から有望株だと聞いている。お前の働きには期待しているぞ」

●名前:メコンガ
●年齢:34歳
●種族:ヒューマン
●所属:パルミラ教皇国バミドール商会守備隊長
●身長/体重:192/88
●経験:多数
●状態:平常
●ベースレベル:28
●職業:レベル28戦士
●レベル:28
●HP:649
●MP:667
●腕力:309
●体力:340
●敏捷:358
●知力:328
●魔力:339
●器用度:364
●スキル
盾術2、剣術3
●装備
銀のロングソード+3、銀のヘルム+2、銀のブレストプレート+3、銀の籠手+2、銀のブーツ+2、銀の短剣+2

レベル28戦士か。一般的にはなかなかの手練れだ。過去の戦歴など、チャンスがあったら聞いてみたい。

「お前には3番目の馬車の守備を任せる。馬車に入って指示にしたがってくれ」

そういうとメコンガは去っていく。指示通り馬車にはいると、中にはすでに守備兵が5人いる。屈強な男が3人の女兵士が2人だ。

「オレの名はセシルだ。今日から迷宮都市フェロニアまでよろしく頼む」

「オイラは妖精族のパックだよ。よろしくね!」

「オレはこの馬車のリーダー、ラシャドだ。お前がフェロニアまで追加で雇った新人か。なんだその体は! 細い体だな。戦力になるのか?」

体が細いのは理解する。あえてエロース神様に細いモデル体型を希望したからな。オレがいうのもなんだが、客観的にみて自分が強そうにはみえないな。レベル制のラティアリア大陸ではそもそも体の線の細さは強さとは関係ないのだが……見た目も大事ということか。細いだけで侮られるとは予想外だった。もうちょっと、ガチムチ肉体を頼んでおけばなと、選択を後悔している。

実はこのようなアクシデントは予想していなかったので、昨日の夜に色々パックと検討していたが、設定を変えることにした。ステータスで隠蔽は2ヶ所だけにする。さすがに神の化身がバレるとまずいから、そこはヒューマンに隠蔽する。あと職業は盗賊で変わらないが、真実の石板でみえるレベルは22で統一することにした。

真実の石板とは、街の入口や関所に必ずある。石板に手を当てると、その者の名前や職業とレベル、種族、犯罪歴などが出てくるのだ。
細かいステータスは出ないので、腕力が40万あっても気づかれることはない。前にアリシアが使ったアプレイザル/鑑定だと見ることができるが。レジストに成功すれば敵には見えない。オレがレジストに失敗するわけがないから、どちらにしてもバレないな。

それと昨日の実験で分かったことがある。能力の高さを隠すのは生活魔法が最適と分かったのだ。どういうことかというと剣で攻撃すると最低の1発まで攻撃回数を下げても、1発で296148の攻撃力になる。魔法のファイアーボールも同様に高く、296075だった。比較として最強のアリシアのHPは6932だ。1発なでただけで即死コースを免れる生物は知る限り存在しない。攻撃ダメージに関係するステータスが最低以下にはどうやってもならなかった。やはりMMORPGモンスターバスターと同じ設定ということだ。

だが生活魔法はライターくらいのパワーから、魔力を込める量次第でとんでもない破壊力になる。強弱の調整が可能だと分かったのだ。それほど便利なのに、多くの加護持ちはなぜ使わないのか?

例えば点火の意味を持つ生活魔法イグニッション。通常ならライターを点火するレベルの炎しか出せない。イグニッションでファイアーボール1発分の火力を出そうとすると、MPを60程使う。ところが、ファイアーボール1発で消費MPは10だ。燃費が悪すぎるのだ。

「オレはもともと賢者だったから神聖魔法と暗黒魔法レベル3が使える。それに使う武器は魔法の弓だ。魔力で攻撃ダメージの大きな光の矢を作るので筋力は必要がない。だから体が細くても問題ないのだ」

「「「!?」」」

馬車内の空気が変わった。何か不味いこと言ったのか?

「賢者はあらゆる職業のなかで、最も神に愛されないとなれない職業だ。レベルアップの経験値が多いという欠点があるがな。賢者で転職したなど聞いたことがない。もったいないな」

「ちょっ! 賢者ってラティアリア大陸でも数人しか確認できていない職業でしょ! 信じられないわ」

「セシルは本当に賢者だよ! 旅の途中で暗黒魔法と神聖魔法を使う機会があるだろうから、その時に分かるよ!」

「さすがパルミラ教皇国、教皇マクファーソンの秘蔵っ子というわけだな」

他の4人も見る目が尊敬というか、そんな感じに変わっている。神聖魔法レベル3を使えるということは、貴重なハイリカバリーを使えるからだろう。みんな握手を求めてくる。他のメンバーは、レベル18戦士ボリック。レベル15戦士キュリス。レベル19女盗賊ケイラ。最後はレベル21女戦士エディタだ。

いよいよ馬車は動き出し、アンカスタード市を出発した。大きな市だと、アレクシス市まで馬車で8日、そのあと、ティムガット市まで10日だ。見張りを2時間交代でやる。冒険のはじまりか、ドキドキするな。

「セシルさんはどこの生まれなの?」

「今、彼女はいるの?」

「教皇猊下の秘蔵っ子って、神の化身って目の前で見たことある? どんな人だった?」

この馬車は女の子が多いので雑談が尽きることがない。疲れないのかな。まあ、女子がおしゃべりなのは異世界でも変わらないというところか。質問攻めにあい、げっそりと疲れてきたところにオレの見張り番の時間が来た。やっと助かった。おしゃべり地獄で結構限界に近かったんだよな。交代をするときに笛を渡された。

「何か見つけたら、この笛を吹くんだぞ。取り決めは聞いているな」

「ああ、ルールは聞いたから、大丈夫だ」

野盗やモンスターが出たら笛を吹くことで周囲に知らせることになっている。
注意深く周囲を警戒しながら、探査マップ/神愛を3分の1に拡大してみる。まだ、出発して6時間ほどで危険なモンスターはいない。

意外だったのが、神都ベネベント~アンカスタード市間、アンカスタード市~アレクシス市間も、道路がしっかりと馬車3台分の幅をとっている。交通手段が馬車か徒歩だから、これなら道に迷うことはない。道はデコボコで整備されているわけではないので、かなりの揺れがあることが難点だ。

途中で2、300人規模の村がいくつもある。分岐点に矢印が市町村の名前が書いてあり、街の方向を示している。実際、探査マップ/神愛で確認すると、その方向に市や村の名前がある。ちゃんと正しい情報があるので交通事情はなかなかのものだ。

お! 探査マップ/神愛に隊商の進行方向やや左前方向からかなりの勢いで近づいてくるマーカーがあった。タップして何かを確認すると、ジャイアントベアが2頭が走って来ていたのだった。

『ピィー!』

1回だけ笛の音が聞こえる。笛が1回だと危険度は低いから、笛を吹いた守備隊だけで対応する。2回だと3隊で対応する。3回だと総力をあげて守備をすることになる。大人数の大隊商だから、そのあたりの決まりはしっかりしている。

先頭の守備隊は隊長のメコンガがいるから、隊商最強の精鋭揃いだ。レベル28のメコンガを中心に全員レベル20台後半だ。
ミニウィンドウでみているが、ランクFモンスター2頭など瞬殺だった。いい仕事をする。

「旦那、しばらくジャイアントベアの肉にありつけそうですね、ぐひひ」

「ジャイアントベアの肉は美味いのか?」

「ええ、Fランクといっても熊肉は結構イケますぜ! 少し野趣あふれる味ですがね」

「そうなんだ! オイラ熊肉ははじめて食べるよ! 楽しみだね!」

あと2時間くらい馬車を進めたら野営にはいる。完全に暗くなってから野営準備をすると、モンスターに襲われたりと危険なので、薄暗いうちにテントを張るということだった。ま、常識だよな。熊肉は日本でも食べたことがないから楽しみだ。この異世界のラティアリア大陸はデザート系はいまいちだが、ご飯は口に合うからな。

『ピィー!、ピィー!、ピィー!』

「あれ、セシル。今、3回笛がなったね」

「あ、会話していて、モンスターチェックを忘れてた。どれどれ……ゲイズハウンドだと! 脅威度ランクCのモンスターだ! まだ少し距離があるが、真っ直ぐ隊商に向かってくるぞ」

●魔物名:ゲイズハウンド
●状態:怒り
●脅威度:C
●ベースレベル:40
●HP:1978
●MP:1804
●腕力:1002
●体力:976
●敏捷:956
●知力:912
●魔力:892
●器用度:1008
●スキル
噛みつき3、尻尾払い3、凶眼3

ゲイズハウンドはトカゲに似た8本足のモンスターだ。10メートルちかい巨体から繰り出す尻尾払いや噛みつきは強力だが、最も気をつけなくてはならないのは凶眼だ。レジストに失敗すると、よくて麻痺、最悪死に至る。

「ひぃいいいいいい! 凶眼の人食いトカゲだ! 旦那! 早く逃げないと食われちまう!」

「取りあえずルールに従おう。馬車を止めろ。メコンがの指示を仰ごう」

「みんな降りてよ! 笛3回出たよ!」

馬車を止めると、隊商メンバー全員が降りてきた。メコンガが指示を出す。

「皆の者、落ち着いて聞け! ゲイズハウンドが現れた。ルール通り、遠距離から弓で射りまくり、やつが弱ったら近接戦闘で畳み掛けるぞ!」

「「「おう!」」」

ゲイズハウンドは足が早いので逃げ切ることが出来ないと判断したのだろう。相手は脅威度ランクCのモンスターだ。こちらとは戦力にだいぶ差があるのにも関わらず、戦う気満々である。メコンガが統率力があるので、士気も高いからだ。

「加護持ちは味方に身体強化、敵に弱体化魔法をかけ、あとは攻撃魔法を頼む。以上配置につけ!」

「「「おう!」」」

バラバラと散らばり、ゲイズハウンドと接触予定の場に待機する。さすが慣れたようで動きがスムーズに配置についた。

「セシルはこっちに来い!」

「了解」

馬車のリーダーであるラシャドが新規入隊のオレに指示を出した。

「身体強化魔法を頼む!」

《エンハンスメント/身体強化》
《エンハンスメント/身体強化》
《エンハンスメント/身体強化》
《エンハンスメント/身体強化》
《エンハンスメント/身体強化》

ゲイズハウンドと接触50メートル程になり、味方へ身体強化をかける。貴重な加護持ちがオレも合わせて5人もいるとはさすが大隊商だ。仲間全員にエンハンスメント/身体強化をかけ終わると、ゲイズハウンドが弓と魔法の有効射程距離に入ってきた。

~~~戦闘開始

◎ゲイズハウンド×1(1)

「射て! 射て! 射て! 撃ちまくれ! 勝利の女神はお前たちにアソコを濡らして微笑んでいるぞ!」

『ビュン、ビュン、ビュン、ビュン、ビュン』

ちょっ、メコンガ。その煽りは恥ずかしいぞ。全員が弓を射出する。見ろ! ケイラとエディタたち女の子がドン引きしているじゃないか。

「グギャアアアアアアアアアアアアア!」

《カラープス/弱体化》
《カラープス/弱体化》
《カラープス/弱体化》
《カラープス/弱体化》
《カラープス/弱体化》

『バチィ!』

加護持ちがステータス弱体化魔法がゲイズハウンドにぶつける。だがオレのカラープス/弱体化以外はすべてレジストされたようだ。最前線のメコンガ部隊6人に、ついにゲイズハウンドがたどり着いた。

イニシアティブは99026のオレが取った。無双するとここにいられなくなるので、軽めの攻撃をかけることにする。攻撃選択を削るとしよう。

《ウインド/微風》

『ズバッ!』

「グゥオオオオオオオオオオオオオ!」

あとで仲間に甚大な被害をもたらすと思われる尻尾を切り落としに成功した。ゲイズハウンドは痛みで地面をのたうち回った。

「セシル! 良くやった!」

《ファイアーボール/炎の玉》
《ウィンドカッター/風の刃》
《ウォーターカッター/水流の刃》
《アイスショット/氷の弾丸》

次々に魔法を繰り出した仲間の加護持ちたち。ゲイズハウンドが攻撃出来ないうちに畳み掛けようと、一気に圧力を高める。

~~~2ターン

◎ゲイズハウンド×1(1)

地面を転げていたゲイズハウンドだったが、戦線に復帰した。イニシアティブは当然オレだ。

《カラープス/弱体化》

敵はレジストに失敗した。次点のゲイズハウンドは凶眼を使った。眼が赤く光ったかと思ったら、9人が倒れた。レジストに失敗し、麻痺ったようだ。

「みんなもう少しだ! 最も活躍した者には女接待酒池肉林だ! 女性で活躍した者には高額な防具と美食食べ放題だ! さぁ突撃するぞ!」

「「「おう!」」」

メコンガを筆頭に隊商精鋭10人がゲイズハウンドに近接戦闘に持ち込んだ。実はオレの尻尾切りで敵は体力の半分を失っていた。VRMMOモンスターバスターでは体力と魔力が減ると、ステータスががくりと低下する。これなら仲間たちでも楽勝だろう。

『ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ!』

「グゥオオオオオオオオオオオオオ!」

『ドズゥーン!』

敵にトドメの一撃をメコンガが加え、ゲイズハウンドは絶命した。青い血を吹き出して倒れている。

「「「オオオオオオオオオオオオ!」」」

「今回はセシルの尻尾切りのダメージがかなり効いたようだ。お前がいたから、1人も怪我人が出なかった。ありがとう」

「セシルって凄いでしょ! オイラの相棒なんだ!」

メコンガがオレの肩を叩いて親指を立てた。熱い男なんだな。命を預ける冒険者仲間って、こんな感じなのか。フェロニア市に着いたら、こんな熱い仲間を探すとしよう。

「ティムガット市に着いたら、セシルに女接待酒池肉林のサービス確定だな」

「え? マジですか! セシル羨ましいなぁ」

「何だそれ? そういえば、さっきもそんな事を言っていたな」

ウヒヒと男たちは羨ましそうにオレを見るが、女の子たちは冷ややかな目でオレを見ている。

「娼館に連れて行って貰えるんだよ。しかもティムガットで1番人気の娼館、蜜の味ナンバーワンのミラちゃんを抱けるんだよ! 酒、美女、美食、何でもありなんだ」

「そ、そうか。それは楽しみだ」

「さぁ、ここで今日はキャンプを張るぞ! みんな準備をしろ」

「「「はい!」」」


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