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第2章
第31話 新たな試練
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ホリーと合流したオレたちは、フェレール軍駐屯地にやってきた。10メートルはあろうかという巨大な門前には、スピアを持つ者とロングソードを持つ2人の警備兵が立っている。
門に近づくとロングソードを腰に下げている者が、オレの顔を見て目を見開き金魚のように口をぱくぱくさせた。
「うわっ! セ、セ、セ、セシル殿。フェレール軍に何かご用でしょうか?」
この警備兵は大将との戦いのときに、後ろで剣の訓練をしていた男だ。当然、オレの馬鹿げた魔力で召喚された《フレイムドラグーン/炎竜召喚》を見て、腰を抜かして失禁した者の1人だった。炎竜が口を開けただけでその圧力により小便を垂らしながら後方に吹っ飛んでしまった。
彼は警備の役割をこなそうと平面を装っているが、恐れのあまり顔が引きつり、膝がカタカタと大きく震えている。腰につけている剣もカタカタ音がする。門に掴まり、ギリギリのところで倒れないですんでいる。心底オレを恐れているようだ。
「おいおい、敵対している訳ではないのだから、そんなに恐れなくてもいいぞ。それともオレと敵対するのか?」
「ああああああっ! そのような事は絶対にいたしませぶっ、痛っ」
警備兵は動揺しすぎて舌を噛んでしまった。口端から血が出ているところを見ると派手に噛んでしまったようだ。ジョークのつもりで脅かすつもりはなかったが、結果的にこのあとの食事は血の味がすることだろう。
「セシル! 場を和ませて笑わすつもりだったのかもしれないけど、ジョークに全然なってないよ! グリフォンとかマンティコアは側にいるだけで死しか感じさせないじゃん!」
「店長……この人……可哀想です」
「悪い悪い。怯えさせる気はなかったんだよ。ケイトに取次を頼む」
「はははははははい! い、い、い、今すぐに取り次ぎまぶっ、痛っ」
警備兵はまた舌を噛んでしまった。
ただ、もう1人のスピアを持つ警備兵が殺意の視線を向けてきた。ケイト、と尊敬する元帥閣下を名前で呼び捨てにしたからだろうか? もう1人のスピアを持つ警備兵の額にビッと青筋が入った。この異世界では武力がすべてだ。文句があるなら強くなってから、スピア使いの警備兵は言う権利を行使するべきだろう。第一ケイトには下の名前で呼ぶ権利を、本人から直接もらっている。
そういえば、炎竜を解呪する時に約束をしたパフパフもまだしてもらっていない。色々とあってすっかり忘れていたが、後で会ったらきっちりやってもらわねばな。
「はい、元帥閣下はただ今外出されております。お戻りは未定となっております」
スピアを持つ警備兵は殺意のこもった視線で答えてきた。
「いないんじゃしょうがないね! セシルは報酬を早くもらいたいでかもしれないけど帰ろうよ! あまりオイラも……近づきたい相手でもないし」
パックは先日の事件以来、ケイトが苦手になってしまったようだ。妖精王に命令されたから仕方なくやっていたのだと、猛烈に言い合っていたからな。悪いことをしたなという引け目もあり、あまり彼女に会いたくないようだ。早く依頼書にサインしてもらって、彼女との関係を終わらせたいというのが本音だ。
「それじゃあケイトが戻るまで、応接室で待たせてもらえるか?」
「ええ~っ! 会わなくちゃ駄目?」
「当然だ。依頼達成料を貰わなくちゃならないからな。仕事をしたら対価が必要だろ、ぐふふ♪」
「……ピクッ」
ホリーもケイトの依頼料に問題があると思っているようだ。さっきから黙ってオレの手を強く握っている。みんなの気持ちは分かったが、そうはいかない。エルフのぱふぱふと夜伽は日本人の男の夢なのだから。もしも、日本に帰ることができたら、この素晴らしさを本に書いて出版してやるぞ。まっ、異世界は片道切符で帰ることはできないがな。
「それではバトン、セシル殿を応接室にお連れしてくれ。自分は膝が笑ってしまって動けんのだ」
「はっ、承知いたしました。……それではこちらにどうぞ」
微妙に殺気を放っているスピア使い警備兵バトンが先導して歩いていく。門から応接室の間にある通路でフェレール軍の者と何人もすれ違った。オレを見てビクッと恐怖する者、隠れる者、睨みつけてくる者、色っぽい目で見つめてくる女の子と様々な反応を示していた。凶悪な炎竜を召喚したことで、絶対的な強者と心底恐れられているのだ。
「こちらで少々お待ちください」
しばらくパックとホリーの3人で、バトンが用意した紅茶を飲みながら雑談していた。1時間ほどでケイトが戻ってきたと案内役のバトンから連絡があり、3つのマーカーが応接室に近づいてきたのが《探査マップ/神愛》に映った。
『ガチャ』
案内役のバトンとケイト、それにもう1人女性が入ってきた。女性はヴィザードを顔につけていて、顔が分からなくなっている。ヴィザードの女性はオレを見た瞬間、なぜか動きが止まり固まっていたが、何事もなかったように椅子に座る。
ヴィザードとは黒一色の仮面、目の所と口の所だけ穴が空いているという物だ。何かのオカルト宗教のような不気味さを放っている。《探査マップ/神愛》で調べると、なんとオレ専用雌奴隷ナディア王女だった。なんでこんなところにいるんだ?
「待たせちゃったわね。今日はとても高貴なお方をお連れしたから、言葉遣いには気をつけなさい」
「そんなことより酷いよケイト! オイラたちをランクSモンスターがいる部屋に置いて行っちゃうなんてさ! 死にそうな目にあったじゃないか!」
「あら? でも大丈夫だったじゃない。あなたたちの武力の高さを信じているからよ。一刻も早く国王陛下を解呪したくてね。ごめんなさいね」
しれっと当たり前じゃない、と言われてパックはぐっと般若のような顔をして黙り込んだ。ケイトは言葉では謝罪をしているが、悪いことをしたと思っていないのか全く感情がこもっていない気がする。だが神話級の美女が言うと、酷いことをされたのに許してしまう自分が憎い。
「それで国王はどうだったんだ? 呪いは解呪できたのか?」
「「「…………………………」」」
ケイトとナディア王女は下を向き、急激に落ち込んだ。2人のマーカーが「濃い青オレンジーー悲観」となっている。
ケイトはその質問に答える前に紅茶を一口飲み、一旦心を落ち着けた。
「はぁ~。ダメだったわ。この国においては最高クラスの聖騎士アリサ殿が、呪いの1つは解呪出来たのだけれど、国王陛下にかけられた呪いは2つだったのよ。地下迷宮のアイテムは通常、すぐに補充されるのだけど、浄化の宝珠は特別みたいなの。あれが次に発生するのは半年後だし、もうお手上げね」
「くぅ~」
ヴィザードをつけている女性ーーオレ専用雌奴隷ナディア王女が両拳をぐぐっと握りしめ、仮面の中から苦しむ声が聞こえる。自らの力のなさへの深い絶望を感じたようだ。
「そうか、それは残念だったな。だが請け負った依頼自体は、浄化の宝珠を得られたから成功だ。この依頼書に完了のサインをしてくれ」
そう言って冒険者ギルドで受け取った依頼書をケイトの前に差し出した。ところがその依頼書をケイトはぐっぐっぐっと押し戻してきた。
「え、何? どういうこと? 依頼を達成した証拠のサインを依頼主のケイトにしてもらわないと、オイラたち次の依頼を受けられないんだけど?」
パックが両手を左右に広げ、意味が分からないという顔をしている。
「何であなたたちは依頼を達成した気になっているのよ?」
「だって浄化の宝珠で国王が完全に解呪できなかったのは残念だけど、オイラたちは依頼を達成したんで終了でしょ?」
「その依頼書をもう1度よく見てみなさい」
「依頼書をみろ?」
頭の中で疑問符が乱舞するが、ケイトの言う通り依頼内容が書いてある羊皮紙を見直してみた。すると依頼内容は浄化の宝珠を得ることで達成すると書いてあるわけではなく、オルドリッジ王の呪いを解呪することで依頼達成と書いてあった。
「ええ! セシルこれって!? 聞いていた話と違う! ケイトは浄化の宝珠を得ることが依頼だと言ってたよね!」
「まずは浄化の宝珠が最優先だったから口頭でそう言ったけど。依頼書をちゃんと読まなかった方が不味いと思うけど」
「……ああ、ケイトは浄化の宝珠を得るのが依頼内容だと話していたのをはっきりと覚えている。地下迷宮での放置もそうだが、ケイトにはヤラレっぱなしだな。ケイトの依頼を止めるか」
「あわわわっ……店長……これから……どうしますか? 依頼放棄は……冒険者として……信用を……失ってしまいます」
冒険者として依頼の放棄は、著しく社会的な信頼を失うことになる。銀貨を支払えばいいというわけではない。冒険者には冒険者の流儀があり、守らなければならないルールがある。失敗なら仕方ないが、放棄はまずい。
それを思ってホリーとパックが不安そうにオレを見る。ケイトは紅茶を一口飲み、勝ち誇ったようににやりと笑うと、ヴィザードの仮面をつけている女性を見て頷いた。
「依頼は止めることは出来ないわよ。この依頼は最重要国家機密よ。国王陛下の呪いを解呪するまで付き合ってもらうしかないわね」
「どうするセシル。オイラは早くこの依頼を終わらせて、ケイトから開放されたいよ」
「私は……ちゃんと達成してから……次の依頼に……行きたいです」
「2人がそう言うなら反対はしない。それよりも依頼料はきっちり払ってくれるのだろうな? すでに払ってもらえるか疑わしいのだが」
「え? あ……ええ、もちろん真剣に考えているわ」
あ、怪しい。地下迷宮で置いてきぼりにした事とか、依頼内容が微妙にすり替わっていた事とか、依頼料を夜伽で払ってくれる話が本当なのか疑問が脳裏に出た。ケイトのあの顔を見ろよ! 絶対に食い逃げをする気満々な予感がする。ならばこちらも1つ条件を変更してやるか。
「よし、ならば条件を1つ追加しよう。それが叶うならば、すぐにでも引き受ける方向で検討してやろう」
「!? 引き受ける条件の追加ですって? それはどんな条件よ」
「……それは」
「それは何? あ、分かったわ。報酬の上乗せね。それなら金貨や魔剣が欲しいの? それとも魔道具がいいのかしら? 今回はオルドリッジ王のお命がかかっているから、私の権限で精一杯の報酬を出すわ。時間がないから早く言いなさい」
ナディアもケイトもホリーも、オレの次の一言を真剣な眼差しで待っている。きっと金貨や武器、魔道具などの追加報酬を期待していると思っているのだろう。
ただ1人、我が相棒パックだけはにやにやと薄ら笑いを浮かべている。そのにやけ顔、少しキモいぞパックよ。
「追加報酬とは……いますぐ隣の部屋でヤラせろケイト! 今すぐにだ!」
「「「ええええええ~っ!」」」
「あなた本当に頭の中にスケベな事しかないの!」
「ああ、その通りだ!」
『ガンッ』
求める報酬内容を聞き、ケイトとナディアはテーブルに頭を同時にぶつけてしまった。2人にかなりの衝撃を与えてしまったのか?
「さすがセシル、言うことが違うねぇ~。オイラ、この空気でそれを言える度胸はないよ、うひひひ♪」
「全くあなたは本当にしょうのない人ねぇ~。前にも言ったけど、私は好きでもない男とするのは無理なの。依頼で頑張るセシルを見て惚れたらいくらでもエッチをしていいわ」
オレは目をつむり、横を向いてケイトの話を全拒否をした。置き去りの件といい、いつの間にか依頼内容が変わっていた件といい、一撃くらいは返しておかないとまずい。今後の2人の関係で、ケイト上位のマウンティングが確定してしまう。
「……店長」
ホリーも少し呆れ顔だが、絶対にここは譲らん。この所の彼女の発言や態度、実際の行動をみて、依頼終了後に食い逃げされる率が高いとみたのだ。地下迷宮でなどボス部屋に置き去りだぞ、置き去り!
しばらく横を向いていると、困った顔をしていたケイトが大きくため息をついた。
「本当に困ったわ。今回の依頼はラティアリア大陸の平和のためにも必要なことなの。目的を達成したら必ず一度夜伽をするからそれでは駄目なの?」
「今がいい。今じゃなきゃ依頼は破棄する」
彼女とのギリギリの攻防にパックとホリー、ナディアはハラハラしながら様子を見ている。
『カサカサカサ』
すると突然ケイトがテーブルに置いてあった帝国の機密書類をトントンとまとめて鞄にしまいだした。ん? どうしたのだろう?
「どうして機密書類を鞄にしまうんだ?」
「まっ、そんなに嫌なのならば仕方ないわね。今回はあなたへの依頼を取り下げるわ。まだ、100%とはいえないけど、他にも達成できる冒険者はいるもの。残念だけどこれであなたに抱かれる可能性は0%になったわ」
鞄に機密書類をゆっくりとしたスピードで入れ終わった。そこでケイトとナディアが椅子から立ち上がり、ドアの方にこれまたゆっくりと歩き出した。
非常にまずいことになった。依頼がご破産になるとケイトに夜伽を迫る理由がなくなってしまう。神話級美女エルフは絶対にハーレムには入れたい存在だ。ここは仕方ないが、少し譲歩するしかないか。
「ちょっと待った! 分かったよ! 妥協すればいいんだろ! 冒険者ギルドの依頼書とは別に、達成報酬として書面でケイトの夜伽を1回と記述してくれ」
ドアに手をかけた所でオレが声をかけたので、そこでケイトは振り返った。悪そうな顔で勝ったと言わんばかりに、下品な薄笑いを口角に浮かべた。
くそぅ! この女には絶対に勝つことは出来ないのか。ヤバいぞ、このままではいつでも好きなようにこき使われてしまう~。しかも連続食い逃げ犯となりそうな予感がする。
「それで本当に良いのね。あとでやっぱり止めたっていうのは無しでお願いね……はい、契約書」
ケイトはその場で追加の契約書をさらさらと書いてオレに手渡した。書いてある内容を見ると、依頼の達成報酬としてケイト・フェレールとの夜伽を1回することって書いてある。ただし、本人の気持ちは尊重すること。って食い逃げ確定かよ!
依頼の報酬の件は、最悪の形で終わったが、とりあえず神話級美女エルフの体をいただく可能性だけは残した。あのままドアから2人を出て行かせてしまったら、ケイトの体をイジる楽しみが完全についえてしまう。そういう意味では結果的に良い選択だったと思いたい。
「契約書内に書いてある、本人の気持ちを尊重するっていうところが相当気になる。頼むから食い逃げするなよ」
「そ、そうね! ま、まあそんなことより次の依頼の話をしましょうね。Gランクパーティー粉砕のミョルニルには前に話したわね。結局、国王陛下に呪いをかけた張本人であるワイナルデュムを暗殺するしか、国王陛下を救う手だてがなくなってしまったの。だからセシルにはヴァルビリス帝国帝都ガイエスブルグに秘密裏で侵入をしてもらうことになるわ」
「オイラたちが3人で帝国に侵入すればいいんだね。だけど、今、両国は戦争中でしょ! 国境を越えることは可能なのかい? この状況で国境超えなんかしようとして見つかったら、スパイ容疑で拷問の上、殺されるんじゃ?」
「そういう事態になったらあなたたちの武力で押し通してよね。レベル300オーバーなら百万の軍隊に襲われても全然問題ないでしょう」
「そうだな。全く問題ないな」
武力で押し切れか。確かにそのとおりだな。国門を無理やり突破してもいいならばオレなら余裕で成功する。人選がオレがベストというのも頷けるというものだ。最初に自分のベースレベルをケイトにバラすのではなかったと思うが、神話級の美女に頼られるのは悪い気はしない。早くこのメギツネに惚れてもらい、パンパンと何度も何度も陰部を一物で貫きアヘ顔にし、神液でメチャメチャのグチャグチャにして、オレを騙した罪を心から後悔させてやるぜ! 見てろよケイト、ぐふふふふふ♪
「あとセシルはレベル的に《フライ/飛行魔法》の詠唱を出来るわよね? 侵入は空から入ればバレることはないわ。飛行魔法を使用できるベースレベル70以上の猛者なんて、国に1人か2人いるくらいだから」
ケイトの言うとおり、飛行魔法を使う事のできる者はほとんどいない。レベルの高いものが多いステュディオス王国でもオルドリッジ王、スタードラゴン傭兵団のダビド・エバンズ、レッドウィング傭兵団のルディ・アルベールくらいだ。ん? もう1人いたような気がするが……気のせいか。
「ガイエスブルグ市に侵入したあとの手はずはどうなっているの?」
「軍の諜報部隊がワイナルデュムの居所を調べたら、国立陸軍士官学院で上級軍団兵の教官をしていることが分かったの」
「上級軍団兵?」
「そうなの。ヴァルビリス帝国は貴族が軍隊の30%程をしめて中心を担い、そこに帝国民兵と冒険者、傭兵、奴隷階級の70%が加わって構成されているの。幼い頃から戦闘訓練を受けている貴族が軍隊の80%を占めているステュディオス王国とは構成が逆なのよ」
「あ~、オイラ前に戦場で帝国軍が戦うのを見たけど、やたらと数が多くて弱かったのは専門職業的軍人が多くなかったからなんだね!」
「ええ、それでね。もうすぐ帝国では市民階級の軍人募集がはじまることが分かったのよ。セシルには入団試験を受けて貰いたいの。帝国の軍編成では、上級、中級、下級軍に別れているのだけれど、なんとしても上級軍団兵の筆頭百人部隊に選出されてほしいの。上級筆頭百人部隊隊長になれたらパーフェクトね」
「選出されるにはどうすればいいんだ?」
「それは試験で圧倒的に優秀な成績をおさめればなれるはずよ。試験内容の詳細は掴めなかったのだけど、帝国の市民からの軍人採用試験は、過去の例から体力と武力のみになると思われるわ。だからレベル300代というセシルの圧倒的な強さを示せれば確実にトップで合格するでしょうね」
「店長なら……筆頭になれます」
「ホリーありがとう」
ホリーの頭をナデナデすると、とても嬉しそうな顔をしている。あとで全力奉仕をして、ひぃひぃ言わせてイカせてあげるからな、ぐふふふ♪ あっ!? 散々イカされてひぃひぃ言わされるのはオレか。あの穴に一物を突っ込むと、一往復も持たずに果ててしまう。
「……何でセシルは鼻を伸ばしているのよ。またいやらしい事を考えているんでしょう?」
ドキ! この女は油断も隙もないな。エロ察知能力が高くて敏感すぎるぞ。妄想するとすぐバレるな。
「ケイト君、君は人を何だと思っているのかね。エロ疑惑をすぐにかけるのは失礼の極みだよ」
「……ふ~ん、まあ、いいわ。筆頭になれなくても、上級百人部隊に入ることが出来れば成功よ。上級部隊のみワイナルデュムが直接指導することになっているから、チャンスがあったらターゲットを仕留めて欲しいの。その後はヴァルビリス帝国から離脱すること。なるべくならセシルが殺ったと周囲に気がつかれないほうがいいわね」
「話は分かった。だがオレはその依頼を受けることはできない。理由は地下迷宮でザイール・ボルティモアとの話をケイトも聞いていて知っているだろ。その依頼を達成するには時間がかかりすぎる。少なくとも数カ月はかかるだろう。オレにはオルドリッジの命よりも大事な使命があるからな」
「ええ、あなたの正体についてね。それは理解しているわ。それでも国王陛下の命を救って欲しいの。あなたの目的のためには国王陛下の圧倒的な武が必要なはずよ! 歴史的にも人類最強という国王陛下の武力を!」
「悪いがオルドリッジの武力をオレは必要としていない。男は無理なのだよ! オレはゲイではないからだ!」
「……そなたの正体とは何なのじゃ?」
好奇心に耐えられなかったのか、オレ専用雌奴隷ナディアがはじめて声を出し質問をしてきた。ずっと質問をしたそうにモジモジしていたからな。
「ナディア王女にも関わりのある話だ。ケイトは部屋を出ていってくれないか? ナディア王女にとても大切な、ラティアリア大陸の命運をかけた話があるのだ。その話の結果によってはこの依頼を引き受けても構わない」
「!? なんでこのお方が王女殿下だと知っているのよ? そうか……いつの間に鑑定をしたの? 気がつかなかったわ。いいわ、部屋を出ているから王女殿下と話をしなさい」
『ガチャッ』
ケイトは話をしやすいように、部屋から出て行った。応接室には粉砕のミョルニルとナディア王女の4人だけが残った。
《サイレント/消音》
『フォンッ』
これからナディア王女にする話は、ここにいる4人以外には絶対に聞かれたくないので、魔法で音を消した。相変わらず魔法は便利だね。
「それではそなたの秘密とやらを聞かせてもらおうかのう」
ーーー神の化身が自分だということ以外、魔龍討伐の話をする
「……ということだ。どうだ? 協力してくれるか? というよりナディアが協力してくれなかったら、ラティアリア大陸が滅ぶという現実が確定してしまう」
「話は分かったのじゃ。妾もラティアリア大陸の危機とあっては、協力を惜しまぬのじゃ。ところでどのようにして単独で龍を倒せるように妾たちを強くしてくれるのじゃ? 今の妾の武力では下級龍のファイアードレイクですら、倒すことも出来ないのじゃ」
その発言を聞き、パックとオレは目が合いニヤリと腹黒そうな薄笑いを浮かべた。この後のナディアの反応が楽しみだ、ぐふふふふ♪ ホリーはアレの事を分かっているので微妙に嫌そうな気配だ。オレの愛を得るためのライバルが増えてしまうからだ。
「その方法とは簡単だ。オレは神液吸収というスキルを神から授かっていてな。そのスキルでナディアが持つ能力の底上げをすることができるのだ」
「ほほう! 神液吸収というスキルはどのようなものじゃ? 具体的に申してみよ」
ナディアは椅子から立ち上がり、両手で軽くガッツポーズをして胸を小躍りさせる。日本と違い、普通にモンスターがいるこのラティアリア大陸では、自分が強くなるということは、誰もが望むことなので当然だった。しかも絶対に討伐不可能な龍を単独で倒せるようになるという話に、彼女は全身を炎のように燃え立たせている。
「……その方法とは」
「その方法とはなんじゃ! 早く言ってみよ!」
「オレがナディアと夜伽をし、お前の膣内に神液吸収をさせるのだ」
「………………………………は?」
ナディアはオレが言ったことを理解できず、瞳を最大まで大きく開け、半口を軽く開けたまま?? と呆けている。
「セシル! はっきり言わないとナディアは分からないみたいだよ! 分かりやすく具体的に言ってあげたらどう?」
「それもそうだな。具体的に説明すると、オレがナディアと夜伽をし、膣内に一物を突っ込みピストン運動をし、数千回、場合によっては数万回、膣内の奥深くに精液を中出しをする、ということだな。理解したか?」
「な、何じゃとお~!! そ、そ、そ、そ、そなたは脳みそが膿んでおるんじゃないのか! 意味を分かって言っておるのか! その様な破廉恥なこと!」
カァ~っとみるみる頬が紅潮し、あまりの恥ずかしさと怒りで頭から湯気がモクモクと出ている。まあ、ナディアは処女だからこうなってしまうのも無理はないな。ホリーも「はぁ~」とため息をつき、またもや呆れた顔でオレを見ている。
「ナディアは神聖娼婦制度を知らないのか? オレの持つスキルはそれの最上位なのだ。1回ナディアの膣内で中出しをするごとに、すべてのステータスが1%上昇するという強力な加護だ。国を守る者にとって弱さは罪だ。地下迷宮でアルフォンスを守れなかったお前はよく分かっているはずだ。尊敬する父も守れず、友人から預かったアルフォンスも守れなかった」
本当はナディアはレベル40台のサムライだから、全く弱くはないんだけど、ここまま押しに押せば夜伽まで持っていけそうだな。ぐふふふふ♪
「…………………………」
相当オレの言葉が効いているようで、ナディアは辛そうな顔をしている。実際、オレに命を救われたのも決断しやすい懸案事項になるだろう。パックは親指を立てて、もう1歩だ頑張れって応援をしている。
ホリーは冷静さを装っているが、よく見ると微妙だが眉間にシワが寄っている。オレの愛人が増えることがやはり嫌そうだ。すでに彼女にはアリシアやシャロン、クレタにエミリアのことも話している。自分への愛情が人数分減るから心配しているのかもしれない。彼女は自分が特別なエキストラスキルである《ヘリングロゥシーリング/数の子天井》、別名オナホールのスキル持ちだと知らない。だからオレが手放すことは絶対にないということが分からない。教えるかどうかは散々迷ったが、16歳の女の子が生まれながらにエロスキルを持っているなど、傷つくかもしれないからパックと相談して言わないことに決めたのだ。
「う、うわ~~~~~~~!!」
ナディアは強い自責の念からくる苦しさのあまり、両手で頭を抱えてうずくまってしまった。ちょっと、メンタルを追い込みすぎたかな。可哀想なことをしたかもしれないが仕方ない。だがラティアリア大陸を守るため、神との契約を達成するため、オレにお前の処女を差し出せナディア!
しばらく叫び声を上げ苦しんでいたナディアだったが、顔を上げると吹っ切れた表情をしていた。悟りの境地にでも至ったのだろうか。
「何度考えても、そなたの言葉は正しい。やはり自分が弱くては何も守れないし、自分の目標を達成することもかなわん。神液吸収というものを受け入れようと思うのじゃ」
よっしゃ! 思わず右手をあげて喜びそうになるのを強靭な100万オーバーの精神力で抑え込む。これでナディアのロリボディを好きにできる。身長は140cmもないが、年齢は18歳で大人だからハードなプレイも可能だ。そういえば年上だったな。このロリボディをどのようにいじって楽しもうかなぁ~、ぐふふふふ♪
「ナディアよ、よく決断をした! これでラティアリア大陸が救われる可能性が増したぞ。まだあと寵愛持ちが3人必要だがな。そろそろケイトを呼ぼう」
《サイレント/消音》解呪
『フォンッ』
消音魔法を解呪しケイトを呼び戻すと、魔龍討伐のパーティーにナディアが入ったことを教える。人類の歴史に確実に名を残すことになるナディアの魔龍討伐パーティー参加をケイトは両手を上げて喜んでいる。王女殿下はラティアリア大陸の歴史に永久に名を残す決断をされたと。
だが当の本人は微妙な顔をしていた。オレに女としてのすべてを捧げることになったからな。それをケイトは知らないわけだ。あとでこの事実を知られたら、オレはケイトに殺されるかもしれないな。いや、確実に殺されるだろう。
「それではこの依頼を受けることにした。早速明日にでもヴァルビリス帝国に向かい、ワイナルデュムを暗殺しに行くことにしよう」
「待てセシル。今回は父上の体力が限界まできているので、失敗が許されないのじゃ。妾もついていき、直接セシルをサポートすることに決めたのじゃ」
「はっ! 王女殿下、承知いたしました。それとは別に言いにくいことがあるのだけれど、この依頼はレベル5魔法の《フライ/飛行魔法》が使えないと厳しい依頼となるわ。だからホリーちゃんには別の依頼をお願いしたいのだけれど」
「!? 私は……店長と一緒……がいいです」
ホリーは涙目になりながら反論する。ケイトは困った顔になり、一度大きく呼吸をする。オレには一度も向けたことのない気品に満ちた、子供を優しくさとすような母性愛を感じる笑顔で、ホリーの目をまっすぐに見つめて話した。
「私は今、旧イシュタル王国の残党である元王族の派閥に命を狙われているの。イシュタル王国がなくなって随分経つのに、まだ彼らは復権を狙っているようなのよ。それで国王陛下の警護を厳重に固めている私が邪魔で命を狙われているから、ホリーちゃんに私の護衛を頼みたいのよ。それにホリーちゃんはキチンと武術を習っていないわよね。護衛の追加報酬で、私がウォーハンマーの扱いをちゃんと教えてあげるわ。あなたにとっても武術の基礎をしっかりと身につけ、強くなるチャンスよ。どうかしら?」
確かにこれはホリーにとって、武術の基礎を身につける好機だ。エロース神の聖寵の加護が強すぎるため、オレは武術を覚える必要がない。フィジカルパワーだけで相手を屠ることができるのだ。
「良いアイディアだね! ホリーにとって良い師匠に巡り会えたというところかな。オイラもセシルも武術を教えられないから、教えて貰うのもありなんじゃない? ケイトって妖精国でもあらゆる武具の使い手として有名だったしね。それに実は子供に甘いのでも知られ……むぐむぐ」
自分と同郷であるパックの口を塞ぎ、テメー余計なことを言うんじゃねぇ~っと、ケイトは殺意のこもった目でパックを見た。頬が赤く染まり、照れているのが少し可愛いな。
「店長……戻ってくるときまで……ケイトさんに鍛えてもらっています……気をつけて……行ってらっしゃいませ」
大変なメリットがあるがオレの側は離れたくない。という思いが強かったようだが、最終的には武力の向上を選んだようだ。冒険者としてやっていくためには、やはり武力が必要だ。いつまでもオレにおんぶに抱っこでは一人前とはいえない。離れ離れになるのは寂しいが、ケイトの教えを受けてさらに強くなれるという希望に満ちているホリーがそこにはいた。
門に近づくとロングソードを腰に下げている者が、オレの顔を見て目を見開き金魚のように口をぱくぱくさせた。
「うわっ! セ、セ、セ、セシル殿。フェレール軍に何かご用でしょうか?」
この警備兵は大将との戦いのときに、後ろで剣の訓練をしていた男だ。当然、オレの馬鹿げた魔力で召喚された《フレイムドラグーン/炎竜召喚》を見て、腰を抜かして失禁した者の1人だった。炎竜が口を開けただけでその圧力により小便を垂らしながら後方に吹っ飛んでしまった。
彼は警備の役割をこなそうと平面を装っているが、恐れのあまり顔が引きつり、膝がカタカタと大きく震えている。腰につけている剣もカタカタ音がする。門に掴まり、ギリギリのところで倒れないですんでいる。心底オレを恐れているようだ。
「おいおい、敵対している訳ではないのだから、そんなに恐れなくてもいいぞ。それともオレと敵対するのか?」
「ああああああっ! そのような事は絶対にいたしませぶっ、痛っ」
警備兵は動揺しすぎて舌を噛んでしまった。口端から血が出ているところを見ると派手に噛んでしまったようだ。ジョークのつもりで脅かすつもりはなかったが、結果的にこのあとの食事は血の味がすることだろう。
「セシル! 場を和ませて笑わすつもりだったのかもしれないけど、ジョークに全然なってないよ! グリフォンとかマンティコアは側にいるだけで死しか感じさせないじゃん!」
「店長……この人……可哀想です」
「悪い悪い。怯えさせる気はなかったんだよ。ケイトに取次を頼む」
「はははははははい! い、い、い、今すぐに取り次ぎまぶっ、痛っ」
警備兵はまた舌を噛んでしまった。
ただ、もう1人のスピアを持つ警備兵が殺意の視線を向けてきた。ケイト、と尊敬する元帥閣下を名前で呼び捨てにしたからだろうか? もう1人のスピアを持つ警備兵の額にビッと青筋が入った。この異世界では武力がすべてだ。文句があるなら強くなってから、スピア使いの警備兵は言う権利を行使するべきだろう。第一ケイトには下の名前で呼ぶ権利を、本人から直接もらっている。
そういえば、炎竜を解呪する時に約束をしたパフパフもまだしてもらっていない。色々とあってすっかり忘れていたが、後で会ったらきっちりやってもらわねばな。
「はい、元帥閣下はただ今外出されております。お戻りは未定となっております」
スピアを持つ警備兵は殺意のこもった視線で答えてきた。
「いないんじゃしょうがないね! セシルは報酬を早くもらいたいでかもしれないけど帰ろうよ! あまりオイラも……近づきたい相手でもないし」
パックは先日の事件以来、ケイトが苦手になってしまったようだ。妖精王に命令されたから仕方なくやっていたのだと、猛烈に言い合っていたからな。悪いことをしたなという引け目もあり、あまり彼女に会いたくないようだ。早く依頼書にサインしてもらって、彼女との関係を終わらせたいというのが本音だ。
「それじゃあケイトが戻るまで、応接室で待たせてもらえるか?」
「ええ~っ! 会わなくちゃ駄目?」
「当然だ。依頼達成料を貰わなくちゃならないからな。仕事をしたら対価が必要だろ、ぐふふ♪」
「……ピクッ」
ホリーもケイトの依頼料に問題があると思っているようだ。さっきから黙ってオレの手を強く握っている。みんなの気持ちは分かったが、そうはいかない。エルフのぱふぱふと夜伽は日本人の男の夢なのだから。もしも、日本に帰ることができたら、この素晴らしさを本に書いて出版してやるぞ。まっ、異世界は片道切符で帰ることはできないがな。
「それではバトン、セシル殿を応接室にお連れしてくれ。自分は膝が笑ってしまって動けんのだ」
「はっ、承知いたしました。……それではこちらにどうぞ」
微妙に殺気を放っているスピア使い警備兵バトンが先導して歩いていく。門から応接室の間にある通路でフェレール軍の者と何人もすれ違った。オレを見てビクッと恐怖する者、隠れる者、睨みつけてくる者、色っぽい目で見つめてくる女の子と様々な反応を示していた。凶悪な炎竜を召喚したことで、絶対的な強者と心底恐れられているのだ。
「こちらで少々お待ちください」
しばらくパックとホリーの3人で、バトンが用意した紅茶を飲みながら雑談していた。1時間ほどでケイトが戻ってきたと案内役のバトンから連絡があり、3つのマーカーが応接室に近づいてきたのが《探査マップ/神愛》に映った。
『ガチャ』
案内役のバトンとケイト、それにもう1人女性が入ってきた。女性はヴィザードを顔につけていて、顔が分からなくなっている。ヴィザードの女性はオレを見た瞬間、なぜか動きが止まり固まっていたが、何事もなかったように椅子に座る。
ヴィザードとは黒一色の仮面、目の所と口の所だけ穴が空いているという物だ。何かのオカルト宗教のような不気味さを放っている。《探査マップ/神愛》で調べると、なんとオレ専用雌奴隷ナディア王女だった。なんでこんなところにいるんだ?
「待たせちゃったわね。今日はとても高貴なお方をお連れしたから、言葉遣いには気をつけなさい」
「そんなことより酷いよケイト! オイラたちをランクSモンスターがいる部屋に置いて行っちゃうなんてさ! 死にそうな目にあったじゃないか!」
「あら? でも大丈夫だったじゃない。あなたたちの武力の高さを信じているからよ。一刻も早く国王陛下を解呪したくてね。ごめんなさいね」
しれっと当たり前じゃない、と言われてパックはぐっと般若のような顔をして黙り込んだ。ケイトは言葉では謝罪をしているが、悪いことをしたと思っていないのか全く感情がこもっていない気がする。だが神話級の美女が言うと、酷いことをされたのに許してしまう自分が憎い。
「それで国王はどうだったんだ? 呪いは解呪できたのか?」
「「「…………………………」」」
ケイトとナディア王女は下を向き、急激に落ち込んだ。2人のマーカーが「濃い青オレンジーー悲観」となっている。
ケイトはその質問に答える前に紅茶を一口飲み、一旦心を落ち着けた。
「はぁ~。ダメだったわ。この国においては最高クラスの聖騎士アリサ殿が、呪いの1つは解呪出来たのだけれど、国王陛下にかけられた呪いは2つだったのよ。地下迷宮のアイテムは通常、すぐに補充されるのだけど、浄化の宝珠は特別みたいなの。あれが次に発生するのは半年後だし、もうお手上げね」
「くぅ~」
ヴィザードをつけている女性ーーオレ専用雌奴隷ナディア王女が両拳をぐぐっと握りしめ、仮面の中から苦しむ声が聞こえる。自らの力のなさへの深い絶望を感じたようだ。
「そうか、それは残念だったな。だが請け負った依頼自体は、浄化の宝珠を得られたから成功だ。この依頼書に完了のサインをしてくれ」
そう言って冒険者ギルドで受け取った依頼書をケイトの前に差し出した。ところがその依頼書をケイトはぐっぐっぐっと押し戻してきた。
「え、何? どういうこと? 依頼を達成した証拠のサインを依頼主のケイトにしてもらわないと、オイラたち次の依頼を受けられないんだけど?」
パックが両手を左右に広げ、意味が分からないという顔をしている。
「何であなたたちは依頼を達成した気になっているのよ?」
「だって浄化の宝珠で国王が完全に解呪できなかったのは残念だけど、オイラたちは依頼を達成したんで終了でしょ?」
「その依頼書をもう1度よく見てみなさい」
「依頼書をみろ?」
頭の中で疑問符が乱舞するが、ケイトの言う通り依頼内容が書いてある羊皮紙を見直してみた。すると依頼内容は浄化の宝珠を得ることで達成すると書いてあるわけではなく、オルドリッジ王の呪いを解呪することで依頼達成と書いてあった。
「ええ! セシルこれって!? 聞いていた話と違う! ケイトは浄化の宝珠を得ることが依頼だと言ってたよね!」
「まずは浄化の宝珠が最優先だったから口頭でそう言ったけど。依頼書をちゃんと読まなかった方が不味いと思うけど」
「……ああ、ケイトは浄化の宝珠を得るのが依頼内容だと話していたのをはっきりと覚えている。地下迷宮での放置もそうだが、ケイトにはヤラレっぱなしだな。ケイトの依頼を止めるか」
「あわわわっ……店長……これから……どうしますか? 依頼放棄は……冒険者として……信用を……失ってしまいます」
冒険者として依頼の放棄は、著しく社会的な信頼を失うことになる。銀貨を支払えばいいというわけではない。冒険者には冒険者の流儀があり、守らなければならないルールがある。失敗なら仕方ないが、放棄はまずい。
それを思ってホリーとパックが不安そうにオレを見る。ケイトは紅茶を一口飲み、勝ち誇ったようににやりと笑うと、ヴィザードの仮面をつけている女性を見て頷いた。
「依頼は止めることは出来ないわよ。この依頼は最重要国家機密よ。国王陛下の呪いを解呪するまで付き合ってもらうしかないわね」
「どうするセシル。オイラは早くこの依頼を終わらせて、ケイトから開放されたいよ」
「私は……ちゃんと達成してから……次の依頼に……行きたいです」
「2人がそう言うなら反対はしない。それよりも依頼料はきっちり払ってくれるのだろうな? すでに払ってもらえるか疑わしいのだが」
「え? あ……ええ、もちろん真剣に考えているわ」
あ、怪しい。地下迷宮で置いてきぼりにした事とか、依頼内容が微妙にすり替わっていた事とか、依頼料を夜伽で払ってくれる話が本当なのか疑問が脳裏に出た。ケイトのあの顔を見ろよ! 絶対に食い逃げをする気満々な予感がする。ならばこちらも1つ条件を変更してやるか。
「よし、ならば条件を1つ追加しよう。それが叶うならば、すぐにでも引き受ける方向で検討してやろう」
「!? 引き受ける条件の追加ですって? それはどんな条件よ」
「……それは」
「それは何? あ、分かったわ。報酬の上乗せね。それなら金貨や魔剣が欲しいの? それとも魔道具がいいのかしら? 今回はオルドリッジ王のお命がかかっているから、私の権限で精一杯の報酬を出すわ。時間がないから早く言いなさい」
ナディアもケイトもホリーも、オレの次の一言を真剣な眼差しで待っている。きっと金貨や武器、魔道具などの追加報酬を期待していると思っているのだろう。
ただ1人、我が相棒パックだけはにやにやと薄ら笑いを浮かべている。そのにやけ顔、少しキモいぞパックよ。
「追加報酬とは……いますぐ隣の部屋でヤラせろケイト! 今すぐにだ!」
「「「ええええええ~っ!」」」
「あなた本当に頭の中にスケベな事しかないの!」
「ああ、その通りだ!」
『ガンッ』
求める報酬内容を聞き、ケイトとナディアはテーブルに頭を同時にぶつけてしまった。2人にかなりの衝撃を与えてしまったのか?
「さすがセシル、言うことが違うねぇ~。オイラ、この空気でそれを言える度胸はないよ、うひひひ♪」
「全くあなたは本当にしょうのない人ねぇ~。前にも言ったけど、私は好きでもない男とするのは無理なの。依頼で頑張るセシルを見て惚れたらいくらでもエッチをしていいわ」
オレは目をつむり、横を向いてケイトの話を全拒否をした。置き去りの件といい、いつの間にか依頼内容が変わっていた件といい、一撃くらいは返しておかないとまずい。今後の2人の関係で、ケイト上位のマウンティングが確定してしまう。
「……店長」
ホリーも少し呆れ顔だが、絶対にここは譲らん。この所の彼女の発言や態度、実際の行動をみて、依頼終了後に食い逃げされる率が高いとみたのだ。地下迷宮でなどボス部屋に置き去りだぞ、置き去り!
しばらく横を向いていると、困った顔をしていたケイトが大きくため息をついた。
「本当に困ったわ。今回の依頼はラティアリア大陸の平和のためにも必要なことなの。目的を達成したら必ず一度夜伽をするからそれでは駄目なの?」
「今がいい。今じゃなきゃ依頼は破棄する」
彼女とのギリギリの攻防にパックとホリー、ナディアはハラハラしながら様子を見ている。
『カサカサカサ』
すると突然ケイトがテーブルに置いてあった帝国の機密書類をトントンとまとめて鞄にしまいだした。ん? どうしたのだろう?
「どうして機密書類を鞄にしまうんだ?」
「まっ、そんなに嫌なのならば仕方ないわね。今回はあなたへの依頼を取り下げるわ。まだ、100%とはいえないけど、他にも達成できる冒険者はいるもの。残念だけどこれであなたに抱かれる可能性は0%になったわ」
鞄に機密書類をゆっくりとしたスピードで入れ終わった。そこでケイトとナディアが椅子から立ち上がり、ドアの方にこれまたゆっくりと歩き出した。
非常にまずいことになった。依頼がご破産になるとケイトに夜伽を迫る理由がなくなってしまう。神話級美女エルフは絶対にハーレムには入れたい存在だ。ここは仕方ないが、少し譲歩するしかないか。
「ちょっと待った! 分かったよ! 妥協すればいいんだろ! 冒険者ギルドの依頼書とは別に、達成報酬として書面でケイトの夜伽を1回と記述してくれ」
ドアに手をかけた所でオレが声をかけたので、そこでケイトは振り返った。悪そうな顔で勝ったと言わんばかりに、下品な薄笑いを口角に浮かべた。
くそぅ! この女には絶対に勝つことは出来ないのか。ヤバいぞ、このままではいつでも好きなようにこき使われてしまう~。しかも連続食い逃げ犯となりそうな予感がする。
「それで本当に良いのね。あとでやっぱり止めたっていうのは無しでお願いね……はい、契約書」
ケイトはその場で追加の契約書をさらさらと書いてオレに手渡した。書いてある内容を見ると、依頼の達成報酬としてケイト・フェレールとの夜伽を1回することって書いてある。ただし、本人の気持ちは尊重すること。って食い逃げ確定かよ!
依頼の報酬の件は、最悪の形で終わったが、とりあえず神話級美女エルフの体をいただく可能性だけは残した。あのままドアから2人を出て行かせてしまったら、ケイトの体をイジる楽しみが完全についえてしまう。そういう意味では結果的に良い選択だったと思いたい。
「契約書内に書いてある、本人の気持ちを尊重するっていうところが相当気になる。頼むから食い逃げするなよ」
「そ、そうね! ま、まあそんなことより次の依頼の話をしましょうね。Gランクパーティー粉砕のミョルニルには前に話したわね。結局、国王陛下に呪いをかけた張本人であるワイナルデュムを暗殺するしか、国王陛下を救う手だてがなくなってしまったの。だからセシルにはヴァルビリス帝国帝都ガイエスブルグに秘密裏で侵入をしてもらうことになるわ」
「オイラたちが3人で帝国に侵入すればいいんだね。だけど、今、両国は戦争中でしょ! 国境を越えることは可能なのかい? この状況で国境超えなんかしようとして見つかったら、スパイ容疑で拷問の上、殺されるんじゃ?」
「そういう事態になったらあなたたちの武力で押し通してよね。レベル300オーバーなら百万の軍隊に襲われても全然問題ないでしょう」
「そうだな。全く問題ないな」
武力で押し切れか。確かにそのとおりだな。国門を無理やり突破してもいいならばオレなら余裕で成功する。人選がオレがベストというのも頷けるというものだ。最初に自分のベースレベルをケイトにバラすのではなかったと思うが、神話級の美女に頼られるのは悪い気はしない。早くこのメギツネに惚れてもらい、パンパンと何度も何度も陰部を一物で貫きアヘ顔にし、神液でメチャメチャのグチャグチャにして、オレを騙した罪を心から後悔させてやるぜ! 見てろよケイト、ぐふふふふふ♪
「あとセシルはレベル的に《フライ/飛行魔法》の詠唱を出来るわよね? 侵入は空から入ればバレることはないわ。飛行魔法を使用できるベースレベル70以上の猛者なんて、国に1人か2人いるくらいだから」
ケイトの言うとおり、飛行魔法を使う事のできる者はほとんどいない。レベルの高いものが多いステュディオス王国でもオルドリッジ王、スタードラゴン傭兵団のダビド・エバンズ、レッドウィング傭兵団のルディ・アルベールくらいだ。ん? もう1人いたような気がするが……気のせいか。
「ガイエスブルグ市に侵入したあとの手はずはどうなっているの?」
「軍の諜報部隊がワイナルデュムの居所を調べたら、国立陸軍士官学院で上級軍団兵の教官をしていることが分かったの」
「上級軍団兵?」
「そうなの。ヴァルビリス帝国は貴族が軍隊の30%程をしめて中心を担い、そこに帝国民兵と冒険者、傭兵、奴隷階級の70%が加わって構成されているの。幼い頃から戦闘訓練を受けている貴族が軍隊の80%を占めているステュディオス王国とは構成が逆なのよ」
「あ~、オイラ前に戦場で帝国軍が戦うのを見たけど、やたらと数が多くて弱かったのは専門職業的軍人が多くなかったからなんだね!」
「ええ、それでね。もうすぐ帝国では市民階級の軍人募集がはじまることが分かったのよ。セシルには入団試験を受けて貰いたいの。帝国の軍編成では、上級、中級、下級軍に別れているのだけれど、なんとしても上級軍団兵の筆頭百人部隊に選出されてほしいの。上級筆頭百人部隊隊長になれたらパーフェクトね」
「選出されるにはどうすればいいんだ?」
「それは試験で圧倒的に優秀な成績をおさめればなれるはずよ。試験内容の詳細は掴めなかったのだけど、帝国の市民からの軍人採用試験は、過去の例から体力と武力のみになると思われるわ。だからレベル300代というセシルの圧倒的な強さを示せれば確実にトップで合格するでしょうね」
「店長なら……筆頭になれます」
「ホリーありがとう」
ホリーの頭をナデナデすると、とても嬉しそうな顔をしている。あとで全力奉仕をして、ひぃひぃ言わせてイカせてあげるからな、ぐふふふ♪ あっ!? 散々イカされてひぃひぃ言わされるのはオレか。あの穴に一物を突っ込むと、一往復も持たずに果ててしまう。
「……何でセシルは鼻を伸ばしているのよ。またいやらしい事を考えているんでしょう?」
ドキ! この女は油断も隙もないな。エロ察知能力が高くて敏感すぎるぞ。妄想するとすぐバレるな。
「ケイト君、君は人を何だと思っているのかね。エロ疑惑をすぐにかけるのは失礼の極みだよ」
「……ふ~ん、まあ、いいわ。筆頭になれなくても、上級百人部隊に入ることが出来れば成功よ。上級部隊のみワイナルデュムが直接指導することになっているから、チャンスがあったらターゲットを仕留めて欲しいの。その後はヴァルビリス帝国から離脱すること。なるべくならセシルが殺ったと周囲に気がつかれないほうがいいわね」
「話は分かった。だがオレはその依頼を受けることはできない。理由は地下迷宮でザイール・ボルティモアとの話をケイトも聞いていて知っているだろ。その依頼を達成するには時間がかかりすぎる。少なくとも数カ月はかかるだろう。オレにはオルドリッジの命よりも大事な使命があるからな」
「ええ、あなたの正体についてね。それは理解しているわ。それでも国王陛下の命を救って欲しいの。あなたの目的のためには国王陛下の圧倒的な武が必要なはずよ! 歴史的にも人類最強という国王陛下の武力を!」
「悪いがオルドリッジの武力をオレは必要としていない。男は無理なのだよ! オレはゲイではないからだ!」
「……そなたの正体とは何なのじゃ?」
好奇心に耐えられなかったのか、オレ専用雌奴隷ナディアがはじめて声を出し質問をしてきた。ずっと質問をしたそうにモジモジしていたからな。
「ナディア王女にも関わりのある話だ。ケイトは部屋を出ていってくれないか? ナディア王女にとても大切な、ラティアリア大陸の命運をかけた話があるのだ。その話の結果によってはこの依頼を引き受けても構わない」
「!? なんでこのお方が王女殿下だと知っているのよ? そうか……いつの間に鑑定をしたの? 気がつかなかったわ。いいわ、部屋を出ているから王女殿下と話をしなさい」
『ガチャッ』
ケイトは話をしやすいように、部屋から出て行った。応接室には粉砕のミョルニルとナディア王女の4人だけが残った。
《サイレント/消音》
『フォンッ』
これからナディア王女にする話は、ここにいる4人以外には絶対に聞かれたくないので、魔法で音を消した。相変わらず魔法は便利だね。
「それではそなたの秘密とやらを聞かせてもらおうかのう」
ーーー神の化身が自分だということ以外、魔龍討伐の話をする
「……ということだ。どうだ? 協力してくれるか? というよりナディアが協力してくれなかったら、ラティアリア大陸が滅ぶという現実が確定してしまう」
「話は分かったのじゃ。妾もラティアリア大陸の危機とあっては、協力を惜しまぬのじゃ。ところでどのようにして単独で龍を倒せるように妾たちを強くしてくれるのじゃ? 今の妾の武力では下級龍のファイアードレイクですら、倒すことも出来ないのじゃ」
その発言を聞き、パックとオレは目が合いニヤリと腹黒そうな薄笑いを浮かべた。この後のナディアの反応が楽しみだ、ぐふふふふ♪ ホリーはアレの事を分かっているので微妙に嫌そうな気配だ。オレの愛を得るためのライバルが増えてしまうからだ。
「その方法とは簡単だ。オレは神液吸収というスキルを神から授かっていてな。そのスキルでナディアが持つ能力の底上げをすることができるのだ」
「ほほう! 神液吸収というスキルはどのようなものじゃ? 具体的に申してみよ」
ナディアは椅子から立ち上がり、両手で軽くガッツポーズをして胸を小躍りさせる。日本と違い、普通にモンスターがいるこのラティアリア大陸では、自分が強くなるということは、誰もが望むことなので当然だった。しかも絶対に討伐不可能な龍を単独で倒せるようになるという話に、彼女は全身を炎のように燃え立たせている。
「……その方法とは」
「その方法とはなんじゃ! 早く言ってみよ!」
「オレがナディアと夜伽をし、お前の膣内に神液吸収をさせるのだ」
「………………………………は?」
ナディアはオレが言ったことを理解できず、瞳を最大まで大きく開け、半口を軽く開けたまま?? と呆けている。
「セシル! はっきり言わないとナディアは分からないみたいだよ! 分かりやすく具体的に言ってあげたらどう?」
「それもそうだな。具体的に説明すると、オレがナディアと夜伽をし、膣内に一物を突っ込みピストン運動をし、数千回、場合によっては数万回、膣内の奥深くに精液を中出しをする、ということだな。理解したか?」
「な、何じゃとお~!! そ、そ、そ、そ、そなたは脳みそが膿んでおるんじゃないのか! 意味を分かって言っておるのか! その様な破廉恥なこと!」
カァ~っとみるみる頬が紅潮し、あまりの恥ずかしさと怒りで頭から湯気がモクモクと出ている。まあ、ナディアは処女だからこうなってしまうのも無理はないな。ホリーも「はぁ~」とため息をつき、またもや呆れた顔でオレを見ている。
「ナディアは神聖娼婦制度を知らないのか? オレの持つスキルはそれの最上位なのだ。1回ナディアの膣内で中出しをするごとに、すべてのステータスが1%上昇するという強力な加護だ。国を守る者にとって弱さは罪だ。地下迷宮でアルフォンスを守れなかったお前はよく分かっているはずだ。尊敬する父も守れず、友人から預かったアルフォンスも守れなかった」
本当はナディアはレベル40台のサムライだから、全く弱くはないんだけど、ここまま押しに押せば夜伽まで持っていけそうだな。ぐふふふふ♪
「…………………………」
相当オレの言葉が効いているようで、ナディアは辛そうな顔をしている。実際、オレに命を救われたのも決断しやすい懸案事項になるだろう。パックは親指を立てて、もう1歩だ頑張れって応援をしている。
ホリーは冷静さを装っているが、よく見ると微妙だが眉間にシワが寄っている。オレの愛人が増えることがやはり嫌そうだ。すでに彼女にはアリシアやシャロン、クレタにエミリアのことも話している。自分への愛情が人数分減るから心配しているのかもしれない。彼女は自分が特別なエキストラスキルである《ヘリングロゥシーリング/数の子天井》、別名オナホールのスキル持ちだと知らない。だからオレが手放すことは絶対にないということが分からない。教えるかどうかは散々迷ったが、16歳の女の子が生まれながらにエロスキルを持っているなど、傷つくかもしれないからパックと相談して言わないことに決めたのだ。
「う、うわ~~~~~~~!!」
ナディアは強い自責の念からくる苦しさのあまり、両手で頭を抱えてうずくまってしまった。ちょっと、メンタルを追い込みすぎたかな。可哀想なことをしたかもしれないが仕方ない。だがラティアリア大陸を守るため、神との契約を達成するため、オレにお前の処女を差し出せナディア!
しばらく叫び声を上げ苦しんでいたナディアだったが、顔を上げると吹っ切れた表情をしていた。悟りの境地にでも至ったのだろうか。
「何度考えても、そなたの言葉は正しい。やはり自分が弱くては何も守れないし、自分の目標を達成することもかなわん。神液吸収というものを受け入れようと思うのじゃ」
よっしゃ! 思わず右手をあげて喜びそうになるのを強靭な100万オーバーの精神力で抑え込む。これでナディアのロリボディを好きにできる。身長は140cmもないが、年齢は18歳で大人だからハードなプレイも可能だ。そういえば年上だったな。このロリボディをどのようにいじって楽しもうかなぁ~、ぐふふふふ♪
「ナディアよ、よく決断をした! これでラティアリア大陸が救われる可能性が増したぞ。まだあと寵愛持ちが3人必要だがな。そろそろケイトを呼ぼう」
《サイレント/消音》解呪
『フォンッ』
消音魔法を解呪しケイトを呼び戻すと、魔龍討伐のパーティーにナディアが入ったことを教える。人類の歴史に確実に名を残すことになるナディアの魔龍討伐パーティー参加をケイトは両手を上げて喜んでいる。王女殿下はラティアリア大陸の歴史に永久に名を残す決断をされたと。
だが当の本人は微妙な顔をしていた。オレに女としてのすべてを捧げることになったからな。それをケイトは知らないわけだ。あとでこの事実を知られたら、オレはケイトに殺されるかもしれないな。いや、確実に殺されるだろう。
「それではこの依頼を受けることにした。早速明日にでもヴァルビリス帝国に向かい、ワイナルデュムを暗殺しに行くことにしよう」
「待てセシル。今回は父上の体力が限界まできているので、失敗が許されないのじゃ。妾もついていき、直接セシルをサポートすることに決めたのじゃ」
「はっ! 王女殿下、承知いたしました。それとは別に言いにくいことがあるのだけれど、この依頼はレベル5魔法の《フライ/飛行魔法》が使えないと厳しい依頼となるわ。だからホリーちゃんには別の依頼をお願いしたいのだけれど」
「!? 私は……店長と一緒……がいいです」
ホリーは涙目になりながら反論する。ケイトは困った顔になり、一度大きく呼吸をする。オレには一度も向けたことのない気品に満ちた、子供を優しくさとすような母性愛を感じる笑顔で、ホリーの目をまっすぐに見つめて話した。
「私は今、旧イシュタル王国の残党である元王族の派閥に命を狙われているの。イシュタル王国がなくなって随分経つのに、まだ彼らは復権を狙っているようなのよ。それで国王陛下の警護を厳重に固めている私が邪魔で命を狙われているから、ホリーちゃんに私の護衛を頼みたいのよ。それにホリーちゃんはキチンと武術を習っていないわよね。護衛の追加報酬で、私がウォーハンマーの扱いをちゃんと教えてあげるわ。あなたにとっても武術の基礎をしっかりと身につけ、強くなるチャンスよ。どうかしら?」
確かにこれはホリーにとって、武術の基礎を身につける好機だ。エロース神の聖寵の加護が強すぎるため、オレは武術を覚える必要がない。フィジカルパワーだけで相手を屠ることができるのだ。
「良いアイディアだね! ホリーにとって良い師匠に巡り会えたというところかな。オイラもセシルも武術を教えられないから、教えて貰うのもありなんじゃない? ケイトって妖精国でもあらゆる武具の使い手として有名だったしね。それに実は子供に甘いのでも知られ……むぐむぐ」
自分と同郷であるパックの口を塞ぎ、テメー余計なことを言うんじゃねぇ~っと、ケイトは殺意のこもった目でパックを見た。頬が赤く染まり、照れているのが少し可愛いな。
「店長……戻ってくるときまで……ケイトさんに鍛えてもらっています……気をつけて……行ってらっしゃいませ」
大変なメリットがあるがオレの側は離れたくない。という思いが強かったようだが、最終的には武力の向上を選んだようだ。冒険者としてやっていくためには、やはり武力が必要だ。いつまでもオレにおんぶに抱っこでは一人前とはいえない。離れ離れになるのは寂しいが、ケイトの教えを受けてさらに強くなれるという希望に満ちているホリーがそこにはいた。
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