神聖娼婦を中出し育成してハーレムを作ろう

天将

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第3章

第2話 ワイナルデュム暗殺計画

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オレたちは、ケイトの依頼でプレマ村に向かう際に、モンスターの襲撃を受けていた公爵令嬢一行と遭遇した。敵国とはいえ人道的に見過ごせないということで救出し、すぐにその場から去ったのであった。

「いや~、危なかったね。まさか公爵令嬢だったとはね」

「だな。あのまま公爵家に連れて行かれそうな雰囲気だったから、強引にお暇したのだ。育ちが良く、性格の良さそうな女の子だったから、強引に逃げたのは悪かったけどな」

「それは良い判断だったのじゃ。あまり目立つと計画に支障が出るのじゃ。救助でちと遅れたが、プレマ村に行くとしよう」

「承知~」

「了解」

その後、目的地プレマ村に近づくと、その手前の岩が多数ある地点で降下した。岩場の中に入口が2メートルほどの高さがある洞窟があり、その中にナディアはスタスタと入っていく。彼女について洞窟内を行くと、その先には鉄扉があり、その鉄扉の前に若い男がスピアを持って立っていた。その男はナディアを見ると、ひざまずいて俯き右手を胸に当てた。

「王女殿下、お待ちしておりました。中でセヴィニー少将がお待ちです。こちらにどうぞ」

「うむ、任務をご苦労であった」

『ガチャッ』

鉄扉の中は狭く、諜報活動を行うため連絡用に用意された部屋であった。10人が座れる椅子と大きめのテーブル、壁には剣やスピア、盾がかけてある。奥にはさらに鉄扉が1つあり、この場所が見つかった時などの有事の際はここから逃亡するのだろうか? その椅子の1つに中年の男性が座っていたが、ナディアを見るとすぐに立ち上がり、ひざまずいて片膝を立て、右手を胸に当てた。

「王女殿下、このような所へようこそおいで下さいました。この度は王女殿下が直接指揮を取られるということで、我ら一同大変な光栄なことでございます」

「うむ、そなたこそ忠実な仕事ぶり、いつも助かっておるぞ。この2人は今回の作戦において、最重要な潜入とワイナルドゥムの暗殺を頼んでおる。名はセシルとパックじゃ」

「よろしく頼む」

「よろしくね~!」

「私は王女殿下の忠実な家臣、ビリス・セヴィニー少将である」

セヴィニーはオレたちの品定めをするかのように、ジロリと下から上まで舐めるように見渡す。

「失礼ながら見た目は筋肉はなく、ガリガリと言われるような細さで、とても我らの目的ーー高レベル侍ワイナルデュム暗殺を達成できるようには見えない。ですが私の持つレアスキルの危険察知が、先程から頭の中で大きな鐘のような音がずっと鳴り響いております。このような事は以前にオルドリッジ王と敵対した時でもございませんでした。王女殿下、セシル殿は本当にヒューマンなのですか?」

セヴィニー少将はステュディオス王国軍の諜報部隊幹部だけあってレアスキル持ちであった。オレの強さにすぐに気がついたとはな。

「セシルの異常な強さに気がつくとは、さすがにセヴィニーは騙されなかったのう。そのとおりじゃ、セシルは神族なのじゃ」

「やはりそうでしたか。神族とは初めて見るので、存在すること自体が信じがたいです。ですがセシル殿を見ると納得せざるを得ませんな。とりあえず、椅子におかけください。
王女殿下に手紙で最新情報をお知らせした後、軍人募集要項が突然変わりました。お時間があまりないので、すぐに今回の作戦の説明をさせていただきます」

3人は椅子に座った。パックはいつも通り、オレの左肩に座る。ナディアが魔法の鞄の中から、紅茶セットとお菓子を出して勧めてくる。セヴィニー少将が時間がないと言っているのに仕方のないやつだ。

「ふっふっふ、このお菓子は最近、フェロニア市で女の子の間で流行っておるのじゃ。そなたたちは知らないと思うが、食べるとビックリすること間違いなしじゃ」

「……王女殿下、あまりお時間がございませんので」

「こんな時にもお茶とお菓子って、ナディアって全然緊張感がないんだね!」

ナディアの出したお菓子は、どこかで見たなって思った。それもそのはず、オレが作ってアマリアの教会に卸しているクッキーだったのだ。パックもすぐに気がついて、お互い顔を見合わせる。

「うん? どうしたのじゃ? 早く食べるが良いぞ。くっふっふ」

ナディアが18歳の女の子らしい笑みを浮かべる。彼女に出されたクッキーを口に入れると、やはり味が同じでオレが作ったクッキーだった。セヴィニーは部下なので食べろという命令にすぐに従った。クッキーを取り、口に運んだ。

「ボリッボリッボリッ、王女殿下のくださったお菓子は大変美味しゅうございます。大変珍しいお菓子でございますな。広く情報通の私でもはじめて知りました」

セヴィニーは臣下だし、そういうのは上司に気を使うというのは当たり前だ。そもそも男性で甘いものを好む者は全体では多くはない。

「ボリッボリッ。うん、普通だね~」

「ボリッボリッ。だな、確かに普通だ」

そっけない態度をする2人を見て、ナディアは、あれ? っという顔をしている。想像した反応との開きがあったようだ。そりゃ自分で作り、何度も何度も試食を繰り返しているから、クッキーを食べる事はむしろ苦痛にもなっている。

「そなたたち、どうしたのじゃ? 殿方の口には甘いものは合わなかったかのう」

「いや、口に合わないというか……なあパック」

「うん、そうだね~。ぶっちゃけ、そのクッキーを作ったのセシルだし」

「なっ! なんじゃと! そなたがこのバカウマクッキーを作ったとは! どうやって作ったのじゃ!?」

「セシルはもともとパティシエなんだよ! もっと美味しいものも作れるよ。それこそ神の国のレシピでね。それらをオイラ食べたけど、口に入れた瞬間に舌がトロけるようになってね。ほどよい甘さとミアフラウラの絶妙なバランスが……」

「おいおい、お前らセヴィニーが困っているぞ。時間がないって言っていただろう?」

パックとナディアの雑談が止まらなそうだったのですぐに釘をさした。ナディアなど惚けて口を半分開け、よだれを垂らしそうな勢いだったからな。

『ポタッ』

あ~あ、ナディアのよだれが垂れちゃったよ。甘いものに目がない女の子にパックは煽りすぎだよな。

「ゴ、ゴホン。それでは作戦の説明をさせていただきます。作戦内容はすでにお知らせいたしましたが、募集内容が変わったことがありましたので、若干変更をいたします」

「軍人募集要項の何が変わったのじゃ?」

「今回は平民と奴隷の一等兵の募集ということでしたが、急遽貴族の募集もやることになりました。理由はグルノワール公爵家の兵役問題が関わっております」

「公爵っていうと、皇族のことだよね!」

「ヴァルビリス帝国の身分制度って、どんなふうになっているのだろうな? オレの国日本は半社会主義、半民主国家だったからな」

《サポート》
(帝国の身分制度について教えて?)

【第一位、皇帝
第ニ位、大公爵
皇帝の息子や兄弟など、分家になる。
第三位、公爵
皇族の関係者、または大貴族。
第四位、侯爵
領地を持った貴族。
第五位、辺境伯
中央から離れて大きな権限を認められた地方領主である。単なる伯爵より上位であり、侯爵に近しい。
第六位、伯爵
地方に派遣された地方領主。土地持ちの貴族。
第七位、子爵
伯爵の副官。
第八位、男爵
街や村レベルの土地を治める、爵位が1番低い貴族。ここまでを上級貴族である。
第九位、準男爵
生まれが貴族でない大商人など一般人の出世の限界。貴族とは名ばかりで何の権利もない。保証もなし。ここからは下級貴族と呼ばれている。
第十位、騎士爵
戦争で活躍した者に与えられる名誉爵位。一応貴族扱いだが、準男爵と同じで何の権限もない。

以上が帝国の身分制度である】

頭の中にサポートの自動音声のような声が流れてくる。まだ異世界の常識に慣れないオレとしては、サポートの存在は助かるよな。

「なるほど。記憶にある地球の貴族制度と一緒だな」

「?? なるほどって何かありましたか? まあ、ヴァルビリス帝国は身分に関係なく、兵役があります。グルノワール公爵家の令嬢が今年成人をしたのですが、兵役を回避するために強い奴隷を購入するということになったようです」

「兵役回避で奴隷を買うってどういうことだ?」

「帝国貴族は自身の家紋に値する強い奴隷を買い、それを軍隊に入れることで兵役を回避できるのです。ただ、その奴隷が弱くて活躍できないと、家紋に傷がつくのでそれなりに強い奴隷でないといけません」

「それで、作戦内容をどのように変えるのじゃ?」

「軍部がグルノワール公爵家に忖度しまして、貴族からも募集するということになりました。貴族からも軍人募集をすることになりましたから、グルノワール公爵家だけでなく、他の貴族も試験に参加することになります。ですので我々の目的である上級軍団兵の筆頭百人部隊に入ることが、通常のやり方だと事実上不可能となりました。筆頭百人部隊に入れないと貴族の面子に関わるので、上級軍に入る事ができるのは貴族のみになるかと思われます」

「なるほど! よく分かったのじゃ。平民から試験を受けさせて、圧倒的なセシルの武で上級軍に合格させる作戦だったが、それが不可能になった。その代わりに我が諜報部隊で操っている準男爵家から、セシルを戦闘奴隷として出すというわけなのじゃな!」

「なるほど! 貴族枠から試験を受ければセシルなら確実に上級軍に入れるもんね! それにしてもステュディオス王国側に味方している帝国貴族がいるんだね~」

「そうじゃ、長い年月をかけてヴァルビリス帝国に怪しまれることなく、ようやく潜り込むことに成功したのじゃ……ということは」

「はい、依頼の難度が飛躍的に上がってしまいセシル殿は大変でしょうが、絶対にセシル殿が暗殺をしたという事が誰にも気がつかれてはなりません。準男爵家にするために莫大な時間とお金が大変かかっております。準男爵家が帝国を裏切っていると知られてしまいますと家が取り潰しで関係者が老若男女まで全て皆殺しになるので、すべての苦労が水疱と化してしまいます」

「ひゃ~! 老若男女まで皆殺しってオイラ怖いよ!」

「パック、それは普通だぞ。だがオレが殺ったとバレずに暗殺するのが限定とは難題だな。ワイナルデュムを殺すこと自体は楽だがな」

腕を組んでどうやってバレずに殺るかを考えていた。ワイナルデュムは何度も暗殺部隊をステュディオス王国側から送られて、警戒がただでさえ厳重なのだ。1人になる事は、ほぼ無いであろう。むしろガイエスブルグ市ごと、まとめて王族貴族市民を全員《メテオストライク/隕石落とし》で壊滅させた方が楽かもしれない。だが一般国民を虐殺すると、後々の歴史においてエロース神の神格に傷がつくかもしれないから却下だ。

「ここからが本題です。セシル殿を、今から奴隷商人にステュディオス王国で野盗に捕まった元冒険者奴隷として売りに行きます。
明日、規模の大きな奴隷オークションがヴァルビリス帝国で行われるので、セシル殿ほどの顔立ちの整った美少年はまずいませんし、加護を持っているという事で売りますから、奴隷商人はすぐにでもオークションで売りに出すことでしょう。そして奴隷のセシル殿を我らの準男爵が買います。それで奴隷獲得の経緯は誤魔化すことが出来ます」

異常に強い奴隷を準男爵という下級貴族が囲っているのは違和感がある。なぜなら、そこまで強い者だと情報通の上級貴族が存在を知らないわけがない。どの奴隷商人から買ったなど、経歴を詳しく調べようとする貴族があらわれる。そこから準男爵家の裏切りなど、不都合なことがバレてしまうかもしれない。だが、多くの貴族の目にさらされる奴隷オークションで準男爵が買い、軍人募集で出したのならば、新人の強い奴隷があらたに帝国に出現したのだなという共通認識になるはずだ。奴隷商人~奴隷オークション~準男爵家の経歴の流れが違和感ないはずだ。

「やるねぇ~。それでセシルを準男爵の代わりに出せば、上級筆頭百人部隊に入りやすいというわけだね!」

「そういうことです。こちら側の準男爵はもともと商人からの成り上がりです。資金は豊富ですから、広大な領地を持っている公爵家か侯爵家、辺境伯辺りが本気で買おうと出てこなければ競り合いで負けることはありえません。時間がないので、すぐにガイエスブルグ市に向かっていただきます。その後の話は、準男爵バッジョ家でお話しましょう」

『チリンチリンッ』

そこでセヴィニーは鈴を鳴らすと奥の扉があき、ブルドッグに似た、強面で悪そうな人相の者が入ってきた。確かに奴隷でも取り扱っていそうという、悪そうな雰囲気の男だ。

「へい、ダフです。よろしくお願いします。早速ですが、すぐに参りましょう。申し訳ありやせんが、あとで鉄錠も両腕両足にしていただきます」

「ちょ、待って! オイラもセシルについていくよ!」

「妖精族が奴隷についていったら、おかしいのじゃ。パックは留守番じゃぞ」

「オイラは妖精魔法で姿を消す事ができるんだ! だからセシルについていっても大丈夫さ!」

「そんなことが可能なのか? 姿を消す魔法……聞いたことがないのう。さすがはセシルの眷属といったところか」

潜入中は、《インビシブル/透明化》の魔法を継続し続ければ、ずっとそばにいる事が可能だ。パックがオレの眷属でいるうちは魔力の供給はオレからされるので問題がない。

「それでは帝都ガイエスブルグに行くとしよう」





ーーーステュディオス王国首都フェロニア市、王宮殿ライヒスブルグ、王の寝室

「国王陛下、スタードラゴン傭兵団ダビド・エバンズ様がいらっしゃいました」

「うむ、通せ」

『ガチャッ』

王の間に入ってきたのは身長230センチメートル、体重150キログラムの巨体のヒューマンだった。スキンヘッドに髭はヴァンダイク、鍛え上げられた身体は筋骨隆々で、武の達人級にある男だという事は誰の目にも明らかであった。

「よう、エバンズ。よく来たな。今日は皆を下がらせているから、昔のように話していいぞ」

「ぐぁーはっはっはっはっ! そうか。じゃあ、遠慮しないぞ。クラウスがわしを呼ぶとは珍しいな。それ程、体が悪いのか?」

「ああ、帝国の思惑通りになり、ちとムカつくが呪いばかりは余でもどうにもならん。腕を上げるのも辛いくらいにHPが落ちておる。この程度の呪いも跳ね返すことが出来ぬとは、余も少し年を取りすぎたようだ。昔、まだ我らが若かりし頃、魔王討伐を仲間たちで散々苦労して達成した時が懐かしいのう、ごほっ、ごほっ」

「そうだな。20年前、ラティアリア大陸全土へ戦火を広げ、大侵攻してきた魔王セオドアを倒そうと最強パーティーを結成した。わしとクラウス、パルミラ教皇国の聖騎士メルヴィン・クレスウェルに忍者ルグラン、エルフの女賢者ノエラにヴァルビリス帝国の女サムライのレイラ・グルノワール。あの頃はわしたちも若かった、懐かしいのう」

オルドリッジ王が若き日、ステュディオス王国の前王朝、旧イシュタル王国の時の話である。当時、まだ将軍だったオルドリッジはイシュタル国王からの命令で、当時、ラティアリア大陸中に宣戦布告し、戦火を広げて暴走をしていた魔王セオドアを倒すため、仲間6人と旅をしていた。そのような中、戦友の1人であったヴァルビリス帝国のレイラ・グルノワールと恋仲になった。

魔王討伐を達成した後に2人は結婚するかと、エバンズや仲間たちは思っていたが、そうはならずに別れてしまった。ヴァルビリス帝国で代々続く公爵家の令嬢レイラの実家であるグルノワール家の者たちが、強いとはいえ元奴隷剣闘士であったオルドリッジとの結婚に大反対したからであった。その反対を押しきれなかったレイラは泣く泣く別れたということである。

「レイラ……か。皆で苦労して魔王を討伐した後、20年も会っていない。この名はとても懐かしいのう。今頃、どこでどうしておるのか」

「まっ、あの凄まじい強さを待つあやつの事だ。問題ないじゃろう。それより何かわしに用があったのじゃろう?」

「ああ、エバンズに頼みがあってな。余も年を取った。ステュディオス王国の未来のため、次代の国王の事を考えなくてはならないのだ。そこでエバンズに第一王女シャルビーの後見人を頼みたいのだ」

自分の命が残り少ない事を悟ったオルドリッジ王は、次代の王を早く決めないと、クーデターなどが起こり国が荒れるという事を予感していた。旧イシュタル王国の王族筆頭のクラウディオ・イシュタルを中心に不穏な動きをしていると、報告を諜報部隊から受けていたからだ。そのため、一刻も早く次の王を決めなくてはならなかった。次代も確定していると大々的に、国内、国外へと発表すれば、ステュディオス王国に付け入る隙がないという事を強く示す事になり、国家が安定することに繋がる。

「クラウスの頼みとあらば、断るわけにはいかんな。分かった、シャルビーの事はわしに任せろ。クラウスは安心してベッドで寝ているがいい」

「うむ、本当に助かる。やはり持つべきは信頼のできる戦友よのう」

実はエバンズはオルドリッジ王から頼まれるまでもなく、国家の安定のために第一王女の後見人になるつもりであった。国内最強のスタードラゴン傭兵団である四大将軍筆頭の自分が、オルドリッジ王の第一王女シャルビーの後見人になる事で、いくつかある不穏な動きを抑えることができる。エバンズも自身の情報網から、すでに察知していたのである。

「クラウディオ・イシュタルはわしが抑えるから安心しろ」

「ああっ、すでに知っていたのか」

エバンズの情報網は、国家の諜報部隊に引けを取らないほど優秀であった。その情報網を使い、オルドリッジ王の呪いの解呪方法をエバンズは密かに探していた。かつての戦友メルヴィン・クレスウェルに、実の娘である聖女アリシア・クレスウェルに隣国ステュディオス王国に遠征してもらい、オルドリッジ王の解呪をして欲しいと依頼の手紙を出していたが、返信自体がなかった。この頃はメルヴィン・クレスウェルは奴隷に落とされており、セシルが救うまで動くことができなかったからである。

2人がステュディオス王国の今後のことを話していると、天井から人が歩くような軋む音が微かに聞こえる。

「うん? 来たか」

「そうじゃの。まっ、わしに任せておけ」

「うむ、頼む」

『バァン!』

その直後、王の寝室の天井から黒装束を来た暗殺者3人が飛び込んできた。黒い武装を全身にまとい、オルドリッジ王を視認すると腰に装備していたショートソード抜いた。刃先には黒い液体が塗られている。

「わしらに襲いかかって来るとは、歳をとったとはいえ舐められたもんじゃのう」

「死ね! オルドリッジ!」

暗殺者はひとっ飛びにオルドリッジ王に刃を斬りつけようとした。かすりでもすればショートソードに塗られているヒュドラの毒で殺害できる。だがこの最強の2人に奇襲が成功するまでもなく、イニシアティブはエバンズが取った。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

『ドガガガガガガガガガガッ!』

「!? ぐぁああああああああああああああ!」

『ドガッ!』

ダビド・エバンズは拳で暗殺者3人をまとめて殴ると、暗殺者は全身から血を吹き出しながら壁に激突するが、勢いが止まらず壁を突き抜け外に飛び出した。

『ガチャッ!』

「国王陛下! 大きな音が……暗殺者!? お怪我はありませんか!」

大きな音が国王の寝室から聞こえてきたので、ケイトとレジェスが飛び込んできた。

「ああっ、この通りエバンズが居合わせてもらったおかげで問題ない」

オルドリッジ王は両手を広げて自分の無事をケイトに教え、エバンズと2人で微笑んだ。
王宮殿守備を任されていたケイトは、暗殺者の侵入を許した自分に怒りを覚えながらも、国王陛下の無事にホッと安心するのであった。

「良かった。エバンズ殿、感謝します」

「いや、いいってことよ。この程度じゃ準備運動にもならないわ。レジェスよ、こう簡単に侵入を許すとは気が抜けてんじゃないのか? 久々にわし自らがお前を鍛えてやろう」

「えっ? はっ、私をです……か」

「そうだよ。抜けてんのはお前だよ。敵にここまで来られるなど、兵の配置でミスをしてケイトに心配させてんじゃねぇ。オラ、レジェス来いよ」

「え? いや、今は任務中でそれは……ケイト様」

レジェスがまだ軍に所属したばかりの頃、才能ありとエバンズに目をつけられて散々個人的に鍛えられた。青アザの無い日は1日たりともなかった。そのため、レジェスはエバンズだけはその時の恐怖もあり、若干苦手であった。

「うふふ、久しぶりにエバンズ様に鍛えてもらったら?」

「見なさい、今では他国の軍隊に炎帝の通り名で恐怖の対象として呼ばれているレジェスも、エバンズにかかっては台無しだな! わーはっはっはっはっはっはっはっ!」

「うふふふふふふふっ」

「ぐぁーはっはっはっはっはっ!」

レジェスの点のようになった目を見てオルドリッジ王は可笑しくなり大笑いをした。ケイトもエバンズも大笑いをした。レジェスも苦笑いをした。
この後に起こる悲劇は、まだ誰も予想していなかった。





    
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