2 / 30
初夜の翌朝失踪する受けの話
1-1
しおりを挟む
俺、小鳥遊直巳はそれなりの家柄に末っ子として生まれた次男だ。兄と姉が1人ずつ、彼らと10は離れている俺は自分でもいうのも何だけど、結構可愛がられていた。
両親が経営している会社の業績は順調、会社は優秀な兄さんが継いで、姉さんは許嫁と結婚することが決まっていた。だから俺が政略結婚とか、家の為に何かをする必要は特になかったのだ。兄さんたちが口癖のように「直巳は好きに生きていい」と言っていたのもあって俺も家とは関係ないところで生きていくものだと思っていた。兄さんや姉さんと違って秀でたとこが何もない俺が家の為に何か出来るとは思えなかった、というのもある。
それが一変したのは15歳の春のことだ。
神崎家から見合いの申し入れがあったのである。
神崎家といえばうちよりもはるかに歴史のある、所謂名家である。どちらかといえば新興勢力の小鳥遊家と並ぶとなるとギリギリ釣り合うかどうかだ。小鳥遊家が見合いを申し込むことはあっても(それも家人が見る前に弾かれる可能性の方が高い)逆はない。じゃあどうしてこんなイレギュラーが起こったのかと言うと理由は簡単、当時の神崎家は、言葉を選ばずにいうなら落ちぶれていたのだ。会社の業績だけを比べると小鳥遊家の半分くらいだったと思う。
男である俺に白羽の矢が立った理由はいくつかあるらしいけど詳しくは知らない。理由を知った兄さんたちが烈火のごとく怒って俺の耳を塞いだからだ。俺のために怒っているのは分かっていたからあえて聞くこともしなかったけど、彼らの様子を見るに相当ロクでもない理由だったのだろう。何はどうあれ政略結婚だ。
俺の家族は俺以外全員会う前から反対した。それはもうデモ隊もかくやという勢いで反対していた。やれ歳が離れすぎているとか、あの神崎とはいえ斜陽な家にうちの可愛い直巳をやるわけにはいかないとか、申し入れる立場ならそれらしくしろ具体的に言うと頭を下げろ、とか。うちの家族は母さん以外みんな気が強いのだ。
そんな中、反対する兄さんたちを押し切ってお見合いをしたがったのは他でもない俺だ。
ここだけの話、釣書の写真がめちゃくちゃ好みだったのだ。もう本当に、ストライクゾーンド真ん中だった。
12、3歳頃から女の人より男の人が好きな自分に気づいていた。けど、それを誰かに伝えたことは一度もなかった。俺がうんと小さい頃に同性婚が承認されて以来同性愛は一般的になりつつあるとはいえ、上流階級の中ではまだまだ風当たりがキツかったから。そんな環境の中で自分のことを公にするのは俺にとってめちゃくちゃ勇気がいることだったのだ。
兄さんも姉さんも、もちろん両親だって俺が同性愛者だからって態度を変えるような事はしないことは知っていたけど、周りは違う。俺がそうだと周囲の人が知れば必ず兄さんたちが嫌な思いをする。姉さんの縁談だって破談になるかもしれない。それが何よりも嫌だった。家族はそのくらい大したことないと笑い飛ばすであろうことは容易に想像がついたけど、ただでさえ俺は小鳥遊家の居ても居なくても変わらない二男坊と揶揄されているのに、これ以上大好きな家族に迷惑はかけれなかった。
そんな俺がこっそり男の恋人を作れるだろうか。無理である。
それでも恋人への憧れを捨てきれずにいたら、顔がめちゃめちゃ好みの男から見合いが申し込まれたのだ。
釣書だけじゃ性格までは分からないけど、俺が普通に過ごしていたらまず間違いなく付き合うことも、知り合いになることさえ叶わない人だ。そんな人と結婚出来るかもしれないときて前のめりに飛びついてしまった俺は悪くないと思う。
姉さんたちは政略結婚だったけど、お互いに一目惚れで政略結婚ってなんだっけ?って思うぐらい仲が良かったのも俺の背中を後押しした。俺もそうなるかもしれないと、ちょっと、ほんのちょっとだけ期待していたのだ。
まあ、現実はそんなに甘くなかったんだけど。
両親が経営している会社の業績は順調、会社は優秀な兄さんが継いで、姉さんは許嫁と結婚することが決まっていた。だから俺が政略結婚とか、家の為に何かをする必要は特になかったのだ。兄さんたちが口癖のように「直巳は好きに生きていい」と言っていたのもあって俺も家とは関係ないところで生きていくものだと思っていた。兄さんや姉さんと違って秀でたとこが何もない俺が家の為に何か出来るとは思えなかった、というのもある。
それが一変したのは15歳の春のことだ。
神崎家から見合いの申し入れがあったのである。
神崎家といえばうちよりもはるかに歴史のある、所謂名家である。どちらかといえば新興勢力の小鳥遊家と並ぶとなるとギリギリ釣り合うかどうかだ。小鳥遊家が見合いを申し込むことはあっても(それも家人が見る前に弾かれる可能性の方が高い)逆はない。じゃあどうしてこんなイレギュラーが起こったのかと言うと理由は簡単、当時の神崎家は、言葉を選ばずにいうなら落ちぶれていたのだ。会社の業績だけを比べると小鳥遊家の半分くらいだったと思う。
男である俺に白羽の矢が立った理由はいくつかあるらしいけど詳しくは知らない。理由を知った兄さんたちが烈火のごとく怒って俺の耳を塞いだからだ。俺のために怒っているのは分かっていたからあえて聞くこともしなかったけど、彼らの様子を見るに相当ロクでもない理由だったのだろう。何はどうあれ政略結婚だ。
俺の家族は俺以外全員会う前から反対した。それはもうデモ隊もかくやという勢いで反対していた。やれ歳が離れすぎているとか、あの神崎とはいえ斜陽な家にうちの可愛い直巳をやるわけにはいかないとか、申し入れる立場ならそれらしくしろ具体的に言うと頭を下げろ、とか。うちの家族は母さん以外みんな気が強いのだ。
そんな中、反対する兄さんたちを押し切ってお見合いをしたがったのは他でもない俺だ。
ここだけの話、釣書の写真がめちゃくちゃ好みだったのだ。もう本当に、ストライクゾーンド真ん中だった。
12、3歳頃から女の人より男の人が好きな自分に気づいていた。けど、それを誰かに伝えたことは一度もなかった。俺がうんと小さい頃に同性婚が承認されて以来同性愛は一般的になりつつあるとはいえ、上流階級の中ではまだまだ風当たりがキツかったから。そんな環境の中で自分のことを公にするのは俺にとってめちゃくちゃ勇気がいることだったのだ。
兄さんも姉さんも、もちろん両親だって俺が同性愛者だからって態度を変えるような事はしないことは知っていたけど、周りは違う。俺がそうだと周囲の人が知れば必ず兄さんたちが嫌な思いをする。姉さんの縁談だって破談になるかもしれない。それが何よりも嫌だった。家族はそのくらい大したことないと笑い飛ばすであろうことは容易に想像がついたけど、ただでさえ俺は小鳥遊家の居ても居なくても変わらない二男坊と揶揄されているのに、これ以上大好きな家族に迷惑はかけれなかった。
そんな俺がこっそり男の恋人を作れるだろうか。無理である。
それでも恋人への憧れを捨てきれずにいたら、顔がめちゃめちゃ好みの男から見合いが申し込まれたのだ。
釣書だけじゃ性格までは分からないけど、俺が普通に過ごしていたらまず間違いなく付き合うことも、知り合いになることさえ叶わない人だ。そんな人と結婚出来るかもしれないときて前のめりに飛びついてしまった俺は悪くないと思う。
姉さんたちは政略結婚だったけど、お互いに一目惚れで政略結婚ってなんだっけ?って思うぐらい仲が良かったのも俺の背中を後押しした。俺もそうなるかもしれないと、ちょっと、ほんのちょっとだけ期待していたのだ。
まあ、現実はそんなに甘くなかったんだけど。
250
お気に入りに追加
3,142
あなたにおすすめの小説

当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる