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第41話クズな三連星7 赤の一等星中
しおりを挟む相手の攻撃のからくりも恐らくつかめた。
西洋の剣の護拳(いわゆる鍔の部分でサーベルなどの湾曲したアレ)は、剣の中でも最も頑丈な部分だと何かで読んだことがある。
今回は護拳はないが、柄頭の部分で殴られたのだろう……防御魔術がなければ、良くて頬骨の骨折、悪ければ顔面を陥没骨折と言ったところか……
恐らく2メートルを超えるあの両手剣の柄を含めた。全てが鋼で出来ており、重心が持ち手の側にあるのだろう。今回はその特性を利用して、握りを甘くし、落として攻撃しただけだろう。
最後の蹴りやその後の受け身を含めて、俺の防御魔術は5割ほど削られており、流石に攻撃力の差を感じる。
(これは抜刀術だけの縛りは、流石に解除しないとキツイなぁ……)
そんな事を考えているとダリルが声を発した。
「今の攻撃に気が付けぬようでは、名門クローリー家の血族と言えども大したことは無いな」
低く冷たい声音で、俺の価値を下げる発言をする。
「攻撃されたあとならその仕組み全部分かったぜ?」
確かに初撃では気が付く事は出来なかった。だが、二撃目は防ぐことは出来た。そして幸いここは戦場ではない負けて戦果を得る事も出来るのだ。
「ほざけ小僧! 気が付ける脳があるなら初撃すら躱し、一太刀入れろ! 俺は剣速は遅いが、威力と考える脳がある。貴様は自分の強みすら十分に理解出来ていないようだ。賢しいのであれば対策を考えろ!」
確かにその通りだ。約2メートルになる剣を用いて戦うのだ。搦手と言うか、体術を折り混ぜて戦う事ぐらいは予想が付くと言われればその通りだ。
「……」
「小僧! 全力で来い! 貴様の本当の剣を見せて見ろ!!!」
鼓膜が破れんばかりの大声で怒鳴る。
ここまで言われると、仕方ない。俺は洋服に付いた土ぼこりを落とす事もせず。
左手の親指を鞘と鍔に斜めに置き鯉口を切っり、鞘引きを行い剣を抜刀し中段に構える。
「解ッ! 放ッ! 本来なら流派を名乗りたいところなのだが……生憎と師匠から流派の名を教えて貰っていないのだ。流派を名乗らぬ無礼を許してくれ」
自分に掛けている呪いを解呪し、魔力の制限を緩める。
「構わぬ。名など後から付いてこよう……」
先ほどまでの、怒気を孕んだような気配は何処かへ消え去り、慈愛すら感じさせる声音でそう呟いた。
「使用する刀剣は東方より伝わりし片刃の曲刀であるカタナ。銘は流櫻。
そして我が名は、クローリー家四男! アーノルドだ。……推して参る!!」
刹那。
ぼうっ! と燃焼音を立てて焔が膨れ上がり爆ぜた。緻密な制御とは無縁なそれは、まるで……燃え盛るような業火だった。
それは自然の発火現象などではない。魔力が制御出来ずに漏出する事で起こる現象で、言わば未熟さの証とも呼べるものだった。
「貴様! その莫大な魔力を今の今まで抑えていたと言うのか!」
ダリルが吠えた。
「魔力の制御に気を取られて、攻撃手段が単調になるよりは解放した方がよっぽどいいだろう?」
俺は茶目っ気を感じさせるウインクをした。
「今までの戦いを愚弄する気か!」
「愚弄するもなにも、人の控室に侵入して部屋を荒らすような【魔剣士三連星】には言われたくないかな?」
「だが遠距離タイプの貴様が幾ら魔術を放ったところで……魔力を体外にだせばその分身体強化は弱くなる! 近接戦なら分がある!」
ダリルは【瞬歩】を使い。魔力を足の裏に集めて、爆発させるように地面を蹴り出した。
ドン! と言う。音を立てて化粧板の石材を割りながら、俺に向けて距離を詰めてくる。
振り被ったツヴァイハンダーは、処刑人の如き迷いのない。素早い軌跡で俺を襲う。それは見事とな袈裟斬りだった。
魔術によって補助・強化された体と剣から放たれる。その斬撃の威力は、おそらく真面に食らってしまえば、学園から支給された革鎧の防御魔術事叩き斬られ、俺の上半身と下半身が、さよならバイバイしてしまう程の威力であることは、容易に想像できた。
「魔刀術・破城戦槌!!」
刀身が俺の魔力によって碧く輝きを放ち、蒼炎を纏う。
やがて蒼炎は、巨大な破城槌の形を模倣した。
魔力解放+身体能力強化+硬質化+炎魔術+風魔術×加重魔術×5のてんこ盛り、総勢10を超える魔術によって城壁をも一刀で崩す程の大魔法となる。
抑圧していた魔力を解放した事により、素の身体能力を始めとした全てのスペックが軒並み上昇している。
「せやぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああっ!」
「ぬぅぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
両者共に言葉にならない。気勢を上げながら、渾身の一撃が衝突する。
刹那。
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