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時価マイナス2000万
4−3
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「お疲れ様ですー」
「あ! アオイ様! ノヴァ様も」
ステージに着くと数人のスッタフが駆け寄ってくる。彼らに笑顔で挨拶をしながらアオイは進捗を尋ねた。
「だいたいできています。あとは照明のチェックですね」
「ちょうどいいや。僕も一緒にやります。最終日のチケットの捌け具合はどうなってますか?」
ライブは月に3回、1日おきに開催されている。本当は連日開催したかったが、この国の技術ではどうしても1日準備の時間が必要なのだ。もちろんジスランは全通している。
アオイの質問に、スタッフの男はきびきびと答えた。
「完売しています。立ち見希望の声も増えていますね」
「あんまりギチギチに入れたくないんだよなあ……やっぱ欲しいなあテレビ。中継したい。ラジオもいいけどアイドルは顔が命だし」
アオイのつぶやきに、隣にいたノヴァが反応した。
「そうそう、そういうのだよ偉い人が欲しい知識」
「テレビ? やですよ。仕組み知らないし」
「仕組み知らないくせに色々無理言って舞台装置作らせたやつが何言ってんだか」
ノヴァが呆れたように片眉をつり上げた。
「だって欲しかったんだもん」
「うるせ~」
「でもノヴァ様だってアオイ様の作る舞台の素晴らしさは知ってますよね?! 俺、初めて見た時は本当に感動して……確かに無茶言ってると思うこともありますけど」
「あるんだ」
「でもでも、本当に凄いです! こんなのアオイ様は見慣れてるかもしれませんけど……でも、あれが見れるなら俺たち死ぬ気で頑張れます!」
スッタフ瞳はキラキラと輝いている。アオイと一緒にステージを作ることに誇りを持っている顔だ。アオイの妥協しない姿勢は、こういう志の高い若者をよく惹きつけた。
「アオイ様! 準備できました!」
「あ、はーい。どうぞ」
アオイの声に従ってパッと照明がつく。親しんだ明りにアオイは目を細めた。
「ノヴァさん、ちょうどいいんでステージ中央に立ってください」
「はいはい。アオイ様の仰せのままに」
ノヴァはそう言って気だるげな様子で歩いて行った。手渡されたメガホンを片手に声を張りあげる。
「一番端の照明もう少し右――そうそこ! そのまま少し傾けてください。オッケー」
「アオイ様、舞台セットの確認もお願いします!」
「もちろん、もうこのままリハーサル行きまーす。各自準備してー」
アオイの掛け声に従ってバタバタと人が行き交いはじめる。アオイはステージに立ちノヴァの隣に並んだ。
「アンタ、衣装は」
と、ノヴァ。
「後で持ってきてもらいます。というか、このままリハいって大丈夫でしたか」
「いい。なるだろうなと思ってたし」
「あはは……はい、じゃあ一曲目から行きます――!」
リハーサルを終えたアオイは、楽屋で先ほど到着したハトリに差し入れしてもらった水を飲んでいた。ハトリが到着したと言うことは、ジスランもいるということである。傍に控えているハトリに向かってアオイは話しかけた。
「ジスラン、今日は楽屋に来ないの?」
「今日は終わったらくるそうです。今はどうしても欲しいグッズ? があるとのことでした」
「言ってくれたらあげるのに」
アオイはそう言って口をとがらせた。ハトリが言っているのは今回のライブから始めた物販のことである。いよいよ痛バ作るジスランが現実味を帯びてきたな、とアオイは思っている。そうなったらどうやって止めよう。
ハトリが困ったように眉を下げた。
「竜神様はその、アオイ様のことに関しては絶対に譲らないので……」
ノヴァが口を挟んだ。
「愛されてんじゃん」
「そうなんですけどお」
「完璧なステージができたらそれでいいじゃないの」
「そうなんですけど!」
アオイはため息を吐き、真っ直ぐ前を見据えた。
「……ノヴァさんの言う通りです。ジスランから貰ったものは全部ステージで返します」
「あ! アオイ様! ノヴァ様も」
ステージに着くと数人のスッタフが駆け寄ってくる。彼らに笑顔で挨拶をしながらアオイは進捗を尋ねた。
「だいたいできています。あとは照明のチェックですね」
「ちょうどいいや。僕も一緒にやります。最終日のチケットの捌け具合はどうなってますか?」
ライブは月に3回、1日おきに開催されている。本当は連日開催したかったが、この国の技術ではどうしても1日準備の時間が必要なのだ。もちろんジスランは全通している。
アオイの質問に、スタッフの男はきびきびと答えた。
「完売しています。立ち見希望の声も増えていますね」
「あんまりギチギチに入れたくないんだよなあ……やっぱ欲しいなあテレビ。中継したい。ラジオもいいけどアイドルは顔が命だし」
アオイのつぶやきに、隣にいたノヴァが反応した。
「そうそう、そういうのだよ偉い人が欲しい知識」
「テレビ? やですよ。仕組み知らないし」
「仕組み知らないくせに色々無理言って舞台装置作らせたやつが何言ってんだか」
ノヴァが呆れたように片眉をつり上げた。
「だって欲しかったんだもん」
「うるせ~」
「でもノヴァ様だってアオイ様の作る舞台の素晴らしさは知ってますよね?! 俺、初めて見た時は本当に感動して……確かに無茶言ってると思うこともありますけど」
「あるんだ」
「でもでも、本当に凄いです! こんなのアオイ様は見慣れてるかもしれませんけど……でも、あれが見れるなら俺たち死ぬ気で頑張れます!」
スッタフ瞳はキラキラと輝いている。アオイと一緒にステージを作ることに誇りを持っている顔だ。アオイの妥協しない姿勢は、こういう志の高い若者をよく惹きつけた。
「アオイ様! 準備できました!」
「あ、はーい。どうぞ」
アオイの声に従ってパッと照明がつく。親しんだ明りにアオイは目を細めた。
「ノヴァさん、ちょうどいいんでステージ中央に立ってください」
「はいはい。アオイ様の仰せのままに」
ノヴァはそう言って気だるげな様子で歩いて行った。手渡されたメガホンを片手に声を張りあげる。
「一番端の照明もう少し右――そうそこ! そのまま少し傾けてください。オッケー」
「アオイ様、舞台セットの確認もお願いします!」
「もちろん、もうこのままリハーサル行きまーす。各自準備してー」
アオイの掛け声に従ってバタバタと人が行き交いはじめる。アオイはステージに立ちノヴァの隣に並んだ。
「アンタ、衣装は」
と、ノヴァ。
「後で持ってきてもらいます。というか、このままリハいって大丈夫でしたか」
「いい。なるだろうなと思ってたし」
「あはは……はい、じゃあ一曲目から行きます――!」
リハーサルを終えたアオイは、楽屋で先ほど到着したハトリに差し入れしてもらった水を飲んでいた。ハトリが到着したと言うことは、ジスランもいるということである。傍に控えているハトリに向かってアオイは話しかけた。
「ジスラン、今日は楽屋に来ないの?」
「今日は終わったらくるそうです。今はどうしても欲しいグッズ? があるとのことでした」
「言ってくれたらあげるのに」
アオイはそう言って口をとがらせた。ハトリが言っているのは今回のライブから始めた物販のことである。いよいよ痛バ作るジスランが現実味を帯びてきたな、とアオイは思っている。そうなったらどうやって止めよう。
ハトリが困ったように眉を下げた。
「竜神様はその、アオイ様のことに関しては絶対に譲らないので……」
ノヴァが口を挟んだ。
「愛されてんじゃん」
「そうなんですけどお」
「完璧なステージができたらそれでいいじゃないの」
「そうなんですけど!」
アオイはため息を吐き、真っ直ぐ前を見据えた。
「……ノヴァさんの言う通りです。ジスランから貰ったものは全部ステージで返します」
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