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第2章

第27話 エディルネの亡霊

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オレたち4人が乗るエレベーターは目的の地下迷宮5階層に着いた。魔法仕様なだけあり、音が一切なくとても快適であった。だが臭いは酷い! 余程のことがない限り使用されないので、カビ臭の濃度が他より濃くむせそうだ。サラマンダーを倒せるパーティーとなるとランクSの冒険者を6人も集めなくてはならず、ほぼ不可能に近いだろう。

エレベーターを降りると前方に通路が一直線に延びている。1階層よりも高さも横幅も遥かに大きな通路だ。大型モンスターが10体現れ戦闘を開始しても問題がない。つまり広い通路はドデカイモンスターが出ますよ、と予言しているようなものだ。《探査マップ/神愛》で確認すると1つ1つの玄室内も巨大なモンスター仕様となっており広さが10倍はある。その分、玄室数が上階層よりも少なくなっているようだ。

「ここからどのような道順で行けばいいんだ?」

「ここからは一本道よ。真っ直ぐ10キロメートルほど行くと、突き当たりが丁字路になっているの。その丁字路の正面の鉄扉が6階層まで続く階段がある玄室となっているわ」

「承知~。こんな深くまで潜ったのは初めてだから、オイラワクワクするよ! 上の階層とは雰囲気が違うね~。そう……殺意の濃度が高いと言うか、頭の中にさっきから警告音が鳴って止まらないよ!」

「私……怖くて怖くて……吐きそう……です」

「まっ、オレがいるから問題ないぞ。ほらっ、手を繋ごう」

恐怖で顔色の悪いホリーと手を繋いでから、歩いて直線的通路をどんどん進んでいく。《探査マップ/神愛》でモンスターへの注意を怠らないのは勤勉な日本人の性分といったところだろう。この階層だとケイトは問題ないかもしれないが、モンスターから奇襲を受けた場合、ホリーは死ぬ可能性があるからだ。まあ、オレがいるから先制攻撃かけられるわけがないがな。

ん? 《探査マップ/神愛》に赤オレンジーー攻撃色が、ざっと見て後方に50人、少し前方に50人が隠れている。後方のヒューマンはオレたちが進んだ分だけ後をついてきており、一定の距離を保って気づかれないようにしているようだ。待ち伏せられて前後で挟まれている。

●名前:ザイール・ボルティモア
●年齢:38歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市在住、元エディルネ王国エディルネ軍元帥
●身長/体重:192/94
●髪型:銀髪ショート
●瞳の色:青色
●経験:あり
●性格:N
●状態:攻撃
●ベースレベル:65
●職業:レベル35サムライ
●HP:2504
●MP:2496
●腕力:1270
●体力:1234
●敏捷:1214
●知力:1256
●魔力:1240
●器用度:1244
●スキル
暗黒魔法4、両手剣術5、剣術4、弓術5、ヘラクレスの加護
●装備
ミスリル製のツーハンデッドソード+2、ミスリル製のヘルム+3、ミスリル製のブレストプレート+3、ミスリル製のガントレット+3、ミスリル製のブーツ+2、ミスリル製のマント+2

1番強いやつのマーカーを確認すると、やはり情報屋グルキュフの情報通り、エディルネ国の残党だ。なかなか強いな。他の連中も見てみる。上位職もポツポツいるし、魔龍の侵攻から生き延びた精鋭なのだ。

……あれ? 1つだけポツンと離れているマーカーがある。マーカーの色は濃い青赤ーー監視だ。どうやら誰かが元エディルネ国の残党を監視しているようだ。マーカーをタップすると……おお!

●名前:アンナ・オルテラ
●年齢:17歳
●種族:ヒューマン
●所属:ステュディオス王国フェロニア市在住、諜報部隊オプスデイ
●身長/体重:162/48
●髪型:黒髪カジュアルショート
●瞳の色:黒色
●スリーサイズ:80/55/82
●カップ/形:D/円錐型
●経験:セシルのみ、神液吸収38回、第1次進化まであと62回吸収
●性格:N
●状態:平常
●ベースレベル:60
●職業:レベル30忍者
●HP:2298
●MP:2278
●腕力:1144
●体力:1154
●敏捷:1168
●知力:1140
●魔力:1138
●器用度:1158
●スキル
忍術4、剣術4、盗賊技能3、弓術5
●装備
銀製の忍者刀+3、銀製の頭巾+3、銀製の忍び装束+3、銀製の手甲+2、銀製の足袋+3、銀製のクナイ+2

幸が薄そうな女忍者アンナだ。彼女の武器、ロケットおっぱいは揉み心地が最高だったぜ。膣内に神液を思う存分に出しまくってスッキリさせてもらったな。ぐふふ♪

こんなところで何をしているのだろう? 前は男の楽園の調査だったようだが、今度は元エディルネ国残党の監視を命じられているのか?

「ケイト、ちょっと待て。前後で100名ほどの敵に囲まれている」

「やはり来たわね。セシルよろしくね♪」

やはり……か。ケイトは元エディルネ国の残党が迷宮内で襲いかかってくることを知っていたな。そしてその処理も、オレに押し付けようとしていたわけか。
このメス猫が調子にのりやがって! あとで後ろからパンパン突きまくるどころか、キロク師匠に教わった縄を駆使して恥ずかしい目にあわせてやるぞ♪ 縄が股を閉じらないように強制し、さらけ出された陰部にピストン型エルティコ1号を刺して喘がせてやるか。まっ、最後は神液でそのスレンダーなエロい体を神液でグチャグチャのドロドロにしてやるのだがな。ぐふふふふふ♪

「ケイト、よろしくってお前契約違反だぞ。分かっているのか? 追加料金を払って貰わないと困……」

そう言いかけたとき、隠れていた残党たちが現れ、一気にオレたちを逃げられないように囲んだ。先頭にいるボルティモア将軍が奥から出てくる。

「クククククククッ、馬鹿な女だ。ずっと狙われているのも知らずに、ノコノコ3人ぽっちの戦力で現れるとはな」

「ボルティモア将軍か。自分たちが生き残るためなら、なんでもするっていうのか?」

ボルティモア将軍という名を聞き、眉がピクッと動きスーッと目が細くなった。

「そうか、知っているなら話が早い。フェレールを殺すだけで、旧王族派に取り立てられるのだからな。お前を殺して勢力拡大の足掛かりとさせてもらうぞ。これほどの美女とは知らなかったから、少しもったいないが仕方ない」

「あらっ? あなたは意外に情報力がないのね。ボルティモア将軍は本当に私が最大戦力を連れてこなかったとお思い?」

「なんだと! 他にも兵士がいるのか?」

ボルティモア将軍は周囲にいる斥候に確認させると、横に首を左右に振る。それを確認し、ニヤッと薄笑いを浮かべる。

「なんだ、嘘ではないか。ヌケヌケと嘘を言って焦らせおって」

「ケイトのいう最大戦力がここにあるという話は嘘じゃないよ! セシルはパルミラ教皇国に降臨したエロース神様に従者として、魔龍討伐に選ばれた勇者なんだよ!」

「「「なっ!」」」

パックの爆弾発言に周囲の者は一斉にオレ見た。ケイトも劇画風な顔になっている。いくら神話級美女でも、そのような顔をしてはいけませんぞ。ギャグにしかならないのだ。

「ば、馬鹿な! 貴様……いやあなた様はエロース神様が編成されたといわれる魔龍討伐隊のメンバーだというのか!」

ここまでパックに暴露されては、もう後に引けんだろう。全くパックのやつめ、口が軽すぎるぞ。あとでお仕置きだ。

「そうだ。オレはベースレベル305のセシルだ。なぜかオレの名が神の化身という風に噂されてしまっているがな。エロース神様の討伐隊で初めての従者がセシルということで誤って情報が流れているのだろう」

話を少し変えないとまずい。せめてオレが神の化身ということがバレるのだけは避けなくてはいけない。

「レベル305だと! オルドリッジよりもレベルが遥かに高いではないか。そんなことが可能なのか!」

「パックの言うことは本当だ。言い合いは無用だ。やり合えば武人のお前なら真実が分かるだろう」

オレはクイクイッと手で向かってこいとゼスチャーをして挑発した。ボルティモアは大きく一度呼吸をすると、死地に赴く軍人のように真剣でけがれの無い目で直視してきた。

「やり合えば分かる……か。その通りですな。それでは全力でいきますぞ。ウォオオオオオオオオオオ!」

ボルティモア将軍は背中に背負っていた自慢のツーハンデッドソードを抜いて襲いかかってきた。

~~~戦闘開始

◎ボルティモア×1(1)

ボルティモアは背中に背負っていたツーハンデットソードで斬りかかってくる。イニシアティブは当然オレが取ったが待機を選択し、ボルティモアの攻撃をデコピンで弾くことにした。それがオレの実力が1番分かるというものだ。。彼はレベル26上級職サムライだから1回の攻撃は10発だ。

『ビュビュビュビュズバッ!ビュビュビュビュビュン!』

『ビィシシシシビィシ!シシシシシィ!』

ボルティモア将軍の攻撃は10発全弾命中し、その内の1発はクリティカルヒットが炸裂し、合計1760のダメージをオレに与えた。だがオレの198007の防御力により打ち消された。

『ガランッ』

ボルティモアは驚愕の表情を浮かべ、自分との実力の差に驚いて持っていたツーハンデッドソードを手から落とした。

~~~戦闘終了

「なっ! レベル26サムライである私の剣撃を指で弾くなど信じられん。だがセシル様がエロース神様の従者というのは真実のようだ……ならばこうだ!」

『ドガッ』

ボルティモアはオレの前で膝まづくと、頭を石畳に打ちつけ土下座をする。強く石畳に打ちつけすぎて額から血が吹き出した。部下たちもオレたちの周囲で土下座をすると、全員が涙を流しはじめた。

「セシル様、どうか……どうか憎き魔龍を倒し、我らの同胞……守ることができなかった民の恨みを晴らしてください!」

ボルティモアの部下たちは頭を地に何度も何度も打ちつけた。誇りある武人たちがそれを捨て、魔龍を復讐のために倒してほしいと号泣しながら懇願している。多くの民の死、仲間の死、守るべき王の死。彼らは魔龍の侵攻により、想像もつかないくらいの悲劇に見舞われてきたのだ。

「セシル、この人たちはよほど酷い地獄を見てきたみたいだ。まさか土下座をするなんてね!」

日本では土下座は最高クラスのお詫びとなっている。パックが言うには、ラティアリア大陸でも土下座は首を相手に預けるという意味合いもあるそうで、最も尊き謝罪となるのだそうだ。

「そこまでしなくてもいいぞ。お前たちが土下座しようがしまいが、魔龍を討伐することはエロース神様の命令だからな。ただ、国を失うという不幸な運命に弄ばれてしまった者たちが、元王族の権力を取り戻すために利用されるということは可哀想だ。そこでお前たちに神殿騎士という仕事を与えよう。エロース神殿に仕えるがいい」

「ははっ! お気づかい感謝いたします! 我らはセシル様に命をかけて忠誠を誓います!」

「「「セシル様に我らの剣と忠誠心を捧げます!」」」

いやいや、命までかけなくていいから。今まで魔龍に国を蹂躙されて辛かったのだろうから、これからは気楽にやってほしいものだよな。

「まあ、気楽に仕えてくれよな。あ、そうだ。お前たちに聞きたいことがあったんだ。前に派遣されていった魔龍討伐隊の者とは会って話したりしたのか?」

地に頭を押しつけて土下座していたボルティモアだったが、前魔龍討伐隊のことをきかれて頭をあげた。

「ふ~む、魔龍討伐隊……ですか。彼らはエディルネ国首都アデルにしばらくとどまっていたようです。魔龍の魔力に反応し、増殖してバレンシアの森に溢れていたモンスターを倒し国民を助けてくださいました。彼らは強かったーーですが、通常の龍ともまともに戦えるほど強くはないだろうと、実際に見てそのように感じておりました。なにせ龍討伐はヒューマンの長年の夢であり、絶対に不可能なことでございます。例えるなら神を倒そうとするようなものです」

「龍なんかセシルしか倒せるわけないよ! 普通のヒューマンには無理無理!」

確かに圧倒的強者であり、歴史的にも2位をレベル30ほど差をつけていたオルドリッジでさえ、脅威度ランクSのモンスターを倒すのが関の山であった。しかも疲弊して弱っていた状態でだ。

「魔龍討伐隊と最後に会った時、魔龍討伐の準備ができたのでエディルネ国から出ると言っておりました。北上して魔龍の住処へ向かったようです。その後は数ヵ月たっても彼らから音沙汰がなく、魔龍が起こすモンスタースタンピートもなくなることはありませんでした」

「モンスタースタンピートがおさまらなかったってことは、魔龍討伐に失敗したってことか」

「はい、皆が討伐に失敗したのだと思いはじめた頃、その魔龍が突如エディルネ国最北の街メルローズに現れたのです。そして、メルローズは暗黒ブレス1発で壊滅状態に追いやられました。唯一メルローズから脱出した兵士が、そのように証言しました。ただその兵士もそれを伝えた直後に絶命してしまいました。
今ではエディルネ国にあるすべての街が破壊されて皆散り散りになってしまい……くくくっ」

エディルネ国の者たちのマーカーを見ると、怒りと悔しさ、自分自身への不甲斐なさや故郷が滅亡した喪失感と様々な思いでいるようだ。祖国が滅びるって、どんな気持ちなのだろうか? 日本が他国に攻め込まれて滅ぼされるなど考えたこともない。全く分からないが想像を絶する悲しみであることは間違いないであろう。

それに龍という通常はヒューマンで対処することができない絶対的な存在に、ただただ諦めるしかないといったところだろう。巨大な自然災害みたいなものだ。

「まあ、魔龍討伐はオレたちに任せておけ。倒したらその後もう一度、エディルネ国を彼の地に再興すればいい」

「なっ! なんと!」

エディルネ国の再興ーーその言葉を聞き、皆の目が変わる。その様なことを考えたことはあっても、魔龍の強さを見たあとでは叶うことのない夢だと、ボルティモアをはじめ、全てのエディルネ王国の者たちは完全に諦めていたのだ。

「オイラが見るに……エディルネ国王族の衣装を着ている人がいないから、ここには王族はいないようだけど、魔龍から逃げて生き残った王族はいないの?」

「はい、魔龍とその眷属たちから逃亡中に王や王子、王女とも散り散りになってしまい、その後の行方が分からないのです。生きているのかどうかさえも。
しかし、ほ、本当に……そのようなことが……まさか……夢にまで見た祖国が再興できると」

「魔龍は確実に倒すからそのつもりでいろ。王族に関しては気長に探すしかないな。ラティアリア大陸中にあるエロース神殿の力を使って探させよう。一緒に探せばきっと見つかるさ。だから元気出せよ」

「今のセシルの強さを見たでしょ! セシルは脅威度ランクSSの龍を一撃で倒した強者なんだよ! そのセシルがいるんだから、どんな困難も大丈夫だよ!」

パックの力強い言葉にエディルネ国の騎士たちのマーカーが、オレンジーー期待と、黄色ーー喜びに変わった。

「はっ! セシル様パック様、エディルネ国再興にご協力いただき感謝します!」

「そういうことだから、お前たちはすぐに神殿に行き、神殿騎士としてしばらく頑張っていてくれ。国再興の計画もたてておくのだぞ。さあ行け、オレはこれから行くところがあるのだからな」

「「「ははっ! それでは失礼いたします」」」

一斉に去るエディルネ国の者たち。さすが軍の精鋭だけあり行動が早い。あっという間に通路を抜け、階段を上がっていった。その後ろ姿は未来に希望が持てるようになったためか軽い足取りに見えた。異世界に来てたくさんの善行をしたが、この件が一番良かった。

「悪い人は滅していくとセシルは言ってたのに、彼らは助けるんだね!」

「そうだな、通常なら剣を突きつけてきたやつらだから滅しても良かったんだがな。故郷に2度と帰ることができないという気持ちは共感できるのだよ」

「そっか~、セシルはむぐむぐ……」

「それは他言無用で言ってはいけないぞ、パック」

オレは日本から来た片道切符の転移者だ。叶うなら日本に帰りたいとも思うが、ラティアリア大陸に大切な女の子が出来たから、生涯をこちらで暮らすことも悪くないなと今は考えているのだ。それに……もうすぐ異世界物の代表的な神話級美女エルフを抱けるしな。ぐふふふふふ♪ 
お、後ろからエロい目で見てただけなのに、ケイトの体がビクッとなったのは、第六感がいい女の子というところか。寒気でもしたのだろう。

「予定外に時間を食っちゃったわね。さぁ、急いで浄化の宝珠を取りに行くわよ」

「そうしよう」

「承知~」

「……はい……頑張ります」



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