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第15話お礼のご飯

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 この中近世ヨーロッパ風の世界には入浴の習慣がある。
これは庶民でも貴族にも根付いた文化である。
 入浴と言ってもその頻度や内容はさまざまであり、香草や薬草を炊いた湯気や煙の中に入る蒸し風呂サウナを好む地域もあるが、この地域にあるのはローマ帝国のような公衆浴場だ。
 浴場とは言うものの現代のスーパー銭湯を超えており、現代で言えば図書館、美術館、ショッピングモール、バー、レストラン、ジム、温泉が複合された総合レジャー施設である。

 よく中世では風呂に入らないと誤解されているが、それは間違いである。13世紀頃までは、辺境であっても入浴習慣が普及していた。例えば教会に行くための清めとして、木桶に温水を入れて身を簡単にすすぐ行水をしていた。
 都心においては公衆浴場テルマエがあり、住民は週に2度程度、温水浴や蒸し風呂を楽しんだらしい。しかし、男女混浴であったため、みだらな行為や売春につながり、それにキリスト教の観念が加わり廃れた。14世紀にはペストの流行により、入浴は「ペスト菌を体に取り込んでしまう」といった間違った解釈がなされ、風呂といった習慣自体が忌避され、ヨーロッパから風呂文化が縮小していった。 
 しかしローマ帝国の知識・文化と共に公衆浴場は、中東イスラーム世界で受け継がれていく……事になってるので、実際はクソ長い中世史の中にある、ほんの200年程度の風俗の話なのだ。

 まぁ江戸時代の風呂は水が汚く、水虫などの媒介になっていたので、強ち間違ってはいない。


 
 立派な作りの風呂屋で利用内容を説明し料金を払う。
風呂だけが利用可能なコインを渡されそれを首に掛ける。
値段は貴族として入ったので大体5000円ほど、燃料が高価なこの世界では納得の料金設定だ。身分によって値段が変り雑に言えば、稼いでいるやつから徴収するから成り立っているのだ。

 更衣室で服を脱ぎ最低限の金を持って、サンダルを履き浴場へ向かう。湯のため床が熱くなっており、更に水や油で滑りやすくなっているので、サンダルを履いて対策をしているのだ。

 先ずは蒸し風呂サウナで汗をかき、肌がほんのり赤くなるまで身体を暖め老廃物を出し水で軽く汗を流す。
垢すり師に香油やオイルを塗らせ、肌かき器で垢などの老廃物と共にオイルを流す。これがこの世界でのスタンダードな入浴法だ。
その後気分的に浴槽に浸かる。

 汗でベタ付いていた肌は、ゆで卵の殻と薄皮を剥いた見たいにツルツルしっとりとしたもち肌だ。

 蒸し風呂サウナに入ったお陰で身体の芯から温まり、ぽかぽか温まった体を、冬の冷たい夜風が吹き抜けて気持ちいい。

 さて公衆浴場テルマエで時間も潰せた事だし、彼らの宿泊している宿屋へ向かうか……
 冬の夜風で火照ったカラダを冷ましながら宿屋へ向かう。

「やぁ! 昨日ぶりだね」

 若い男性冒険者が声を掛けてくれた。

「お久しぶりです。昨日はお世話にな……」

 お礼の言葉を言い終わる前に、姉御気質の女性冒険者は被せる様にこう言った。

「そんなの気にしなくていいの! 今日は誘ってくれてありがとう。無理だけはしないでよ?」

 財布の心配までしてくれる。クローリー家にとっては5万ゼニーや10万ゼニーなんて大した額ではないのだから、冒険者業で稼いだ金は大したもんじゃない。

「いえ、気にしないでください。お礼をするのはこっちなんですから……さぁ行きましょう昨日良い店を見つけてあるんです」

 俺はそう言って彼らを焼肉屋に引っ張って行った。

「随分と高そうな店だが……大丈夫か? ……って言うか一日で幾ら稼いだんだよ!」

 まぁこの店の外観を見ればそう思うよな……

「大体10万ゼニー超えですかね……」

 ここに卸した肉を含めれば昨日の稼ぎはそれぐらい行く。

「学園の制服を着ていたから優秀だとは思っていたけど……もうそんなに稼げるとは思ってなかったわ……」

 女性は心底驚いた口調でそう言った。

「えぇなので、今日は約束通りここの支払いは全部僕が持つので安心して食べて下さい」

「Aランクである白銀シルバー級冒険者としてそうはいかねぇ!」

「元々君が無事に帰ってこれるように、発破をかけただけだものここは先輩に奢らせなさい」

 ここまで彼らに言わせたのだ。大人しく奢られよう……メシの代わりになるそんな贈り物を見繕わないとな……明日刀のメンテナンスの為に工房によるし丁度いい。そこで見繕うか……

「では遠慮なく……今日予約してあって僕がアイディアを出した試作品も出るんです。元の料理が凄く美味しいので楽んでください」

「もちろんだ!」

 こうして白銀シルバー級冒険者パーティーのジェームズさんと、ジェシーさんとの楽しい夕食を終え俺は帰路に付いた。





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