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第38話クズな三連星4 緑の二等星上

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「――――っ!」

 俺は思わず左手を額に当てて下を向く。
 眼前に現れた男は俺の控室に忍び込んで、部屋の備品と刀剣を荒らして行った一味の一人だったからだ。

「またかよ! 二回連続って狙ってやってんのかァ?」

 俺は動揺を隠せず。声を荒げる。
 恐らくこの昇級戦の実行委員会の中にも、反クローリー家と言うか遊び半分、おふざけ半分の気持で俺の控え室の鍵を横流しし、嫌がらせのように、【魔剣士三連星】とかいう痛い名前の魔剣士を連続で当ててくるのだろう。

 緑色の短髪を整髪料でツンツンに逆立てた。長身の男が立っていたからだ。腰に下げた得物は鞘に覆われているため判別がつき辛いが、護拳ごけんと呼ばれる枠状。もしくは半円・半球状の特殊なつばが付いているので、恐らくサーベルや大日本帝国時代の軍刀に類似した。刀剣だと推察する事が出来る。

 相手の得物がサーベルだとすれば、直刀、曲刀、半曲刀の三種類があり、刺突、斬撃、バランス型となっているため相手の攻撃方法を見極めるには、刀身を見るほかに選択肢はない。
 どちらにせよ。多くのサーベルは1/3ほどに裏刃が付いており、手首を返すだけで斬り返しをすることが出来る。元の世界では、刀と同様に馬上での武器として発展した経緯がある。

 詳しくは覚えていないが、俺の刀剣を持って帰ろうとしたのは恐らくはコイツだろう……

 三馬鹿の頭脳担当と言った所だろうか? 俺から見ると頭のいい馬鹿や、インテリヤクザといった印象を受ける。まぁ卑怯で卑劣な事を行うのは百歩譲ってまだいいが、せめてバレない様にとか本当に使えなくなったのか? とか確認するべき事があっただろうに……

「先ほどの試合を観衆の一人として観戦させて頂きました。前半戦の試合とは異なる魔杖剣《まじょうけん》をお使いの中で、【魔剣士三連星 ウ チ 】のナイジュルとあそこまで白熱した試合を繰り広げるとは……いやはや驚きました。
 てっきりかの魔剣士の名門クローリー家でも、慣れない魔杖剣まじょうけんを使えば、本来の力を出す事が出来ず負けるものだと思っていましたが、逆境を乗り越えるそのお姿に私感服致しました――――」

 言葉遣いは丁寧なものだが、言葉の端々からコイツの慇懃無礼いんぎんぶれいさがにじみ出ていてまるで隠せていない。
 こいつも、自分でやったことをいけしゃあしゃあと、自分たちでダミーの魔杖剣まじょうけんをダメにしたクセに、「親切な人」の仮面を被って話しやがる。
 全部知ってる俺からすれば、滑稽こっけいと言う言葉以外の何者でもないのだが、面白いコントを見ているようだ。
 そうだ、せっかくだから最後まで勘違いさせてやろう。

 そんな事を考えている間も無駄な説得が続く。

「――――ですが、もう十分でしょう? 先ほどまでの連戦で幾ら名門クローリー家の直系とは言え、遠距離型の魔術師である貴殿に、足りない身体能力を補うために、魔力を多量に消耗したハズ……現在の貴殿の戦績ならば上位クラスに残留はほぼ確定だと思いますが……それでもまだ戦うおつもりですか?」

 俺の事を心配するフリをしながら、どうすれば俺は諦めるのか? と言う事を考えながら画策しているように感じる。
 恐らくそこまで、自分の剣技に自信がないのだろう。

「いい加減ウザくなってきたから、そろそろ黙って貰ってもいいか?」

「――――っ!」

 今度は三馬鹿の一人のみどりのインテリヤクザが驚きの余り声を出せずにいる。
 滑稽だ。
 自分が……自分たちが圧倒的有利だと思っている状態から叩き落すのがたまらない。

「この舞台に上がっている時点で、俺の腹はもう既に決まってるんだ。無駄なお喋りはさっさと辞めにして、剣技で優劣を付けようや?」

 インテリヤクザは、まるで苦虫を嚙み潰したような表情で、睨み付ける。怒りのせいかその頬はプルプルと震えている。

「キャンキャン吠えたり、睨んだり、プルプルと震えたりと忙しい人ですね。審判早く試合を始めましょう?」

 本来ならばここまで長い時間の会話は、審判役の生徒や教師が割って入り中止させるハズなのだが、ここまでの試合に一切注意は入っていない。
 つまりは俺が不利になるように、仕向けられていると言う訳だ。

 「東は! ヘルベルト・ワッツ・ラージ! 対する西はアーノルド・フォン・クローリー! 両者互いに卑怯な手段を用いないことを国王陛下及び神に誓うモノとする……」

 審判役の教師が決まり文句を口にする。
 審判役の教師の手刀が振り下ろされると同時に、互いに構えをとる。



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