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時価2000万
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鳴り止まない喝采の余韻に浸りながら、アオイはぼすんとソファにダイブした。クッションを手繰り寄せながら、そばにいるジスランに話しかける。
「楽しかった!」
「それは良かったです」
ここはジスランの自室。式典とお披露目を終え晴れて公式に番として受け入れられたアオイは当初の予定通り部屋を移したのだった。つまりこれが初夜ということになる。
まあ僕には関係ないけどな!
昨日までのアオイならここで1度落ち込んでいるとこだが、ライブ後――今回はパーティーだけど――の高揚感の中にいる今のアオイはさして気にしていなかった。ナチュラルハイみたいなものだ。
うっとりとアオイたちを見ていた女や、興奮に頬を高揚させていた男、握手を求めてきた青年や真っ赤な顔で立ち竦んでいた少女の、一人一人の顔を思い返しながらアオイはくすくすと体を揺らした。ぱたぱたと足を揺らし流れていた音楽を口ずさんでいると、ソファの肘置きに腰かけたジスランに顔を覗き込まれた。
「アオイ、まずはメイクを落としましょうね」
「あはは、ジスランの顔逆さまだ」
「君、私に隠れて酒でも飲みました?」
ジスランが渋い顔を作る。アオイは「どうだろ」と目を細めた。ジスランによって照明の灯りが遮られ、暗くなった視界に緊張の糸が緩む。
「あっアオイ、寝ないで」
「ん゛ー……」
アオイはぐずるようにソファの背もたれに向かって寝返りをうった。
「……君がメイクはその日のうちに落とさないと肌荒れすると言ったんでしょ」
「やだ……めんどくさい。明日でいいよ」
ジスランは困ったように眉を下げると、優しい声で言った。
「シャワーでいいから。ね、アオイ」
アオイはごろんと正面を向くと、じっとジスランの顔を見つめた。ぱちぱちとゆっくり瞬きを繰り返しながら、アオイはおもむろに両手をジスランに向けた。
「ジスラン、連れてって」
ジスランの瞳が驚いたように見開かれる。男の顔にほんの一瞬走った緊張を認めた瞬間、急に冷水を浴びせられたように頭が覚醒した。
起きあがろうと身じろきをすると、そっとジスランが離れていく。
「……ごめ、ちょっとふざけすぎた」
「い、え……」
ジスランの受け答えもどこかぎこちない。アオイは俯き、唇を噛んだ。居心地の悪い沈黙が流れる。アオイは反動をつけてソファから立ち上がると、わざとジスランに背を向けながら、わざとらしいほど明るい声で尋ねた。
「シャワー行ってくる! どこにある?」
「あそこの扉の向こうに」
「ん」
「必要なものは揃っているはずですが、欲しいものがあれば言ってください」
「わかった。ありがと、ジスラン」
「いえ……」
ひらひらと手をふりドアを開ける。中に入った途端、アオイはズルズルとその場にしゃがみ込んだ。くしゃりと頭を掻き回す。
「クソ、失敗した」
「楽しかった!」
「それは良かったです」
ここはジスランの自室。式典とお披露目を終え晴れて公式に番として受け入れられたアオイは当初の予定通り部屋を移したのだった。つまりこれが初夜ということになる。
まあ僕には関係ないけどな!
昨日までのアオイならここで1度落ち込んでいるとこだが、ライブ後――今回はパーティーだけど――の高揚感の中にいる今のアオイはさして気にしていなかった。ナチュラルハイみたいなものだ。
うっとりとアオイたちを見ていた女や、興奮に頬を高揚させていた男、握手を求めてきた青年や真っ赤な顔で立ち竦んでいた少女の、一人一人の顔を思い返しながらアオイはくすくすと体を揺らした。ぱたぱたと足を揺らし流れていた音楽を口ずさんでいると、ソファの肘置きに腰かけたジスランに顔を覗き込まれた。
「アオイ、まずはメイクを落としましょうね」
「あはは、ジスランの顔逆さまだ」
「君、私に隠れて酒でも飲みました?」
ジスランが渋い顔を作る。アオイは「どうだろ」と目を細めた。ジスランによって照明の灯りが遮られ、暗くなった視界に緊張の糸が緩む。
「あっアオイ、寝ないで」
「ん゛ー……」
アオイはぐずるようにソファの背もたれに向かって寝返りをうった。
「……君がメイクはその日のうちに落とさないと肌荒れすると言ったんでしょ」
「やだ……めんどくさい。明日でいいよ」
ジスランは困ったように眉を下げると、優しい声で言った。
「シャワーでいいから。ね、アオイ」
アオイはごろんと正面を向くと、じっとジスランの顔を見つめた。ぱちぱちとゆっくり瞬きを繰り返しながら、アオイはおもむろに両手をジスランに向けた。
「ジスラン、連れてって」
ジスランの瞳が驚いたように見開かれる。男の顔にほんの一瞬走った緊張を認めた瞬間、急に冷水を浴びせられたように頭が覚醒した。
起きあがろうと身じろきをすると、そっとジスランが離れていく。
「……ごめ、ちょっとふざけすぎた」
「い、え……」
ジスランの受け答えもどこかぎこちない。アオイは俯き、唇を噛んだ。居心地の悪い沈黙が流れる。アオイは反動をつけてソファから立ち上がると、わざとジスランに背を向けながら、わざとらしいほど明るい声で尋ねた。
「シャワー行ってくる! どこにある?」
「あそこの扉の向こうに」
「ん」
「必要なものは揃っているはずですが、欲しいものがあれば言ってください」
「わかった。ありがと、ジスラン」
「いえ……」
ひらひらと手をふりドアを開ける。中に入った途端、アオイはズルズルとその場にしゃがみ込んだ。くしゃりと頭を掻き回す。
「クソ、失敗した」
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