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第1章
第1話 聖女
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「……ん……ここは……そうだ。オレは異世界に飛ばされたんだった」
ゆっくりと目を開けると、オレは短い草の生い茂る中で、大の字に寝転がっている。森の中なのか薄暗い場所のようだ。周囲を見渡すと木がたくさんある。太陽? と似たようなものも、木々の隙間から見えるので、地球とそんなに環境は変わらないようだ。
今、オレがいる場所はどこなのだろう? 山などの奥深くで、人里から離れているのだろうか? だとしたらまずは人を探さなくてはならない。この世界のことを何一つ知らないからだ。
大きく深呼吸をすると、空気は東京の薄汚れたものと違い、心地良い空気だ。肺にスーッと染み渡る。
……あ、視線を左に動かすと、なにか見えるな。石が円形に置かれ、美しい女神が壺を持っており、壺からコポコポ水が流れている良い感じの噴水だ。噴水のそばに長ベンチもある。
!? 長ベンチに人が座っている。異世界に来て早速、人に会えるとはホッと安堵した。
その人は、オレの存在に気がついたようで、なになに? というふうにしばらく伺っていた。が、ついに決心したのか、立ち上がって近づいてきた。
背筋がしっかりと伸び、歩き方が優雅でテンポが良い。両手は下腹の前で組んでいる。器用に歩けるものだ。視線を動かし、よく見ると修道服を着た女の子だった。
オレの目の前まで来ると、首を傾げながらにこりと微笑む。
「あなたはなぜここにいるのですか? ここは神殿の最奥にある神域でございますわ。わたくしとお付きの世話係以外は、入ることができないことになっているのです」
女の子の声は、まるで楽器でも奏でるような、澄みきった天使のような美声だった。声を聞くだけでこの娘の優しいお人柄が分かる。
娘はそう言うと困った顔になり、両手を背中で組む。胸の形がくっきりと出る。細身の女性なのに意外と大きい。女の子はオレに近づきすぎて、微妙にパンツが見えているのだが、全く気がついた様子がない。白だったよ、ぐふふ♪ いい眺め~。
少し女の子のパンティを楽しんでいたが、女の子の質問には何も答えず大の字のまま寝ていた。いくらなんでもこの状態でいるのは失礼なので、起きようとするが、起きることができない。それどころか体に全く力が入らなくなっていた。
な!? なんだと! これはどういうことだ! 体も動かないし話すこともできない。痛みはないが体のあらゆる場所が痺れているみたいだ。おいおいエロース神様しっかりしてくれ。
VRMMOゲームにありがちなバグだろ。リアルだから再起動とかないだろうし、いきなり困ったことになった。
声をかけられて振り向くことも、返事もしないオレを女の子はしばらくみていたが、様子がおかしいことに気がついた。
「もしかしたら、あなたは体が動かないのかしら?」
オレはそうだと目で強く訴えかける。幸いにして目だけは自由に動く。
これじゃ不便だし、思っていることが相手に伝わらない。自分の意思を表現できないっていうのはイライラするものだ。
女性はオレの目をしばらく見ていたが、オレが全く動けないことを確信したようだった。
「少々お待ちいただけますかしら? 御付きのものを連れてきますわ」
女の子はそう言ってこの場を離れた。一人残されたオレは、なぜ、体が全く動けないのかを調べることにした。エロース神様は、質問があったらサポートに聞けと言ってたよな。
《(ステータス)》
よしウィンドウが出てきたな。え~、サポートはどこだ……あった。
《(サポート)》
(なぜ体が動かないのか、体の状態がどうなっているかを教えて?)
ミニウィンドウが立ち上がって文字が現れた。
【セシルの魂が、神の化身の体に馴染むのに少し時間がかかる。そのため全身が麻痺状態になっている。時間が経過すると自然に解消される】
マジかよ! 動けないんじゃ何もできないだろ。それに女の子は、ここを神域って言ってたけど侵入しちゃってオレは大丈夫なのか?
女の子は御付きのものを連れてくるとか行ってたな。まさか衛兵とか連れてきて捕まるとかないよな。異世界に来た早々牢獄は嫌だ。日本でも警察のご厄介になったことはないのにな。一応、万が一に備えて調べておこう。
《(サポート)》
(この国で神域に侵入した者がいたとき、刑罰は何があるのかを教えて?)
【パルミラ教皇国は宗教を中心に国が成り立っている。そのため神域は信仰の最重要な場所となっている。許可なく神域へ侵入した場合、例外なく処刑となっている。処刑されたあと、谷に死体を吊るされてハゲタカのエサになる】
えええええ~! マジかよ! ここにいてはヤバイ気がするな。だが体が動かないから逃げることもできないしな。もしかして異世界転移そうそうオレ大ピンチなのか! それともゲームによくある最初のミッションなのか?
ほどなく先程の女性が戻ってきた。新たに御付きの女性を2人連れている。御付きのもの2人は台車を押していた。
「大変お待たせいたしました。まずはここにいるとお体が冷えてしまいます。この先にあるわたくしの庵にご案内をいたしますわ」
御付きの女の子が、オレを台車にとても丁重な感じで乗せてくれる。2人とも力が強い。オレを軽々と持ち上げる。途中でむにゅむにゅと所々柔らかいものが当たって気持ち良い。ぐふふ♪
庵に運ばれると中にはベッドが一台にテーブルが一つにイスが二脚ある。部屋はとてもシンプルな作りとなっていた。
ベッドに運ばれ寝かされると、主人がイスに座り御付きのものはその後ろで立っている。ベッドから若い女の子特有の柑橘系のような良い香りがする。
「どうすれば意思が伝わるのかしら。困ったわ。2人ともなにか良いアイディアはないかしら」
オレは必死に声を出しながら目が動くことをアピールする。
「あ~あう~あうあ~」
御付きの1人がそんなオレを見ていたが、気がついた。
「アリシア様、1つご提案がございます。よろしいでしょうか?」
「クレタは何か気がついたのね。言ってごらんなさい」
「こちらのお方は体が動きませんが、一箇所だけ動ける部位がございます。それは目です。ですので目で合図をしていただくということではいかがでしょうか?
具体的には、はい、は右、いいえ、は左に目を向けていただくと意思が伝わります」
「さすがクレタね! それは良い提案ですわね。あなた様も目で合図をするということで良いでしょうか?」
アリシアは目をカッと大きくし、クレタの意見に同意すると、オレにも聞いてきた。オレは、目を右に寄せて、はい、とアリシアに伝える。
アリシアはにこりと微笑むとオレに改めて話しかけてくる。
「わたくしはパルミラ教皇国の聖女アリシア・クレスウェルと申します。そして黒い髪の娘はクレタです。ピンク色の髪の娘はルシィルです」
「私はアリシア様御付きの修道女クレタでございます。以後お見知り置きを」
「私も~。アリシアさまの~。御付きの修道女ルシィルですぅ~。よろしくお願いしますぅ~」
アリシアの説明に2人は頭を下げる。
オレは先程までバグみたいな状態で焦っていたから気がつかなかった。
アリシアは目が覚めるような可愛い系超絶美少女で、パッチリした大きな目をしている。目の色は綺麗な緑色になっていて、実に神秘的だ。髪の色は金髪で、女性らしさが前面に出るタイプの腰まである超ロングだ。修道服を着ていて、はっきりとは分からないが間違いなく巨乳だ♪ ただオレがいた地球と違い、頭にベールをかぶっていない。髪の毛をそのまま出している。
御付きの2人もタイプは違うものの、かなりの美少女だ。
クレタは青い目の黒髪で、髪型はゆるく波うったような大人っぽさが出るウェーブヘアだ。スッと横に切れ長の目をしているカッコいい系の美少女だ。胸の大きさは普通だった。冷静さを感じるクールビューティだ。
ルシィルは青い目のピンク髪で、全体にカールをほどこしたくるくるふわっふわなカーリーヘア。タイプは他の2人と違い、艶のある色気系の美少女だ。見た目から3人で一番年下だろうが、一番大きい巨乳だ♪ ただ舌ったらずな感じは癖があるな。
しかし3人とも可愛い! 特にアリシアはモロ好みだ。転移前にはパティシエだったから色々な女性と仕事で組んだ。だがこんな美少女は会ったことないな。異世界は美少女が多いのか。それともこの3人がたまたま可愛いのか。
「わたくしはこの神域の責任者として、あなた様が誰なのかということを知りたいのです。なぜかと言いますと、昨日、礼拝の時にエロース神様から御神託が降りました。
明日、我の使いを送るというお告げだったのですわ」
オレを一目見ると、アリシアは頰が少し赤くなり微笑んだ。とても嬉しそうな可愛い笑顔を見せる。
「閉ざされていて誰も入ることができない神域にあなた様が現れたので、エロース神様の使いであると考えているのです。
そこで大変失礼なことではありますが、アプレイザル/鑑定の魔法をさせていただいてもよろしいかしら?」
アリシアは、オレの前で床に膝をつき、両手をお祈りするように組むと、少し困ったような上目遣いでお願いしてくる。
(マジで可愛い! この娘にお願いされたら何でもおじさん許しちゃうな♪)
オレは目を右に寄せる。
アリシアは要望が受け入れてもらったことで、ホッとしたようだ。もし本当に神の使いであれば拒否されてもおかしくなかったと考えていたためだ。神の化身を鑑定するということは失礼なことであるのだろうな。
「それでは不躾で申し訳ありません。アプレイザル/鑑定をさせていただきますわ。クレタ、ペンと羊皮紙を持ってきてくださる? 鑑定した内容を教皇と枢機卿にも伝えないといけないわ」
クレタは羊皮紙とペンを持ってくると机に羊皮紙を広げてイスに座る。
《アプレイザル/鑑定》
アリシアは鑑定の呪文を唱える。オレの体が光に包まれ、段々と光が消えていく。
(異世界に来て初めて見る魔法だ。こんな感じで呪文をとなえるのか。魔法名は唱えるが、長文の台詞ってないんだな。魔力を高める時間が少しかかるっていうわけだ)
「クレタ良いかしら。ステータスを言うわよ。
●隠蔽:オン(ここは本人以外は見ることができない)
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:ヒューマン
●状態:全身が痺れている
●ベースレベル:1
●職業:レベル1平民
●HP:24
●MP:30
●腕力:11
●体力:13
●敏捷:19
●知力:14
●魔力:16
●器用度:17
●スキル
なし
●称号
なし
●装備
なし
……以上ですわね」
オレのステータスを見て3人とも驚愕している。ぽかりと口を半分開いたまま、顔が空間に凍りついたようなようになっている。
ふっふっふ。エロース神から格別のお引き立てによるチートな数値を見て驚くが良い。ついでに3人とも、オレに惚れるが良い。
ん? なにか雰囲気が違うような?
クレタはペンで羊皮紙にステータスを書き込んでいたが、手を止めてペンを下ろした。そして3人は首を傾げている。顔色も微妙にさえなくなっている。誰一人一言も話さず固まっている。
ん? やはり3人の空気がおかしい。さきほどまで頬を赤く染めてたアリシアも、青ざめて挙動がおかしくなってるな。
「アリシア様、大変申し上げにくいのですが、セシルさんは普通の人間なのではないでしょうか? ステータスも16歳くらいの成人男性と変わらないようですので」
え! 何を行ってんだクレタ。普通ってどういうことだ? ここは能力の高さにビックリするところじゃないのか? ちょっとオレのステータスを確認してみよう。
《(ステータス)》
あ! ステータスの隠蔽がオンになってる。下二桁しか表示されていないようだ。オフに切り替えないとやばいな。そうしないと牢獄行きの吊るされハゲタカ食べられコースとなってしまうな! そんなの嫌だ!
すぐに隠蔽をオフに切り変える。体が痺れていて苦しいが、再鑑定をしてと全力でアピールする。足が完全に痺れていて動くことも触ることも出来ないのに、無理やり立ち上がるような苦しみだ。死にはしないが辛すぎる。
「んっ、ん~ん~。あうあ~」
何か言いたそう。そんなオレをアリシアはおかしいと感じて目をまっすぐ見る。しばらく見ていてオレの思いが通じたようだ。
「分かりましたわ。もう一度鑑定して欲しいようですわ」
さすが聖女。霊感か何かで分かったのかな、さすがアリシア。やっぱり超絶美少女は違うね。ここでオレに会ったことは運命の出会いなんだろうな。
オレにもう一度鑑定の魔法をかける。
●隠蔽:オフ(ここは本人以外は見ることができない)
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:エロース神の化身
●状態:魂と肉体の乱れ
●ベースレベル:1
●職業:レベル1賢者
●HP:312624
●MP:318130
●腕力:152811
●体力:159813
●敏捷:156819
●知力:158214
●魔力:159916
●器用度:151917
●スキル
神聖魔法1、暗黒魔法1、アイテムボックス、生活魔法
●エキストラスキル
エロース神の聖寵
●称号
エロース神の化身
●装備
なし
あまりの超絶ステータスに御付きの二人が、さっきとは違う意味で口をアングリしている。可愛いお嬢さんがそんな顔をしてはいけないよ。お嫁に行けなくなるぞ。
「やっぱりエロース神様の化身でいらしたのですわ。エロース神様にお会いできる日が生きている間に来るなんて! なんて素晴らしい日なのでしょう!
そう思いませんかクレタ、ルシィル!」
「「「はい!おっしゃる通りです。アリシア様!」」」
3人は感激のあまり涙を流しながらオレを見つめている。涙がとめどなく流れて立ち尽くしている。
それはそうだろうな。幼い頃からエロース神様に祈りを捧げる人生を送ってきて、いきなり本人に会えたと思うと号泣するか。でもオレはエロース神様から肉体を借りているだけでエロース神様ではないのだけどな。泣き止んで落ち着くのを少し待とう。
3人ともに涙が止まらない。かなり長い時間、感極まって号泣していたアリシアだが、落ち着きを取り戻すと、意を決したようにアリシアは2人に命じる。
「今からセシル様のすべてのお世話は聖女であるわたくしが行います。そのつもりで動いてちょうだい。2人にはその他のサポートを頼みますわ」
「「「はい! アリシア様!」」」
「ええ、お願いね。あら? もうこんな時間ね。セシル様、そろそろお食事はいかがでしょうか? もし良ろしければ晩ご飯をお持ちいたしますわ」
興奮がおさまったアリシアはそう言ってオレの目を真っ直ぐ見る。アリシアその目はやめて! まだ慣れてなくて照れるからな。その穢れなき純粋な目におっさんは弱いのだよ。オレは少し照れながらも目を右に持っていく。今日は色々あって結構、疲れたしな。そろそろ腹も減ってきた。初めての異世界料理は楽しみだ。料理人の端くれとしては興味深い。まあ、オレは洋菓子専門だがな。
「それではすぐにお食事の準備をいたしますわ。神界の食べ物と違うのでお口に合うか分かりませんが、精一杯真心を込めてご用意させていただきます。
ルシィルを残していくので、何かありましたらルシィルにお伝えください。
ルシィル、セシル様のことをお願いしますわ」
「はい~承知いたしましたぁ~お任せください~」
そう言うとクレタの書いていた羊皮紙を受け取って、2人で庵を出て行った。
ゆっくりと目を開けると、オレは短い草の生い茂る中で、大の字に寝転がっている。森の中なのか薄暗い場所のようだ。周囲を見渡すと木がたくさんある。太陽? と似たようなものも、木々の隙間から見えるので、地球とそんなに環境は変わらないようだ。
今、オレがいる場所はどこなのだろう? 山などの奥深くで、人里から離れているのだろうか? だとしたらまずは人を探さなくてはならない。この世界のことを何一つ知らないからだ。
大きく深呼吸をすると、空気は東京の薄汚れたものと違い、心地良い空気だ。肺にスーッと染み渡る。
……あ、視線を左に動かすと、なにか見えるな。石が円形に置かれ、美しい女神が壺を持っており、壺からコポコポ水が流れている良い感じの噴水だ。噴水のそばに長ベンチもある。
!? 長ベンチに人が座っている。異世界に来て早速、人に会えるとはホッと安堵した。
その人は、オレの存在に気がついたようで、なになに? というふうにしばらく伺っていた。が、ついに決心したのか、立ち上がって近づいてきた。
背筋がしっかりと伸び、歩き方が優雅でテンポが良い。両手は下腹の前で組んでいる。器用に歩けるものだ。視線を動かし、よく見ると修道服を着た女の子だった。
オレの目の前まで来ると、首を傾げながらにこりと微笑む。
「あなたはなぜここにいるのですか? ここは神殿の最奥にある神域でございますわ。わたくしとお付きの世話係以外は、入ることができないことになっているのです」
女の子の声は、まるで楽器でも奏でるような、澄みきった天使のような美声だった。声を聞くだけでこの娘の優しいお人柄が分かる。
娘はそう言うと困った顔になり、両手を背中で組む。胸の形がくっきりと出る。細身の女性なのに意外と大きい。女の子はオレに近づきすぎて、微妙にパンツが見えているのだが、全く気がついた様子がない。白だったよ、ぐふふ♪ いい眺め~。
少し女の子のパンティを楽しんでいたが、女の子の質問には何も答えず大の字のまま寝ていた。いくらなんでもこの状態でいるのは失礼なので、起きようとするが、起きることができない。それどころか体に全く力が入らなくなっていた。
な!? なんだと! これはどういうことだ! 体も動かないし話すこともできない。痛みはないが体のあらゆる場所が痺れているみたいだ。おいおいエロース神様しっかりしてくれ。
VRMMOゲームにありがちなバグだろ。リアルだから再起動とかないだろうし、いきなり困ったことになった。
声をかけられて振り向くことも、返事もしないオレを女の子はしばらくみていたが、様子がおかしいことに気がついた。
「もしかしたら、あなたは体が動かないのかしら?」
オレはそうだと目で強く訴えかける。幸いにして目だけは自由に動く。
これじゃ不便だし、思っていることが相手に伝わらない。自分の意思を表現できないっていうのはイライラするものだ。
女性はオレの目をしばらく見ていたが、オレが全く動けないことを確信したようだった。
「少々お待ちいただけますかしら? 御付きのものを連れてきますわ」
女の子はそう言ってこの場を離れた。一人残されたオレは、なぜ、体が全く動けないのかを調べることにした。エロース神様は、質問があったらサポートに聞けと言ってたよな。
《(ステータス)》
よしウィンドウが出てきたな。え~、サポートはどこだ……あった。
《(サポート)》
(なぜ体が動かないのか、体の状態がどうなっているかを教えて?)
ミニウィンドウが立ち上がって文字が現れた。
【セシルの魂が、神の化身の体に馴染むのに少し時間がかかる。そのため全身が麻痺状態になっている。時間が経過すると自然に解消される】
マジかよ! 動けないんじゃ何もできないだろ。それに女の子は、ここを神域って言ってたけど侵入しちゃってオレは大丈夫なのか?
女の子は御付きのものを連れてくるとか行ってたな。まさか衛兵とか連れてきて捕まるとかないよな。異世界に来た早々牢獄は嫌だ。日本でも警察のご厄介になったことはないのにな。一応、万が一に備えて調べておこう。
《(サポート)》
(この国で神域に侵入した者がいたとき、刑罰は何があるのかを教えて?)
【パルミラ教皇国は宗教を中心に国が成り立っている。そのため神域は信仰の最重要な場所となっている。許可なく神域へ侵入した場合、例外なく処刑となっている。処刑されたあと、谷に死体を吊るされてハゲタカのエサになる】
えええええ~! マジかよ! ここにいてはヤバイ気がするな。だが体が動かないから逃げることもできないしな。もしかして異世界転移そうそうオレ大ピンチなのか! それともゲームによくある最初のミッションなのか?
ほどなく先程の女性が戻ってきた。新たに御付きの女性を2人連れている。御付きのもの2人は台車を押していた。
「大変お待たせいたしました。まずはここにいるとお体が冷えてしまいます。この先にあるわたくしの庵にご案内をいたしますわ」
御付きの女の子が、オレを台車にとても丁重な感じで乗せてくれる。2人とも力が強い。オレを軽々と持ち上げる。途中でむにゅむにゅと所々柔らかいものが当たって気持ち良い。ぐふふ♪
庵に運ばれると中にはベッドが一台にテーブルが一つにイスが二脚ある。部屋はとてもシンプルな作りとなっていた。
ベッドに運ばれ寝かされると、主人がイスに座り御付きのものはその後ろで立っている。ベッドから若い女の子特有の柑橘系のような良い香りがする。
「どうすれば意思が伝わるのかしら。困ったわ。2人ともなにか良いアイディアはないかしら」
オレは必死に声を出しながら目が動くことをアピールする。
「あ~あう~あうあ~」
御付きの1人がそんなオレを見ていたが、気がついた。
「アリシア様、1つご提案がございます。よろしいでしょうか?」
「クレタは何か気がついたのね。言ってごらんなさい」
「こちらのお方は体が動きませんが、一箇所だけ動ける部位がございます。それは目です。ですので目で合図をしていただくということではいかがでしょうか?
具体的には、はい、は右、いいえ、は左に目を向けていただくと意思が伝わります」
「さすがクレタね! それは良い提案ですわね。あなた様も目で合図をするということで良いでしょうか?」
アリシアは目をカッと大きくし、クレタの意見に同意すると、オレにも聞いてきた。オレは、目を右に寄せて、はい、とアリシアに伝える。
アリシアはにこりと微笑むとオレに改めて話しかけてくる。
「わたくしはパルミラ教皇国の聖女アリシア・クレスウェルと申します。そして黒い髪の娘はクレタです。ピンク色の髪の娘はルシィルです」
「私はアリシア様御付きの修道女クレタでございます。以後お見知り置きを」
「私も~。アリシアさまの~。御付きの修道女ルシィルですぅ~。よろしくお願いしますぅ~」
アリシアの説明に2人は頭を下げる。
オレは先程までバグみたいな状態で焦っていたから気がつかなかった。
アリシアは目が覚めるような可愛い系超絶美少女で、パッチリした大きな目をしている。目の色は綺麗な緑色になっていて、実に神秘的だ。髪の色は金髪で、女性らしさが前面に出るタイプの腰まである超ロングだ。修道服を着ていて、はっきりとは分からないが間違いなく巨乳だ♪ ただオレがいた地球と違い、頭にベールをかぶっていない。髪の毛をそのまま出している。
御付きの2人もタイプは違うものの、かなりの美少女だ。
クレタは青い目の黒髪で、髪型はゆるく波うったような大人っぽさが出るウェーブヘアだ。スッと横に切れ長の目をしているカッコいい系の美少女だ。胸の大きさは普通だった。冷静さを感じるクールビューティだ。
ルシィルは青い目のピンク髪で、全体にカールをほどこしたくるくるふわっふわなカーリーヘア。タイプは他の2人と違い、艶のある色気系の美少女だ。見た目から3人で一番年下だろうが、一番大きい巨乳だ♪ ただ舌ったらずな感じは癖があるな。
しかし3人とも可愛い! 特にアリシアはモロ好みだ。転移前にはパティシエだったから色々な女性と仕事で組んだ。だがこんな美少女は会ったことないな。異世界は美少女が多いのか。それともこの3人がたまたま可愛いのか。
「わたくしはこの神域の責任者として、あなた様が誰なのかということを知りたいのです。なぜかと言いますと、昨日、礼拝の時にエロース神様から御神託が降りました。
明日、我の使いを送るというお告げだったのですわ」
オレを一目見ると、アリシアは頰が少し赤くなり微笑んだ。とても嬉しそうな可愛い笑顔を見せる。
「閉ざされていて誰も入ることができない神域にあなた様が現れたので、エロース神様の使いであると考えているのです。
そこで大変失礼なことではありますが、アプレイザル/鑑定の魔法をさせていただいてもよろしいかしら?」
アリシアは、オレの前で床に膝をつき、両手をお祈りするように組むと、少し困ったような上目遣いでお願いしてくる。
(マジで可愛い! この娘にお願いされたら何でもおじさん許しちゃうな♪)
オレは目を右に寄せる。
アリシアは要望が受け入れてもらったことで、ホッとしたようだ。もし本当に神の使いであれば拒否されてもおかしくなかったと考えていたためだ。神の化身を鑑定するということは失礼なことであるのだろうな。
「それでは不躾で申し訳ありません。アプレイザル/鑑定をさせていただきますわ。クレタ、ペンと羊皮紙を持ってきてくださる? 鑑定した内容を教皇と枢機卿にも伝えないといけないわ」
クレタは羊皮紙とペンを持ってくると机に羊皮紙を広げてイスに座る。
《アプレイザル/鑑定》
アリシアは鑑定の呪文を唱える。オレの体が光に包まれ、段々と光が消えていく。
(異世界に来て初めて見る魔法だ。こんな感じで呪文をとなえるのか。魔法名は唱えるが、長文の台詞ってないんだな。魔力を高める時間が少しかかるっていうわけだ)
「クレタ良いかしら。ステータスを言うわよ。
●隠蔽:オン(ここは本人以外は見ることができない)
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:ヒューマン
●状態:全身が痺れている
●ベースレベル:1
●職業:レベル1平民
●HP:24
●MP:30
●腕力:11
●体力:13
●敏捷:19
●知力:14
●魔力:16
●器用度:17
●スキル
なし
●称号
なし
●装備
なし
……以上ですわね」
オレのステータスを見て3人とも驚愕している。ぽかりと口を半分開いたまま、顔が空間に凍りついたようなようになっている。
ふっふっふ。エロース神から格別のお引き立てによるチートな数値を見て驚くが良い。ついでに3人とも、オレに惚れるが良い。
ん? なにか雰囲気が違うような?
クレタはペンで羊皮紙にステータスを書き込んでいたが、手を止めてペンを下ろした。そして3人は首を傾げている。顔色も微妙にさえなくなっている。誰一人一言も話さず固まっている。
ん? やはり3人の空気がおかしい。さきほどまで頬を赤く染めてたアリシアも、青ざめて挙動がおかしくなってるな。
「アリシア様、大変申し上げにくいのですが、セシルさんは普通の人間なのではないでしょうか? ステータスも16歳くらいの成人男性と変わらないようですので」
え! 何を行ってんだクレタ。普通ってどういうことだ? ここは能力の高さにビックリするところじゃないのか? ちょっとオレのステータスを確認してみよう。
《(ステータス)》
あ! ステータスの隠蔽がオンになってる。下二桁しか表示されていないようだ。オフに切り替えないとやばいな。そうしないと牢獄行きの吊るされハゲタカ食べられコースとなってしまうな! そんなの嫌だ!
すぐに隠蔽をオフに切り変える。体が痺れていて苦しいが、再鑑定をしてと全力でアピールする。足が完全に痺れていて動くことも触ることも出来ないのに、無理やり立ち上がるような苦しみだ。死にはしないが辛すぎる。
「んっ、ん~ん~。あうあ~」
何か言いたそう。そんなオレをアリシアはおかしいと感じて目をまっすぐ見る。しばらく見ていてオレの思いが通じたようだ。
「分かりましたわ。もう一度鑑定して欲しいようですわ」
さすが聖女。霊感か何かで分かったのかな、さすがアリシア。やっぱり超絶美少女は違うね。ここでオレに会ったことは運命の出会いなんだろうな。
オレにもう一度鑑定の魔法をかける。
●隠蔽:オフ(ここは本人以外は見ることができない)
●名前:セシル
●年齢:16歳
●種族:エロース神の化身
●状態:魂と肉体の乱れ
●ベースレベル:1
●職業:レベル1賢者
●HP:312624
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●腕力:152811
●体力:159813
●敏捷:156819
●知力:158214
●魔力:159916
●器用度:151917
●スキル
神聖魔法1、暗黒魔法1、アイテムボックス、生活魔法
●エキストラスキル
エロース神の聖寵
●称号
エロース神の化身
●装備
なし
あまりの超絶ステータスに御付きの二人が、さっきとは違う意味で口をアングリしている。可愛いお嬢さんがそんな顔をしてはいけないよ。お嫁に行けなくなるぞ。
「やっぱりエロース神様の化身でいらしたのですわ。エロース神様にお会いできる日が生きている間に来るなんて! なんて素晴らしい日なのでしょう!
そう思いませんかクレタ、ルシィル!」
「「「はい!おっしゃる通りです。アリシア様!」」」
3人は感激のあまり涙を流しながらオレを見つめている。涙がとめどなく流れて立ち尽くしている。
それはそうだろうな。幼い頃からエロース神様に祈りを捧げる人生を送ってきて、いきなり本人に会えたと思うと号泣するか。でもオレはエロース神様から肉体を借りているだけでエロース神様ではないのだけどな。泣き止んで落ち着くのを少し待とう。
3人ともに涙が止まらない。かなり長い時間、感極まって号泣していたアリシアだが、落ち着きを取り戻すと、意を決したようにアリシアは2人に命じる。
「今からセシル様のすべてのお世話は聖女であるわたくしが行います。そのつもりで動いてちょうだい。2人にはその他のサポートを頼みますわ」
「「「はい! アリシア様!」」」
「ええ、お願いね。あら? もうこんな時間ね。セシル様、そろそろお食事はいかがでしょうか? もし良ろしければ晩ご飯をお持ちいたしますわ」
興奮がおさまったアリシアはそう言ってオレの目を真っ直ぐ見る。アリシアその目はやめて! まだ慣れてなくて照れるからな。その穢れなき純粋な目におっさんは弱いのだよ。オレは少し照れながらも目を右に持っていく。今日は色々あって結構、疲れたしな。そろそろ腹も減ってきた。初めての異世界料理は楽しみだ。料理人の端くれとしては興味深い。まあ、オレは洋菓子専門だがな。
「それではすぐにお食事の準備をいたしますわ。神界の食べ物と違うのでお口に合うか分かりませんが、精一杯真心を込めてご用意させていただきます。
ルシィルを残していくので、何かありましたらルシィルにお伝えください。
ルシィル、セシル様のことをお願いしますわ」
「はい~承知いたしましたぁ~お任せください~」
そう言うとクレタの書いていた羊皮紙を受け取って、2人で庵を出て行った。
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