上 下
51 / 71

第50EXハンバーグを作ろう上

しおりを挟む



 あれはアルタに装飾の依頼をしている間の事だった。

「そう言えば肉の端材はざいはどうしているんだ?」

 幸い俺は金に困ってはいない。冒険で得た金を全て遊興費に費やしたとしても全く問題はないので、俺は遠慮なく食べ歩きに使っている。
 オマケに太り辛いので、定期的にこの焼き肉屋店には通っているのだ。
 俺の前には、店主が付いている。
 他の客がいるには居るのだが……皆そこまで資金に余力が無いのか、自分で焼く焼肉スタイルが多い。必然一人客の俺はカウンターで仁王立ちしている店主を独り占めするカタチになるのだ。

「基本的には、端材はざいが出ない様に切っています。それでも多少は出てしまうので……そう言ったのはスジ肉と一緒にスープで煮て提供するか、自分達で食べます」

「なるほど……」

スープって便利だな……煮れば大体柔らかくなるし、硬くなっても出汁ブイオンは取れる。ごった煮や雑煮も同じような考えだし、戦後の闇市で大人気の米軍の生ごみを使った残飯シチューも有名だ。

「それで、端材はざいがどうかしたんですか?」

 店長は他に活用法があると思ったらしく。質問してきた。

端材はざいやスジ肉を柔らかく食べる方法がある……と言ったらどうする?」

 これは使える! と思った俺は、少し交渉してみようと思った。

「肉屋としては困りますが……料理人としては気になります。私のモットーは『安く美味しいお肉を食べてもらう事です』。方法があると分かっているんだ。知りたいと思うのは当然でしょう」

 確かにその通りかもしれだ。

「店長。俺が調理するから調理場に入れてくれないか?」

「構いませんが……外套がいとうを 脱いでもらう事と、このエプロンを使ってください」

 衛生面がガバガバなこの世界でも、料理人は経験則で不潔はダメだと知っているらしい。

「もちろんだ」

 俺はエプロンを付けて、洗い場で石鹸を付けて手を洗い。清潔なハンカチで手を拭い。調理をする。

食糧庫パントリーを見ても?」

「構いませんよ」

 許可をもらいガサガサと食糧庫パントリーを漁る。

「この料理は、作り方が複数あるので俺が説明するのはその一例だと考えてくれ」

「わかりました」

「まず今回作るのは、肉を捏ねて作った物でハンバーグと言う。肉団子ミートボールの亜種だと考えてくれ」

「なるほど、それなら無駄は減らせそうですが……肉を食べているような食感は無くなってしまいますね」

「ハンバーグは大きく分けて、牛肉100%と牛・豚の肉を混ぜた合い挽き、そして玉葱やパン粉、卵などを入れ、フワフワとした食感にしたもの三種類がある。
 当然だが肉々しいのは、牛肉100%のハンバーグだがそれでは、コストは下げ辛いだろう……そこで提案したいのが内臓を細かくし混ぜる事だ。こうすればコストを下げつつ、肉のような食感を担保する事が出来る。
 さらに豚肉を混ぜれば、コストをさらに下げる事が出来る。オススメは横隔膜ハラミだな」

「なるほど……確かに内臓を入れるのは盲点でしたですが臭みはどうやって処理しますか?」

香草ハーブ葡萄酒ワイン、ソースを使えばある程度は消せるだろうな……まぁ本気で臭みを消したいなら、玉葱を牛乳で煮る。こうすれば匂いは少なくなる……そうすると肉感は少なくなるから、肉感にこだわるなら妥協点だと思う。
 あとは、ディナーセットなどにして酒で五感を鈍くしてから……と言うのもオススメだな」

 そんな事を喋っている間に、牛と豚のスジ肉と内臓入りの肉種の混ぜる作業が終わる。

「見て貰うと分かるが肉の脂が解け、ねっとりと粘り気が出ているのが分かると思う。牛100%だとこうなりずらいので混ぜる時間は長くなる。女給にでもやらせればいいだろう……
 このままだと牛の味が薄い可能性があるので、少量の牛脂を俵型に成型していくハンバーグの中心に仕込み。軽くパンパンと近い距離で投げて空気を抜く。この時手に肉が付きにくくするために綺麗な油……食油を塗る。手の温度が高いと脂が解けるので、混ぜる時も整形する時も出来るだけ冷やせ」

 説明をしながらハンバーグに牛脂を仕込み成形する。

「なるほど、それで冷水で手を冷やしてるんですか……」

「整形したものは冷暗所で置いてく事で多少は持つが……冬場この時期なら室内よりは室外の方が良いかもな……」

 焼肉等を焼く網の上にハンバーグを乗せ焼き始める。

「たしかにそうかもしれませんな……」

「整形した肉は鉄板やフライパン、または網の上で焼くといいだろう。中心部に火が入っているかどうかは串を使うと言い。肉汁が濁って居れば『生』。逆に透き通った色なら『火が入っている』証だ。
不安なら鉄板かフライパンで焼き途中で、少量の水を入れ蓋をして蒸し焼きにすると失敗が少ない」

 表面がカリっとするまで焼き上げる。目指すは、元喫茶店のハンバーグ屋の炭火焼きハンバーグだ。
 串を刺し火の通り具合を確認すると……透き通った色の肉汁が溢れてくる。
 トングでそれを摘まみ皿に乗せる。ソースを作るのは難しいので今日はハンバーグだけだ。
 
「先ずは塩と胡椒だけで食べよう」

 俺はそう言ってハンバーグを一皿。店長に手渡した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

処理中です...