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第53話EXハンバーガーを作ろう下

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 数日後。学校帰りに肉屋によった時の事だった。

「それでハンバガー店の事なんだが……売れ行きはどうだ?」

 カウンター席の端に座り、試作品を食べながら店長の話を聞く。

「ええ、売れ行きは好調なんですが、量が少ないと言う声が多いらしくてどうしたものかと考えていた所です」

 なるほどボリュームが問題という事か……アメリカの実業家レイモンド・アルバート・クロックは、世界的ハンバーガーチェーン店の創業者としてい知られている。
(実際には、先に店を作っていたM兄弟との共同創業と言うべきなのだが……)

 また彼の成功を見て後追いしたのが、バーガ〇キング、ケ〇タッキーフライドチキンなどである。
 どの店でもフライドポテトを提供しているのは、原価が安くそして簡単に美味しく、腹が膨れるからだ。

「では、カラッと揚げたイモを売り出してはどうだろうか?」

 うなるほど……とは言わないまでも、俺は名門貴族のクローリー家直系の四男で鍛冶師としても優れているから、貯金はそこそこある。飲食産業に乗り込んで上前を撥ねると言うのもありかもしれない。

「イモですか……」

 店長の反応は芳しいモノではなかった。

「アーノルド様は、貴族なのでご存じないかもしれませんが、舶来イモは、『貧者のパン』と言われ蔑まれており、好んで食べられないのです」

 世界史でも習った気がする。ドイツなど冷涼・或いは土地が痩せた地域では麦が取れず仕方なく、ジャガイモを育て食べたと言う。フランスでは家畜のエサとして認識されていたとか、日本でも東北では度々飢饉がおこるので対策として、サツマイモやジャガイモを植えていたと言う。

「俺は揚げたイモが好きなんだが……冷涼なこの地域では珍しさよりも貧しさの象徴と言う訳か……」

「左様でございます」

「だが試しに売ってみてくれないか? 格安でいい必ず売れるハズだから!」

「そこまで仰るのなら揚げたイモを屋台で売りましょう」

 先ず薄く皮を剥いたイモを数週間干して乾燥させ水分を抜く、冷たい水に乾燥させたイモを入れ、2,30分ほど混ぜて水が真っ白になるまでデンプンを抜いて、さらに流水をかけてデンプンを洗い流す。水分を拭って高温の牛脂入りの脂でカラッと揚げる事で最高のフライドポテトが出来上がるのだ。

 しかし、現在ではポテトもパティも創業当初の美味しさは、セントラルキッチンシステムにより失われているらしい。

 俺は工程を説明すると、魔術でそれを一瞬にして行う……

「これで先ずは一週間分一日100個を目安に作った。油を塗ったパピルスに包んで提供するといい」

 実演していたので出来上がったフライドポテトがバットの上に上がる。
 塩を振っただけのシンプルなものを店長は頬張る。

サク

「う、美味い! サクサクとした表面にホクホクとした内側の食感の変化が面白い! 牛の脂の旨味にイモの優しい甘さ……それを纏めている塩味が何とも言えない。これだけでエールが飲めそうだ!! これは売れますよ!」

 こうしてハンバーガーとポテトと言う、名コンビが生まれたのだった。

数日後……

「ポテトを作っていただけませんか?」

 どうやら1日100個を目安に作ったのだが、数日のうちに売り切ってしまったようだ。

「べつに構わないがこれからも俺に頼るつもりか? 店長」

「そ、それは……」

 店長はそこまで考えていなかったのか押し黙る。

「なぜ一日100個限定で売ったのか? を考えなかったようだな……数量限定、期間限定、今だけ、特別価格など人々は付加価値のあるモノを求める。
 お前たちが作れる量は、高が知れているだろう? 数が作れない希少価値があるから値が高くなるのは、需要と供給と言う天秤が、購買意欲と言う名の神の見えざる手で操作されている訳だ。
 一つ幾らで売ったのかはわからないが、制作コストを考えたのか? 数週間天日で干すと言う時間は、魔術以外では短縮方法は考えたのか? そのための猶予を与えたつもりだったんだがな……」

「……そう言う意図があった訳ですか……」

「まぁ今回は品と金を貸して助けてやろう。店長お前は今日からハンバーガーチェーン店の店長も兼任してくれ、何従業員などのスタッフを雇う金を貸してやる。この町で一番の商会にしようじゃないか」

 こうして俺は店長の経営する店の出資者兼庇護者となり、店長は商会の会長になった。


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